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2話「黒衣の夫、冷たい夕餉」
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屋敷は、外観よりも静かだった。門を潜ってから玄関の大扉まで、敷き詰められた石に夕陽が溶け、影が長く揺れては消える。高い天井、磨かれた手摺、古い絵画――どれも手入れが行き届いて、余計な音を立てない。足音だけが、やさしく階段に吸い込まれていく。
「疲れただろ、無理すんな」
リオンはそう言って、肩に回しかけた手を途中で止めた。触れる前の空気にだけ、体温が滲む。わたしの視界の端で、彼の手がわずかに握られてほどけた。触れたくて、触れられない。距離は一歩分。けれど、その一歩が深い溝みたいに感じられる。
「大丈夫です。……多分」
「なら、座れ。今、用意させる」
食堂は長いテーブルの片側だけが整えられていた。白いクロス、シャンデリアの光、銀食器の冷たさ。椅子に腰を下ろすと背筋が勝手に伸びる。布のきしむ音に、胸の鼓動が一拍遅れて重なる。
すぐに給仕が現れ、音を立てない所作で皿を置いていく。スープはポタージュ。表面が絹みたいに滑らかで、湯気が柔らかく立ち昇る。焼きたての白パン、香草を纏った白身魚、酸を控えめにしたサラダ。どれも、口にする前から分かる。「わたしの好み」だ。
「……これ、わたしの」
「ああ。好きだった。少なくとも、ついこないだまでは」
リオンは向かいに座らない。テーブルの端で、壁側に立ったまま静かに見守る。椅子を引く音がなかったから、座らないと決めていたのだろう。丁寧すぎる距離。わたしが一人で食事をするのを邪魔しない、という配慮に見えるが、同時に線引きのようでもある。
「……一緒に、どうですか」
言ってから、声が少し上ずったのに気づく。これが礼儀に合うのかも分からない。わたしは花瓶の白い花に視線を逃がした。白百合じゃない。小さなレースのような花。名前は出てこない。
「俺は後でいい。まずは食え」
「食べ方、忘れていたらどうしようって思って」
冗談のつもりだったのに、言葉は冗談らしく降りない。彼の目が一瞬だけ揺れた。
「忘れてても、いい。ゆっくりでいい。……熱いから気をつけろ」
匙を持つ。指に馴染む重さ。スープをすくう角度、唇に触れる温度、喉を滑る粘度――体は覚えているのに、舌だけが空白だ。塩気のはずの場所で味が止まり、甘さに届く直前に輪郭が消える。温度だけを味わっているみたいで、少し怖い。
「どうだ」
「……やさしい味、です」
言葉を探してやっと見つける。わたしは自分の舌に、やさしい、という曖昧な意味を宥める。皿の上の蒸気は規則正しく立ち上り、照明の粒が細かく揺れている。世界は微細で、味だけが遠い。
パンは表面が薄く固く、手で割ると音がした。中は湯気を抱き、白い柔らかさが湧く。ちぎって口に入れると、粉の匂いが鼻に抜けた。匂いは分かる。味はやっぱり薄い。薄いというより、わたしの内側に届く前に消えていく。
給仕が、黙って小さなジャム皿を置いた。赤い。苺。瓶に入っていた時間の甘さ。
「お嬢様、もしお口に合わなければ」
「……いえ。ありがとう」
視線を上げると、給仕は柔らかく頭を下げた。彼女の瞳に浮かぶのは、心底からの気遣いと、怯えと、合図。言い慣れた文句が唇で待っている気配。
「ご無理はなさらず」
