12 / 49
2 桃音の場合
3 ちゃんと演技ができるまで指導してあげる
しおりを挟む
「いーよー桃音ちゃん! 次、ソウくん入るからねー」
「はーい」
今日の撮影はファッション誌のセックス特集に合わせたもの。
ノウハウとかウンチクがくだいて書かれてる合間合間に、私のグラビアが入る。
なぜファッション誌に私なんかのグラビアかと言うと、『怖いもの見たさ』を狙ったものらしい。
セックスはもちろん、AVに興味はあるけど、実際見れない。
グラビアは男性誌ばかりだし、いかにもって感じ。
男性アイドルやモデルのグラビアは、当たり前だけど男性メイン。
女性の実状ってどうなのよってことで、白羽の矢がたったのが、テレビでは天然妹系で全くエロさを感じさせない私ってわけだ。
わざわざグラビアを見に行かなきゃ私のエロさは知れないもんね。まぁネット検索で水着写真が出るけど、過激なのは写真集とか雑誌の中だし。
気持ちいいことは恥ずかしくないんだよって事が言いたいらしい。
気持ちよさげな絡みを撮りたいのに、私を指名するあたり、企画の妥協を許さない本気さが伝わってくる。
もうひとつ私がこの変わったグラビアを受けた理由。
相手役のモデルのソウさんだ。
彼がデビューした当初からめちゃくちゃファンで、会ってみたいとずっと思っていた。
まさか仕事が一緒にできるなんて思っていなかったからすごく嬉しい。
しかも絡みなんて……濡れるだけで済むかな……溢れる前にタンポン取り替えなきゃ、タイミング気を付けないと。あー恥ずかしい。
シチュエーションは初めて自分の部屋に来る彼氏。
さっき私一人で撮影してたのは、彼氏を待つドキドキの彼女。
カメラマンの指示で、緊張した図を撮りたいからって顔合わせもしていないから、もぉ素でできちゃったもん、その表情。
にしても、この部屋はない。
用意されたセットはパステルカラーの雑貨が溢れ、カーテンからリネンからハート型クッションに至るまで、バリエーション豊かなピンクピンクピンク!
ピンクの色ってこんなにいっぱい種類があったのね、知らなかったわーって、あほかっペーパーか!
私の部屋はモノトーンだっつーの! ゴジラ級の特大猫だわ、これは……。
ベッドは白い華奢な格子のついたお姫様ベッドだし、極めつけが私。
くるっくるの巻き髪にてっかてかのピンクグロス、白地に小さなピンクハート水玉のベビードール風パジャマ。
さすがに透けてるタイプではなく、綿なのが余計に可愛らしいっつーかあざといっ。パフ袖、ドロワーズ型ズボンの裾、デコルテ全開の首回りは生地をくしゅくしゅのギャザーにしてあって超ガーリー。
パジャマで七分丈とか落ち着かないんですけど? 寝るときはすっぽんぽん派ですが何か!?
どんだけブればいいんですか。それとも彼氏を待つ女の子ってみんなこうなの? 私が冷めすぎなの?
女性誌なんだからこれが正解なんだろうけど……。
恥ずかしすぎる。たぶん裸の方が私にとってはマシだわ。むしろドンと来い。
うん、さすがにやらないけどね。
「ソウさん入りまーす」
「おはようございまーす、お願いします」
まっすぐこちらに向かってくるソウさん。
慌ててセットから降りて頭を下げる。
「はっ初めまして! 西原桃音ですっお願いしましゅ!」
うわっ噛んだ! 憧れだったソウさんへの第一声で噛むって! ありえない、恥ずかしいー!!
