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第5話「“田舎の奇跡薬師”という噂」
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ダンデライオンの腰が「嘘みたいに軽い」と判明したのは、グリーンノート開店から三日後の朝だった。
「ミントちゃーん!!」
朝一番、店の扉が勢いよく開いて、デイジーの声が飛び込んでくる。
まだ掃除用の布を手にしていたミントは、びくっと肩を跳ねさせた。
「は、はいっ!? お、おはようございますデイジーさん!」
「聞いて! 聞いてよミントちゃん!」
デイジーは息を切らしながらカウンターへ突進し、その横から、元気いっぱいの声がもうひとつ。
「おーっす、ミント!」
ダンデライオンだ。
……走ってきている。
腰を押さえもせず、ぴんと背筋を伸ばして、まるで少年のような足取りで。
「あれ、ダンデさん、今日は腰は……?」
「聞いて驚け。全然痛くねぇ!」
どや顔で親指を立てるダンデライオン。
デイジーが横から「ほんとにね!」と被せるように言う。
「昨日の夕方から急に調子よくなって、今朝なんて“あれ? 腰どこ行った?”ってくらい軽いのよ! もう畑駆け回る勢い!」
「いや、さすがに走り回る歳じゃねえけどな。でもほんと、今までみたいな“ずーん”とした重さが消えてんだ」
ミントは思わず、腰の辺りをじっと見つめてしまう。
昨日までの、あの「動かすたびに痛いです……」みたいな表情が、今はどこにもない。
「塗り薬、ちゃんと塗ってましたか?」
「塗った塗った。寝る前と、朝の着替えのときにな。デイジーが容赦なく揉み込んでくるから、“痛い痛い”って文句言いながら」
「文句言うなら、自分でやりなさいよって話だけどね」
「ハーブティーも?」
「飲んでたわよ。最初は“こんな葉っぱ汁で変わるかぁ?”とか言ってたけど、一口飲んで、“あ、これうまい”って顔してたからね」
「……うるせえなデイジー、恥ずかしいだろ」
平和な夫婦喧嘩に、ミントの緊張もほどけていく。
「よかった、本当に……。体に合わない人だったらどうしようって、実はすごく心配してて」
「合ってたどころじゃないぞ。
ミントちゃん、ちょっと見せてやんなさいよ、ダンデの動き」
「え、見せるって何を――」
「ダンデ、ほら、“さっとかがんで、すっと立つやつ”!」
「ああ、あれか」
なんだそのネーミング、と心の中でツッコんだが、ダンデライオンは真面目な顔で頷いた。
彼は店の中央に立つと、まるで見せ物のように、すっと腰を落とし、畑で草むしりでもするかのような姿勢を取る。
そのまま膝を使ってしゃがみ込み、またすっと立ち上がる。
……一切、顔が歪まない。
「ほら、前だったら“いてててて”って言ってたでしょ? 今、無言で立ってるからねこの人!」
「いや、無言で立つのは普通だからな?」
「普通じゃないのよ、ミントちゃん。この人比で言ったら立派な奇跡なのよ」
デイジーのオーバーな比喩に、ミントはくすっと笑った。
「そう言ってもらえると、私も嬉しいです」
「嬉しいどころかだな……」
ダンデライオンが、ちょっとだけ照れくさそうに頭をかく。
「俺、村の連中に片っ端から言ってきた。『あそこはすげぇぞ』『タイムばあさんの孫娘、腕がいいぞ』ってな」
「えっ……」
「“腰痛治ったら、ミントちゃんとこのおかげだって、村中に叫ぶからね!”って言ったでしょ? 有言実行よ」
デイジーが胸を張る。
ミントの耳まで赤くなった。
「そ、そんな、叫ばなくても……」
「叫んだ方が早いんだよ、田舎の情報伝達は」
ダンデライオンはにっと笑って、ひらひらと手を振った。
「ってなわけで。今日あたりから、忙しくなるかもしれねぇぞ、店主さん?」
その言葉は、冗談半分、予言半分だった。
◇
その日から、グリーンノートの一日は、目に見えて賑やかになった。
「ミントちゃん、最近眠れなくてねぇ」
「膝がさ、雨の前になるとズキズキしてなぁ」
「子どもの咳がずっと続いてて……」
村のあちこちから、年齢も性別もバラバラな人たちがやってくる。
ミントはひとりひとりに椅子を勧め、一人ひとりの話を聞いた。
