フリーター、城を買う。 〜格安物件をローンで買ったら異世界のお城でした。ちくしょう!〜

きら幸運

文字の大きさ
19 / 90
<フリーター出撃編> ~守護龍ヴァスケル 覚醒する~

第十七話:フリーター、方針を決める

しおりを挟む
「ヴァスケル! お前の出番だ! 俺を乗せてダゴダネルの城へ飛べ!」

 俺は、エルメンルート・ホラント姫の浪費ろうひローン返済不能いのちの危機を感じた。
 なので、亡国ぼうこく微女びじょを迎えに行くため、守護龍ドラゴンヴァスケルに出撃を命じた。

「リューキ殿! 待ってくれ! オレの話がまだだ!」
 
 ワーグナー城の守備隊長、オーク・キングのグスタフが声を張りあげる。
 
 そういえばまだ報告を受けてなかったな。
 スマン、ちょっとあせっちまったぜ。

「リューキ殿。ゴブリン・ロードのジーグフリードから使者がきたが、いろいろと問題があってな」
「なんだ? 言ってみろ」
「まず、割譲かつじょうされた領地だが、すでにジーグフリードが掌握しょうあくしたそうだ」
「どういうことだ? ゴブリン・ロードが新しい領地に移住すると聞いてから、まだ半月しかってないぞ?」

 グスタフ隊長が円卓の上に羊皮紙の地図を広げる。
 すっかりお馴染なじみとなった見事な筆遣ふでづかいの地図。
 地図の中央に描かれた険峻けんしゅんな山がローグ山。
 その北斜面一帯が、俺がローンを組んで手に入れたワーグナー領。
 頂上付近にはワーグナー城が描かれている。

 グスタフ隊長はローグ山南西の斜面を指さしながら説明をはじめる。

「リューキ殿が新たに手に入れた領地はローグ山の南西一帯。面積は北斜面の半分くらいの広さで、領民の多くはゴブリン族。奴らは、ダゴダネル家の仲裁なんぞ聞く耳も持たず、常に部族間で争っている……、ここまでは以前説明しましたな」
「ああ、覚えている。ヴァスケルも理解したな?」
「当然さ。まったく……あたいが寝てたあいだも、ゴブリンどもは騒がしかったようだね」

 ヴァスケルがあきれるように言う。
 組の若い衆の不始末にうんざりするあねさんのような表情になる。
 すいません、若い衆の教育がなってませんで……いやいや、俺のせいではない。
 
「一族を引き連れて移住してきたジーグフリードは、争いを続ける他部族を片っ端から制圧し、反抗的なおさを残らず始末したそうだ」
「なかなか強引なやり方だな」
「リューキ殿。相手はゴブリン族だ。力がすべてだ」

 グスタフが当然のように言う。


……うむ。確かに、俺の世界の常識で物事を考えてはいけないようだね。そもそも、俺がいた世界には守護龍ドラゴンどころか、ゴブリンやオークも存在しないしね。ジーナや女騎士ナイトのエリカがいなかったら、俺はとっくの昔に頭がおかしくなってたかもしれないな。ん? そういえば、あのふたりはヒトだよな? あねさんモードに変身チェンジするヴァスケルみたいなドラゴンじゃないよな? まあ、別に本体リアルがヒトじゃなくてもいいけど。つやっぽいあねさんのヴァスケルはアリだ。なにがどうアリかはさておき、俺は気にしない。いや、気にならなくなったというのが真実に近いか。うん、俺もこの世界に馴染なじんだものだ。最初は嫌で嫌でしょうがなかったけど、いまではこの世界で生きていくのに抵抗はなくなった。元の世界に戻ったところで家族がいるわけでもない。ローンを払い終えたあと、辺境の山城ワーグナー城でのんびり生きていくのも悪くない。元の世界で日々の生活に汲々きゅうきゅうするくらいなら、この世界でつつましく生きていくほうがマシだ。定期的に里帰りもできるしね。そうだな、定住しちゃおうかな……


「リューキはどうしちまったんだい? 目を開けてるのに、意識を失ってるみたいじゃないか?」
「ヴァスケル様。我が領主マイ・ロードは急に深い瞑想めいそう状態に入ることがあります。強い刺激を与えれば正気に戻るかもしれませんが、基本的にそっと見守ることにしています」
「そ、そうかい。……領主ロードまも女騎士ナイトも大変だな」
「いえ、もう慣れましたから」

 気づくと、円卓を囲む全員が黙っていた。
 女騎士ナイトエリカ・ヤンセンが慈愛じあいに満ちた目で俺を見つめている。
 なにかあったのかな?

