20 / 20
第20話「星降る夜のプロポーズと、その先へ」
しおりを挟む
村に、やっと本当の「夜」が戻ってきた。
魔物の唸り声も、瘴気のざわめきもない。
聞こえるのは、虫の鳴き声と、家の中から漏れてくる笑い声と、鍋を片づける音くらい。
焚き火の匂い。
焼きたてのパンと、少し煮込みすぎたスープの匂い。
胸の奥をじんわりと温める、生活の匂い。
「アンタ、今日の分のヒーロータイムはもう終わったんだから、ちゃんと飯食って寝なさいよ」
マリアが腰に手を当てて言う。
「はいはい、ちゃんと食べましたー。ほら」
空になった皿をひらひら見せると、彼女は満足そうに鼻を鳴らした。
「よろしい。
……で、アゼルは?」
「さっき外に出てた。なんか空、気にしてたし」
「ふーん」
意味ありげな声。
じろりと見つめられて、リラは思わず背筋を伸ばした。
「……なに」
「いや? 何にも?」
「その“なーんにも?”の声は完全に何か知ってる人のやつなんだけど」
「女のカンってやつよ」
「はいはい」
軽口を叩きながらも、心臓が少しだけ早くなる。
さっきから、胸の奥が落ち着かない。
戦いが終わった安堵だけじゃない、別のざわめき。
(……なんだろ)
理由は、すぐ見つかった。
家の戸を開けて外に出ると、夜の空気がひんやりと頬に触れる。
頭上には、冗談みたいな数の星。
息を呑むほど澄んだ空に、白い道が流れている。
「……星、多すぎない?」
『多すぎはしない』
背後から、聞き慣れた声。
振り向けば、家の壁にもたれて空を見上げているアゼルがいた。
いつもの黒髪。
村の服にすっかり馴染んだシャツとズボン。
でも、夜の明かりに照らされた横顔は、少しだけいつもと違う。
「竜族の領域から戻ってきてから、魔力の流れが安定したからな。
こういう夜は、星がよく見える」
「へぇ……」
隣に立って、同じ空を見上げる。
ふと、一筋の光が空を横切った。
「あ、流れた」
『ああ』
ひゅる、と、ひとつ。
間を置いて、もうひとつ。
さっきのより長い尾を引いて、星が落ちていく。
「……なんか、きれいすぎて怖いね」
『何故怖い』
「だって、“いつか終わりそう”って思うから」
口にしてから、自分でも少し驚く。
アゼルがこちらを見た。
「この静かな夜も、
村のみんなの笑い声も、
アゼルと一緒に空見てる時間も」
星が降るほど綺麗な夜は、いつか必ず終わる。
それがわかっているからこそ、少し怖い。
「ずっと続く保証なんて、ないもんね」
『そうだな』
あっさり肯定された。
「フォローは? “そんなことはない”とか言ってくれてもいいんだよ?」
『そんなことはない、とは言わん』
「ですよね」
『だが──“終わる”という事実が、今が価値あるものだという証明にもなる』
「……それ、ずるい言い方」
『そうか?』
「そうだよ」
文句を言いながらも、その言葉はすとんと胸に落ちた。
終わりがあるから、今を大事にしたい。
終わるかもしれないから、ちゃんと言葉にしたい。
そんなことをぼんやり考えていると──。
『リラ』
アゼルが、少しだけ真面目な声で呼んだ。
「ん?」
『少し、付き合ってくれ』
そう言った瞬間、彼の体からふわりと魔力の気配が溢れた。
黒い髪が風に舞い、彼の輪郭が揺れる。
次の瞬間には──巨大な竜が、そこにいた。
「え、ちょっと待って。え、飛ぶの?」
『他に何をすると思った』
「散歩とか! 村の周りぐるぐる歩くとか!」
『それはいつでもできる』
竜王はさらっと言って、翼を広げる。
『乗れ』
「あのねぇ……」
文句を言いながらも、心はもう決まっていた。
竜の背中の温もりを、知ってしまったから。
鱗の間に手をかけて、ひょいと飛び乗る。
いつの間にか、こういう動きも自然になっていた。
少し前まで、空を飛ぶなんて考えたこともなかったのに。
『掴まっていろ』
「うん」
翼が大きく一度、空を叩いた。
地面が遠ざかる。
村の家々の灯りが、足元の方へ流れていく。
風が一気に強くなり、髪が後ろになびく。
「わ──っ」
思わず声が漏れる。
何度飛んでも、最初の浮遊感には慣れない。
胃がふっと軽くなって、心臓が変なリズムを刻む。
でもその直後に、胸の奥から別の感情が湧いてくる。
たまらない解放感。
足元のしがらみや、地面の重さから一度だけ解放されて、
世界を上から見下ろすこの感覚。
村の灯りが、小さな星みたいに見えた。
家の数だけ、生活があって、笑い声があって、眠りがある。
その全部が、愛おしかった。
『寒くないか』
「ちょっとだけ。でも平気」
竜の背は、見た目よりあたたかい。
鱗の下にある鼓動が、背中越しに伝わってくる。