「よろしく桃音ちゃん。今日は彼氏彼女なんだから、そんな緊張しないで。ね?」
私のあごに手をかけ、うつ向いていた私の顔を上げさせると、ちゅっと音をたてて額に口付けた。
真っ赤になって目を見開くと、普段は鋭い切れ長の瞳が柔らかく私を見ている。
思わず見惚れてしまった。
「おいおいーセットの中でやってくんねーと、写真撮れても意味ねーぞー」
スタッフにひやかされて、慌てて離れようとすると、ぐいっと腕を引かれてソウさんの胸に押し付けられた。
「エッチの時の緊張を解くのも、彼氏の役目ですからー」
スタジオで笑いが起こる。
凄い。遅入りなのにあっという間に場に馴染んでる。
私が呆然としていると、ソウさんは私を抱きしめたままで見下ろす。
「少しはほぐれたかな?」
「あっ、ありがとうございます。大丈夫ですソウさん」
「言ったでしょ? 彼氏彼女なんだからソウ、でいいよ。桃音」
「あ、ハイ。……ソウ」
「なあに? 桃音」
世界作ってンじゃねーぞー! 手が早すぎだろソウー! なんてヤジが飛び、私は今度こそ離れてセットに飛び乗った。
何あれ何あれ?! 性格も想像通りめちゃくちゃカッコ良くない!?
一見ワイルドで鋭い眼差しが近寄りがたいけど、優しくて気を使ってくれて……冗談抜きで心臓バクバク、全身熱いんですけど!
思わずクッションを抱きしめて顔を埋めた。
「!!!」
後ろからすっとまわされた腕。三角座りした私をそっと包み込む。
「全身真っ赤。可愛い桃音」
くっついたソウの体がくすくすっと揺れる。
「う……あの……」
「ん? なに、桃音?」
クッションを取り上げられて、ソウの腕と脚に収まっている私。
そんな耳元で囁かないで……! ぎゅうっと瞳を閉じた。
遠くでカメラマンが、いいよーいいよー自由に動いてー、とか言ってる。他人事だと思ってぇー!
きゅっと抱きしめられて、ソウの手が素肌に触れただけで体が震える。
やめてよ私の体! これくらいで反応しないで! 恥ずかしすぎる!!
「俺さ、ずっと桃音に会ってみたかったんだよね。想像通りちっちゃくて可愛くて……こんな反応されちゃうと、苛めたくなっちゃう」
お腹の奥ら辺からゾクゾクが駆け上がる。反射的に少し仰け反ってしまった。
「や……その……」
「いや?」
あごをつまんで横に向かせ、強制的に殺人級のスマイルを送り込んでくるソウ。
殺人級スマイルの中に、ちょっぴり寂しさを紛れ込ませるのも忘れない。
そんな表情、表裏歴この業界入ってからの私に見破れないワケないでしょ!
……ないんだけど、通じないかどうかはまた別の話。
悔しいけれど、演技だとわかっていても騙されちゃうのだ、この人に!
私は真っ赤な顔のまま、小さく首を振った。
「よかった」
ソウはふっと笑うと、ちゅっと触れるだけのキスをした。
今、絶対音した! 私の顔からぼんって音、絶対したよ!!
「ベッド、行く?」
私はぶんぶんと頭を振った。
ムリムリムリムリ!! 硬直する! 窒息する! 心臓止まる!!
「可愛いね桃音……」
「ひゃうっっ」
ソウの脚の間で、再び固まった私の耳をぺろりと舐められた。
ビクンと大きく反応した上に、奇声を発した私。
「桃音の体は敏感なんだね。ずっとピクピクしてる。可愛い」
もうヤだ、名前も可愛いもそんなに連呼しないで。なんでこの仕事引き受けちゃったんだろう。恥ずかしすぎて泣きたい。
今度は首筋をつうっと舐め上げられる。
「ぅァ…ンッ」
うっそ、こんなことまでするの? セックスってフリだけでしょ!?
カメラマンを見ると嬉々としてフラッシュを焚いている。
「そんなガチガチじゃ、良い画は撮れないよ。
だから桃音がリラックスしてちゃんと演技ができるまで、指導してあげる」
しどー!?