何が辛いのか。
いつからか。
どんな仕事をしているのか。
家ではどんなものを食べているのか。
祖母タイムに教わったとおりに。
そして、王都で身をもって学んだ「決して流れ作業にはしない」という決意どおりに。
店の一角には、小さな紙が貼られている。
『薬は“人”に合わせるもの』
祖母タイムの口癖を、そのまま書き写したものだ。
ミントは客の話を聞きながら、ときどきその紙を横目で見て、心を落ち着かせる。
(焦らない。
一番効きそうなものを決めつけない。
目の前の人をちゃんと見る)
その姿勢は、村人たちの目にも、少しずつ沁み込んでいった。
「ただ薬売りつけるんじゃなくてさ、“こういう時は無理しちゃダメですよ”って言ってくれるんだ」
「王都の薬より効くし、何より話してて楽なんだよなぁ」
そんな会話が、井戸端会議のネタになっていく。
数日も経たないうちに、「タイムばあさんの孫娘は腕がいい」という言葉は、この村の“常識”になっていた。
◇
そして一週間もすると、その噂は隣村にも届いた。
「隣の村から来たんですけど、“腰の神様”がいるって聞いて……」
「誰が神様ですか、ダンデさんですねそれは」
腰痛持ちのおじさんが、ダンデライオンから詳細な“体験談”を聞かされて、わざわざ歩いてやってきたらしい。
「王都の薬屋で薬買ってたんですけどね、飲んでる間はちょっと楽で、止めるとすぐ戻っちゃって」
「それなら、一緒に“生活の方”も変えていきましょう。
無理のない範囲で、できるところから」
ミントはそう言って、また姿勢や仕事の仕方を聞きながら、個別の配合を考える。
その姿を見ていた隣村のおじさんは、帰り際にぽつりと漏らした。
「王都の薬より……なんか、“効きそう”だな」
それは、薬の成分の話だけじゃない。
自分の生活全体を見てくれる安心感への評価でもあった。
こうして、「王都の薬より効く」という噂まで、勝手にセットで付いてくることになる。
「効く」という言葉が、一人歩きしているのは、少し怖くもある。
期待されすぎるのもプレッシャーだ。
それでも、ミントは姿勢を崩さなかった。
どれだけ忙しくても、絶対に「次の人が待ってるから急いで」と自分を急かさないようにした。
待たせてしまった人たちには、正直に詫びつつ、「ちゃんと見てもらえるならいいよ」と笑ってもらう。
(王都みたいに、“数”をこなすためだけの場所には、したくない)
そう何度も心の中で繰り返す日々だった。
◇
そんなある日。
村に、久しぶりに“よそ者らしいよそ者”が現れた。
「この村に、“薬草店グリーンノート”って店があると聞いたが」
昼下がり。
グリーンノートの扉が開いて入ってきたのは、旅装束の男たち数人だった。
軽装の鎧と、腰にぶら下げた剣。
動きやすさ重視のマント。
靴には、長距離を歩いた痕跡。
一目で、「兵士か、傭兵か、その辺の人たちだ」とわかる出で立ちだ。
「い、いらっしゃいませ」
ミントは少し緊張しながら、カウンターから出て頭を下げる。
「ここがそうか?」
先頭に立っていた黒髪の男が、店内をざっと見回す。
その視線は鋭いが、敵意は感じない。
彼の後ろで、肩を押さえている青年がひとり。
顔をしかめ、眉間に汗をにじませている。
「うちの隊のひとりがな。肩をやられてしまって」
「すみません。腕が上がらなくて……」
青年が申し訳なさそうに頭を下げる。
「なるほど……。ちょっと診せてもらっていいですか?」
ミントは奥の椅子を指し示し、青年を座らせる。
その間に、黒髪の男たちがぞろぞろと店内に入り、棚に並んだ薬草や瓶を興味深そうに眺めていた。
「へぇ……田舎のはずなのに、意外と揃ってるな」
「香り袋? 女の子に人気出そうだぞこれ」
そんな声が、そこかしこから聞こえる。
ミントは気にしないようにしながら、青年の肩に触れた。
「どの辺が一番痛いですか?」
「ここらへん……です」
青年が恐る恐る指し示したのは、右肩の少し後ろ。
肩甲骨のあたりが、触っただけでわかるほど固くなっている。
「いつからですか?」
「三日前くらいから……。荷車を押してるときに、ちょっと無茶して」
「無茶、って?」
