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第4話 夜明け前の選択
しおりを挟む夜の王宮は、昼間とはまるで別の顔をしていた。
宴も会議も終わり、人の声が消えた廊下には、靴音の反響さえほとんどない。
代わりに聞こえるのは、魔術灯のかすかな唸りと、時々どこかで軋む木の音。
それでも、どこかで必ず誰かが見ているような気配だけは、消えない。
「――いいですか、お嬢様。確認しますよ?」
小さなランプの光に照らされながら、ミーナがひそひそ声で言う。
王宮の客間、そのさらに奥にある小さな応接間。
使用人用の通路に直結している、ほとんど誰も使わない部屋だ。
「まず、この部屋を出て右。
突き当たりの扉は使っちゃダメです。あそこは夜番の詰め所につながってるんで」
「右、突き当たりはダメ……」
「ええ。代わりに、その手前にある目立たない扉。ふつうは閉まってるから、あまり気づかれません」
「使用人用の通路、って言ってたところね」
「そうです。そこをまっすぐ進んで、階段を二つ下りてください。
途中で分かれ道がありますけど、“左には行かないこと”。左は厨房の裏で、夜でも人がいます」
「右、ね」
「はい。右に行けば、洗濯場の脇の小さな出口に出ます。
そこから庭に出て、植え込み沿いを歩いてください。魔術灯に近づかないように」
ミーナは、手振りを交えながら、まるで宝探しのルート説明みたいに細かく話していく。
けれど、その内容は、宝探しどころか、王宮脱出ルートそのものだった。
「庭に出たら、噴水を背中にして真っ直ぐ。
途中にある小さな門は、昼間は開いてますけど、夜は施錠されてるのでスルーで。
もっと奥に、古い物置小屋があるのは覚えてます?」
「ええ。舞踏会の準備のとき、装飾品を置いていた……」
「そう、それです。その裏側に、“古い裏門”があります。
今はほとんど使われてないので、警備も薄い。
鍵は……」
ミーナは懐から、小さな鉄の鍵を取り出した。
あまり手入れされていないのか、ところどころ錆びが浮かんでいる。
「これ。前に、倉庫の整理をしたときに、こっそり拝借しておきました」
「それ、前から持ってたの?」
「まあ、“いつか役に立つ気がするな~”って」
「ミーナ、もしかしてずっと前から、私が逃げ出すかもしれないって思ってた?」
「正直に言うと、はい」
即答だった。
「お嬢様、いつも“ここで息ができない”みたいな顔してましたからね。
王宮の空気が、合わない人だな~って、初対面のときから思ってました」
「初対面から……」
なんだか笑えてしまって、リリアは小さく息をついた。
「……今さらだけど、本当に、いいの?」
「何がです?」
「こんなこと、バレたら、ミーナだってただじゃ済まない。
下手したら、実家にも迷惑がかかるかもしれないわ」
「そうですね~」
ミーナはあっさり頷いた。
「でも、いいです」
「よくないでしょ」
「いいんです。私は“お嬢様に一生つき合う”って決めて侍女になったんで。
王宮単位のトラブルで終わるなら、むしろ安いもんですよ」
「単位がでかいのよ」
「それに」
ミーナは、少しだけ真剣な顔になった。
「お嬢様が、ここで心をすり減らしていくのを見続けるほうが……よっぽど、耐えられません」
その一言が、胸に刺さる。
「……ミーナ」
「行くか行かないかは、お嬢様が決めてください。
私は道案内と荷物持ちをして、最悪一緒に怒られるだけですから」
「怒られるレベルで済めばいいけど」
「戻ってくる前提で話してないでください。逃げ切り前提で行きますよ」
さらっと言われて、リリアは言葉を失った。
逃げ切り前提。
その言葉は、現実味があるようでいて、どこか夢みたいに遠い。
(本当に、逃げる……?)