ガチガチなのは事実ですけど、指導って何ー!?
「はーい」
今日の撮影はファッション誌のセックス特集に合わせたもの。
ノウハウとかウンチクがくだいて書かれてる合間合間に、私のグラビアが入る。
なぜファッション誌に私なんかのグラビアかと言うと、『怖いもの見たさ』を狙ったものらしい。
セックスはもちろん、AVに興味はあるけど、実際見れない。
グラビアは男性誌ばかりだし、いかにもって感じ。
男性アイドルやモデルのグラビアは、当たり前だけど男性メイン。
女性の実状ってどうなのよってことで、白羽の矢がたったのが、テレビでは天然妹系で全くエロさを感じさせない私ってわけだ。
わざわざグラビアを見に行かなきゃ私のエロさは知れないもんね。まぁネット検索で水着写真が出るけど、過激なのは写真集とか雑誌の中だし。
気持ちいいことは恥ずかしくないんだよって事が言いたいらしい。
気持ちよさげな絡みを撮りたいのに、私を指名するあたり、企画の妥協を許さない本気さが伝わってくる。
もうひとつ私がこの変わったグラビアを受けた理由。
相手役のモデルのソウさんだ。
彼がデビューした当初からめちゃくちゃファンで、会ってみたいとずっと思っていた。
まさか仕事が一緒にできるなんて思っていなかったからすごく嬉しい。
しかも絡みなんて……濡れるだけで済むかな……溢れる前にタンポン取り替えなきゃ、タイミング気を付けないと。あー恥ずかしい。
シチュエーションは初めて自分の部屋に来る彼氏。
さっき私一人で撮影してたのは、彼氏を待つドキドキの彼女。
カメラマンの指示で、緊張した図を撮りたいからって顔合わせもしていないから、もぉ素でできちゃったもん、その表情。
にしても、この部屋はない。
用意されたセットはパステルカラーの雑貨が溢れ、カーテンからリネンからハート型クッションに至るまで、バリエーション豊かなピンクピンクピンク!
ピンクの色ってこんなにいっぱい種類があったのね、知らなかったわーって、あほかっペーパーか!
私の部屋はモノトーンだっつーの! ゴジラ級の特大猫だわ、これは……。
ベッドは白い華奢な格子のついたお姫様ベッドだし、極めつけが私。
くるっくるの巻き髪にてっかてかのピンクグロス、白地に小さなピンクハート水玉のベビードール風パジャマ。
さすがに透けてるタイプではなく、綿なのが余計に可愛らしいっつーかあざといっ。パフ袖、ドロワーズ型ズボンの裾、デコルテ全開の首回りは生地をくしゅくしゅのギャザーにしてあって超ガーリー。
パジャマで七分丈とか落ち着かないんですけど? 寝るときはすっぽんぽん派ですが何か!?
どんだけブればいいんですか。それとも彼氏を待つ女の子ってみんなこうなの? 私が冷めすぎなの?
女性誌なんだからこれが正解なんだろうけど……。
恥ずかしすぎる。たぶん裸の方が私にとってはマシだわ。むしろドンと来い。
うん、さすがにやらないけどね。
「ソウさん入りまーす」
「おはようございまーす、お願いします」
まっすぐこちらに向かってくるソウさん。
慌ててセットから降りて頭を下げる。
「はっ初めまして! 西原桃音ですっお願いしましゅ!」
うわっ噛んだ! 憧れだったソウさんへの第一声で噛むって! ありえない、恥ずかしいー!!
