22 / 90
<フリーター出撃編> ~守護龍ヴァスケル 覚醒する~
第二十話:フリーター、腹を立てる
しおりを挟む
「無茶なことをいう男だねえ……仕方ない。あんたが行くなら、あたいも行くよ」
「我が領主。私も地獄の底までおつきあい致します」
俺は、ゴブリン族の争いへの介入を決断する。
守護龍ヴァスケルと女騎士エリカ・ヤンセンも当然のように同行を申し出る。
「ヴァスケルは火を消せるか? 嵐を呼ぶとか、雨を降らせたりできるか?」
「あたいは火をつけるのは得意だけど、火を消すのはあんまり得意じゃ……」
「できるのかできないのか、はっきり言え!」
「い、一応できる。けど、雨雲を集めるのに時間がかかるし、あんたたちを抱えながらは無理だよ」
屹立する岩場の上から、俺は戦場を睨みつける。
ジーグフリードの軍勢は、いまや完全に浮き足立っている。
彼らが動揺する原因が、村の火災なのは明らか。
家族の身が心配でゴブリン兵たちは気が気でないのだろう。
「ヴァスケル! 俺と女騎士エリカをジーグフリードの軍勢の近くに下ろせ! そのあと、お前は消火に専念しろ!」
「そしたら、あんたの身の安全が……」
「エリカ・ヤンセンがいる。領主を護る女騎士だ! 地獄の底まで付きあってくれると約束してくれた。女騎士を信じろ!」
「わ、わかったよ!」「我が領主! 仰せのままに!!」
守護龍ヴァスケルが、俺と女騎士エリカを抱え込む。
大きく咆哮し、大空に飛び立つ。
オーデル村を囲むゴブリン兵をなめまわすように旋回し、つむじ風をまきおこしながらジーグフリード軍の目の前に降り立つ。
「なんだあ! でっかい龍まで出たぞお!」「おでたち、もうお終えだあ」
突如出現した龍に怯え、ジーグフリード軍は潰走寸前の様相になる。
「ゴブリン族の勇者たちよ、狼狽えるな! 俺はリューキ・タツミ。ワーグナーの領主だ。この龍は守護龍ヴァスケル。お前たちの敵ではない!」
ジーグフリード配下のゴブリン兵が静まる。
俺の言葉を受けて気持ちが落ち着いたというより、どう行動したら良いか判断できない様子。
ゴブリン族は好戦的な種族で、身体は人間族より大きい者が多い。
ただし、頭の回転はそれほど早くない印象を受けた。
「お前たちの大将、ジーグフリードに会いたい。どこにいる?」
俺の問いに応えるかのように、屈強な兵の間から細身の青年が姿をあらわす。
動揺が残る同胞と違い、青年ひとり落ち着いた感じだ。
「私がジーグフリードです。領主リューキ殿、お会いできて光栄です。以後、お見知りおきを」
どちらかといえば細マッチョな体格のジーグフリードは、言葉遣いもなめらかで、ゴブリン族とは別の種族に思えた。
俺と同じ人間族と言われても信じてしまいそう。
例えるなら、技巧派の軽量級ボクサーという感じ。
力任せに戦うよりも、俊敏に動いて急所を突くタイプに見えた。
「領主様におかれましては、本日はどのようなご用件でしょうか? わざわざお越し頂いて恐縮ですが、ご覧のとおり、少々立て込んでおりまして……」
苦戦を強いられているはずなのに、それを感じさせないユニークな言い回し。
頭は悪くなさそう。
それどころか、なかなかの曲者のようでもある。
同時に、俺はジーグフリードの言葉に違和感を覚えた。
ジーグフリードの使者は、俺にオーデル村まで来るよう要請してきたはず。
なのに、目の前の青年は辻褄の合わないことを言っている。
これは、ひょっとして……
「ジーグフリード、教えてくれ。ワーグナーの使者は、お前に何と言った?」
「いまさら何を尋ねられるのですか? このオーデル村を私に任せて頂けるとのお話だったのでは? ……いや、なるほど。そういうことですか」
ジーグフリードが大笑する。
大きく開いた口のなか、ヒト族とは明らかに異なる鋭い犬歯が見えた。
「新天地のオーデル村で一旗揚げようと考えたのですが……ダゴダネルの罠でしたか。私としたことが目先の欲に目がくらんで、まんまと騙されました」