「坂道で、荷物がずり落ちそうになって、慌てて片腕で支えたら“ぐきっ”って」
「典型的なやつですね……」
ミントは、怪我の瞬間を想像して眉を寄せた。
「他には? 痺れとか、腕のだるさとか」
「夜になると、腕全体が重くなって、寝返りのたびに目が覚めちゃって。
明日には王都に戻らなきゃいけないんですけど、このままだと剣、まともに振れなくて……」
「なるほど」
説明を聞きながら、ミントは頭の中で組み立てていく。
(急な衝撃で筋肉と筋を痛めて、そのまま負担かけ続けた結果……炎症と緊張のダブルパンチ)
触診を続けながら、ミントはふと顔を上げた。
(でも、この押し方、前にも――)
青年の後ろに立つ兵士たちの中で、ひとりだけ、じっとこちらを見ている男がいる。
鎧は他の者と同じだが、立ち方が違う。
姿勢に隙がなく、視線は常に全体を把握しながら、必要なところだけを切り取って見ている。
金と琥珀のあいだのような瞳。
少し長めの前髪。
前よりも整った装備。
そして、前よりも“仕事中”の空気をまとった横顔。
「……え?」
ミントの口から、間の抜けた声が漏れた。
「どうかしたか?」
黒髪の男が首をかしげる。
「い、いえ、その……。もしかして、サフランさん、ですか?」
兵士たちの列の後ろから、静かな声が返ってきた。
「ようやく気づいたかと思った」
列をかきわけるようにして前に出てきたのは、紛れもなく、あの日森で拾った“謎の青年”だった。
ただし、あのときとは違っている。
装備はきちんと手入れされ、動きやすくまとめられているし、左腕は完璧に回復している。
背負った荷物も、明らかに“ただの旅人”のものではない。
「さ、サフランさん……!」
「久しぶりだな、ミント」
サフランは軽く片手を上げ、以前と変わらない、少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべた。
「ここが、“薬草店グリーンノート”か」
「え、あ、はい。えっと、本当に、来てくれたんですね……」
(“近いうち必ずまた来る”って言ってたけど……本当に来る人いるんだ)
心の中で、妙な感動がじわじわ湧き上がってくる。
その間にも、青年は肩を押さえているし、店内には別の意味での緊張感が漂っていた。
ミントは慌てて現実に戻る。
「サフランさん、お知り合い?」
黒髪の男が、少しだけ意外そうに尋ねる。
「一度、世話になった」
サフランは短く答えた。
「森で瀕死になってたときに拾われてな。ここの薬に、命を取られるどころか救われた」
「瀕死って言い方やめてください、心臓に悪いです」
ミントが思わずツッコむと、周りの兵士たちが「えっ」「瀕死?」とざわついた。
「お前、そんな状態だったのかよ……!」
「そりゃ王都からこの村に寄り道するわけだ」
サフランは、騒ぐ仲間たちを軽く一瞥してから、ミントを見る。
「だから、今回は最初からここを目的に寄った。ここの薬は、一度お世話になっているからな」
「さらっと言いますけど、その言い方、なんか照れますね……」
頬が少し熱くなるのを感じながら、ミントは咳払いをした。
「とにかく。サフランさんのお知り合いなら、なおさら気合い入れて診ますよ」
青年に向き直り、包帯と膏薬の用意をする。
「まず、冷やすより先に、炎症を落ち着かせて……それから筋肉をゆるめる方向で」
口の中でブツブツと段取りを呟きながら、ミントは手際よく作業を進める。
痛い場所と、その周辺に、祖母直伝の膏薬を薄く塗る。
その上から、ミント特製の“温かくても熱くなりすぎない”軟膏を重ねる。
指先で軽く押して、少しだけ動かしてみる。
青年は最初こそ顔をしかめたものの、次第に表情が緩んでいった。
「……あれ?」
「痛み、さっきよりどうですか?」
「さっきは、ここ触られただけで“うっ”ってなってたんですけど……今は、押されてる感じはするけど、そんなに痛くないというか」
「完全に取るには少し時間かかりますけど、このまま温めて、軽く動かすのを続けていけば――」
ミントは、肩のストレッチを簡単に教えながら、言葉を続けた。
「明後日くらいには、普通に剣振れるぐらいまでには戻るはずです。
ただし! 今日と明日は絶対無茶しないこと!」
