記憶を失った花嫁は夫だと言う男に溺愛されるが結婚契約書に書いてある名前は別の男でした

タマ マコト

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1話「白百合の朝に」

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 白百合の香りが、胸の奥まで満たしていた。甘く、清く、少しだけ湿った匂い。花弁には朝露が残っていて、光を飲み込むように透け、祭壇の上で淡い虹をつくる。陽は斜めから差し込んでいて、ステンドグラスの青や紅が床に散り、花嫁衣装の裾に溶けていた。

 目を開けた瞬間、世界は白に近かった。白百合の束、白い帳、白い息。わたしの名前だけが、薄い光の線みたいに残っていて――アイリス・フィオレンティーナ。そこから先の線は、紙が濡れて滲んだように途切れている。

 視界の端で、黒い影が揺れた。黒衣の男。長身で、礼拝堂の光と影を背中に背負って立っている。

「目は、覚めたか」

 声は低く、ひと呼吸ごとに温度があった。硬いのに、どこか疲れている。わたしは喉の奥でからんだ砂を押し流すみたいに唾を飲み込み、身を起こそうとして、胸もとを引く指輪の冷たさに止まった。

 銀の指輪。細い花模様が彫られ、内側に古い文字が走っている。ひやりとした輪が、皮膚の鼓動に合わせて、ここにいる、と刻む。

 黒衣の男は近づいてきて、まっすぐわたしを見下ろした。睫毛の影が頬に落ち、瞳は深いグレー。戦場の雲みたいな色。けれどその奥で、薄い灯が揺れている。

「お前は俺の妻だ」

 短い言葉が、礼拝堂の高い天井で一度跳ねて戻ってくる。妻。わたしの胸は、どく、とわずかに大きく鳴った。それから遅れて、燃える城の映像が一瞬、脳裏を焼く。赤い火が石壁を舐め、風に煽られた幕が燃え落ち、鼻の奥が鉄の匂いで痛む。誰かが叫んで、誰かが笑って、金属が擦れ合う甲高い音――。

 視界がぶれる。指でこめかみを押さえると、男が短く息を吸い、かがみ込んだ。

「立てるか。無理はするな。すぐ水を――」

「……誰、ですか」

 問いは自分でも驚くほど小さかった。声に芯がない。花瓶の水みたいに、揺らすとすぐ波立つ。

 男は答えず、喉仏が一度だけ上下した。黒衣の肩がわずかに緊張し、次の瞬間にはその手が差し出されていた。指先に古傷が走り、手のひらは武器を握り慣れている固さ。それでも触れ方は、ガラスに触れるみたいにそっとだ。

「俺はリオン・ヴァーベナ。……お前の夫だ」

 夫、という音が二度目に触れても、やっぱり馴染まない。けれどその名は、舌に置いた黒糖みたいにゆっくり溶け、温度を残した。リオン。遠くで鐘が鳴り、鳥が鳴き、礼拝堂の扉の向こうで人の気配が微かに動く。朝の世界は、わたしを置いて滑っていく。

 渡された水は、冷たくて甘かった。銀の杯の縁に、光が線を引く。喉を通る水音が自分のものじゃないみたいにやさしく、胸の奥の乾いた部分に染み込んでいく。

「痛むか」

「少し……頭が、重いだけです」

「医師がもうすぐ来る。今日は動かなくていい。ここは安全だ」

 安全。その言葉に、皮膚がぞわりと粟立つ。安全、ということは、危険があった、ということ。脳の隙間に火の赤がまた滲み、鉄の匂いが戻りかけて、わたしは慌てて首を振った。白百合の香りを強く吸い込む。冷たい香りが、熱を追い払う。

