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25 ヤル気を出す
しおりを挟む今さら四ッ橋先生があやしいとか言われても困る。前に言われてても困るけどさ。
「あやしいってどういう意味? ううん、そんなことどうでもいいよ、もう関係ないんだし」
四ッ橋先生と最後に会ってから、すでに二月以上が経っている。やっとまともにダスグリも聴けるようになった。それでいいじゃないか。
また精神安定剤が効かなくなったらどうしてくれよう。
先日3ヶ月後の健診があって、院長先生予約でクローバークリニックにも行ってきた。
正直かなり痛かった。吐きそうなくらい痛かった。看護師さんの言い方はオブラート過剰だって知った。
でも恥ずかしくないだけマシだった。
生理痛に比べたら、あんな短時間チョロいっすわ。神に祈る暇もなかったっすわ。
……ごめんなさいウソです。吐き気をこらえながら超祈りました。
とにかくもう、四ッ橋先生のことはふれないでほしい、藪は突かないでほしいのです。せっかく押し込んだ箱が開いたら困る。
「本当に、ダスグリのdaiなんじゃないかってこと」
「へ?! いやいやいやないよ! そんな偶然あると思う!? って言うかそんなの関係ないんだってば。あの声の持ち主とは会話もできないんだって! 前にも言ったじゃん」
「うん……、それはわかってるんだけど」
「オッケーわかった! 春希は私のことを心配してくれてるんでしょう? ありがとう、それはとっても嬉しい。
――だから私、医者コン頑張ってみる」
私はぐっとこぶしを握り、決意を固める。
「えっ!?」
「今まで何となく、面倒くさいな、合わないなって彼氏作らずきたけど、良さそうな人がいたら、好きになれるよう頑張ってみる! 男性と付き合う努力をしてみるよ!」
うんうん、そうよ。食わず嫌いはいけないよね。私の恋愛下手の原因は、結局ビビりだからだ。怖がってばかりじゃ成長しないもんね。
「えっ、ちょ、若葉? 待って、好きになるってそういう感じじゃなくない?」
珍しく春希がおろおろしているが、今こそ勢いに乗るべきときだと思うの!
「私、男見る目の自信ないから! 見極めよろしくね、春希!」
自信がないことに自信があるのもおかしいけど、自己分析ができているということで、ここはひとつ治めておいて。
もちろん候補は自分で選んでから、春希に訊くようにするよ。一から煩わせちゃさすがに悪いもんね。
「え、若葉? ちょっと落ち着こう?」
「大丈夫! だって医者コンでしょ? 誰選んだって安心なはず。あとは相性だけ!」
そうだよ、ちゃんと好きな人ができれば、こんなモヤモヤしなくたって済むはずだ。
一度意志が定まれば、こんな素晴らしい舞台はない。
ロマンティックな演出が約束されたセレブリティーな会場とドレス、身元が保証されている紳士たちに、男性を見る目が確かな親友。
春希のセリフじゃないけど、これで勝てるっ! 初恋なんてこわくない。失敗だって上等だ、それもまた私の糧となるのだ!
そうだ、合図決めなきゃ、合図。
春希から見てダメンズのときは、私の裾を引っ張ってもらおう。そしたら話しを切り上げればいいもんね。
この人どうかなって訊きたいときは、私から春希の裾を引っ張ればいいかな。
あ、春希と別行動のときもあるのかな。
合コンのときみたいに、揃ってトイレ抜けして相談とかできる雰囲気なのだろうか。
パーティーの流れとかが知りたい。街コンにもいろいろなタイプがあるらしいし。
まさかどっちかが椅子に座って――この場合なら、今回は間違いなく男性が座りっぱなしなんだろうけど――数分で隣へ隣へと移っていく回転ずし方式じゃないだろうし。
街コン行ったことないから、私の知識だとこれが精いっぱいなんだよね。
街コンのスタンダードってなんだろう?
今回一般的なものとは一線を画すらしいけど、席が決まってて会食のみはないよね。同じ席の人としかしゃべれないんじゃ、女性陣からクレームきそう。
かと言って席替えとか、そんな俗っぽいことしなさそう。ただの立食パーティーみたいのかな。
それでも一応セレブリティーを謳っているんだから、完全放置じゃなくてきっとなにかしらやるよね?
スマートに男女が仲良くなれそうなイベントってなんなのか、私には想像がつかない。
例えば普通の合コンなら、山手線ゲームとかで罰ゲームありにして打ち解け余裕だけど。
セレブがそんなゲーム――と言うか、プライベートならわかるんだけど、このセレブリティー婚活で主催側からやられたら興ざめです。
って言うか、そもそも何対何?
紹介状に書いてある会場は、都内屈指の高級ホテルのホールになっている。そこがどれくらいの箱なのか知らないけど、ホテルのホールなんて最低でも数十対数十くらいの規模になるんじゃないのかな。
ううう、緊張してきたかも……いいえ! これは緊張の震えではなく、武者震いよっ。
私は春希の手を握り締める。
「頑張って良い男ゲットしようね! 春希!」
「ちょっと若葉さん!? あんた飲んでるの!?」
「やだなぁ、春希が卒論頑張ってる横で飲んでるわけないじゃん。
よっしゃあっ! 医者コン頑張るぞーっ!」
私はこぶしを天に突き上げた。
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