「了解しました!」
青年は真剣な顔で頷く。
その様子を見ていた他の兵士たちが、口々に感嘆の声を上げた。
「すげぇな、本当に」
「見てるだけで効いてる気がするんだけど」
「王都にこんな薬師がいたら、宮廷に引っ張られるぞ」
「王都にいたけど、追放されました」
つい口が滑ってしまって、ミントは自分で自分の口を押さえた。
「あ、ごめんなさい今のは忘れてください。
えっと、とにかく、ここではちゃんとやってますので!」
兵士たちは一瞬きょとんとしたが、すぐに笑いに変わった。
「追放されてこの腕か……王都の見る目がないのか、お前が異常なのか」
「両方じゃない?」
「両方否定したいところですが、たぶん半分ずつくらいです……」
ミントが困ったように笑うと、その隣でサフランがふっと目を細めた。
店の中を、もう一度ゆっくりと見渡す。
棚に並んだ、多種多様なハーブ。
ラベルに書かれた、「肩こりさんへ」「眠れない夜に」といったメッセージ。
片隅に貼られた、祖母タイムの言葉。
『薬は“人”に合わせるもの』
それを見たサフランの表情が、一瞬だけ柔らかくなった。
(……やはり、ここは)
心の中で、静かに呟く。
(王都に知られるべき場所だ)
大げさな宣伝や、目を引く看板があるわけじゃない。
でも、この小さな店には、“本物”が詰まっている。
王都で、机上の理論だけを振りかざしている薬師たちに、見せつけてやりたいくらいに。
「ミント」
「はい?」
「この店、いつまで続けるつもりだ?」
「えっ」
唐突な質問に、ミントは目をぱちくりさせた。
「えっと……できるなら、一生?」
自分で言って、自分で照れる。
でも、嘘じゃない。
「ここが、私の場所なので。
王都では、結局“借りてる場所”って感じしかしなくて。
ここは……ちゃんと、地面に足がついてる気がするから」
サフランは、その答えを聞いて、ふっと息を吐いた。
「そうか」
短い言葉の中に、どこか安心したような色が混じっている。
「じゃあ、こちらも安心して“次”のことを考えられる」
「“次”……?」
「なんでもない」
サフランはそれ以上は言わず、代金を置いていこうとする兵士たちを制した。
「ここは俺がまとめて払う。
俺個人としての礼だ。……領収書は必要ない」
「いえ、そんな、ちゃんと人数分もらってください」
「これでもまだ足りないくらいだ。腕と命の礼としてはな」
さらりと言われて、また頬が熱くなる。
支払いを終えた兵士たちは、それぞれ小さな香り袋や携帯用の軟膏も買い込んでいった。
「恋人への土産だ」「遠征先で使う」など、理由は様々だったが、そのどれもがミントには眩しく見えた。
「じゃあな、ミント」
扉の前で、サフランが振り返る。
「またしばらく顔を出せないが……そのうち、“別の形”でも世話になる」
「べ、別の形?」
「楽しみにしておけ」
意味ありげな言葉を残し、サフランは仲間たちと共に村を後にした。
扉が閉まり、店内に静けさが戻る。
ミントはしばらくその場に立ち尽くし、ぼんやりと扉を見つめていた。
「……別の形って、何?」
問いかけても、答える人はいない。
でも、胸の中で、不思議な予感だけがふわふわと漂っていた。
◇
その日の夕方。
グリーンノートの前を通る村の子どもたちが、こんな会話をしているのが聞こえた。
「ねぇ知ってる? ダンデおじさんの腰、治ったの、あそこのミントお姉ちゃんのお店なんだって」
「旅の兵隊さんたちも来てたよね。すっごい偉そうな人もいた!」
「お母さんが言ってた。“あの子は田舎の奇跡薬師だ”って」
「……田舎の、奇跡薬師?」
店の中から、ミントはそっと耳を澄ます。
「奇跡なんて大げさだよ……」
苦笑しながらも、その言葉が胸の中にじんわりしみ込んでいく。
田舎娘。
追放者。
役立たず。
そんなラベルで塗りつぶされていた自分に、新しい名前が貼られようとしている。
“田舎の奇跡薬師”。
「……変なあだ名」
こっそりそう呟きながら、ミントは棚の薬草を整える手に少しだけ力を込めた。
外では、夕焼けが村をオレンジ色に染めている。
グリーンノートの小さな窓から漏れる灯りは、その色とゆっくり混ざり合っていく。
この日、サフランの心の中でされた“ひとつの決意”が、後に王都を巻き込む大騒ぎの始まりになることを――
ミントはまだ、知る由もなかった。
「ミントちゃーん!!」
朝一番、店の扉が勢いよく開いて、デイジーの声が飛び込んでくる。
まだ掃除用の布を手にしていたミントは、びくっと肩を跳ねさせた。
「は、はいっ!? お、おはようございますデイジーさん!」
「聞いて! 聞いてよミントちゃん!」
デイジーは息を切らしながらカウンターへ突進し、その横から、元気いっぱいの声がもうひとつ。
「おーっす、ミント!」
ダンデライオンだ。
……走ってきている。
腰を押さえもせず、ぴんと背筋を伸ばして、まるで少年のような足取りで。
「あれ、ダンデさん、今日は腰は……?」
「聞いて驚け。全然痛くねぇ!」
どや顔で親指を立てるダンデライオン。
デイジーが横から「ほんとにね!」と被せるように言う。
「昨日の夕方から急に調子よくなって、今朝なんて“あれ? 腰どこ行った?”ってくらい軽いのよ! もう畑駆け回る勢い!」
「いや、さすがに走り回る歳じゃねえけどな。でもほんと、今までみたいな“ずーん”とした重さが消えてんだ」
ミントは思わず、腰の辺りをじっと見つめてしまう。
昨日までの、あの「動かすたびに痛いです……」みたいな表情が、今はどこにもない。
「塗り薬、ちゃんと塗ってましたか?」
「塗った塗った。寝る前と、朝の着替えのときにな。デイジーが容赦なく揉み込んでくるから、“痛い痛い”って文句言いながら」
「文句言うなら、自分でやりなさいよって話だけどね」
「ハーブティーも?」
「飲んでたわよ。最初は“こんな葉っぱ汁で変わるかぁ?”とか言ってたけど、一口飲んで、“あ、これうまい”って顔してたからね」
「……うるせえなデイジー、恥ずかしいだろ」
平和な夫婦喧嘩に、ミントの緊張もほどけていく。
「よかった、本当に……。体に合わない人だったらどうしようって、実はすごく心配してて」
「合ってたどころじゃないぞ。
ミントちゃん、ちょっと見せてやんなさいよ、ダンデの動き」
「え、見せるって何を――」
「ダンデ、ほら、“さっとかがんで、すっと立つやつ”!」
「ああ、あれか」
なんだそのネーミング、と心の中でツッコんだが、ダンデライオンは真面目な顔で頷いた。
彼は店の中央に立つと、まるで見せ物のように、すっと腰を落とし、畑で草むしりでもするかのような姿勢を取る。
そのまま膝を使ってしゃがみ込み、またすっと立ち上がる。
……一切、顔が歪まない。
「ほら、前だったら“いてててて”って言ってたでしょ? 今、無言で立ってるからねこの人!」
「いや、無言で立つのは普通だからな?」
「普通じゃないのよ、ミントちゃん。この人比で言ったら立派な奇跡なのよ」
デイジーのオーバーな比喩に、ミントはくすっと笑った。
「そう言ってもらえると、私も嬉しいです」
「嬉しいどころかだな……」
ダンデライオンが、ちょっとだけ照れくさそうに頭をかく。
「俺、村の連中に片っ端から言ってきた。『あそこはすげぇぞ』『タイムばあさんの孫娘、腕がいいぞ』ってな」
「えっ……」
「“腰痛治ったら、ミントちゃんとこのおかげだって、村中に叫ぶからね!”って言ったでしょ? 有言実行よ」
デイジーが胸を張る。
ミントの耳まで赤くなった。
「そ、そんな、叫ばなくても……」
「叫んだ方が早いんだよ、田舎の情報伝達は」
ダンデライオンはにっと笑って、ひらひらと手を振った。
「ってなわけで。今日あたりから、忙しくなるかもしれねぇぞ、店主さん?」
その言葉は、冗談半分、予言半分だった。
◇
その日から、グリーンノートの一日は、目に見えて賑やかになった。
「ミントちゃん、最近眠れなくてねぇ」
「膝がさ、雨の前になるとズキズキしてなぁ」
「子どもの咳がずっと続いてて……」
村のあちこちから、年齢も性別もバラバラな人たちがやってくる。
ミントはひとりひとりに椅子を勧め、一人ひとりの話を聞いた。
何が辛いのか。
いつからか。
どんな仕事をしているのか。
家ではどんなものを食べているのか。
祖母タイムに教わったとおりに。
そして、王都で身をもって学んだ「決して流れ作業にはしない」という決意どおりに。