「よろしく桃音ちゃん。今日は彼氏彼女なんだから、そんな緊張しないで。ね?」
私のあごに手をかけ、うつ向いていた私の顔を上げさせると、ちゅっと音をたてて額に口付けた。
真っ赤になって目を見開くと、普段は鋭い切れ長の瞳が柔らかく私を見ている。
思わず見惚れてしまった。
「おいおいーセットの中でやってくんねーと、写真撮れても意味ねーぞー」
スタッフにひやかされて、慌てて離れようとすると、ぐいっと腕を引かれてソウさんの胸に押し付けられた。
「エッチの時の緊張を解くのも、彼氏の役目ですからー」
スタジオで笑いが起こる。
凄い。遅入りなのにあっという間に場に馴染んでる。
私が呆然としていると、ソウさんは私を抱きしめたままで見下ろす。
「少しはほぐれたかな?」
「あっ、ありがとうございます。大丈夫ですソウさん」
「言ったでしょ? 彼氏彼女なんだからソウ、でいいよ。桃音」
「あ、ハイ。……ソウ」
「なあに? 桃音」
世界作ってンじゃねーぞー! 手が早すぎだろソウー! なんてヤジが飛び、私は今度こそ離れてセットに飛び乗った。
何あれ何あれ?! 性格も想像通りめちゃくちゃカッコ良くない!?
一見ワイルドで鋭い眼差しが近寄りがたいけど、優しくて気を使ってくれて……冗談抜きで心臓バクバク、全身熱いんですけど!
思わずクッションを抱きしめて顔を埋めた。
「!!!」
後ろからすっとまわされた腕。三角座りした私をそっと包み込む。
「全身真っ赤。可愛い桃音」
くっついたソウの体がくすくすっと揺れる。
「う……あの……」
「ん? なに、桃音?」
クッションを取り上げられて、ソウの腕と脚に収まっている私。
そんな耳元で囁かないで……! ぎゅうっと瞳を閉じた。
遠くでカメラマンが、いいよーいいよー自由に動いてー、とか言ってる。他人事だと思ってぇー!
きゅっと抱きしめられて、ソウの手が素肌に触れただけで体が震える。
やめてよ私の体! これくらいで反応しないで! 恥ずかしすぎる!!
「俺さ、ずっと桃音に会ってみたかったんだよね。想像通りちっちゃくて可愛くて……こんな反応されちゃうと、苛めたくなっちゃう」
お腹の奥ら辺からゾクゾクが駆け上がる。反射的に少し仰け反ってしまった。
「や……その……」
「いや?」
あごをつまんで横に向かせ、強制的に殺人級のスマイルを送り込んでくるソウ。
殺人級スマイルの中に、ちょっぴり寂しさを紛れ込ませるのも忘れない。
そんな表情、表裏歴この業界入ってからの私に見破れないワケないでしょ!
……ないんだけど、通じないかどうかはまた別の話。
悔しいけれど、演技だとわかっていても騙されちゃうのだ、この人に!
私は真っ赤な顔のまま、小さく首を振った。
「よかった」
ソウはふっと笑うと、ちゅっと触れるだけのキスをした。
今、絶対音した! 私の顔からぼんって音、絶対したよ!!
「ベッド、行く?」
私はぶんぶんと頭を振った。
ムリムリムリムリ!! 硬直する! 窒息する! 心臓止まる!!
「可愛いね桃音……」
「ひゃうっっ」
ソウの脚の間で、再び固まった私の耳をぺろりと舐められた。
ビクンと大きく反応した上に、奇声を発した私。
「桃音の体は敏感なんだね。ずっとピクピクしてる。可愛い」
もうヤだ、名前も可愛いもそんなに連呼しないで。なんでこの仕事引き受けちゃったんだろう。恥ずかしすぎて泣きたい。
今度は首筋をつうっと舐め上げられる。
「ぅァ…ンッ」
うっそ、こんなことまでするの? セックスってフリだけでしょ!?
カメラマンを見ると嬉々としてフラッシュを焚いている。
「そんなガチガチじゃ、良い画は撮れないよ。
だから桃音がリラックスしてちゃんと演技ができるまで、指導してあげる」
しどー!?
ガチガチなのは事実ですけど、指導って何ー!?
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる