乙女ゲームに転生したら不遇ヒロインでしたが、真エンドは自分で選びます

タマ マコト

文字の大きさ
3 / 20

第3話 泣かせる台本を破り捨てて、塔の夜へ  

しおりを挟む

昼休み前の教室は、いちばん無防備な匂いがする。
お腹が鳴るのを誤魔化す笑い声、インクの乾いた匂い、窓から入り込む風の冷たさ。
誰もが「まだ午前だし」と油断している時間帯は、悪意がいちばん簡単に刺さる。

リリア=エヴァンスは席に着きながら、机の角を指でなぞった。
木目のざらつき。ささくれ。小さな傷。
それが妙に落ち着く。完璧じゃないものは、嘘をつかないから。

視線を感じた。
前からでも後ろからでもない。横。少し遠い位置。
貴族令嬢たちの集団の中心に、カミラ=ヴァルツがいる。

巻き髪は整いすぎていて、笑顔は甘すぎて、目が笑っていない。
彼女の周りには取り巻きが二人、影みたいに張り付いている。
取り巻きの片方が、リリアの方を見て口元を吊り上げた。

――来る。

心臓が速くなる。
怖いのは、いじめそのものじゃない。
自分が「いつもの私」に戻ってしまうこと。

(泣いて、謝って、場を丸くして、結局また削られる)

そのルートはもう、うんざりするほど知っている。

「リリアさん」

ふわっとした声がした。
振り返ると、ソフィア=レンティスが弁当袋を抱えて立っている。
彼女は昨日、ほんの少しだけ言葉を交わした子だ。名前のない背景じゃない。ちゃんと人だ。

「一緒に食べない? 席、こっち空いてるよ」

ソフィアの善意は軽い。軽いから、助かる。
“救ってあげる”じゃなく、“一緒にいよ”の距離。

「ありがとう。行く」

リリアが立ち上がった瞬間、机の中で紙が擦れる音がした。
わざとらしくない。だから、気づきにくい。
でも、リリアの指先はその違和感を見逃さなかった。

机の中に手を入れる。
指に薄い紙の感触が引っかかる。折り畳まれた紙切れ。

胸の奥が、ひゅっと冷える。

(それか。最初のやつ)

折り目をほどく。
丁寧な筆記体。品の良さで悪意を包んでいる文字。

『不釣り合いな庶子』

一瞬、視界が狭くなる。
前の人生で、似た言葉を何度も浴びた。
「替えがきく」
「そこまでの価値はない」
「君じゃなくてもいい」

露骨に殴られるより、こういう言葉の方が深く刺さる。
なぜなら、反論すると“騒ぐ方が悪い”にされるから。

ソフィアが心配そうに覗き込む。

「……なに、それ?」

「ゴミ」

リリアは短く言って、紙を二つに折った。
三つに。四つに。
最後は指で裂く。

びりっ、と乾いた音。
教室のざわめきの中で、そこだけ時間が切れたみたいに響いた。

ソフィアが目を丸くする。

「え、破いた……」

「捨てる前に、落とし物として返すだけ」

リリアは破いた紙のかけらを掌にまとめ、教室の後方へ歩いた。
カミラの机までの距離が、やけに長い。
視線が背中に刺さる。
「何する気?」
「泣くんじゃないの?」
そんな空気が、甘い毒みたいに漂う。

カミラはリリアが来るのを見て、わざとらしく首を傾げた。

「あら、リリアさん。何か用?」

リリアは、破片をカミラの机に“置いた”。
落とさない。投げない。丁寧に置く。
その丁寧さが、逆に刺さる。

「これ、落ちてた」

カミラの眉がぴくりと動く。

「……は?」

「書き間違いが多いから、次は推敲してからにして。字が綺麗なのに、内容が雑だともったいない」

一瞬、教室の音が消えた。
消えて、次に、ひそひそ声が波みたいに戻ってくる。

「今、言った……?」
「リリア、怖……」
「カミラ様に……?」

取り巻きの一人が顔を赤くして叫ぶ。

「生意気! 庶子のくせに!」

リリアは笑わない。
笑えば余裕に見える。余裕は相手を熱くさせる。
今必要なのは、熱を冷ます刃だ。

「庶子って言葉、便利だよね」

リリアは取り巻きではなく、カミラの目を見る。
カミラの瞳は怒りで濁っていく。

「相手の努力も存在も、まとめて捨てられる。……でもね」

リリアは机の上の破片を指で軽く叩いた。

「こういうの、言った側の品格が落ちる。落ちるのは私じゃなくて、あなたたち」

カミラの頬が引きつる。
完璧な令嬢の仮面が、ほんの少し剥がれた。

「……覚えてなさいよ、リリア=エヴァンス。ここはあなたの居場所じゃない」

その台詞は、知っている。
ゲームで何度も見た。
ここから私は孤立し、泣き、ミレイアに助けられて、さらに惨めになる。

リリアは、目を逸らさずに言う。

「居場所は、与えられるものじゃなくて、作るものだよ」

カミラは言葉を失う。
取り巻きが「カミラ様……!」と焦って袖を引いた。

リリアはそれ以上何も言わず、踵を返した。
背中に刺さる視線が痛い。
痛いけど、倒れない。
倒れないために、今ここに立ってる。

ソフィアが小声で言った。

「……ねえ、今の、こわかったけど……なんか、すごかった」

「怖くないよ。ただ、泣かないって決めただけ」

「泣かないって、めちゃくちゃ強いよ」

強い。
その言葉が鎖にならないように、リリアは曖昧に笑って、弁当の包みを開いた。
卵の甘い匂いがして、少しだけ現実に戻れる。

でも、午後の授業を受けながら、リリアの頭はずっと冷静だった。

(今日のカミラは“担当”だ。
 でも、担当の背後には、もっと大きい何かがいる)

ゲームのカミラは、ただの嫌がらせ役じゃない。
どこかで“操られている”描写が入る。
なら、その糸を早めに見つける必要がある。

放課後。
教室の外へ出たところで、背後から冷たい声が刺さった。

「リリア=エヴァンス」

振り返る。
ユリウス=クロフォード。黒髪、冷たい目。
相変わらず感情が薄い顔なのに、今日は少しだけ苛立ちの影がある。

「放課後、図書塔に来い。基礎文献を教える」

昨日、そう言われた。
そして今日も、彼はその言葉を撤回しない。

「命令?」

「……必要だと思ったから言ってるだけだ」

言い方が不器用すぎて、逆に嘘がない。
ユリウスは“誰かを助けて気持ちよくなる”タイプじゃない。
合理性で動く。だから信用できる部分がある。

「分かった。行く」

ユリウスは頷いて、先に歩き出した。
迷いのない足取り。
世界が彼のために道を開けているみたいに見えるのが、少し腹立つ。

図書塔は夕方の光を吸い込んで、塔そのものが影みたいに立っていた。
扉を押すと、低い軋み音。
中は紙と革と乾いたインクの匂い。
その匂いが、胸の奥の緊張をほどく。

ユリウスは机に近づくと、椅子に座らず立ったまま言った。

「時間がない。最初に言う。全部読むな。溺れる」

「え、優しいの?」

「合理的だ。君は読み方が雑だ。全部拾おうとして全部落とす」

むかつく言い方。
でも、的確すぎて言い返せない。

ユリウスは棚の奥へ歩き、迷いなく三冊引き抜いた。
その動きに無駄がない。指先がページの厚みで分類しているみたいだ。

「これ」

机に置かれた本の背表紙を、リリアは指でなぞった。

『基礎魔力循環論(クロフォード注解)』
『古式陣式の欠陥一覧と改修史』
『聖具工学入門――王国規格版』

「……聖具?」

「魔法陣を理解するなら、最終的に“器”へ行き着く。器の極致が聖具だ」

ユリウスは言い切ってから、ほんの一瞬だけ黙った。
その沈黙は、言いすぎたかもしれないという躊躇いに見えた。

「余計だった?」

「余計じゃない」

リリアが答えると、ユリウスは少しだけ視線を逸らした。
照れたのか、苛立ったのか分からない。
天才は、自分の親切を親切と認めたがらない。

「読み方も教える。最初の三十頁だけでいい。全部読むな。目的を決めて刺せ」

「刺す?」

「知識は刃だ。振り回すな。刺せ」

ユリウスはページを開き、該当箇所に指を置いた。
指が白く、爪が整っている。
でも、その白さは温室の白じゃない。研ぎ澄まされた刃の白。

「ここ。循環の“戻り”は勢いじゃなく“受け皿”で決まる。君は“押す”方向しか見てない」

「……」

リリアの中で、何かが繋がった。
昨日の小テストの間違いが、ただの点数じゃなく“視界の欠損”だったと分かる。
欠損は、いつか事故になる。
事故は、いつか死になる。

「分からなかったら質問しろ」
ユリウスが言う。
「筋がいいなら答える。的外れなら切る」

「めんどくさ」
リリアが呟くと、ユリウスは即答した。

「それが君の欠点だ」

言い方は最悪なのに、なぜか笑いそうになった。
ユリウスは人を慰めない。
でも、伸ばす。
その伸ばし方が、気持ちいいくらい冷たい。

一時間ほどで、ユリウスは帰っていった。
「必要なのは基礎だ」と言い残して。
リリアはその背中を見送り、机に残された本を見下ろす。

(基礎を叩き込まれた。……じゃあ、次は自分のための深掘り)

夜。
図書塔は人が減り、音が死ぬ。
ランプの灯りだけが紙面を照らし、影が棚の間に長く伸びる。

リリアはユリウスの教えた“読み方”で、本を選び直した。
目的を決める。刺す。

――追放されても生きるための知識。
――追放そのものを折るための知識。

『辺境魔力鉱脈の採掘史』
『王国税制と貴族の徴税権』
『聖具の基礎構造と魔力循環――破損事例集』

ページをめくる指先が、紙のざらつきに触れるたび、呼吸が深くなる。
努力が誰かに奪われない感覚。
ここでは、頑張りが“助かります!”に変換されない。
頑張りは、私の血になる。

ふと、昼間の紙切れが頭をよぎる。
『不釣り合いな庶子』
あの言葉は刃だった。
でも、今私の手の中にも刃がある。
知識という刃。
言葉という刃。
そして、選ぶという刃。

(泣かない。泣かされない。泣くかどうかを、自分で決める)

リリアが一息ついて顔を上げたとき、窓の外は真っ暗だった。
星が冷たく瞬き、学園の噴水の音が遠くにかすれる。
塔の中は、ページをめくる音だけ。

その静けさの中で、視線を感じた。

背中ではない。
柱の影。
ランプの灯りが届かない場所に、誰かが立っている。

心臓が跳ねた。
けれど、恐怖より先に、直感が告げる。

――この人だ。

影から一歩、男が出てきた。
長身。黒い上着。本を抱えている。
灰色がかった瞳が、静かにこちらを見る。
笑っているようで笑っていない。観察者の目。

エリオット=フェイン。

ゲームで、条件を満たしたときだけ現れる隠し攻略対象。
物語の外側に立つ、やけに現実的な男。

彼は机の上の本の背表紙を眺め、ぽつりと言った。

「君、泣かないんだね」

リリアは本を閉じ、エリオットを見る。

「泣くと、誰かが“助ける役”になって気持ちよくなるから」

言い切った瞬間、自分の喉が少し痛んだ。
痛いのは、本音だから。

エリオットは笑わない。怒らない。
ただ、興味深そうに瞬きした。

「その発想、ゲームっぽくない」

「そうだね」
リリアは肩をすくめる。
「私は、ゲームのために生きてない」

エリオットは軽く首を傾げた。

「じゃあ、何のために?」

リリアは机の上の本に指を置いた。
辺境。税制。聖具。
生存のための地図。
未来のための刃。

「ここから先は、私が書き換える」

エリオットの瞳が、ほんの少しだけ細くなる。
それは笑みとも警戒とも取れる曖昧な色。

「面白い。……君が書き換えるなら、僕は観察する」

「観察だけ?」

「必要なら、ちょっとだけ手を貸す」
エリオットは本を抱え直し、さらりと言った。
「でも、僕は誰かを助けて気持ちよくなるタイプじゃない」

リリアは思わず、口元を緩めた。
それは笑いというより、息が抜けた感じに近い。

「それなら、ちょうどいい」

ランプの灯りが揺れ、影が二人の足元で重なった。
泣かせる台本を破った日。
その夜、リリアは初めて、この世界の“物語の外”に風穴が開く音を聞いた気がした。

そして、その風穴から入ってくる空気は、冷たくて、やけに美味しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

宮廷魔法使いリフィリーゼの大掃除〜馬車から捨てられた欠陥令嬢が、宮廷魔法使いの座についた理由。

碧井 汐桜香
ファンタジー
貴族令嬢として育ったリフィリーゼは、貴族として圧倒的に欠けている。 空気を読むことを苦手として、暗黙の了解を推し量ることができない。他人の感情に気がつけない。杓子定規に物事を判断してしまう。 そんなリフィリーゼは、父によって馬車から捨てられた。人気のない、夜の街道で魔獣に襲われそうになったリフィリーゼを救ったのは?

噂の醜女とは私の事です〜蔑まれた令嬢は、その身に秘められた規格外の魔力で呪われた運命を打ち砕く〜

秘密 (秘翠ミツキ)
ファンタジー
*『ねぇ、姉さん。姉さんの心臓を僕に頂戴』 ◆◆◆ *『お姉様って、本当に醜いわ』 幼い頃、妹を庇い代わりに呪いを受けたフィオナだがその妹にすら蔑まれて……。 ◆◆◆ 侯爵令嬢であるフィオナは、幼い頃妹を庇い魔女の呪いなるものをその身に受けた。美しかった顔は、その半分以上を覆う程のアザが出来て醜い顔に変わった。家族や周囲から醜女と呼ばれ、庇った妹にすら「お姉様って、本当に醜いわね」と嘲笑われ、母からはみっともないからと仮面をつける様に言われる。 こんな顔じゃ結婚は望めないと、フィオナは一人で生きれる様にひたすらに勉学に励む。白塗りで赤く塗られた唇が一際目立つ仮面を被り、白い目を向けられながらも学院に通う日々。 そんな中、ある青年と知り合い恋に落ちて婚約まで結ぶが……フィオナの素顔を見た彼は「ごめん、やっぱり無理だ……」そう言って婚約破棄をし去って行った。 それから社交界ではフィオナの素顔で話題は持ちきりになり、仮面の下を見たいが為だけに次から次へと婚約を申し込む者達が後を経たない。そして仮面の下を見た男達は直ぐに婚約破棄をし去って行く。それが今社交界での流行りであり、暇な貴族達の遊びだった……。

処理中です...