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[ブレードランナー]結局僕らは何者なのか?
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僕たち「人間」は何をもって自己を認識するのでしょうか。我思う、故に我ありという言葉はあまりにも有名ですが、そのように思っている「我」が人間である保証はどこにあるのでしょうか。実は僕は人間などではなく、政府によって「誰か」の記憶をインプットされ、「誰か」として物事を処理するように実験的に作成されたアンドロイドかもしれません。もちろん「そんなわけない!」と語気を強めて否定したい気持ちは山々なのですが…。
『ブレードランナー』という映画があります。フィリップ・K・ディックという作家が執筆した『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか』というSF小説が原作です。この映画の世界観をざっくりとおさらいしましょう。
21世紀初頭、環境破壊によって人類の多くは宇宙の植民地へ移住。その植民地の開拓や戦闘の最前線に立ち従事していたのが、タイレル社が製造したレプリカントと呼ばれる人造人間でした。遺伝子工学の進歩の結果、第六世代のレプリカントは年月の経過と共に自我が芽生えるようになったため、安全装置として寿命が四年に設定されています。しかし、その間に我ら人間に対して反逆を行うイレギュラーも一定数存在する。そんなレプリカントを強行手段にて解任(射殺)するのが本作のタイトルにもなっている「ブレードランナー」です。
ブレードランナーを退職していたデッカードのもとにロサンゼルス市警の使いがやって来ます。彼に与えられたのは反乱を起こしたレプリカントの一団の一部がシャトルに乗り込み地球へ逃亡、うち男女四人が依然野放しになっているため彼らを解任してほしいという指令でした。残された証拠を元にレプリカントの捜索を行うデッカード、自我の芽生えから自己の存続を強く希望するレプリカント、彼らの闘いの結末はいかに。
この映画のキーになるのはレイチェルというヒロインです。彼女はレプリカントの創造者であるタイレル博士の秘書として働いているのですが、彼女もまたレプリカントです。しかし彼女自身はそうであることに気づいていません。何故なら彼女は博士の姪の記憶をインプットされており、自分が制作されたより以前の記憶を持っているからです。そんな彼女もデッカードとの出会いで自分がレプリであることに気付き(というより発見したという言葉の方があうかもしれません)タイレル社から脱走し、解任対象となってしまいます。
映画で象徴的だったのがデッカードとレイチェルの間に恋が芽生えるシーン。「あなたはレプリじゃないわよね」と問うレイチェル。デッカード自身はレプリであるのかわからなくなっているのでしょう。それでも自分が人間であることを信じ、彼女との恋に沈んでいく。「俺がほしいと言え」とレイチェルに催促する姿は人間特有の感情であるはずの、心の在りかを確かめているようにさえ見えました。
結局のところ、僕らは何によって作られ、何によって定義されるのでしょうか。もしかしたら誰かにインプットされたかもしれない、どこまでも曖昧な過去の記憶を僕らはどれ程信じられるのでしょうか。
映画のラストシーン、デッカードとレイチェルは二人で旅に出ます。解任対象のレイチェルはいずれ射殺され、デッカードもまた彼女を匿ったことにより何かしらの処罰を受けるでしょう。それでも彼らは得体の知れぬ何かによって形作られた過去ではなく、今見える現在とその延長線上にある未来へ向かって進みはじめました。
僕らはことあるごとに過去の栄光にすがったり、自分の現在地を過去の延長線上に起きたがります。しかし本当のところ、過去というのは未来と同等に曖昧で、どちらも今の位置から伸びた線の上にあるのです。
『ブレードランナー』という映画があります。フィリップ・K・ディックという作家が執筆した『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか』というSF小説が原作です。この映画の世界観をざっくりとおさらいしましょう。
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ブレードランナーを退職していたデッカードのもとにロサンゼルス市警の使いがやって来ます。彼に与えられたのは反乱を起こしたレプリカントの一団の一部がシャトルに乗り込み地球へ逃亡、うち男女四人が依然野放しになっているため彼らを解任してほしいという指令でした。残された証拠を元にレプリカントの捜索を行うデッカード、自我の芽生えから自己の存続を強く希望するレプリカント、彼らの闘いの結末はいかに。
この映画のキーになるのはレイチェルというヒロインです。彼女はレプリカントの創造者であるタイレル博士の秘書として働いているのですが、彼女もまたレプリカントです。しかし彼女自身はそうであることに気づいていません。何故なら彼女は博士の姪の記憶をインプットされており、自分が制作されたより以前の記憶を持っているからです。そんな彼女もデッカードとの出会いで自分がレプリであることに気付き(というより発見したという言葉の方があうかもしれません)タイレル社から脱走し、解任対象となってしまいます。
映画で象徴的だったのがデッカードとレイチェルの間に恋が芽生えるシーン。「あなたはレプリじゃないわよね」と問うレイチェル。デッカード自身はレプリであるのかわからなくなっているのでしょう。それでも自分が人間であることを信じ、彼女との恋に沈んでいく。「俺がほしいと言え」とレイチェルに催促する姿は人間特有の感情であるはずの、心の在りかを確かめているようにさえ見えました。
結局のところ、僕らは何によって作られ、何によって定義されるのでしょうか。もしかしたら誰かにインプットされたかもしれない、どこまでも曖昧な過去の記憶を僕らはどれ程信じられるのでしょうか。
映画のラストシーン、デッカードとレイチェルは二人で旅に出ます。解任対象のレイチェルはいずれ射殺され、デッカードもまた彼女を匿ったことにより何かしらの処罰を受けるでしょう。それでも彼らは得体の知れぬ何かによって形作られた過去ではなく、今見える現在とその延長線上にある未来へ向かって進みはじめました。
僕らはことあるごとに過去の栄光にすがったり、自分の現在地を過去の延長線上に起きたがります。しかし本当のところ、過去というのは未来と同等に曖昧で、どちらも今の位置から伸びた線の上にあるのです。
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