「どうやらそのようだな」
俺とジーグフリードは共に苦笑いする。
対して、女騎士エリカ・ヤンセンが理解できないといった顔をする。
賢いはずのエリカも奸計の類には疎いようだ。
仕方ない。説明してやろう。
「ダゴダネルの奴らは、俺からの使者を詐称して、ジーグフリードの一族をオーデル村におびき出したのさ。そのあと、他のゴブリン族を焚きつけて、紛争状態にしたんだろうな。俺を呼び出したのは、あわよくばワーグナー領全域に争いを広げようとと目論んだんじゃないかな?」
「的確な分析です。リューキ殿もなかなかの策士と見ました。私と話があうかもしれませんね」
ゴブリン・ロードのジーグフリードが、ぬけぬけと言う。
実に愉快そう。
俺は別にジーグフリードを喜ばせたくて説明したわけではないが……
まあいい。話を進めよう。
「ジーグフリード、あらためて問う。いまでもオーデル村が欲しいか?」
「なっ……当たり前です。私は一族を養わなければならない。領地が欲しいに決まっている」
「お前にその能力があるのか?」
「なんだと!? ……失礼。私には十分な力があります。私はゴブリン族ただひとりのゴブリン・ロード。その気になれば、村どころか、国だって統治できます」
ジーグフリードが言い切る。
たいした自信だ。
よし、その言葉を信じてやろう。
「ジーグフリード、お前にオーデル村を任せる! いや、オーデル村だけではない。ダゴダネルから獲得したローグ山の南西地域すべてを一任する。領地に住むゴブリン族をまとめあげろ!」
「嘘でしょう!? ワーグナー領の三分の一を私に任せることになりますよ!」
「分かってる。ただし、これ以上は領地を与えるつもりはない。お前はゴブリン兵を統率し、俺のために戦場で働けるように鍛え上げろ! 今後、働いた分の報酬は現物で渡す」
「ほう……なかなか興味深いお話ですな。ゴブリン族は戦好きな上に、欲深い種族。贅沢したければ戦うしかないとわかれば、よく働きますよ」
ジーグフリードが跪く。
俺に忠誠を誓う証に、頭を深く下げる。
対して、俺は声をかけない。
否、ジーグフリードの考えを一族が共有するまで、何も言うつもりはない。
頭の鈍いゴブリン族も状況を理解したのか、ひとり、ふたりと跪いていく。
見わたす限りのゴブリン兵が身を縮ませたところで、俺は声を張り上げた。
「ゴブリン族の勇者たちよ! 俺はジーグフリードに領地を任せると約束した。だが、約束が果たされるかどうかはお前たちの働き次第だ。戦え! 敵を追い払え! 村を焼いた奴らに後悔させてやれ! お前たちの大将を騙した黒幕を捕えろ!」
数百もの鬼の咆哮が重なる。
守護龍ヴァスケルに負けない迫力がある。
士気の上がった屈強なゴブリン兵が敵陣に突撃する。
すさまじい勢いだ。
「リューキ……あんた、たいした男だねえ。あたい、感心しちゃったよ」
「ヴァスケル。お前、ここでなにしてる?」
「なにって? あんたの演説を聞いてたのさ」
「俺はお前に村の火事を消すように指示したよな? 雨を降らせるのに時間がかかるって言ったのはお前だよな? おらっ! さっさと行けよ!!」
「ひいーーっ! わかった、わかったから、そんなに怒んないでおくれよー」
守護龍ヴァスケルが慌てて飛び立つ。
その姿を見ていると、俺は腹の底がさらに熱くなってくるのを感じた。
……「怒らないで」だと? ヴァスケルは何を言っているんだ? お前が言いつけを守らないから、俺は叱ったんだ。いや、ちょっと注意しただけだ。多少興奮したかもしれないが、いつもと変わらない。まったく、ヴァスケルがグズグズしていたせいで村が焼けちまったらどうするつもりだ? 領民には女、子どももいるんだ。火傷程度で済めばいいが、死んじまったらどうするんだ。ど畜生! どいつもこいつも勝手なことしやがって! 戦いたい奴は勝手に戦えばいい。死んでも自業自得だ。だが、世の中には平和に生きたいやつも多いんだ。俺もそうだ。俺だって好き好んで戦場にいるわけじゃない。だいたい……