 ヴァスケルのあねさんが戸惑とまどった表情をしている。
 守護龍ドラゴンにも悩みがあるのだろうか? 
 あとで聞いてやろう。

 城代じょうだいのジーナ・ワーグナーが口元をゆるませながら舟をこいでいる。
 スイーツを食べる夢でもみているのだろう。
 まあ、いつものことだ。

 オーク・キングのグスタフ隊長が口をモゴモゴさせている。
 言いたいことがあるならさっさと言えば良いのに。
 俺たちは、グスタフの報告を聞くために俺たちは時間をいているんだ。
 「時は金なり」ということわざを知らないのか? 
 まあ、知らないだろうな。
 今度、教育してやらねばいけないな。

「グスタフ隊長。報告の続きを頼む!」
「え? あ、ああ、ゴブリン・ロードのジーグフリードだが、むしろ向こうから領主ロード様に会いたいとの申し入れがあった。但し、多忙のため自分はワーグナー城にはこられないから、代わりにきて欲しいそうだが……」
「なんですって!? そんな馬鹿な話はないわ! まだ正式に臣下にすらなっていない者が、領主ロードに会いにこいと言うだなんて。ありえない!!」

 俺が口を開く前に、女騎士ナイトエリカがキレる。
 実は熱いハートの持ち主なのかもしれない。
 彼女のクールな物腰ものごしは、激しい本性ほんしょうを隠した仮の姿なのかもしれない。

「グスタフ……あんたまさか、そんな戯言たわごとを受けたわけではないだろうね」
「ヴァスケル様! め、滅相めっそうもございません!!」

 ヴァスケルにも叱られ、グスタフ隊長の声が震える。
 あねさんに叱責された若頭わかがしらのように身をちぢめる。
 うん、この例えはほどほどにしておこう。
 まあでも、それくらいグスタフは冷や汗をかきまくっていた。

「ヴァスケルさまー。あんまりグスタフをいじめちゃだめだよー。それに、どうするかは領主ロードのリューキさまが決めるんだから。グスタフは『こんな提案がありました』って伝えただけだよ」
「むう……ジーナ様。ありがとうございます。このグスタフ、至らぬことばかりで申し訳ございません」
「まったく……ジーナは優しすぎるねえ。で、リューキはどうするつもりだい? 相手はジーグフリードだなんて大層たいそうな名前だけど、しょせんゴブリンじゃないか。あんたのためなら、あたいがひとっ飛びして片付けてきてやるよ」

 ヴァスケルの発言は頼もしい限り。
 問題が簡単に解決するね! 
 けど、ちょっと俺のやり方とは異なるかな。
 俺は恐怖政治で領地を治めるつもりはない。
 できるだけ穏便に済ませようじゃないか。
 あくまで直感だが、ジーグフリードはこれからも役に立つ人材になると思う。
 ろくに統制の取れないゴブリン族をまとめ上げる手腕はたいしたものだ。
 あっさり消してしまうには惜しい。
 言うことを聞かなければ、そのときはヴァスケルに頼んで……
 おっと、俺も物騒ぶっそうな考え方をするようになったものだ。
 まあ、とりあえず、一度会って話をしてみよう。

「決めた! エルメンルート・ホラント姫に会いにダゴダネルの城へ行くが、その途中でジーグフリードにも会う。奴の処遇は会ってから決める。ヴァスケル。お前の背中には何人乗せられる?」
「安全に飛ぶんなら精々せいぜいふたりだね。三人も乗せたら途中で落っことしちまうよ」
「分かった。俺と女騎士ナイトエリカで行く。ジーナとグスタフは留守を頼むぞ!」
「はーい。わっかりましたー」「我が領主マイ・ロードおおせのままに」「リューキ殿! 留守は任せてくだされ」「あいよ! ふたりとも落っこちないように、あたいにしっかりしがみつくんだよ!」

 城代ジーナ、女騎士ナイトエリカ、グスタフ隊長そして守護龍ドラゴンヴァスケルの四名が即座に返答する。

 さて、これからどんなトラブルが待っているやら。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...