その選択肢を、ここまで具体的に突きつけられたのは、初めてだった。
◇
部屋の隅のテーブルには、小さな包みがいくつか置かれている。
「これが、干し肉とチーズ。こっちが乾いたパン。こっちが水袋。
あとは最低限の着替え、マント、靴の替え……」
「こんなに用意してたの?」
「昨日から徹夜で。眠気と戦いながら縫い物してた私を褒めてほしいですね」
「本当に……ありがとう」
本音だった。
ありがとう、と言いながら、罪悪感の塊が喉元までせり上がってくる。
(本当に行ったら、もう王宮には戻れない。
公爵家にも顔向けできない。
“王太子の婚約者の立場を投げ捨てて逃げた娘”として、ずっと語られる)
あの日、レオンハルトに言われた言葉が頭をよぎる。
『今後の調査次第では――
君と僕の婚約について、見直さざるを得なくなるかもしれない』
あれは、事実上の“切り捨て予告”だ。
自分から逃げるにせよ、残ったところで、結末はそんなに変わらないのかもしれない。
違うのは、“自分で選ぶかどうか”だけ。
「……まだ、怖いですか?」
ミーナが問いかける。
「怖い、というか……」
リリアは自分の胸に手を当てた。
「なんか、悪いことをしようとしている感じがして。
逃げたら、“裏切り者”って言われるんだろうなって考えると……怖い」
「裏切り……」
ミーナは、ふうっと息を吐いた。
「じゃあ質問です。お嬢様」
「なに?」
「この王宮は、お嬢様を守ってくれましたか?」
ずばりと刺さる問いだった。
リリアは、思わず黙り込む。
青白い閃光。
冤罪。
“言い訳は見苦しい”と切り捨てた宰相。
“君を守りたいが、国が”と言った王太子。
「……守って、はくれなかったわね」
「ですよね。じゃあ、どこに裏切る要素があるんです?」
ミーナは肩をすくめる。
「“最初から守る気のなかった場所”から離れることを、裏切りとは言いません。
それを裏切りって呼ぶのは、大体いつも、“一方的に得してた側”です」
「……ミーナ、時々すごく刺々しいわ」
「今日は許してください。私、今だいぶキレてるんで」
ふっと笑って、ミーナはマントを持ち上げる。
「着てみてください」
「……分かったわ」
リリアは立ち上がり、ミーナにマントを羽織らせてもらう。
深いグレーの、厚手の布。
これなら、ドレスのラインもだいぶ紛れる。
フードを深くかぶれば、顔も半分以上隠れるだろう。
「似合ってます」
「褒め言葉なのかしら、これ」
「“逃亡者としての似合い方”は最高です」
「褒めてるようで褒めてないわよね?」
「褒めてますって」
くだらないやり取りで、少しだけ緊張が解ける。
でも、時計の針は容赦なく進んでいた。
ミーナが窓の外を確認する。
「……そろそろ、夜番の交代です。
この“交代の隙間”が、警備が一番薄くなる時間。行くなら、今です」
“行くなら、今”。
その言葉が、心の中で重く響いた。
◇
部屋の扉にそっと手をかける。
蝶番が軋まないよう、音を殺すように少しずつ開ける。
廊下には、誰の気配もない。
ミーナが先に一歩出て、左右を確認した。
「……今のところ、大丈夫です」
囁き声に頷き、リリアも廊下へ出る。
夜でも、魔術灯は完全には消えない。
薄い光が、壁に埋め込まれた魔光石からにじみ出て、廊下を淡く照らしていた。
赤い絨毯は、昼間と同じように敷かれている。
けれど、昼間は気づかなかった細かな汚れや、擦り切れた縁が、今は妙に目についた。
(この廊下、何度歩いたんだろう)
パーティに向かうとき。
レオンハルトに呼ばれたとき。
礼儀作法の先生に連れられて、練習に向かったとき。
その一つ一つが頭の中に浮かぶ。
「こっちです、お嬢様」
ミーナが右に曲がる。
突き当たりの、普通なら見過ごしそうな地味な扉の前で足を止めた。
ミーナがノブに手をかけ、ゆっくり回す。
金属が擦れる小さな音が、やけに大きく聞こえた。
扉の向こうは、石造りの階段だった。
使用人用の通路。
天井は低く、壁の装飾もほとんどない。
魔術灯も最低限しかなく、さっきまでいた廊下とは別世界みたいだ。
リリアは、足元を確かめながら、一段ずつ降りていく。
石の階段が、足音を鈍く返してきた。
(初めて王宮に来た日のこと、覚えてる)
ふいに、記憶が開く。
あの日も、似たような階段を上った。
緊張で汗ばむ手を、母にぎゅっと握られて。
『リリア。ここが、あなたの新しい世界よ』
母の声は、誇らしげで、少し震えていた。
リリアは、その言葉を信じた。
ここが、自分の未来が開く場所なんだと、本気で思った。
(あのときの私は、馬鹿だったのかな)
そんな風に自分を笑おうとして、うまく笑えない。
二つ目の階段を降りきったところで、通路が左右に分かれていた。
「左に行ったらダメ、だったわね」
「そうです。左は人の気配がします。右へ」
ミーナが先に立って、静かに進む。
右の通路は、さらに照明が少なかった。
