フリーター、城を買う。 〜格安物件をローンで買ったら異世界のお城でした。ちくしょう!〜

きら幸運

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<フリーター探索編> ~ジーナはどこへ消えた?~

第七十四話:フリーター、土の精霊ドムドムを仲間に加える

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 ワーグナー城の東端ひがしはし
 嵐の後の、惨憺さんたんたる庭園。

 身長約二十メートルの大女王ビッグ・クイーンエフィニア殿下が泥をこねる。
 お菓子作りをするマダムのような手つきでこしらえたのは、真っ黒い泥人形。

 殿下は、泥人形に精霊を憑依ひょういさせて、ジーナ探索のおともにしてくれるらしい。
 
「ふうっ。我ながら上手くできましたわ!」
「殿下。スバらしい出来ばえです。俺、子どもの頃を思い出しました」

「リューキさんは芸術面の英才教育を受けられたのですか? さすがですわね」
「いえ、友だちと雪ダルマを作った思い出なんですけど」

 俺の目の前にあるのはいびつな球体がふたつ重なった泥ダルマ。
 身の丈は一メートルくらいで、ずんぐりむっくりしている。
 短い手足も付いていている。

 なんだか、二頭身のネコ型ロボットを思い出しちゃったな。はは。

「リューキさん。顔を描いてくださいませ」

 エフィニア殿下が、泥人形を仕上げるよううながしてくる。

 俺は木の枝を拾い、泥人形の顔に目、鼻、口を描く。

 うおっ、しまった!

 例の絵描き歌が頭のなかを流れたせいで、できたのはネコ型ロボットの顔。

 そう。みんな大好きドラえ○んだ。
 
「ユニークなお顔ですわね。リューキさんはタヌキがお好きなのかしら?」
「違います! 殿下、やり直させてください!」

 泥人形の顔を描き直す。

 あわてたせいか、ハニワみたいになってしまう
 しかも泣き出しそうな顔。

 もう一度やり直す。
 またもやハニワ。
 タレ目でへの字口の、気が弱そうなハニワだ。

 むう……タヌキみたいなネコ型ロボットと困り顔のハニワ。

 どっちが良いだろうか? 
 まあ、どっちでもいいか。

 とりあえず、ハニワにしておこう。
 大事なのは見た目じゃない。

 ハートだ!

 俺の美的センスのとぼしさは本質的な問題ではない!

 畜生ちくしょう!!
 
 デッカいエフィニア殿下が泥人形に手をかざす。

 困り顔のハニワがボワっと発光する。
 が、動く気配はない。

 「あら、おかしいわね?」てな感じに、エフィニア殿下が首をかしげる。
  
「殿下。どうされましたか?」
「ワタクシ、土の精霊グノームを呼んだのですが、なぜか抵抗されてしまったのです。こんなにステキな身体からだを用意したのに」

 エフィニア殿下が気合を入れる。
 「むんっ」とばかりに念を込めると、泥人形がぶるぶる震えだす。

 ついに、「むむむーっ! ダメでござるー!」と叫びながら泥人形が動き出す。

「ドムドムさん。失礼ではありませんか! 水の精霊ウンディーネ女王クイーンであるワタクシの召喚呼びかけを拒否するなんて」
「むむ! 申しわけござらん! 拙者せっしゃ、泥人形の見た目が受入れがたく……」

 殿下の叱責しっせきに、ハニワがあせりながら答える。

 泣き出しそうな顔で狼狽うろたえるさまはなんとも情けない。
 けれども、丸い胴体から伸びた短い手足のせいで、妙にコミカルに見える。

「ドムドムはタヌキ顔が良かったんか?」
「む、プリンセス・デボネア様もおられましたか! いえ、拙者はタヌキが好きなのではござらん! 拙者は戦士。この何とも言えない物悲しい顔つきが戦士らしくないと思ったまで。タヌキだろうがキツネだろうが構いませぬが、勇ましい顔つきにしていただきたかった。といいますか、エフィニア殿下とプリンセス・デボネア様は精霊界のお姿のまま召喚されているではございませんか! なぜ私だけ泥人形への憑依召喚ひょういしょうかんなのですか?」

神紙しんしを切らしてしもうた。許してくれなのじゃ!」
「む、もしや貴殿はプリンセス・エルメンルート様ではござらぬか?」

「わらわのことを知っておるのか?」
「無論! 貴殿きでんは精霊界では有名なお方。神紙しんしを使って精霊を召喚するなど、貴殿きでんをおいて他にはござらん。できれば拙者も本来の姿で召喚していただきたかった。残念無念。次回召喚していただく際は……」