「……ここは、どこ」

「王都の北にある聖堂だ。お前は、ここで倒れた。いや……俺が運んだ」

 言葉の途中で、リオンの視線が一瞬だけ逸れた。床のステンドグラスの色だけが、彼の頬を淡く染める。

「どうして、わたしは……何も覚えてないの」

 問いは宙に浮いて、わたしと彼の間に薄い膜みたいにかかった。リオンは答えを選ぶ時間を、ほんの少しだけ取った。眉根がわずかに寄り、呼吸が浅くなる。

「――頭を打った。長くは続かない。医師が言うには、休めば戻ると」

 長くは続かない。その約束は、紙でできた盾のように頼りなかった。けれどわたしは頷いた。頷くしかなかった。背中に貼りついた冷たい汗と、指輪の重みと、他人の名を自分に当てるみたいな彼の言葉。それら全部を同時に抱えるには、まだ朝の光は薄すぎた。

 リオンは立ち上がり、扉の方へ視線を投げる。

「誰も入れるなと言ってある。……怖いか」

 怖い、という言葉は、喉の手前で躓いた。怖いものの輪郭が、まだ遠すぎる。白百合の香りと朝の光に、恐怖は溶けて形を失っていく。

「大丈夫。……多分」

 わたしが笑おうとすると、リオンの目元がわずかに緩んだ。笑う、という行為が自分の顔にどう映るのか、なぜかとても大事に思え、わたしは頬の筋肉を慎重に動かした。

「無理に笑うな。俺は、ここにいる」

 こんなに短い言葉が、こんなに重い意味を持つことがあるのだと知る。ここにいる。彼の影が、白い床の上で長く伸びて、わたしの足先に触れた。

 聖堂の奥では、司祭らしき老人が声を潜め、修女が祭具を整えている気配がした。長い廊の石は冷たく、朝の冷気を抱いている。窓から流れる光に漂う塵の粒は、舞い上がるたびに色を変えて、ささやかな祝福のようだった。

 わたしは指輪をもう一度見た。内側の文字は、読むたびに順序を変える古い呪文みたいで、触れるほど胸のあたりがざわめく。そこに初めて気づく。肌の、心臓の、深いところに、何か細い糸のようなものが通っている。見えない糸が、指輪とわたしを繋いで、律動を同期させている。

 リオンが膝をつき、わたしの手にそっと触れた。手袋を外した指は、思いのほかあたたかい。わたしは条件反射みたいに指先を引きかけ、あ、と思い直して留める。彼の目が、わずかに安堵で揺れた。

「寒いか」

「……少し」

 言った自分に驚く。寒さは、体温の問題ではない。空白が冷たい。思い出せないということは、世界が広すぎるということだ。白い地図を持たされて、ここから線を引けと言われているみたいだ。

 彼は肩から黒い外套を外し、迷いなくわたしの肩にかけた。布地は重く、鋭い香木の匂いがした。男の匂い。戦場の風の匂い。けれどその奥に、微かな薬草の香りも混じっている。誰かが彼の手当てをした気配。誰に――という問いは浮かんだが、口には出さない。

「……ありがとう、ございます」

「礼はいらない。……それより、喉は?」

「だいぶ、いいです」

「なら、少しだけ歩くか。光に当たった方が、楽になる」

 立ち上がると、膝が笑った。床が遠くなったり近くなったりする。リオンの手は離れない。支えられていることが、こんなにも正直に体に伝わるものだと知る。

 聖堂の側廊を歩く。壁には古い絵画。聖なる湖の伝説、剣を掲げる王、花の冠を戴く女。石の間を風が通り、香炉の煙が細く揺れる。修女が目礼し、司祭が短く祈りを捧げる。誰も大声を出さない。朝は、柔らかい音だけでできている。

 外に出る扉の前で、リオンが立ち止まった。

「眩しい。ゆっくり目を慣らせ」

 扉が開く。光が溢れ、わたしの瞳孔がきゅっと縮む。屋根の上を滑る陽、石畳の淡い反射、庭の草露。聖堂の庭には、白百合に似たが少し形の違う花が列をなし、風に揺れていた。鐘楼から、ゆったりと鐘が一度だけ落ちる。音は、胸の骨にやさしく触れていく。

 外気は冷たいのに、陽はあたたかい。肩にかけられた外套の重みは、妙に安心をくれる。わたしは空を見た。どこまでも青く、すこしだけ薄い。そこに何も書かれていないのだと実感すると、呼吸が深くなる。

「ここ……知っている気が、します」

 口からこぼれた言葉に、自分で驚く。知っている。けれど具体の配置は思い出せない。庭の隅、古い石のベンチ、割れ目に苔、木陰に置かれた鳥の水浴び皿。隅々に、誰かの手の気配。懐かしさというより、丁寧さに安心する感覚。

「前にも来た。……お前が、好きだと言ったから」

 リオンの横顔は、朝の光で輪郭が柔らかい。硬さは消えていないのに、目尻の影が薄くなっている。

「わたしが、好きだって」

「ああ。白い花は、心が軽くなるって」

「……わたしが」

 反芻すると、胸の奥で何かが小さく鳴った。遠い、遠い場所で、自分が笑った記憶の影が動く。けれど次の瞬間、鉄の匂いがまた鼻の奥を刺し、景色の端が赤く染まる。火。熱。風。誰かの腕。誰かの声。

 わたしは無意識にリオンの袖を掴んでいた。

「……ごめんなさい」

「謝るな。怖かったら、掴め」

 命じるみたいな口調なのに、声の芯は柔らかい。わたしは指先に力を込め、彼の袖の布を確かめる。厚手の上質な布に、微かに剣油の匂い。指先はすぐに温度を覚える。わたしは今、ここにいる。

 庭の真ん中の白砂は、光を跳ね返して眩しい。石畳の目地に小さな青い草が生えている。すべてが細かく、すべてが静かで、すべてが朝だ。

 修女が湯気の立つカップを持ってきてくれた。薄いハーブの香り。手に取ると、指の骨まで温まる。ありがとう、と言うと、修女はにこりと微笑み、視線でリオンに合図を送った。

「医師は?」

「まもなく」

 短い問答。二人の間には、わたしの知らない合図や共通の記憶がある。その事実が、胸のどこかをきゅっと締めつける。置いていかれている、というより、取りこぼしている感じ。拾い直せるのなら拾いたい。けれど手を伸ばす先が、まだ白い。

「リオン、さん」

 呼ぶと、彼はわずかに肩を揺らし、わたしの方を見る。名を口にすると、喉の奥の固まりが少し溶ける。名には重さがある。相手を見る索引のようなもの。

「リオンでいい」

「……リオン」

 音が短くなっただけで、距離が半歩縮んだ気がした。彼の目尻の影が、それに呼応するみたいに柔らかくなる。

「痛む時は、目を閉じて、ゆっくり呼吸しろ。四つ数えて吸って、四つ止めて、四つ吐く。――そうだ」

 指先がわたしの背に触れ、骨の並びを確かめるみたいにゆっくり撫でた。手のひらの温度は、さっきよりも高い。朝の陽に温められた石の温度。規則正しい動きに合わせて、胸の上下が落ち着いていく。

「……上手い、ですね」

「戦場じゃ、誰でも覚える」

 さらっと言ったその一言に、遠くの風景がちらりと見えた気がした。戦場。砂塵。叫び。鉄の匂い。彼はそこにいて、戻ってきて、ここにいる。わたしの知らない道のりが、彼の体に刻まれている。

 ふいに、指輪の内側の文字が、朝の光で読めた気がした。いや、読めない。読めた、と思った瞬間に並びが変わる。冗談みたいに、こちらの焦りをからかうみたいに。わたしはそれでも目を凝らす。意味がほしい。線がほしい。

「焦らなくていい」

 リオンの声が、わたしの視線をやさしく遮る。わたしは頷く。頷くことに、少し慣れてきた。

 聖堂の小さな鐘がもう一度鳴った。午前の鐘にしては少し早い。医師が来た合図かもしれない。修女が扉の方へ歩き、誰かと短く言葉を交わす。足音が近づく前に、リオンがわたしの手をもう一度握った。逃げ道を塞ぐような強さではなく、落ちないように支える強さで。

「俺は、ここにいる」

 同じ言葉を繰り返されたのに、響き方はさっきと違った。午前の光が少し高くなり、影が短くなっている。時間が動いている。わたしの中の空白も、ゆっくりだが輪郭を得はじめている。怖さと安堵が同じ器に注がれて、混ざり合って、色を変える。

 白百合の香りは、朝からずっと薄まらない。風が動くたび、花弁がかすかに触れ合って、微かな音を立てる。花の音なんて、今まで意識したことがなかった。今は、世界のすべてが少し大きく聞こえる。生きている音だ。生きている――わたしは生きている。そう思うと、不意に喉が熱くなった。

「泣いても、いい」

 言われるまで、泣きたいと思っていなかった。言われた瞬間、目の端が熱くなり、涙は簡単に溢れた。頬を伝う水は、朝の光を細く曲げ、白い花を少しだけ滲ませる。

「ごめんなさい」

「謝るな。……俺の方が、謝る側だ」

 彼はそれ以上、何も言わなかった。言葉の先を飲み込む喉の動きだけが見えた。理由は分からない。分からないのに、胸のどこかが、わずかに頷いた。まだ言葉にならない了解。空白は、時々、直感で埋まる。

 医師の足音が、石の廊を踏んで近づいてくる。白いコートの裾が視界に入る。その前にリオンが身を引き、わたしの背に回した手をするりと外した。離れる温度に、体がふっと浮く。

「少し診てもらう。終わったら、またここで陽に当たろう」

「……はい」

 返事は自然に出た。朝の光は、さっきよりも強い。白百合の香りは、深くなったのではなく、鼻が慣れて層が分かるようになったのだと気づく。甘さの下に、青い匂い。青の下に、土の匂い。命の匂いは、たくさんの層でできている。

 涙はもう止まっていて、目の縁だけが少し熱い。指輪は相変わらず冷たく、脈を刻む。遠く、街の方から馬車の軋む音と人々のざわめき。世界は大きい。けれど今は、白百合の庭と、石の色と、黒衣の男の背中だけが、わたしの地図の中心だ。

 わたしは深呼吸をして、医師に顔を向ける。午前の光が、頬に柔らかく当たる。空白は空白のまま、でもその縁がほんの少しだけ温かい。

 彼――リオンは、扉の柱にもたれて立っていた。こちらを見て、静かに頷く。その頷きに合わせるように、心臓が一拍、落ち着いた。

 白百合は揺れ続ける。午前の鐘は静かに過ぎ、昼へ向かう気配が空気の温度に混じっていく。わたしはその真ん中で、安堵と恐怖の両方を抱えたまま、知らない夫の腕の温度を思い出す。さっきまで、そこにあった確かな重さ。あの温度は、怖い。けれど、あれがなかったら、きっと今ここで崩れていた。

 だから――もう一度、昼までのあいだだけでいい。あの温度に、身を任せたい。空白がわたしを呑み込まないように、白百合の香りと、彼の声と、朝の光に、体をつないでいたい。

 庭に風が渡り、花弁が一枚、わたしの膝に落ちた。小さな白を指に乗せる。花は軽く、すぐに逃げる。捕まえようとして、わたしは笑った。自然に。ほんの、少しだけ。空白の縁が緩んで、昼が近づく。空は高い。鐘楼の影は短くなり、世界は今日を続ける。

 わたしも続ける。指輪の冷たさを確かめながら、呼吸を整え、目を閉じて四つ数え、四つ止めて、四つ吐く。そうやって、午前の終わりまでを渡っていく。安堵と恐怖の混ざった舟で、知らない夫のいる岸へ。彼はそこにいる。俺はここにいる、と言った声は、まだ耳の奥で温かい。
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