「女騎士エリカ殿。尋ねてよろしいですか? 先ほどまで熱く語っておられたリューキ殿が急に黙り込んでしまわれました。私は何か粗相をしたのだろうか?」
「ジーグフリード殿。気になさらないでください。我が領主には、よくあることです。ただ……」
「なにか気になることでも?」
「はい。日に日にリューキ殿の怒りの熱量が増している気がします。同時に、怒りの持続時間も長くなっている様で……」
気づくと、女騎士エリカとジーグフリードがボソボソと話しあっていた。
エリカはまだしも、ジーグフリードは自分の一族の未来がかかっているというのに、何をチンタラしているのやら。
まったく、しょうがない奴だ。
「エリカ・ヤンセン、ジーグフリード。なにか言いたいことがあるのか? あれば、言え!」
「マ、我が領主……、そう! 報告があります。岩場の上から戦場を観察していたとき、村の西の高台の……あのあたりに黒い鎧を着た大男がいました!」
「どこだ? 俺には分からないな。ジーグフリード、お前は眼が良いか? 黒鎧の男が見えるか?」
「はい……確かにいますね」
「我が領主。あの黒鎧は、先の戦で捕虜にしたムタ・ダゴダネルと同じ鎧です! 間違いありません!」
「なに!? 確かに、よく見ると伝令らしき兵が行き来しているな。……よし、黒鎧の男を捕まえろ! ジーグフリード、お前の力を俺に見せてくれ!」
ゴブリン・ロードのジーグフリードが配下の兵を呼び寄せる。
すばやく密集隊形を取り、オーデル村の西の高台に向かって進軍を開始する。
ぽつり。俺の頬に雨粒があたる。
すぐさま激しい豪雨となる。
オーデル村の火災は鎮火に向かう。
あたり一面、煙と雨で視界は悪い。足元がぬかるむ。
村を囲んでいた敵のゴブリン兵が右往左往するなか、俺と女騎士エリカ・ヤンセンはジーグフリードの軍勢と一緒に、敵陣に突入した。
「我が領主。私も地獄の底までおつきあい致します」
俺は、ゴブリン族の争いへの介入を決断する。
守護龍ヴァスケルと女騎士エリカ・ヤンセンも当然のように同行を申し出る。
「ヴァスケルは火を消せるか? 嵐を呼ぶとか、雨を降らせたりできるか?」
「あたいは火をつけるのは得意だけど、火を消すのはあんまり得意じゃ……」
「できるのかできないのか、はっきり言え!」
「い、一応できる。けど、雨雲を集めるのに時間がかかるし、あんたたちを抱えながらは無理だよ」
屹立する岩場の上から、俺は戦場を睨みつける。
ジーグフリードの軍勢は、いまや完全に浮き足立っている。
彼らが動揺する原因が、村の火災なのは明らか。
家族の身が心配でゴブリン兵たちは気が気でないのだろう。
「ヴァスケル! 俺と女騎士エリカをジーグフリードの軍勢の近くに下ろせ! そのあと、お前は消火に専念しろ!」
「そしたら、あんたの身の安全が……」
「エリカ・ヤンセンがいる。領主を護る女騎士だ! 地獄の底まで付きあってくれると約束してくれた。女騎士を信じろ!」
「わ、わかったよ!」「我が領主! 仰せのままに!!」
守護龍ヴァスケルが、俺と女騎士エリカを抱え込む。
大きく咆哮し、大空に飛び立つ。
オーデル村を囲むゴブリン兵をなめまわすように旋回し、つむじ風をまきおこしながらジーグフリード軍の目の前に降り立つ。
「なんだあ! でっかい龍まで出たぞお!」「おでたち、もうお終えだあ」
突如出現した龍に怯え、ジーグフリード軍は潰走寸前の様相になる。
「ゴブリン族の勇者たちよ、狼狽えるな! 俺はリューキ・タツミ。ワーグナーの領主だ。この龍は守護龍ヴァスケル。お前たちの敵ではない!」
ジーグフリード配下のゴブリン兵が静まる。
俺の言葉を受けて気持ちが落ち着いたというより、どう行動したら良いか判断できない様子。
ゴブリン族は好戦的な種族で、身体は人間族より大きい者が多い。
