ASMR!~精神安定剤が触診してくるっ!

keino

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5 私の安眠導入剤が

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 いぃぃぃやぁぁぁぁ~~~!!

 ベッドの上で枕を抱えてジタバタする。
 やばいやばいやばい~~~ッ!
 なんだあれなんだあれなんだあれ!
 あの声はやばいって!

 歌い出し前の一瞬の息継ぎだけで身もだえできるのに、会話とかないって!
 どうしよう動悸が止まらない。おなかがうずいてきゅんきゅんする。
 いやいや、きゅんきゅんするのは普通胸でしょう、まさかこれが恋!?きゅん☆とかでしょう!
 大丈夫か私。これが恋人いない歴=年齢の弊害なのか!

 スマホを取り麗しき友人をタップする。

『若葉どした? バイトの日じゃなかった?』

「バイトは休み取った! 婦人科のあとでバイトなんていけないよ。
 そんなことよりやばいのやばいの春希やばいの!」

『私はやばくない』

「ダスグリのdaiがぁー!」

『結婚でもした?』

「その方が良かったー!」

 あーでもでも、あの声で奥さんに愛を囁くのが確定するのか! そう考えるとたしかにつらみがひどい。
 でも今日よりマシじゃない? だってだって婦人科医でうわああああっっっ。
 枕をボスボス叩く。

『……それよりやばいってなに』

「いたの!」

『は?』

「いたんだよ! リアルに! ガチで! この現世に!」

『へぇ~。若葉が言うなら当確? と言うか現世ってあんた』

 え、軽。リアクションそんだけ!?
 と言うか当確なわけはないわ。ものすごい声そっくりさんでしょ。
 友達にも、芸能人にものすごい顔そっくりな子いるし。間違えられて握手とかもとめられちゃうレベルの。
 声そっくりさんの方がハードル低いでしょ。

 バイトがら芸能人を見る機会が多いけど、プライベートでの芸能人って、意外とテレビとイメージや雰囲気が違う。
 案外、服のチョイスをガラッと変えて堂々としていたほうが、わぁ良く似てる人いるなぁくらいで押し切れそうだ。

 あ。あれはわざととか変装おしのびとかそういう話?
 雰囲気変えててもまんまな人はいるし、オーラは出てる人もいるけど、あの違いはなんなんだろう。美しさやスタイルとはあんまり関係ないんだよね。
 ってそんなの今はどうでも良くて。

「いやいやまさか! そんなんありえないっしょ! ただのそっくりさんでしょ!」

『なんでそんなに悶えてんの。ナンパでもされた?』

「うあー!!! それならついてっちゃったかも!!」

『ついていくのね、顔もそれなりか』

 でも違うんだ! そうじゃないんだ!

「婦人科医だった……」

『ぶっは! どんまい!』

 あ。通話切られた。
 これはツボられたな。
 しばやく待てばスマホが鳴る。

『ごめんごめん。で、生理痛大丈夫だった?』

「うん、問題なかった。やっぱ体質っぽい」

『ありゃあ、予想通り遺伝かぁ、お疲れ。とにかく何もなくて良かったね』

「そだね、ありがと」

『じゃあこれからも痛み止めで頑張るの?』

「ピル試すことにした……」

『そっかそっか。じゃあまたその医者に会うのか』

 春希の言葉に草が生い茂っているのが見える。笑い事じゃないよもー。

「残念、次回こそ女医指名で行きます~」

『なぁ~んだ、そっかぁ』

「なんだとは何よ」

『だって若葉の声フェチっぷりからしたら、おもしろい話聞けそうじゃん。
 その先生はどんな感じだったの? イケメン? いくつくらい? あ~私もそのイケボ生で聞いてみた~い』

「瑛駅の備伊通り添いのクローバークリニックだよ、行ってらっしゃい。
 あ。臨時って言ってたからいつもはいないのかもね」

『ふぅ~ん、あ、出た。これだね、クローバークリニック四ッ橋旺佑。
 検索結果に都立病院にも消化器科で名前出てるよ。臨時とか言ってたっけ? 婦人科はバイトかな?
 あ~、クローバークリニックの親族か。院長と苗字一緒だわ』

 電話しながら検索したっぽい。

『う~ん、残念、四ッ橋旺佑先生は写真出てないねぇ。本人希望で出してないのか、若手っぽいから出てないのか。
 いくつくらいなの?』

「眼鏡にマスクしてたしわからないよ。30はいってないと思うけど、どうだろ」

『じゃあまだ臨床研修中だからとか? 医者はもてるからねぇ、頑張って!』

「いや、狙ってないし!」

 医学部生しか入れない部活のマネージャー争奪戦とか合コンとか、話に聞いただけでもやばい。語録がやばいしか出ないほどやばい。
 噂でしか聞いてないから盛られてるのかもしれないけどーと思わなきゃ、小心者の私じゃ聞いていられないほどやばい。

『そうなの?』

「そうなの! 声だけで惚れるとかないでしょ!」

『いや、惚れてたじゃん』

「ライクの意訳だから」

『せっかく面白そうなのに。何とかならないの? 声は理想じゃん?』

「医者と患者でしかないのにどうにかなるわけないでしょ。どうにかする気もないし」

『病院で声かけるわけにもいかないしねぇ。出待ちなんてドン引き必至だし』

 春希は私に何をさせたいんだ。

『若葉にもとうとう春が来るかな? と思って~』

「ないから! とにかくもう会うことないんだから! 初めて行った婦人科の先生がdaiの声そっくりだっただけでー、うわぁ~……」

『うん、それは本当にどんまい』

「うん、聞いてくれてありがと」


 今日は大好きなダスグリを聞きながら眠る気にはなれなかった。
 私の安眠導入剤ぃ~。

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