店の一角には、小さな紙が貼られている。
『薬は“人”に合わせるもの』
祖母タイムの口癖を、そのまま書き写したものだ。
ミントは客の話を聞きながら、ときどきその紙を横目で見て、心を落ち着かせる。
(焦らない。
一番効きそうなものを決めつけない。
目の前の人をちゃんと見る)
その姿勢は、村人たちの目にも、少しずつ沁み込んでいった。
「ただ薬売りつけるんじゃなくてさ、“こういう時は無理しちゃダメですよ”って言ってくれるんだ」
「王都の薬より効くし、何より話してて楽なんだよなぁ」
そんな会話が、井戸端会議のネタになっていく。
数日も経たないうちに、「タイムばあさんの孫娘は腕がいい」という言葉は、この村の“常識”になっていた。
◇
そして一週間もすると、その噂は隣村にも届いた。
「隣の村から来たんですけど、“腰の神様”がいるって聞いて……」
「誰が神様ですか、ダンデさんですねそれは」
腰痛持ちのおじさんが、ダンデライオンから詳細な“体験談”を聞かされて、わざわざ歩いてやってきたらしい。
「王都の薬屋で薬買ってたんですけどね、飲んでる間はちょっと楽で、止めるとすぐ戻っちゃって」
「それなら、一緒に“生活の方”も変えていきましょう。
無理のない範囲で、できるところから」
ミントはそう言って、また姿勢や仕事の仕方を聞きながら、個別の配合を考える。
その姿を見ていた隣村のおじさんは、帰り際にぽつりと漏らした。
「王都の薬より……なんか、“効きそう”だな」
それは、薬の成分の話だけじゃない。
自分の生活全体を見てくれる安心感への評価でもあった。
こうして、「王都の薬より効く」という噂まで、勝手にセットで付いてくることになる。
「効く」という言葉が、一人歩きしているのは、少し怖くもある。
期待されすぎるのもプレッシャーだ。
それでも、ミントは姿勢を崩さなかった。
どれだけ忙しくても、絶対に「次の人が待ってるから急いで」と自分を急かさないようにした。
待たせてしまった人たちには、正直に詫びつつ、「ちゃんと見てもらえるならいいよ」と笑ってもらう。
(王都みたいに、“数”をこなすためだけの場所には、したくない)
そう何度も心の中で繰り返す日々だった。
◇
そんなある日。
村に、久しぶりに“よそ者らしいよそ者”が現れた。
「この村に、“薬草店グリーンノート”って店があると聞いたが」
昼下がり。
グリーンノートの扉が開いて入ってきたのは、旅装束の男たち数人だった。
軽装の鎧と、腰にぶら下げた剣。
動きやすさ重視のマント。
靴には、長距離を歩いた痕跡。
一目で、「兵士か、傭兵か、その辺の人たちだ」とわかる出で立ちだ。
「い、いらっしゃいませ」
ミントは少し緊張しながら、カウンターから出て頭を下げる。
「ここがそうか?」
先頭に立っていた黒髪の男が、店内をざっと見回す。
その視線は鋭いが、敵意は感じない。
彼の後ろで、肩を押さえている青年がひとり。
顔をしかめ、眉間に汗をにじませている。
「うちの隊のひとりがな。肩をやられてしまって」
「すみません。腕が上がらなくて……」
青年が申し訳なさそうに頭を下げる。
「なるほど……。ちょっと診せてもらっていいですか?」
ミントは奥の椅子を指し示し、青年を座らせる。
その間に、黒髪の男たちがぞろぞろと店内に入り、棚に並んだ薬草や瓶を興味深そうに眺めていた。
「へぇ……田舎のはずなのに、意外と揃ってるな」
「香り袋? 女の子に人気出そうだぞこれ」
そんな声が、そこかしこから聞こえる。
ミントは気にしないようにしながら、青年の肩に触れた。
「どの辺が一番痛いですか?」
「ここらへん……です」
青年が恐る恐る指し示したのは、右肩の少し後ろ。
肩甲骨のあたりが、触っただけでわかるほど固くなっている。
「いつからですか?」
「三日前くらいから……。荷車を押してるときに、ちょっと無茶して」
「無茶、って?」
「坂道で、荷物がずり落ちそうになって、慌てて片腕で支えたら“ぐきっ”って」
「典型的なやつですね……」
ミントは、怪我の瞬間を想像して眉を寄せた。
「他には? 痺れとか、腕のだるさとか」
「夜になると、腕全体が重くなって、寝返りのたびに目が覚めちゃって。