やっぱり、その言葉。玄関でも、廊下でも、階段でも聞いた。使用人は皆、同じ調子で同じ音を出す。「ご無理はなさらず」。それは配慮の仮面でもあり、鍵でもある。そこから先に踏み込むな、というやさしい拒絶。
リオンが小さく顎を引いた。給仕はそれだけで下がる。扉が静かに閉じられ、また二人だけの空気が戻った。
「皆、優しいですね」
「……ここは、お前の家だからな」
「家、ですか」
口に出すと、テーブルの木目が急に他人行儀に見えた。わたしの家。言葉は紙の上で意味を持って、空気に出ると途端に薄くなる。家に付随する匂いや音、靴を脱ぐ場所や鍵の重さ、雨の日の渡り廊下――そういう細部がまるごと抜けている。
「少し、歩いたら思い出す。そういうものだ」
リオンの声は慎重だった。真実を語るというより、祈るようなリズム。彼の視線が、テーブルの端からわたしの指へ、指輪へと泳ぎ、そこからまた壁の古時計へ戻る。古時計は秒を刻まない。長針と短針だけが、静かに位置を変える。
魚料理は、香草がやわらかく香った。ナイフを入れると、身がきれいに割れていく。フォークで口へ運ぶ。舌の上を通って、喉へ落ちるまでに、いくつかの段差があるのを感じる。味に段差。段差の向こうに、何かが置いてある気がするのに、手が届かない。
「合わないか」
「いえ。……美味しいはずだって、分かる」
リオンの喉が小さく鳴った。音はすぐに消えたが、言葉にしない痛みが一瞬だけ顔を出した、そんな気配。
「無理しなくていい。少しでいい」
「無理、してるように見えますか」
「見える」
即答だった。わたしは笑ってみせる。今度は自然に。けれど、笑顔の端が自分で見ても心許ない。
窓の外では、暮れかけの空が濃紺を取り戻し、屋根の上に一番星が出始めている。庭の噴水が細い音で水を跳ねさせ、遠くの街道を馬車が通る音が薄く届いた。世界が夜の支度を始めた。屋敷はそれに合わせて、音をさらに小さくする。
「眠くなったら、すぐ言え」
「……まだ大丈夫です。少し、このまま」
食事の終わりに、小さな陶器の器が出された。カスタードのプリン。表面がわずかに震え、焦がした砂糖の膜が薄く光る。「好きだった」もの。スプーンを入れると、膜がかすかに割れる音がして、甘い匂いが立った。口に入れる。舌が一瞬だけ、喜ぶ。甘さは輪郭を残しやすい。喉を通る頃にはやっぱり薄くなるが、甘さの影がしばらく舌の根に留まった。
「これは、好きです」
言うと、リオンの目がほっと笑った。ほんの少し。わたしはその笑い方を覚えようとする。目尻の皺の寄り方。頬の筋肉の緩み。眉間の線が薄くなる角度。全部、小さな救いとしてポケットにしまう。
食事が終わると、給仕が無音で皿を下げ、テーブルの上は花瓶と灯りだけになった。リオンはやっと椅子を引き、少し離れた場所に腰を下ろす。テーブルの角越しに、視線が交わる。夜の音が増え、屋敷の中の人の気配が遠のく。
「体は、どうだ」
「さっきより、楽です。……眠気も、少し」
「医師の薬が効いてる。今夜は早く休め」
「はい」
返事をしてから、わたしは自分の指を見た。銀の指輪は温度を持ち始め、皮膚に馴染んでいる。昼間よりも、脈と指輪の鼓動が合ってきた気がする。内側の古い文字は、灯りではやはり読めない。読めないのに、読むべきだと心の奥が急かす。
「……この文字、なんて書いてあるんですか」
問いかけは、水面に落ちる小石くらいの軽さで放たれた。リオンは一拍置いてから答える。
「古い誓いの言葉だ。読み上げるものじゃない」
「どうして」
「……言葉には、起きる力がある」
言いながら、彼はふと視線を落とした。記憶の底から掬い上げたような口ぶり。わたしは唇を閉じ、スプーンの柄に映る揺れた自分の顔を見る。知らない女。まばたきは同じ速度。眉の上の小さな傷。どこで作ったのか、誰と――。
扉の方で、音もなく影が動いた。給仕の青年が、夜の茶を運んで来たのだ。淡い香り。花のような、草のような。湯気が白い指を立て、すぐに薄くなる。
「温かいお茶を。……ご無理はなさらず」
また、その言葉。彼は気づいているだろうか。彼自身の口からは出ないのに、屋敷全体がそれを繰り返すのを。
「ありがとう」
わたしが礼を言うと、青年は胸に手を当てて下がった。扉が閉まる。リオンは茶器をこちらへ押し、湯飲みの位置を直す。細やかな手つき。手袋を外した手の甲に、薄い傷が幾つも走っている。古いもの、新しいもの。指先の皮膚は固く、でも持ち上げる角度は、壊れ物を扱う癖のまま。
「眠れそうか」
「……眠ったら、夢を見そうです」
口にしてから、胸の奥が冷える。夢の内容はまだ言葉になっていない。言葉にする前に、影が先に立つ。
「夢は、悪いか」
「分かりません。怖い気がする。……でも、少しだけ楽しみな気もする」
矛盾した感情が言葉になって空気に置かれる。リオンはしばらく黙ってから、低く返した。
「怖くなったら、呼べ。すぐ行く」
「夜中でも?」
「夜中でも」
会話の合間に、屋敷のどこかで時計が短く鳴った。九つか、十。数字を数える前に、鐘の余韻が混ざって消える。夜は完全に降りた。窓の外に星が増え、庭の影が深くなる。
「部屋まで、送る」
「……少しだけ、このまま」
湯飲みに口をつける。温度が舌にやさしい。香りは、どこか懐かしい。これは覚えているのか、それとも今覚えるのか。分からないまま、鼻の奥に溜めておく。
食堂の隅に火の入った暖炉があり、炎が静かに木を舐める。パチ、と小さな音がするたび、わたしの肩の緊張が少しずつ解ける。リオンは椅子の縁に座って背筋を伸ばし、膝の上で手を組んでいる。その姿勢は、脱ぐことのできない鎧のようだった。
「……怒ってますか」
自分でも驚く問いが落ちる。誰に、何に、という主語のない問い。リオンは眉をほんの少し動かし、首を横に振った。
「怒ってない」
「わたしが、何も思い出せないから」
「怒る理由がない。お前が悪いことは、何もない」
「じゃあ、誰に怒ってるの?」
今度は言ってから、息を飲む。彼は答えない。目を逸らすわけでもなく、こちらを見たまま沈黙だけを置く。沈黙は、怒りの一種なのだと知る。自分へか、世界へか、過去へか。彼の沈黙は、刃物の平らな面みたいに光を反射していた。
「……ごめんなさい」
「謝るな」
短い言葉。彼の声はいつも短い。短い言葉の背後に、長い何かが隠れているのが分かる。それは今はまだ、見ないでおくべきものの形をしている。
眠気は、静かに、でも確実に近づいてきた。目の奥が重くなり、視界の輪郭が柔らかい布でくるまれたみたいに丸くなっていく。湯飲みの温度が心地よい。空気は甘くないのに、やさしい。味のない一日が、最後だけ少し甘く感じられた。
「部屋へ」
「……はい」
立ち上がると、足元がふらりとした。リオンの手が、躊躇いを抱えた速さで伸びる。触れる、触れない、触れる――掌が肘に軽く添えられ、支える力は必要十分で、そこに余計な意味はなかった。わたしは支えられたこと自体に救われる。
廊下は長い。壁に沿って小さな燭台が続き、炎が一定の間隔で揺れている。絨毯は厚く、歩く音を飲み込む。扉がいくつも並び、それぞれの向こうに誰かの気配が薄くたまっている。時々、使用人とすれ違い、そのたびに同じ言葉が降る。