アゼルの飛び方はいつもより穏やかで、旋回も緩やか。
村の上空を一周し、森の上をなぞり、遠くの山の稜線をかすめる。
どこまでも飛んでいけそうな気がするけど──
アゼルは、ある場所で速度を落とした。
『降りるぞ』
「え?」
翼が角度を変え、ゆっくりと高度が下がっていく。
見えてきたのは、村の近くの小さな丘。
子どもたちが昼間よく遊んでいる場所で、
リラも何度かここで空を見上げたことがある。
今夜は誰もいない。
焚き火の明かりも届かない、真っ暗な丘の上。
そのど真ん中に、竜の影が静かに着地した。
地面の感触が足裏に戻る。
リラが背から降りた瞬間、アゼルの巨体がまた揺らぎ──
いつもの人の姿へと戻った。
「……なんか、デジャブ」
『どこがだ』
「こうやってさ、丘の上に二人きりで降りたことなかったっけ。
ほら、村に来たばかりの頃とか」
『あのときは、緊急着陸に近かっただろう』
「たしかに」
くすくす笑いながらも、胸の奥は落ち着かない。
アゼルの様子がおかしい。
いつもより、ほんの少しだけ肩に力が入っている。
瞳の色も、いつもより深く、真剣だ。
竜王が、少しだけ緊張しているのがわかる。
(……なにこれ、逆に怖い)
喉が渇く。
アゼルは、そんなリラの様子をちらりと一瞥し、
一度だけ深く息を吐いた。
「リラ」
「は、はい」
返事の声が妙に裏返る。
「お前に、渡したいものがある」
「……?」
アゼルは、ゆっくりと手を掲げた。
掌の上に、小さな光が生まれる。
それは竜の魔力の光ではなく──もっと金属的な、淡い銀のきらめき。
光が収まったとき、リラの視界に入ったのは、小さな指輪だった。
細い銀の輪。
飾りは控えめで、中心にちいさな石がひとつ埋め込まれている。
星のかけらみたいな、透明な石。
「……え」
頭の中が一瞬真っ白になる。
アゼルは、その指輪を大事そうにつまむと、リラの前で片膝をついた。
「ちょっと待って」
リラは条件反射で言った。
「何を待つ」
「いや、なんか、状況の理解が追いついてない……。
アゼルが膝ついてる。指輪持ってる。星降ってる。
……これ、もしかして」
「もしかして、だ」
アゼルは、苦笑とも照れ隠しともつかない表情を浮かべた。
「我も、人間の習俗を少し学んだ」
「誰から」
「マリアと、村の既婚者たちから」
「あの人たち、何教えてるの……!?」
村の女たちが焚き火の前でニヤニヤしていた顔が、思い出される。
絶対何か仕込まれてる。
心臓が、嫌になるくらい早く打ち始めた。
星が落ちる音まで聞こえそうなくらい、世界が静かになる。
アゼルは、真っ直ぐリラを見上げて言った。
「リラ」
「……うん」
喉が渇いて、声がかすれる。
「世界の均衡だの、竜族の理だの、王都の都合だの」
ひとつひとつ、彼は言葉を並べていく。
「全部、我の周りで勝手に騒いでいるものだ」
「勝手にって言い切っちゃったね今」
「事実だ」
少しだけ笑いがこぼれる。
でも、すぐに真顔に戻った。
「それらを無視することはできない。
我は竜王だし、お前ももう、“世界の流れ”に触れてしまった」
竜族との評議。
瘴気の渦の循環。
王都とのやり取り。
全部が、頭をよぎる。
アゼルは続ける。
「それでも──」
ほんの少しだけ、声が低くなった。
「それでもお前がいい」
その一言が、星空よりも眩しく胸に刺さる。
「たくさんの魔力の流れを見てきた。
竜族の長老たちの理屈も聞いてきた。
“世界はこうあるべきだ”という言葉も、飽きるほど聞いてきた」
彼の目が、少しだけ柔らかくなる。
「だが、“リラがここにいたいと言う場所を守りたい”と願ったとき──
世界の流れの見え方が変わった」
胸の奥が、じんと熱くなる。
「お前が笑うとき。
お前が怒るとき。
お前が傷ついて、それでも“守りたい”と言ったとき」
一回一回の記憶が、短い言葉にぎゅっと詰まっていた。
「我は、世界のどこかで起きている“抽象的な正しさ”よりも、
お前の“具体的なひとつ”を優先したいと思った」
竜王の告白は、変に飾っていなくて、だからこそずるいくらいまっすぐだった。
「我の伴侶になってほしい」
銀の指輪が、星明かりを受けてかすかに揺れる。
「竜王としてではなく、ひとりの竜として。
お前の笑い声も、涙も、全部、我の世界に欲しい」
言葉が、喉の奥で震える。
「もう二度と──」
アゼルは、ゆっくりと言葉を絞り出した。
「お前を“いらない”なんて言わせない。
神殿にも。
王都にも。
竜族にも。
世界そのものにも」
その言葉は、過去の自分の傷へ、まっすぐに手を伸ばしてきた。
冷たい石畳。
測定器の光。
「基準以下」と笑われた日。
門が閉まる音。