壁際に、小さなランプがぽつぽつとあるだけで、少し先はすぐ闇に溶けていく。
その闇の中を歩きながら、別の記憶が蘇る。
(婚約が決まった日のこと)
豪華な客間。
招かれた貴族たち。
祝福の言葉、拍手、視線。
レオンハルトが目の前で微笑んで、手を差し出してくれた。
『これから、よろしく頼むよ、リリア』
あのときの彼は、今より少し幼くて、笑顔もぎこちなかった。
でも、それが逆に、“本心”みたいに見えた。
胸が、あたたかくなった。
怖さもあったけれど、“この人の隣で頑張りたい”って、心の底から思った。
(……思ってた、はずなんだけどな)
今、その記憶を思い出しても、胸に広がるのはあたたかさではなく、薄い虚しさだけだった。
期待も、不安も、全部まとめて、粉々にされたあとの残骸みたいな感覚。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
ミーナが立ち止まり、振り返る。
「顔、ちょっと真っ白ですよ」
「……ごめん。いろいろ、思い出してただけ」
「ここを出たら、それ全部、“過去の話”にしてやりましょう」
「軽く言うわね」
「軽く言わないと、足がすくむので」
ミーナはそう言って、また歩き出した。
◇
やがて、通路の先に、ぼんやりと広がる光が見えてきた。
「ここが、洗濯場の脇です」
扉を少しだけ開けると、外の冷たい空気が流れ込んできた。
石畳の中庭。
昼間は使用人たちが洗濯物を運び回る場所も、今はしんと静まり返っている。
空はまだ真っ暗で、東のほうがほんの少しだけ薄くなっている程度。
夜明けには、もう少しかかりそうだった。
「……寒い」
マントの襟をぎゅっと掴む。
夜の冷たさが、肌に突き刺さるようだった。
「こっちです。魔術灯の真下には行かないでください。影に沿って」
ミーナの指示に従いながら、壁際に沿って進む。
植え込みの影が、心強い味方に見えた。
逆に、魔術灯の下は、地面までくっきり明るく照らされていて、そこに足を踏み入れるのが怖い。
王宮の夜の庭も、やっぱり美しかった。
刈り込まれた生け垣。
露を含んだ花びらが、魔術灯の光を反射して小さく光る。
遠くには、昼間見下ろしたのと同じ噴水が、静かに佇んでいた。
香水の匂いはさすがに薄まっている。
代わりに、湿った土と草の匂いが鼻をくすぐった。
(宝石箱みたいな場所だと思ってた)
ふと、そんな言葉が浮かぶ。
小さい頃、この庭に初めて連れてこられたとき。
キラキラした光と、色とりどりの花に目を奪われて、“おとぎ話の世界”だと思った。
今は――違う。
(ここにあるもの全部、“見せるため”に並べられた飾りなんだ)
そう気づいた途端、景色の見え方が変わった。
花は、自然に咲いているのではなく、“この角度から見たときに綺麗に見えるように”配置されたもの。
噴水も、水の音を楽しむためというより、来客の視線を惹きつけるための仕掛け。
魔術灯の光だって、安心のためというより、“夜でも豪華さを損なわないための演出”。
――展示物。
ここにあるものは、全部、誰かに見せるために飾られた展示物。
そして、自分もまた、その一つだと、ずっと思っていた。
(でも)
リリアは、マントの裾を握りしめた。
(私だけは、“展示物”になりきれなかった)
いつも笑顔を作りながら、心のどこかで、ずっと息苦しさを抱えていた。
“王太子の婚約者”というラベルを貼られながら、“リリアとして見てほしい”と願っていた。
それは、この場所にとっては、きっと“不要なノイズ”だったのだろう。
「……お嬢様?」
「ううん。なんでもないわ」
歩みを止めかけた足を、また前に出す。
宝石箱をガシャンと閉じるように、心の中で何かを置き去りにしながら。
◇
物置小屋は、庭の奥まったところにひっそりと建っていた。
木造の壁はところどころ色あせ、隅には苔が生えている。
昼間はほとんど視界に入らない場所だ。
「ここです」
ミーナが小屋の裏側に回り込む。
リリアも後に続くと、そこに、小さな鉄の門があった。
蔦に半分飲み込まれかけていて、知らなければ見落としてしまいそうなほどだ。
「これが、裏門」
「そうです。今はほぼ使われてません。
昔は、荷馬車とかが出入りしていたらしいですけど……今は正門ばっかりですからね」
ミーナは錆びた鍵穴に、さっきの鍵を差し込んだ。
少し力を入れて回すと、ギギ、と鈍い音がして、錠前が外れる。
門は、外から見ればただの古びた柵だろう。
けれど、内側から見ると、それは“別の世界への出口”にしか見えなかった。
「……ここを出たら、戻れないのよね」
リリアが呟くと、ミーナは一瞬だけ黙り込み、それから小さく頷いた。
「そうですね。少なくとも、“元通り”には戻れません」
「だよね」
分かっていたことだ。
分かっていたからこそ、足がすくんでいる。
門の向こうには、闇に溶けた街の輪郭がぼんやりと見えた。