「どうぞご無理はなさらず」
「ご無理はなさらず、お嬢様」
言葉はやさしい雨のように降り続け、足元の絨毯に染み込んでいく。やさしさは、時に重い。重さは、眠気と似ている。わたしは、その重さに身を委ねることを許されているのだろうか。
部屋の扉は、廊下の突き当たり近くにあった。重厚な木に鉄の取っ手。リオンが先に扉を押し開ける。部屋は広すぎず、白と淡い灰が基調。ベッドの天蓋は薄い布で、窓辺には夜の街が額縁みたいに切り取られている。暖炉の火はここでも静かで、空気は少し甘い香りがした。花瓶に活けられた白い花――昼間と違う種類。今度は名が出た。ジャスミン。これは、わたしが言える。
「……良い匂い」
「お前が好きだった」
「そう、なんですね」
言ってから、布の皺を指でなぞる。手触りをひとつずつ覚え直す。クッションの柔らかさ、毛布の重さ、枕の高さ。小さな引き出しに入ったランプ。鏡台の上に並ぶ櫛。誰かの暮らしの跡。わたしの暮らしの跡、らしい跡。
「医師の薬、枕元に置いとく」
「ありがとうございます」
リオンは小瓶を取り出して、ランプの横にそっと置いた。寝台の脇に立つ彼は、部屋のどこにいても影を作る。けれどその影は、怖くない。むしろ、影があることで部屋の輪郭が安定する。
「眠る前に……一つだけ、いいですか」
「何だ」
「どうして、そんなに――丁寧なんですか」
空気が一瞬止まる。彼はわずかに目を伏せ、口元で小さく息を整えた。
「壊したくないからだ」
答えは、驚くほど真っ直ぐだった。飾りも、ごまかしもない。壊したくない。何を、と問う前に、胸の奥のどこかが理解してしまった。
「俺は、荒い。だから、丁寧にしてる。……それだけだ」
それだけだ、にたくさんの何かが詰まっている。わたしは頷き、布団の縁に腰を下ろす。眠気はもう、まぶたの裏に手を伸ばしている。
「おやすみ」
「おやすみなさい、リオン」
名前を短く呼ぶと、彼の肩がふっと軽く見えた。部屋を出る直前、彼は振り返らない。扉が閉まり、音は柔らかく消える。
ランプを落とす。半暗闇。暖炉の火だけが、小さな鼓動で部屋を照らす。枕に頭を預けると、体が沈み、布団の重さが心地いい。目を閉じる。暗闇はすぐに深くならず、まず灰色で、次に青で、最後に黒くなる。呼吸を整える。昼間教わった四つのリズム。四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。
眠りは、早く来た。けれど、優しくはなかった。
――夢の中で、廊下は長い。屋敷の廊下ではない。石造り、火が走り、旗が燃える。鉄の匂いが鼻を焼き、足元で赤い布が擦れる。扉がひとつ。重たい扉。開ければ、そこは礼拝堂。昼の白ではなく、夜の赤。白百合は煤で灰色に変わり、花弁はまだ形を保っているのに、生き物の温度を失っている。
祭壇の前に、黒衣の男が立っていた。リオン。剣が抜かれている。刃はわたしに向いている。光がないのに、刃だけが冷たく光る。彼の顔は今と同じ。けれど目の奥は、今より深い夜を抱いている。口が動く。言葉は、音にならない。剣先が少し、わたしの胸に近づく。冷気が肌に触れる。痛みはまだないのに、体がそれを先取りして震える。
その時、背中でふわりと空気が動いた。甘い香り。蜂蜜を溶かした紅茶に似た匂い。振り向かなくても分かる。別の男が近づく。足音は静かで、床に落ちる影は細く長い。耳元に、吐息が触れる。
「必ず迎えに行く、僕の花嫁」