あの日感じた、「あ、私、本当にいらなかったんだ」という冷たさ。
それを覚えている心に、「違う」と言ってくれる声。
「……卑怯」
ぽろりと、本音がこぼれる。
「そこまで言われて、“はい”以外の選択肢取りづらいの、わかってる?」
「わかっている」
「開き直った!」
笑いながら、頬に熱いものが伝う。
涙の出発点は、悲しみじゃない。
嬉しさと、怖さと、救われた気持ちと、全部ごちゃまぜ。
アゼルは、それ以上何も急かさない。
ただ、指輪を持つ手を差し出して、リラの答えを待っている。
星がひとつ、またひとつ流れていく。
リラは、ぐしゃぐしゃになっていく視界の中で、アゼルを見つめた。
「……ねえ、アゼル」
「なんだ」
「私、誰かの都合で決めるのは、もう嫌だ」
「知っている」
「神殿で、“大聖女候補だから”って言われて、
“王都のため”“女神のため”って言われて、
自分の気持ちより、周りの都合ばっかり優先してきた」
その結果が、追放だった。
「“選べなかった”って、ずっと言い訳してた。
“あのとき私に選択肢なんてなかった”って」
でも、本当は。
「……たぶん、あったんだよね」
あの日、「嫌だ」と言う選択肢も。
あの日、「違う」と言う選択肢も。
全部、なかったわけじゃなかった。
「だから、今はちゃんと、“自分で決めたい”」
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、リラは笑った。
「誰かに“こうしてほしい”って言われたからじゃなくて。
世界が“こうあるべきだ”って言うからでもなくて。
アゼルの告白が嬉しいからだけでもなくて」
一度、深く息を吸う。
胸の奥に、自分の声を探す。
「アゼルの隣にいる私を、
私が好きでいたい」
その言葉を、星空の下に放った。
「“竜王の伴侶だから”じゃなくて。
“世界にとって特別だから”じゃなくて。
ただ、アゼルの隣にいる自分を、“いいな”って思っていたい」
すでにそう思いかけている自分がいることも、自覚している。
「だから──」
言葉の先が震える。
それでも、目は逸らさない。
「うん」
涙で濡れた頬を、ぐいと拭ってから、
リラはちゃんと言葉にした。
「よろしくお願いします」
星の光も、竜の影も、全部がその瞬間、静かに見守っているように感じた。
アゼルの目が、わずかに見開かれ、
すぐに、穏やかな笑みが浮かぶ。
「……ああ」
短く、それでいて深い肯定。
「こちらこそ、よろしく頼む」
銀の指輪が、そっとリラの左手を取る。
ひんやりとした金属の感触。
薬指に触れた瞬間、指先から胸の奥へかけて、じんと温かさが広がっていく。
指輪が薬指にはまりきった瞬間──。
光が、ふっとあふれた。
竜の加護の蒼い光。
聖女の加護の柔らかな金の光。
ふたつの光がぶつかり合うのではなく、
そっと重なり合って、淡い光の膜を作る。
その光は派手な爆発ではなく、
夜風に溶けるような、優しい揺らぎ。
「わ……」
リラは、自分の手を見つめた。
指輪が、脈打つみたいに、かすかに光っている。
胸の奥の泉と、アゼルの魔力の核と、それが細い糸で繋がっている感覚。
完全な“束縛”じゃない。
けれど、“お互いの場所を知っている”くらいの繋がり。
『これで、お前がどこにいても、我にはわかる』
「ストーカー宣言じゃん」
『違う。巣の所在確認だ』
「言い換えても怖いわ!」
文句を言いながらも、胸の奥がくすぐったい。
光が少しだけ落ち着いたとき──
アゼルは立ち上がり、リラの目の前に立った。
「……もうひとつ、やることがある」
「まだあるの?」
「人間の習俗によれば、指輪の次には“誓いのキス”というものがあるらしい」
「誰情報!? マリアさん!? どういう流れでその話になったの!?!?」
「彼女が酒の席で熱弁していた」
「やめてマリアさんの恋バナ酒席想像したくない!!」
顔から火が出そうだ。
でも──逃げたくない。
指輪を受け取った時点で、ずっと先まで一緒に歩くと決めた。
今日だけ特別なことでも、儀式だからやることでもない。
これから先、何度も重ねていく「ただいま」と「おかえり」の一部になる。
アゼルが、そっとリラの頬に手を添えた。
「嫌なら、しない」
「そうやって逃げ道作るのずるい」
「どちらがいい」
「……ずるいって言ったあとに聞くのもずるい」
笑いながら、リラは目を閉じた。
「嫌じゃないよ」
小さく呟く。
「むしろ、してほしい」
その瞬間、アゼルの指先が少し震えたのがわかった。
竜王だって、完璧じゃない。
こういうとき、ちゃんと緊張する。
それが妙に嬉しかった。
唇に、柔らかなぬくもりが触れる。