明日には王都に戻らなきゃいけないんですけど、このままだと剣、まともに振れなくて……」
「なるほど」
説明を聞きながら、ミントは頭の中で組み立てていく。
(急な衝撃で筋肉と筋を痛めて、そのまま負担かけ続けた結果……炎症と緊張のダブルパンチ)
触診を続けながら、ミントはふと顔を上げた。
(でも、この押し方、前にも――)
青年の後ろに立つ兵士たちの中で、ひとりだけ、じっとこちらを見ている男がいる。
鎧は他の者と同じだが、立ち方が違う。
姿勢に隙がなく、視線は常に全体を把握しながら、必要なところだけを切り取って見ている。
金と琥珀のあいだのような瞳。
少し長めの前髪。
前よりも整った装備。
そして、前よりも“仕事中”の空気をまとった横顔。
「……え?」
ミントの口から、間の抜けた声が漏れた。
「どうかしたか?」
黒髪の男が首をかしげる。
「い、いえ、その……。もしかして、サフランさん、ですか?」
兵士たちの列の後ろから、静かな声が返ってきた。
「ようやく気づいたかと思った」
列をかきわけるようにして前に出てきたのは、紛れもなく、あの日森で拾った“謎の青年”だった。
ただし、あのときとは違っている。
装備はきちんと手入れされ、動きやすくまとめられているし、左腕は完璧に回復している。
背負った荷物も、明らかに“ただの旅人”のものではない。
「さ、サフランさん……!」
「久しぶりだな、ミント」
サフランは軽く片手を上げ、以前と変わらない、少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべた。
「ここが、“薬草店グリーンノート”か」
「え、あ、はい。えっと、本当に、来てくれたんですね……」
(“近いうち必ずまた来る”って言ってたけど……本当に来る人いるんだ)
心の中で、妙な感動がじわじわ湧き上がってくる。
その間にも、青年は肩を押さえているし、店内には別の意味での緊張感が漂っていた。
ミントは慌てて現実に戻る。
「サフランさん、お知り合い?」
黒髪の男が、少しだけ意外そうに尋ねる。
「一度、世話になった」
サフランは短く答えた。
「森で瀕死になってたときに拾われてな。ここの薬に、命を取られるどころか救われた」
「瀕死って言い方やめてください、心臓に悪いです」
ミントが思わずツッコむと、周りの兵士たちが「えっ」「瀕死?」とざわついた。
「お前、そんな状態だったのかよ……!」
「そりゃ王都からこの村に寄り道するわけだ」
サフランは、騒ぐ仲間たちを軽く一瞥してから、ミントを見る。
「だから、今回は最初からここを目的に寄った。ここの薬は、一度お世話になっているからな」
「さらっと言いますけど、その言い方、なんか照れますね……」
頬が少し熱くなるのを感じながら、ミントは咳払いをした。
「とにかく。サフランさんのお知り合いなら、なおさら気合い入れて診ますよ」
青年に向き直り、包帯と膏薬の用意をする。
「まず、冷やすより先に、炎症を落ち着かせて……それから筋肉をゆるめる方向で」
口の中でブツブツと段取りを呟きながら、ミントは手際よく作業を進める。
痛い場所と、その周辺に、祖母直伝の膏薬を薄く塗る。
その上から、ミント特製の“温かくても熱くなりすぎない”軟膏を重ねる。
指先で軽く押して、少しだけ動かしてみる。
青年は最初こそ顔をしかめたものの、次第に表情が緩んでいった。
「……あれ?」
「痛み、さっきよりどうですか?」
「さっきは、ここ触られただけで“うっ”ってなってたんですけど……今は、押されてる感じはするけど、そんなに痛くないというか」
「完全に取るには少し時間かかりますけど、このまま温めて、軽く動かすのを続けていけば――」
ミントは、肩のストレッチを簡単に教えながら、言葉を続けた。
「明後日くらいには、普通に剣振れるぐらいまでには戻るはずです。
ただし! 今日と明日は絶対無茶しないこと!」
「了解しました!」
青年は真剣な顔で頷く。
その様子を見ていた他の兵士たちが、口々に感嘆の声を上げた。
「すげぇな、本当に」
「見てるだけで効いてる気がするんだけど」
「王都にこんな薬師がいたら、宮廷に引っ張られるぞ」