ただし、頭の回転はそれほど早くない印象を受けた。
「お前たちの大将、ジーグフリードに会いたい。どこにいる?」
俺の問いに応えるかのように、屈強な兵の間から細身の青年が姿をあらわす。
動揺が残る同胞と違い、青年ひとり落ち着いた感じだ。
「私がジーグフリードです。領主リューキ殿、お会いできて光栄です。以後、お見知りおきを」
どちらかといえば細マッチョな体格のジーグフリードは、言葉遣いもなめらかで、ゴブリン族とは別の種族に思えた。
俺と同じ人間族と言われても信じてしまいそう。
例えるなら、技巧派の軽量級ボクサーという感じ。
力任せに戦うよりも、俊敏に動いて急所を突くタイプに見えた。
「領主様におかれましては、本日はどのようなご用件でしょうか? わざわざお越し頂いて恐縮ですが、ご覧のとおり、少々立て込んでおりまして……」
苦戦を強いられているはずなのに、それを感じさせないユニークな言い回し。
頭は悪くなさそう。
それどころか、なかなかの曲者のようでもある。
同時に、俺はジーグフリードの言葉に違和感を覚えた。
ジーグフリードの使者は、俺にオーデル村まで来るよう要請してきたはず。
なのに、目の前の青年は辻褄の合わないことを言っている。
これは、ひょっとして……
「ジーグフリード、教えてくれ。ワーグナーの使者は、お前に何と言った?」
「いまさら何を尋ねられるのですか? このオーデル村を私に任せて頂けるとのお話だったのでは? ……いや、なるほど。そういうことですか」
ジーグフリードが大笑する。
大きく開いた口のなか、ヒト族とは明らかに異なる鋭い犬歯が見えた。
「新天地のオーデル村で一旗揚げようと考えたのですが……ダゴダネルの罠でしたか。私としたことが目先の欲に目がくらんで、まんまと騙されました」
「どうやらそのようだな」
俺とジーグフリードは共に苦笑いする。
対して、女騎士エリカ・ヤンセンが理解できないといった顔をする。
賢いはずのエリカも奸計の類には疎いようだ。
仕方ない。説明してやろう。
「ダゴダネルの奴らは、俺からの使者を詐称して、ジーグフリードの一族をオーデル村におびき出したのさ。そのあと、他のゴブリン族を焚きつけて、紛争状態にしたんだろうな。俺を呼び出したのは、あわよくばワーグナー領全域に争いを広げようとと目論んだんじゃないかな?」
「的確な分析です。リューキ殿もなかなかの策士と見ました。私と話があうかもしれませんね」
ゴブリン・ロードのジーグフリードが、ぬけぬけと言う。
実に愉快そう。
俺は別にジーグフリードを喜ばせたくて説明したわけではないが……
まあいい。話を進めよう。
「ジーグフリード、あらためて問う。いまでもオーデル村が欲しいか?」
「なっ……当たり前です。私は一族を養わなければならない。領地が欲しいに決まっている」
「お前にその能力があるのか?」
「なんだと!? ……失礼。私には十分な力があります。私はゴブリン族ただひとりのゴブリン・ロード。その気になれば、村どころか、国だって統治できます」
ジーグフリードが言い切る。
たいした自信だ。
よし、その言葉を信じてやろう。
「ジーグフリード、お前にオーデル村を任せる! いや、オーデル村だけではない。ダゴダネルから獲得したローグ山の南西地域すべてを一任する。領地に住むゴブリン族をまとめあげろ!」
「嘘でしょう!? ワーグナー領の三分の一を私に任せることになりますよ!」
「分かってる。ただし、これ以上は領地を与えるつもりはない。お前はゴブリン兵を統率し、俺のために戦場で働けるように鍛え上げろ! 今後、働いた分の報酬は現物で渡す」
「ほう……なかなか興味深いお話ですな。ゴブリン族は戦好きな上に、欲深い種族。贅沢したければ戦うしかないとわかれば、よく働きますよ」
ジーグフリードが跪く。
俺に忠誠を誓う証に、頭を深く下げる。
対して、俺は声をかけない。