「ドムドム、あのさー!」
「む、プリンセス・デボネア様! なにかご用でござるか? デボネア様のお申し付けならば、たとえ火のなか水のなか、どこへなりとも……」

「あんさん、しゃべりすぎや! ちっとは静かにせんかー!」
「むおっ、あ、はい、申しわけないでござる……」

 ハニワの、違う、土の精霊グノームのドムドムがだまる。

 見た目以上にションボリしたように見える。

 それはともかく、精霊界も女性上位なのか? 
 人間界や魔界と同じだね。
 もはや全宇宙共通の法則だな。

 うむ、ドムドムとは仲良く助けあっていきたいものだ。はは。

土の精霊グノームのドムドム。俺はワーグナー城の領主ロードリューキだ。お前の顔を描いたのは俺だ。すまなかった。けど、是非とも力を貸してほしい。ドワーフの地下洞窟に潜るのに、頼りになる仲間が必要なんだ」
「む!? 強くて格好良くて頼りになるステキな仲間が欲しいだと! 分かった、そこまで申すのならば顔の造作ぞうさは水に流そう。貴殿に力を貸すでござる!」

「……ありがとう。ドムドムは性格も良さそうで助かるよ」

◇◇◇

 エフィニア殿下に見送られ、俺たちは中庭を後にする。
 向かうのはジーナが消えた地下洞窟。

 洞窟の入り口は黒檀こくたんの塔の地下にあるという。
 普段は封印されている扉から入るのだそうだ。

 黒檀こくたんの塔の地下階に降りる。

 ワーグナー棒こと、金の延べ棒インゴットがぎっしり納められた巨大な地下倉庫の奥に、重厚な扉がある。
 黒い金属製の扉には取っ手や鍵穴はなく、一見いっけん、黒い壁にしか見えない。 

「わらわに任せるのじゃ! 我が従妹いとこのジーナが扉を開けるのを見ておったから、大丈夫なのじゃ!」
 
 エル姫が扉を押す。
 が、微動びどうだにしない。 
 押してダメなら引いてみなって感じでもなさそう。

「エル。扉は開かないじゃないか。どうなってるんだ?」
「ジーナは簡単に開けてたのじゃ! なにかコツがあるハズなのじゃ!」

「エルはそのコツを知ってるんじゃないのかよ?」
「知らないのじゃ! 見ていて簡単そうだったから聞かなかったのじゃ!」

 エル姫がポンコツぶりを披露ひろうする。

 そうだった。コイツは肝心なときにヘマする奴だった。
 「亡国ぼうこく微女びじょ」は健在なり。畜生ガッデム!!

「むむっ! 拙者の出番でござるな!」
「ドムドム。扉を開けられるのか?」

「無論! 拙者は土の精霊グノームの戦士。こういうのは得意ですぞ!」

 ドムドムが自信満々に言う。

 うむ、嫌な予感がするな。

 土でできたドムドムの右腕が巨大なハンマーに変化する。

 うむうむ、嫌な予感は当たりそうだな。

「ドムドム! 待て! 無茶はするな!」
「むむむーっ!! チェストぉーーッ!!」

 ドムドムのハンマーが振り下ろされる。
 ガキンッとすさまじい音ともに扉が砕ける。
 
「あれ? 扉は頑丈そうに見えたのに案外もろかったのかな?」
「む、領主ロードリューキ殿。なにを言われる。散らばった残骸ざんがいを見ていただきたい」

 俺は扉の欠片かけらを拾う。
 めっちゃ硬い。むっちゃ重い。
 てか、この扉、厚さ十センチ以上あったんじゃないのか?

「ドムドム! お前、スゴイんだな」
「むむっ! これくらいたいしたことないですぞ! 我がハンマーは天下無双でござる!!」

 土の精霊グノームのドムドムが胸を張る。
 正確に描写すれば、二頭身の困り顔のハニワが高笑いしている。
 
 なんということだ!
 ドムドムは、コンセプトに失敗したご当地キャラクターのような見た目だが、本当に強そうじゃないか!

 そうだよな。
 人間も精霊も顔じゃない。

 ハートだ!

 俺は自分自身の吐き出した言葉の意味を再度みしめた。
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