城下町の屋根。遠くの丘。
その先には、国境を越えたさらに遠い世界が広がっている。
――行ったことのない場所。
「やめるなら、今です」
ミーナが静かに言う。
「ここで“やっぱやめた”って言うなら、私は全力で隠ぺい工作に走ります。
“裏門の鍵が壊れてたみたいですよ~”とか適当に言って」
「それ、バレるでしょ」
「バレないように誤魔化す自信、そこそこあります」
「“そこそこ”なのね」
少し笑ってしまう。
笑いながら、胸の奥では、別の感情がせめぎ合っていた。
――逃げることへの罪悪感。
――生きたいと願うことへの、後ろめたさ。
――ここにいたら壊れてしまうという、冷たい直感。
(逃げたら、きっとたくさんの人が私を責める。
“王太子を裏切った”とか、“国を裏切った”とか、“家を裏切った”とか)
でも――と、心の中のどこかが、反発する。
(その前に、ここが私を裏切った)
冤罪。
誰かが仕組んだかもしれない暴走。
それを、「言い訳は見苦しい」と切り捨てた宰相。
「君を守りたいが、国が」と、責任を外に押しつけた王太子。
どれもこれも、“私”を見てはくれなかった。
(だったら、せめて)
最後くらい、自分で自分を選びたい。
「ミーナ」
「はい」
「……私、行くわ」
言葉にした瞬間、胸の奥で固まっていた何かが、少しだけ音を立てて割れた気がした。
ミーナの目に、ぱっと光が宿る。
「……はい。行きましょう、お嬢様」
彼女の声は、少し震えていたけれど、迷いはなかった。
「ただし、約束してください」
「なに?」
「“生きるのをやめないこと”。
これからどれだけしんどいことがあっても、“生きたい”って思う自分を、見捨てないこと」
不意打ちみたいなお願いに、リリアは瞬きをした。
それから、ゆっくりと頷く。
「……約束する」
それは、この夜で一番、はっきりした声だった。
◇
門の前に立ち、リリアは最後に一度だけ、王宮のほうを振り返った。
遠くに、白い塔と、尖った屋根の影が見える。
魔術灯が点々と光っていて、そのシルエットを浮かび上がらせていた。
何度も憧れた景色。
何度も息苦しさを覚えた場所。
胸の奥で、いくつもの思い出が渦を巻く。
楽しかった日も、少しだけあった。
笑えた瞬間も、嘘じゃなかった。
でも、結局ここは――
リリアは、小さく息を吸った。
「……さよなら」
呟きは、夜の空気に溶けていく。
そのさよならは、王宮に向けられたものではなかった。
“ここでうまくやれるはずだ”と自分に言い聞かせて、必死に適応しようとしていた、昔の自分に向けたもの。
ここで生きられなかった自分。
ここで生きようとして、傷つき続けた自分。
その子に、そっと別れを告げる。
前を向く。
「行きましょう、ミーナ」
「はい」
フードを深くかぶる。
視界の上半分が、ふわりと暗くなる。
門をくぐる直前、リリアは夜明け前の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
冷たさが、肺の奥まで刺さる。
でも、それは不思議と、痛みというより“生きている感覚”に近かった。
(私、本当に――外に出るんだ)
王宮の境界線を、初めて自分の足で越える。
門の外の地面に、足を一歩踏み出した瞬間。
胸の奥で、何かがふっと軽くなった。
罪悪感も、不安も、全部消えたわけじゃない。
むしろこれからもっと重くなるだろう。
それでも、“ここではないどこか”へ向けた一歩が、確かに今、刻まれた。
「急ぎましょう。夜明け前が一番、空も地面もごちゃっとしてて、見つかりにくい時間ですから」
「なにその、よく分からない理屈」
「雰囲気です。雰囲気って大事ですよ」
そんな会話を交わしながら、二人は城下町の影へと歩き出す。
王宮の高い壁が、少しずつ遠ざかっていく。
◇
ふと、リリアは空を見上げた。
東の空が、うっすらと白み始めている。
夜と朝の境い目。
世界の色がまだ決まりきらない、あやふやな時間帯。
その端っこで、何かが、微かに揺れた。
青白い――見覚えのある、あの光。
「……え?」
ほんの一瞬、空の高いところに、細い線のような魔力の揺らぎが見えた気がした。
昼間の閃光ほど強くはない。
けれど、あの冷たさだけは確かに似ている。
目を凝らす間もなく、その揺らぎは夜明けの薄明かりに飲まれて消えた。
「どうかしました?」
「……ううん。なんでもない」
本当は“なんでもなくない”けれど、今はまだ名前をつけられない。
ただ、胸の奥で、かすかな予感だけがざわめいていた。
あの揺らぎは、きっと私の運命とつながっている。
この先で出会う“何か”と。
王宮から逃げ出したばかりのリリアは、その意味をまだ知らない。
ただ、冷たい空気を吸い込みながら、新しい世界へ向けて歩みを進めるだけだった。
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