「王都にいたけど、追放されました」
つい口が滑ってしまって、ミントは自分で自分の口を押さえた。
「あ、ごめんなさい今のは忘れてください。
えっと、とにかく、ここではちゃんとやってますので!」
兵士たちは一瞬きょとんとしたが、すぐに笑いに変わった。
「追放されてこの腕か……王都の見る目がないのか、お前が異常なのか」
「両方じゃない?」
「両方否定したいところですが、たぶん半分ずつくらいです……」
ミントが困ったように笑うと、その隣でサフランがふっと目を細めた。
店の中を、もう一度ゆっくりと見渡す。
棚に並んだ、多種多様なハーブ。
ラベルに書かれた、「肩こりさんへ」「眠れない夜に」といったメッセージ。
片隅に貼られた、祖母タイムの言葉。
『薬は“人”に合わせるもの』
それを見たサフランの表情が、一瞬だけ柔らかくなった。
(……やはり、ここは)
心の中で、静かに呟く。
(王都に知られるべき場所だ)
大げさな宣伝や、目を引く看板があるわけじゃない。
でも、この小さな店には、“本物”が詰まっている。
王都で、机上の理論だけを振りかざしている薬師たちに、見せつけてやりたいくらいに。
「ミント」
「はい?」
「この店、いつまで続けるつもりだ?」
「えっ」
唐突な質問に、ミントは目をぱちくりさせた。
「えっと……できるなら、一生?」
自分で言って、自分で照れる。
でも、嘘じゃない。
「ここが、私の場所なので。
王都では、結局“借りてる場所”って感じしかしなくて。
ここは……ちゃんと、地面に足がついてる気がするから」
サフランは、その答えを聞いて、ふっと息を吐いた。
「そうか」
短い言葉の中に、どこか安心したような色が混じっている。
「じゃあ、こちらも安心して“次”のことを考えられる」
「“次”……?」
「なんでもない」
サフランはそれ以上は言わず、代金を置いていこうとする兵士たちを制した。
「ここは俺がまとめて払う。
俺個人としての礼だ。……領収書は必要ない」
「いえ、そんな、ちゃんと人数分もらってください」
「これでもまだ足りないくらいだ。腕と命の礼としてはな」
さらりと言われて、また頬が熱くなる。
支払いを終えた兵士たちは、それぞれ小さな香り袋や携帯用の軟膏も買い込んでいった。
「恋人への土産だ」「遠征先で使う」など、理由は様々だったが、そのどれもがミントには眩しく見えた。
「じゃあな、ミント」
扉の前で、サフランが振り返る。
「またしばらく顔を出せないが……そのうち、“別の形”でも世話になる」
「べ、別の形?」
「楽しみにしておけ」
意味ありげな言葉を残し、サフランは仲間たちと共に村を後にした。
扉が閉まり、店内に静けさが戻る。
ミントはしばらくその場に立ち尽くし、ぼんやりと扉を見つめていた。
「……別の形って、何?」
問いかけても、答える人はいない。
でも、胸の中で、不思議な予感だけがふわふわと漂っていた。
◇
その日の夕方。
グリーンノートの前を通る村の子どもたちが、こんな会話をしているのが聞こえた。
「ねぇ知ってる? ダンデおじさんの腰、治ったの、あそこのミントお姉ちゃんのお店なんだって」
「旅の兵隊さんたちも来てたよね。すっごい偉そうな人もいた!」
「お母さんが言ってた。“あの子は田舎の奇跡薬師だ”って」
「……田舎の、奇跡薬師?」
店の中から、ミントはそっと耳を澄ます。
「奇跡なんて大げさだよ……」
苦笑しながらも、その言葉が胸の中にじんわりしみ込んでいく。
田舎娘。
追放者。
役立たず。
そんなラベルで塗りつぶされていた自分に、新しい名前が貼られようとしている。
“田舎の奇跡薬師”。
「……変なあだ名」
こっそりそう呟きながら、ミントは棚の薬草を整える手に少しだけ力を込めた。
外では、夕焼けが村をオレンジ色に染めている。
グリーンノートの小さな窓から漏れる灯りは、その色とゆっくり混ざり合っていく。
この日、サフランの心の中でされた“ひとつの決意”が、後に王都を巻き込む大騒ぎの始まりになることを――
ミントはまだ、知る由もなかった。
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