熱すぎず、軽すぎず。
確認するみたいに、一度触れて、少しだけ離れ、
それからもう一度だけ、そっと重なる。
竜の加護と、聖女の加護が重なったときにあふれた光が、
まだほんのりと残っていて、
キスのあいだ中、世界の輪郭が少しぼやけて見えた。
長くはない。
でも、十分だった。
離れたとき、リラの心臓はもう限界に近かった。
「……死ぬかと思った」
「そんなにか」
「いろんな意味で心臓に悪いよ」
笑いながら、頬を押さえる。
アゼルは、少しだけ困ったような、でも嬉しそうな顔をしていた。
「これから先も、似たようなことは増えると思うが」
「心臓鍛えときます」
『頼もしいな』
二人で笑う。
丘の上には、星が降り続けている。
世界はきっと、これからも面倒で、厄介で、痛いことも起こる。
竜族の理も、王都の思惑も、消えたりはしない。
魔力の流れだって、またどこかで歪むかもしれない。
それでも。
追放された元聖女リラと、
拾われたはずの竜王アゼルは──。
「自分で選んだ居場所」と、
「互いを巣と呼び合う関係」を手に入れた。
村という、小さな世界。
空という、どこまでも続く世界。
竜族の領域という、異質な世界。
王都という、騒がしい世界。
その全部を行き来しながら、
竜王の伴侶として、そして“一人のリラ”としての物語を歩いていく。
「ねえ、アゼル」
「なんだ」
「これから先も、きっとまためんどくさいこといっぱい起こるよね」
「ああ。断言してもいい」
「即答なんだ」
苦笑しながらも、それを受け入れる自分がいる。
「じゃあさ。
めんどくさい未来を、一緒に“あーもう!”って言いながら乗り越えてくれる?」
「もちろんだ」
アゼルは、星空の下で静かに微笑んだ。
「我の巣は、お前だ。
どれだけ世界が揺らごうと、帰る場所は変わらない」
「……ずるい」
「またか」
「そうやって、簡単に安心させてくるの、ほんとずるい」
でも、そのずるさが、今のリラには、何よりのご褒美だった。
星がひとつ、ふたつと流れていく。
夜はまだ長い。
でも、二人の「その先」は、もう動き始めている。
自分の足で選んだ道を、
竜王とふたりで、これから先も歩いていくために。
魔物の唸り声も、瘴気のざわめきもない。
聞こえるのは、虫の鳴き声と、家の中から漏れてくる笑い声と、鍋を片づける音くらい。
焚き火の匂い。
焼きたてのパンと、少し煮込みすぎたスープの匂い。
胸の奥をじんわりと温める、生活の匂い。
「アンタ、今日の分のヒーロータイムはもう終わったんだから、ちゃんと飯食って寝なさいよ」
マリアが腰に手を当てて言う。
「はいはい、ちゃんと食べましたー。ほら」
空になった皿をひらひら見せると、彼女は満足そうに鼻を鳴らした。
「よろしい。
……で、アゼルは?」
「さっき外に出てた。なんか空、気にしてたし」
「ふーん」
意味ありげな声。
じろりと見つめられて、リラは思わず背筋を伸ばした。
「……なに」
「いや? 何にも?」
「その“なーんにも?”の声は完全に何か知ってる人のやつなんだけど」
「女のカンってやつよ」
「はいはい」
軽口を叩きながらも、心臓が少しだけ早くなる。
さっきから、胸の奥が落ち着かない。
戦いが終わった安堵だけじゃない、別のざわめき。
(……なんだろ)
理由は、すぐ見つかった。
家の戸を開けて外に出ると、夜の空気がひんやりと頬に触れる。
頭上には、冗談みたいな数の星。
息を呑むほど澄んだ空に、白い道が流れている。
「……星、多すぎない?」
『多すぎはしない』
背後から、聞き慣れた声。
振り向けば、家の壁にもたれて空を見上げているアゼルがいた。
いつもの黒髪。
村の服にすっかり馴染んだシャツとズボン。
でも、夜の明かりに照らされた横顔は、少しだけいつもと違う。
「竜族の領域から戻ってきてから、魔力の流れが安定したからな。
こういう夜は、星がよく見える」
「へぇ……」
隣に立って、同じ空を見上げる。
ふと、一筋の光が空を横切った。
「あ、流れた」
『ああ』
ひゅる、と、ひとつ。
間を置いて、もうひとつ。
さっきのより長い尾を引いて、星が落ちていく。
「……なんか、きれいすぎて怖いね」
『何故怖い』
「だって、“いつか終わりそう”って思うから」
口にしてから、自分でも少し驚く。
アゼルがこちらを見た。
「この静かな夜も、
村のみんなの笑い声も、
アゼルと一緒に空見てる時間も」
星が降るほど綺麗な夜は、いつか必ず終わる。
それがわかっているからこそ、少し怖い。
「ずっと続く保証なんて、ないもんね」
『そうだな』
あっさり肯定された。
「フォローは? “そんなことはない”とか言ってくれてもいいんだよ?」
『そんなことはない、とは言わん』
「ですよね」
『だが──“終わる”という事実が、今が価値あるものだという証明にもなる』
「……それ、ずるい言い方」
『そうか?』
「そうだよ」
文句を言いながらも、その言葉はすとんと胸に落ちた。
終わりがあるから、今を大事にしたい。
終わるかもしれないから、ちゃんと言葉にしたい。
そんなことをぼんやり考えていると──。
『リラ』
アゼルが、少しだけ真面目な声で呼んだ。
「ん?」
『少し、付き合ってくれ』
そう言った瞬間、彼の体からふわりと魔力の気配が溢れた。
黒い髪が風に舞い、彼の輪郭が揺れる。
次の瞬間には──巨大な竜が、そこにいた。
「え、ちょっと待って。え、飛ぶの?」
『他に何をすると思った』
「散歩とか! 村の周りぐるぐる歩くとか!」
『それはいつでもできる』
竜王はさらっと言って、翼を広げる。
『乗れ』
「あのねぇ……」
文句を言いながらも、心はもう決まっていた。
竜の背中の温もりを、知ってしまったから。
鱗の間に手をかけて、ひょいと飛び乗る。
いつの間にか、こういう動きも自然になっていた。
少し前まで、空を飛ぶなんて考えたこともなかったのに。
『掴まっていろ』
「うん」
翼が大きく一度、空を叩いた。
地面が遠ざかる。
村の家々の灯りが、足元の方へ流れていく。
風が一気に強くなり、髪が後ろになびく。
「わ──っ」
思わず声が漏れる。
何度飛んでも、最初の浮遊感には慣れない。
胃がふっと軽くなって、心臓が変なリズムを刻む。
でもその直後に、胸の奥から別の感情が湧いてくる。
たまらない解放感。
足元のしがらみや、地面の重さから一度だけ解放されて、
世界を上から見下ろすこの感覚。
村の灯りが、小さな星みたいに見えた。
家の数だけ、生活があって、笑い声があって、眠りがある。
その全部が、愛おしかった。
『寒くないか』
「ちょっとだけ。でも平気」
竜の背は、見た目よりあたたかい。
鱗の下にある鼓動が、背中越しに伝わってくる。
アゼルの飛び方はいつもより穏やかで、旋回も緩やか。
村の上空を一周し、森の上をなぞり、遠くの山の稜線をかすめる。
どこまでも飛んでいけそうな気がするけど──
アゼルは、ある場所で速度を落とした。
『降りるぞ』
「え?」
翼が角度を変え、ゆっくりと高度が下がっていく。
見えてきたのは、村の近くの小さな丘。
子どもたちが昼間よく遊んでいる場所で、
リラも何度かここで空を見上げたことがある。
今夜は誰もいない。
焚き火の明かりも届かない、真っ暗な丘の上。
そのど真ん中に、竜の影が静かに着地した。
地面の感触が足裏に戻る。
リラが背から降りた瞬間、アゼルの巨体がまた揺らぎ──
いつもの人の姿へと戻った。
「……なんか、デジャブ」
『どこがだ』
「こうやってさ、丘の上に二人きりで降りたことなかったっけ。
ほら、村に来たばかりの頃とか」
『あのときは、緊急着陸に近かっただろう』
「たしかに」
くすくす笑いながらも、胸の奥は落ち着かない。
アゼルの様子がおかしい。
いつもより、ほんの少しだけ肩に力が入っている。
瞳の色も、いつもより深く、真剣だ。
竜王が、少しだけ緊張しているのがわかる。
(……なにこれ、逆に怖い)
喉が渇く。
アゼルは、そんなリラの様子をちらりと一瞥し、
一度だけ深く息を吐いた。
「リラ」
「は、はい」
返事の声が妙に裏返る。
「お前に、渡したいものがある」
「……?」
アゼルは、ゆっくりと手を掲げた。
掌の上に、小さな光が生まれる。
それは竜の魔力の光ではなく──もっと金属的な、淡い銀のきらめき。
光が収まったとき、リラの視界に入ったのは、小さな指輪だった。
細い銀の輪。
飾りは控えめで、中心にちいさな石がひとつ埋め込まれている。
星のかけらみたいな、透明な石。
「……え」
頭の中が一瞬真っ白になる。
アゼルは、その指輪を大事そうにつまむと、リラの前で片膝をついた。
「ちょっと待って」
リラは条件反射で言った。
「何を待つ」
「いや、なんか、状況の理解が追いついてない……。
アゼルが膝ついてる。指輪持ってる。星降ってる。
……これ、もしかして」
「もしかして、だ」
アゼルは、苦笑とも照れ隠しともつかない表情を浮かべた。
「我も、人間の習俗を少し学んだ」
「誰から」
「マリアと、村の既婚者たちから」
「あの人たち、何教えてるの……!?」
村の女たちが焚き火の前でニヤニヤしていた顔が、思い出される。
絶対何か仕込まれてる。
心臓が、嫌になるくらい早く打ち始めた。
星が落ちる音まで聞こえそうなくらい、世界が静かになる。
アゼルは、真っ直ぐリラを見上げて言った。
「リラ」
「……うん」
喉が渇いて、声がかすれる。
「世界の均衡だの、竜族の理だの、王都の都合だの」
ひとつひとつ、彼は言葉を並べていく。
「全部、我の周りで勝手に騒いでいるものだ」
「勝手にって言い切っちゃったね今」
「事実だ」
少しだけ笑いがこぼれる。
でも、すぐに真顔に戻った。
「それらを無視することはできない。
我は竜王だし、お前ももう、“世界の流れ”に触れてしまった」
竜族との評議。
瘴気の渦の循環。
王都とのやり取り。
全部が、頭をよぎる。
アゼルは続ける。
「それでも──」
ほんの少しだけ、声が低くなった。
「それでもお前がいい」
その一言が、星空よりも眩しく胸に刺さる。
「たくさんの魔力の流れを見てきた。
竜族の長老たちの理屈も聞いてきた。
“世界はこうあるべきだ”という言葉も、飽きるほど聞いてきた」
彼の目が、少しだけ柔らかくなる。
「だが、“リラがここにいたいと言う場所を守りたい”と願ったとき──
世界の流れの見え方が変わった」
胸の奥が、じんと熱くなる。
「お前が笑うとき。
お前が怒るとき。
お前が傷ついて、それでも“守りたい”と言ったとき」
一回一回の記憶が、短い言葉にぎゅっと詰まっていた。
「我は、世界のどこかで起きている“抽象的な正しさ”よりも、
お前の“具体的なひとつ”を優先したいと思った」
竜王の告白は、変に飾っていなくて、だからこそずるいくらいまっすぐだった。
「我の伴侶になってほしい」
銀の指輪が、星明かりを受けてかすかに揺れる。
「竜王としてではなく、ひとりの竜として。
お前の笑い声も、涙も、全部、我の世界に欲しい」
言葉が、喉の奥で震える。
「もう二度と──」
アゼルは、ゆっくりと言葉を絞り出した。
「お前を“いらない”なんて言わせない。
神殿にも。
王都にも。
竜族にも。
世界そのものにも」
その言葉は、過去の自分の傷へ、まっすぐに手を伸ばしてきた。
冷たい石畳。
測定器の光。
「基準以下」と笑われた日。
門が閉まる音。
あの日感じた、「あ、私、本当にいらなかったんだ」という冷たさ。
それを覚えている心に、「違う」と言ってくれる声。
「……卑怯」
ぽろりと、本音がこぼれる。
「そこまで言われて、“はい”以外の選択肢取りづらいの、わかってる?」
「わかっている」
「開き直った!」
笑いながら、頬に熱いものが伝う。
涙の出発点は、悲しみじゃない。
嬉しさと、怖さと、救われた気持ちと、全部ごちゃまぜ。
アゼルは、それ以上何も急かさない。
ただ、指輪を持つ手を差し出して、リラの答えを待っている。
星がひとつ、またひとつ流れていく。
リラは、ぐしゃぐしゃになっていく視界の中で、アゼルを見つめた。
「……ねえ、アゼル」
「なんだ」
「私、誰かの都合で決めるのは、もう嫌だ」
「知っている」
「神殿で、“大聖女候補だから”って言われて、
“王都のため”“女神のため”って言われて、
自分の気持ちより、周りの都合ばっかり優先してきた」
その結果が、追放だった。
「“選べなかった”って、ずっと言い訳してた。
“あのとき私に選択肢なんてなかった”って」
でも、本当は。
「……たぶん、あったんだよね」
あの日、「嫌だ」と言う選択肢も。
あの日、「違う」と言う選択肢も。
全部、なかったわけじゃなかった。
「だから、今はちゃんと、“自分で決めたい”」
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、リラは笑った。
「誰かに“こうしてほしい”って言われたからじゃなくて。
世界が“こうあるべきだ”って言うからでもなくて。
アゼルの告白が嬉しいからだけでもなくて」
一度、深く息を吸う。
胸の奥に、自分の声を探す。
「アゼルの隣にいる私を、
私が好きでいたい」
その言葉を、星空の下に放った。
「“竜王の伴侶だから”じゃなくて。
“世界にとって特別だから”じゃなくて。
ただ、アゼルの隣にいる自分を、“いいな”って思っていたい」
すでにそう思いかけている自分がいることも、自覚している。
「だから──」
言葉の先が震える。
それでも、目は逸らさない。
「うん」
涙で濡れた頬を、ぐいと拭ってから、
リラはちゃんと言葉にした。
「よろしくお願いします」
星の光も、竜の影も、全部がその瞬間、静かに見守っているように感じた。
アゼルの目が、わずかに見開かれ、
すぐに、穏やかな笑みが浮かぶ。
「……ああ」
短く、それでいて深い肯定。
「こちらこそ、よろしく頼む」
銀の指輪が、そっとリラの左手を取る。
ひんやりとした金属の感触。