否、ジーグフリードの考えを一族が共有するまで、何も言うつもりはない。
頭の鈍いゴブリン族も状況を理解したのか、ひとり、ふたりと跪いていく。
見わたす限りのゴブリン兵が身を縮ませたところで、俺は声を張り上げた。
「ゴブリン族の勇者たちよ! 俺はジーグフリードに領地を任せると約束した。だが、約束が果たされるかどうかはお前たちの働き次第だ。戦え! 敵を追い払え! 村を焼いた奴らに後悔させてやれ! お前たちの大将を騙した黒幕を捕えろ!」
数百もの鬼の咆哮が重なる。
守護龍ヴァスケルに負けない迫力がある。
士気の上がった屈強なゴブリン兵が敵陣に突撃する。
すさまじい勢いだ。
「リューキ……あんた、たいした男だねえ。あたい、感心しちゃったよ」
「ヴァスケル。お前、ここでなにしてる?」
「なにって? あんたの演説を聞いてたのさ」
「俺はお前に村の火事を消すように指示したよな? 雨を降らせるのに時間がかかるって言ったのはお前だよな? おらっ! さっさと行けよ!!」
「ひいーーっ! わかった、わかったから、そんなに怒んないでおくれよー」
守護龍ヴァスケルが慌てて飛び立つ。
その姿を見ていると、俺は腹の底がさらに熱くなってくるのを感じた。
……「怒らないで」だと? ヴァスケルは何を言っているんだ? お前が言いつけを守らないから、俺は叱ったんだ。いや、ちょっと注意しただけだ。多少興奮したかもしれないが、いつもと変わらない。まったく、ヴァスケルがグズグズしていたせいで村が焼けちまったらどうするつもりだ? 領民には女、子どももいるんだ。火傷程度で済めばいいが、死んじまったらどうするんだ。ど畜生! どいつもこいつも勝手なことしやがって! 戦いたい奴は勝手に戦えばいい。死んでも自業自得だ。だが、世の中には平和に生きたいやつも多いんだ。俺もそうだ。俺だって好き好んで戦場にいるわけじゃない。だいたい……
「女騎士エリカ殿。尋ねてよろしいですか? 先ほどまで熱く語っておられたリューキ殿が急に黙り込んでしまわれました。私は何か粗相をしたのだろうか?」
「ジーグフリード殿。気になさらないでください。我が領主には、よくあることです。ただ……」
「なにか気になることでも?」
「はい。日に日にリューキ殿の怒りの熱量が増している気がします。同時に、怒りの持続時間も長くなっている様で……」
気づくと、女騎士エリカとジーグフリードがボソボソと話しあっていた。
エリカはまだしも、ジーグフリードは自分の一族の未来がかかっているというのに、何をチンタラしているのやら。
まったく、しょうがない奴だ。
「エリカ・ヤンセン、ジーグフリード。なにか言いたいことがあるのか? あれば、言え!」
「マ、我が領主……、そう! 報告があります。岩場の上から戦場を観察していたとき、村の西の高台の……あのあたりに黒い鎧を着た大男がいました!」
「どこだ? 俺には分からないな。ジーグフリード、お前は眼が良いか? 黒鎧の男が見えるか?」
「はい……確かにいますね」
「我が領主。あの黒鎧は、先の戦で捕虜にしたムタ・ダゴダネルと同じ鎧です! 間違いありません!」
「なに!? 確かに、よく見ると伝令らしき兵が行き来しているな。……よし、黒鎧の男を捕まえろ! ジーグフリード、お前の力を俺に見せてくれ!」
ゴブリン・ロードのジーグフリードが配下の兵を呼び寄せる。
すばやく密集隊形を取り、オーデル村の西の高台に向かって進軍を開始する。
ぽつり。俺の頬に雨粒があたる。
すぐさま激しい豪雨となる。
オーデル村の火災は鎮火に向かう。
あたり一面、煙と雨で視界は悪い。足元がぬかるむ。
村を囲んでいた敵のゴブリン兵が右往左往するなか、俺と女騎士エリカ・ヤンセンはジーグフリードの軍勢と一緒に、敵陣に突入した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる