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6 パンはくわえていない
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「先生ぇっ、……っ」
『リラックスして。大丈夫。痛くない』
先生がゆっくりと囁きながら私の中をさぐる。
「やぁ……あっ、いた、いぃ……っ」
『仕方ないですね。これでは診れません。
じゃあ、これならどうです?』
先生が、なかばのしかかるように覆いかぶさってきて、耳元に顔を寄せた。
反対側の耳穴に指を入れられ、たまにくすぐるように動く。
『ね? 大丈夫です。痛くない、痛くない。触診中はずっとこうやって囁いていてあげますから、しっかり中を診せてくださいね』
「んやぁっ、せんせ、そこで、しゃべらないでぇ、っ」
耳に意識が持っていかれる。
ナカの指が、抽送をだんだんと大きく深くする。
『そう、じょうずです。体を楽にして、素直にしていて……』
「んああっ、あうっ、んんっ、あんっ」
耳に触れる位置でささやき続けられ、体が勝手にビクビク震える。
言葉というか、甘い電流を流され続けているみたいだ。
下の痛みなんか感じられなくなってて、やめてほしいのにやめてほしくない。頭が混乱して涙が止まらない。
「ひあっっっ」
耳元に流れた涙を先生がぺろりと舐めて吸った。
ビクンッと体がしなって、体がガクガクとし始める。
『これはいけませんね。すぐに楽にしてあげますから』
「ふっ、んんんんっ、んああああっっ」
耳を舐められ、甘噛みされてはまた舐められる。
『ほら。イっていいんですよ? イきなさい』
何をされているかもうわからない。ただひたすらにうずうずとしたものが、おなかの奥へ奥へとたまっていく。
『イきなさい。――イけ、若葉』
「~~~~ッッッ」
ガクンガクンッと背が大きく波打ち、白い闇へと私は放り込まれた。
________ ___ __ _
遅刻する!
最近あの声のせいと言うか夢のせいと言うかで、ちゃんと熟睡できていない。それが祟ったらしい。
あの病院に行った日から、夢見が悪い気がする。
ことあるごとにあの声の持ち主が夢に現れるようになってしまった。
それだけならまだ嬉し恥ずかし程度で済んだかもしれないけど、ところどころにイタダケナイモノが挟み込まれるようになったことで……もう駄目だった。
なんなのあの夢、本当ヒドイ。
変に意識されちゃっておかしくなってる。
寝る時や通学中はもちろん、勉強中や入浴中だって聞いてた、安眠導入剤兼精神安定剤のダスグリが聴けなくなって本当につらい。
ストレス解消法の8割以上が失われた。どうしてくれよう。
頭に勝手に曲が流れてくることもあるんだけど、同時にあの夢までフラッシュバックしてきて、本ッ当につらい。急に赤くなったり青くなったり、頭抱えたり首振ったり……傍から見たら完全におかしい人だ。
まだ叫びだしてないだけマシだけど、睡眠不足も祟ってそろそろマズイ気がする。
そんなこんなでここのところ、ほぼ毎日明け方に目が覚めてしまうものだから、今日はついにうっかり寝過ごした。
いつもならお昼まで寝ていようが全く問題ないんだけど、今日だけは駄目なんだよ、急遽シフト変更を言われ、午前にと頼まれたんだよぅっ。
なんて運がないの――って、原因はわかってる寝不足なので、いつかはこうなる可能性は常にあったけどもさ。
走りつつ今何時かとスマホを取り出すために、前をチラ見しながらバッグをあさっていたら、道を曲がって通りに出てきた人にぶつかりそうになり、無理やり方向転換しつつブレーキをかける。
ぶつかりはしなかったものの、ヒールに足を取られて転びそうになる。
その人はとっさに腕を伸ばし、私の腰を支えてくれた。
が。
ビーーーッ。
「「えっ」」
その人が私から腕を離そうとした時、嫌な音がした。
見ればその人の手首と、私のオーバースカートのレースが繋がっている。引っかかってレースが裂ける音だったらしい。
「すみません!」
その人はすぐにしゃがんで、絡んでしまった腕時計とレーススカートを外しにかかっている。
「申し訳ない。弁償させてください」
「い、いえ、私の不注意ですからっ、気にしないで下さい!」
レースのオーバースカートは見事に裂けてしまったけれど、所詮オーバースカートだし。
と言うかこの声……。
「四ッ橋、先生……?」
ハッとその男の人が顔を上げる。私もハッとして口を押さえた。
先生は今日は眼鏡をかけておらず、マスクだけだ。帽子をかぶっているからこの体勢だと見えにくいけど、病院の時より顔が見えている。
「……本原さん?」
うええっ、私を覚えてるの? 毎日大量の患者を診ているんでしょうに。
ぶわぶわと顔が熱くなる。
うわわわ、下から見られて、真っ赤なのがばれちゃう。やめて、見ないで。
「ええっとあの、本当に先生は悪くないんです。だから、大丈夫ですから」
顔を横にそらしながらそう言う。
先生はまたスカートと腕時計と格闘を始め、とりあえず自分の腕から時計を外したようだ。
「いいえ、そういう訳にはいきません。これだけあれば足りますか? お急ぎだったのでしょう? 時計は後日返してくれればいいですから」
「えっ!!?」
「しかしそれではいけませんよね。送っていきましょう。うちはそこですから、駐車場まで我慢してください」
私の手に数枚の万札と、スカートに引っかかったままの腕時計を握らせる。なんなんだこの人!!
「こ! 困ります! こんなのプチプラだし、現金なんて本当に困りますから! 送ってもらわなくてもいいですし!」
「しかし――も、本原さん!?」
私はペンケースからハサミを取り出し、ジャキッと腕時計が引っかかっている周辺のレースを切り取った。どうせもう裂けてて着れないんだから、思い切りやっちゃって問題ない。
レース付きで申し訳ないけど、そんな高そうな腕時計をもし傷つけたらと思うと怖いから、そのレースは自分で時計から外してください。すみません。
お金とレース付き腕時計を先生の手に押し付ける。
「じゃあ私、急いでいるので!」
じゃ!っとかっこよく手を上げたものの、ハサミを仕舞う直前にスカートが大惨事なことを思い出し、ゴムになっているウエスト部分をジャキンッと切断した。
まぁ実際はペン型ハサミちっちゃいから、ジャキンッほどかっこよくなく、チマチマバツンッって感じだったけど。ヒール履いたまま往来でもたもた脱ぐよりよっぽど恥ずかしくないです。
じゃあ本当にこれでと、ポカンと止まっている先生に会釈して、レーススカートを手早く丸めながら走り出した。
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