薬指に触れた瞬間、指先から胸の奥へかけて、じんと温かさが広がっていく。
指輪が薬指にはまりきった瞬間──。
光が、ふっとあふれた。
竜の加護の蒼い光。
聖女の加護の柔らかな金の光。
ふたつの光がぶつかり合うのではなく、
そっと重なり合って、淡い光の膜を作る。
その光は派手な爆発ではなく、
夜風に溶けるような、優しい揺らぎ。
「わ……」
リラは、自分の手を見つめた。
指輪が、脈打つみたいに、かすかに光っている。
胸の奥の泉と、アゼルの魔力の核と、それが細い糸で繋がっている感覚。
完全な“束縛”じゃない。
けれど、“お互いの場所を知っている”くらいの繋がり。
『これで、お前がどこにいても、我にはわかる』
「ストーカー宣言じゃん」
『違う。巣の所在確認だ』
「言い換えても怖いわ!」
文句を言いながらも、胸の奥がくすぐったい。
光が少しだけ落ち着いたとき──
アゼルは立ち上がり、リラの目の前に立った。
「……もうひとつ、やることがある」
「まだあるの?」
「人間の習俗によれば、指輪の次には“誓いのキス”というものがあるらしい」
「誰情報!? マリアさん!? どういう流れでその話になったの!?!?」
「彼女が酒の席で熱弁していた」
「やめてマリアさんの恋バナ酒席想像したくない!!」
顔から火が出そうだ。
でも──逃げたくない。
指輪を受け取った時点で、ずっと先まで一緒に歩くと決めた。
今日だけ特別なことでも、儀式だからやることでもない。
これから先、何度も重ねていく「ただいま」と「おかえり」の一部になる。
アゼルが、そっとリラの頬に手を添えた。
「嫌なら、しない」
「そうやって逃げ道作るのずるい」
「どちらがいい」
「……ずるいって言ったあとに聞くのもずるい」
笑いながら、リラは目を閉じた。
「嫌じゃないよ」
小さく呟く。
「むしろ、してほしい」
その瞬間、アゼルの指先が少し震えたのがわかった。
竜王だって、完璧じゃない。
こういうとき、ちゃんと緊張する。
それが妙に嬉しかった。
唇に、柔らかなぬくもりが触れる。
熱すぎず、軽すぎず。
確認するみたいに、一度触れて、少しだけ離れ、
それからもう一度だけ、そっと重なる。
竜の加護と、聖女の加護が重なったときにあふれた光が、
まだほんのりと残っていて、
キスのあいだ中、世界の輪郭が少しぼやけて見えた。
長くはない。
でも、十分だった。
離れたとき、リラの心臓はもう限界に近かった。
「……死ぬかと思った」
「そんなにか」
「いろんな意味で心臓に悪いよ」
笑いながら、頬を押さえる。
アゼルは、少しだけ困ったような、でも嬉しそうな顔をしていた。
「これから先も、似たようなことは増えると思うが」
「心臓鍛えときます」
『頼もしいな』
二人で笑う。
丘の上には、星が降り続けている。
世界はきっと、これからも面倒で、厄介で、痛いことも起こる。
竜族の理も、王都の思惑も、消えたりはしない。
魔力の流れだって、またどこかで歪むかもしれない。
それでも。
追放された元聖女リラと、
拾われたはずの竜王アゼルは──。
「自分で選んだ居場所」と、
「互いを巣と呼び合う関係」を手に入れた。
村という、小さな世界。
空という、どこまでも続く世界。
竜族の領域という、異質な世界。
王都という、騒がしい世界。
その全部を行き来しながら、
竜王の伴侶として、そして“一人のリラ”としての物語を歩いていく。
「ねえ、アゼル」
「なんだ」
「これから先も、きっとまためんどくさいこといっぱい起こるよね」
「ああ。断言してもいい」
「即答なんだ」
苦笑しながらも、それを受け入れる自分がいる。
「じゃあさ。
めんどくさい未来を、一緒に“あーもう!”って言いながら乗り越えてくれる?」
「もちろんだ」
アゼルは、星空の下で静かに微笑んだ。
「我の巣は、お前だ。
どれだけ世界が揺らごうと、帰る場所は変わらない」
「……ずるい」
「またか」
「そうやって、簡単に安心させてくるの、ほんとずるい」
でも、そのずるさが、今のリラには、何よりのご褒美だった。
星がひとつ、ふたつと流れていく。
夜はまだ長い。
でも、二人の「その先」は、もう動き始めている。
自分の足で選んだ道を、
竜王とふたりで、これから先も歩いていくために。
16
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界から来た聖女ではありません!
五色ひわ
恋愛
ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。
どうすれば良いのかしら?
ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。
このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。
・本編141話
・おまけの短編 ①9話②1話③5話
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する
ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」
ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。
■あらすじ
聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。
実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。
そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。
だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。
儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。
そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。
「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」
追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。
しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。
「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」
「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」
刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。
果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。
※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。
※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
【完結】辺境伯令嬢は敵国の将軍に嫁ぎます 〜戦場で命を賭した幼馴染と政略結婚〜
藤原遊
ファンタジー
辺境伯令嬢エリシアーナは、生まれながらに強大な魔力を宿し、領民を護るため幾度も戦場に立ってきた。
彼女が幼い頃に心を通わせた婚約候補は、隣国アーデンの若き将、レオンハルト。
幼馴染として笑い合い、やがて結ばれるはずだった二人は、宗教対立による戦乱の波に引き裂かれる。
数年後、青年へと成長した二人は――戦場で敵として再会する。
大規模魔法の詠唱を始めたエリシアーナを止めるため、レオンハルトは兄を失った記憶と責務に駆られ、剣を振るう。
彼女は抵抗を緩め、血を吐きながら微笑み、倒れた。
「好きな人に殺されるのなら、それも仕方ない」
その想いを胸に秘めたまま。
だが戦は泥沼化し、やがて両国は疲弊する。
停戦の末に下された決定は――和平の象徴として「ヴァレンシア辺境伯の長女をアーデンに嫁がせよ」。
瀕死から生還したエリシアーナは、妹クラリッサの涙を背に、敵国へと嫁ぐ覚悟を決める。
そこに待っていたのは、幼馴染であり、自らを刺した男――レオンハルト。
「恨まれているのだろう」
「嫌われてしまったのだ」
互いに心を閉ざし、すれ違う新婚生活。
冷徹に見える夫、拒絶されたと感じる妻。
戦で刻まれた傷と誤解は、二人を遠ざけていく。
やがて病に伏し、衰弱していくエリシアーナ。
死の間際に、レオンハルトは震える手で彼女の手を握り、独白する。
「許さなくていい。……死ぬなら俺も連れて行ってくれ。死んでも離さない」
その言葉は、彼女の閉ざされた心を解き放つ。
戦場で刃を交えた二人は、和平の花嫁と将軍として再び結ばれる。
憎しみの連鎖を超えて、切なくも甘い愛の物語が幕を開ける――。
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる