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26 ついに来た
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「どうして?」
私のすべてを痺れさせる、低めバリトンイケボが降ってくる。
どうして?
どうして四ッ橋先生がそんなこと言うの? 私の方が訊きたいのに。
先生の顔が、すぐ目の前にある。鼻の先が触れそうな近さだ。
解放してほしいのに、言葉も出なければ、指一つ動かせない。
「こんなに想っているのに、どうして僕じゃ駄目なんですか」
そんなの嘘。だって先生は、気になるとしか言ってなかったじゃない。
言い返してやりたいのに、真剣な眸に射抜かれて、呼吸ひとつまともにできなくなって苦しくなる。
「……あなたは好きでもない男の腕の中にいるのに、そんな顔するんですか?」
精悍な顔を歪めて、そう先生は言った。
「ずるいです。そうやって僕を翻弄して……あなたはずるい人だ」
「んっ……んんっ」
唇をふさがれ熱い舌が入ってくる。
元より荒い呼吸をついていた私には、為すすべなく侵入を許す。
至るところを探られ、勝手に体がビクビクする。
勝手に吐息がもれて、更に先生が口づけを深くする。
「僕だけを見て、僕だけを感じてください。
お願いします、僕だけを聴いていて――」
________ ___ __ _
ばちーっと暗闇の中、目を見開く。
いやーーーっ! そのイケボでエロボは反則なんだって!
ギルティギルティギルティーッ!
ヤバイ、久しぶりに見た。
って言うか、キスーーーッ!!
もうだめ死ぬ。ってか死んだ。死んだよ今、間違いない。もうだめだ、私は悶え死んだに決まってる。生まれ変わるなら壁になりたい。これからは六文銭を身につけていなければ!
うぐーっと毛布を力いっぱい抱きしめて耐える。
筋肉がぎちぎち言いそうなくらいだけど、そんなこと構っていられない。
少し落ち着いた次は、毛布を抱えたままベッド上をごろごろ転がる。
も、むりぃ!! うひぃぃぃぃぃっっ!!
……今日がついに来たクリスマスイブだからか。それとも春希が、四ッ橋先生イコールdai説をぶち上げたからか。あ”ーーー……。
心臓がまだバックンバックンしている。今何時だ。
なんで今更こんな夢を見させるの。
別に負い目なんて感じてない。後悔なんてしてない。
あぁだめだ。先生の声が耳にこびりついて放れない――。
防水イヤホンをつけ、冷たいシャワーを頭から浴びる。
真冬がなんだ。火照った体に冷水がちょうどいい。
イヤホンからは、あの日、真嶋さんにかけてもらったのと同じ、洋楽ロックがガンガンに流されている。
やっぱり行きたくないよぉー。まったくとんだビビリだよ。四ッ橋先生なんてもう関係ないんだから。行ったら行ったで絶対楽しいんだから迷うな、行け、行けばわかるさー!
よし!
……とりあえず寒いからお湯浴びよう。
午後3時すぎ、春希と駅で待ち合わせしてSalon de le Phareに行く。
そうして二人して綺麗に仕上げてもらった。
まさに、”これが私?”状態だ。私も春希も、化粧映えする系統の顔ではないはずなのに別人みたい。プロってすごいわ……。
春希は総レース地で、ホルターネックタイプのフレアワンピース。デコルテからは下地がないので肌が透けている。
きつめ美人系には大人っぽくなりがちなデザインのドレスだけど、色が淡いラベンダーと白ボレロで、ものすごくいいとこのお嬢さまにしか見えない。髪もメイクも柔らかく仕上げてあって、本当にすごい。
私はブスとは言わないけど、可愛い系でも美人系でもないありがち系なので、婚カツ服で検索したら出てくる典型的な、ハイウエスト切り替えで上が白、スカートが深いロイヤルブルーのフレアワンピースとボレロである。
色が濃い分大人っぽく見せすぎないためになのか、春希のワンピースドレスより、フレアの広がりが若干大きい。
二人ともきちんと膝丈で、華奢なヒールを履き、パーティーバッグを持った。
「本当に素晴らしいです! 写真撮らせてもらってもいいですか? コーディネートイメージの参考に、店内カタログに入れたいのですが」
「出来上がったお写真はご自宅に郵送させていただきますね」
ものすごくお世話になったし、店内で見るだけならいいか……と言うことでOKした。こんなに綺麗に仕上げてもらって、私たちは浮かれてた。
お姉さま方の口がうまいのなんのって、私たちがこの聖夜の夜に一番輝いてるだの、どうかここのモデルになつてくれだの、同性に、しかも気品溢れる美しいお姉さま方に手放しで褒められて、嬉しくないわけがない。
会場のホテルまでのタクシーを頼んだらハイヤーが呼ばれてしまい、しかもハイヤー代もVIPチケットの優待の中に含まれるのでいいと言う。
ここまでくると、嬉しいを通り越して、梶さん何者と言う恐怖の方が先立つが、せっかくの聖夜でお店のご厚意なのでありがたく受け取った。
ホテルに着き会場階に降り立てば、女性スタッフに促されてコートを預け、受付を済ませた。
このときに、事前に作らされていた名刺サイズのプロフィールカードを受け取る。
「うわぁ、これはちょっと恥ずかしいね」
「写真要らないよね。若葉はなに書いた?」
「必須項目以外書いてないよ。……だめだったかな?」
「……私もだよ」
名刺を見せ合う。お互い似たようなシンプルさだった。
もうちょっと項目の表示チェック入れておけば良かったかも。これじゃあんまり自己アピールになってない気がする。これぞ必要最低限だわ。
私はこれでも良いけど、この医者コンに熱意を燃やしてた春希までそれじゃ、ダメなんじゃないのかなぁ?
それともこれは、春希の策略のうちなのかな。
とすると、私も魔性の女作戦ができてるってこと? やったあ?
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