声は低く、やわらかく、夜を溶かすほど甘い。背中に温かい手が添えられ、肩甲骨のあいだをなぞる。そこに太い血管が走っていることを、手が知っている触れ方。わたしの体が、その触れ方を覚えている、と錯覚する。
剣先が一瞬だけためらい、空気が重く止まる。リオンの眉がわずかに動き、口が小さく開く。何かを言う。そこへ、鐘が落ちた。夢の鐘は、喉の奥で鳴る。音で胸が跳ね、世界が水面のように歪む。
目が覚めた。天蓋の布が、闇に溶ける前の灰色をしていた。脈が速く、手のひらに汗。額も湿っている。暗闇は完全ではなく、暖炉の火がまだ生きている。部屋の輪郭は静かで、外の風は凪いでいる。
喉が乾いていた。枕元の水差しに手を伸ばし、口をつける。冷たい水が、夢の残り火に薄い膜を張って消す。呼吸を数える。四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。指輪が脈と一緒に小さく打つ。内側の文字は、暗闇ではなおさら読めない。
ドアの向こうで、気配がした。誰かが廊下を通ったのだろう。立ち止まる気配、去る気配。扉は開かない。呼べば来るのだと分かっている。呼ばない。今は、夢と現実の境目を自分で確かめたい。
目を閉じ直す。今度は、剣も、蜂蜜の匂いも来ないことを願いながら。願いは空気に溶け、天蓋の薄い布に吸い込まれる。布は揺れない。わたしは、もう一度、眠りに沈む。その前に、耳の奥で、昼の声が小さく灯る。
――「俺は、ここにいる」
その言葉の残響を抱いたまま、闇へ。屋敷は夜を深くし、世界は眠る準備を終えて、静かに目を閉じた。
「疲れただろ、無理すんな」
リオンはそう言って、肩に回しかけた手を途中で止めた。触れる前の空気にだけ、体温が滲む。わたしの視界の端で、彼の手がわずかに握られてほどけた。触れたくて、触れられない。距離は一歩分。けれど、その一歩が深い溝みたいに感じられる。
「大丈夫です。……多分」
「なら、座れ。今、用意させる」
食堂は長いテーブルの片側だけが整えられていた。白いクロス、シャンデリアの光、銀食器の冷たさ。椅子に腰を下ろすと背筋が勝手に伸びる。布のきしむ音に、胸の鼓動が一拍遅れて重なる。
すぐに給仕が現れ、音を立てない所作で皿を置いていく。スープはポタージュ。表面が絹みたいに滑らかで、湯気が柔らかく立ち昇る。焼きたての白パン、香草を纏った白身魚、酸を控えめにしたサラダ。どれも、口にする前から分かる。「わたしの好み」だ。
「……これ、わたしの」
「ああ。好きだった。少なくとも、ついこないだまでは」
リオンは向かいに座らない。テーブルの端で、壁側に立ったまま静かに見守る。椅子を引く音がなかったから、座らないと決めていたのだろう。丁寧すぎる距離。わたしが一人で食事をするのを邪魔しない、という配慮に見えるが、同時に線引きのようでもある。
「……一緒に、どうですか」
言ってから、声が少し上ずったのに気づく。これが礼儀に合うのかも分からない。わたしは花瓶の白い花に視線を逃がした。白百合じゃない。小さなレースのような花。名前は出てこない。
「俺は後でいい。まずは食え」
「食べ方、忘れていたらどうしようって思って」
冗談のつもりだったのに、言葉は冗談らしく降りない。彼の目が一瞬だけ揺れた。
「忘れてても、いい。ゆっくりでいい。……熱いから気をつけろ」
匙を持つ。指に馴染む重さ。スープをすくう角度、唇に触れる温度、喉を滑る粘度――体は覚えているのに、舌だけが空白だ。塩気のはずの場所で味が止まり、甘さに届く直前に輪郭が消える。温度だけを味わっているみたいで、少し怖い。
「どうだ」
「……やさしい味、です」
言葉を探してやっと見つける。わたしは自分の舌に、やさしい、という曖昧な意味を宥める。皿の上の蒸気は規則正しく立ち上り、照明の粒が細かく揺れている。世界は微細で、味だけが遠い。
パンは表面が薄く固く、手で割ると音がした。中は湯気を抱き、白い柔らかさが湧く。ちぎって口に入れると、粉の匂いが鼻に抜けた。匂いは分かる。味はやっぱり薄い。薄いというより、わたしの内側に届く前に消えていく。
給仕が、黙って小さなジャム皿を置いた。赤い。苺。瓶に入っていた時間の甘さ。
「お嬢様、もしお口に合わなければ」
「……いえ。ありがとう」
視線を上げると、給仕は柔らかく頭を下げた。彼女の瞳に浮かぶのは、心底からの気遣いと、怯えと、合図。言い慣れた文句が唇で待っている気配。
「ご無理はなさらず」
やっぱり、その言葉。玄関でも、廊下でも、階段でも聞いた。使用人は皆、同じ調子で同じ音を出す。「ご無理はなさらず」。それは配慮の仮面でもあり、鍵でもある。そこから先に踏み込むな、というやさしい拒絶。
リオンが小さく顎を引いた。給仕はそれだけで下がる。扉が静かに閉じられ、また二人だけの空気が戻った。
「皆、優しいですね」
「……ここは、お前の家だからな」
「家、ですか」
口に出すと、テーブルの木目が急に他人行儀に見えた。わたしの家。言葉は紙の上で意味を持って、空気に出ると途端に薄くなる。家に付随する匂いや音、靴を脱ぐ場所や鍵の重さ、雨の日の渡り廊下――そういう細部がまるごと抜けている。
「少し、歩いたら思い出す。そういうものだ」
リオンの声は慎重だった。真実を語るというより、祈るようなリズム。彼の視線が、テーブルの端からわたしの指へ、指輪へと泳ぎ、そこからまた壁の古時計へ戻る。古時計は秒を刻まない。長針と短針だけが、静かに位置を変える。
魚料理は、香草がやわらかく香った。ナイフを入れると、身がきれいに割れていく。フォークで口へ運ぶ。舌の上を通って、喉へ落ちるまでに、いくつかの段差があるのを感じる。味に段差。段差の向こうに、何かが置いてある気がするのに、手が届かない。
「合わないか」
「いえ。……美味しいはずだって、分かる」
リオンの喉が小さく鳴った。音はすぐに消えたが、言葉にしない痛みが一瞬だけ顔を出した、そんな気配。
「無理しなくていい。少しでいい」
「無理、してるように見えますか」
「見える」
即答だった。わたしは笑ってみせる。今度は自然に。けれど、笑顔の端が自分で見ても心許ない。
窓の外では、暮れかけの空が濃紺を取り戻し、屋根の上に一番星が出始めている。庭の噴水が細い音で水を跳ねさせ、遠くの街道を馬車が通る音が薄く届いた。世界が夜の支度を始めた。屋敷はそれに合わせて、音をさらに小さくする。
「眠くなったら、すぐ言え」
「……まだ大丈夫です。少し、このまま」
食事の終わりに、小さな陶器の器が出された。カスタードのプリン。表面がわずかに震え、焦がした砂糖の膜が薄く光る。「好きだった」もの。スプーンを入れると、膜がかすかに割れる音がして、甘い匂いが立った。口に入れる。舌が一瞬だけ、喜ぶ。甘さは輪郭を残しやすい。喉を通る頃にはやっぱり薄くなるが、甘さの影がしばらく舌の根に留まった。
「これは、好きです」
言うと、リオンの目がほっと笑った。ほんの少し。わたしはその笑い方を覚えようとする。目尻の皺の寄り方。頬の筋肉の緩み。眉間の線が薄くなる角度。全部、小さな救いとしてポケットにしまう。
食事が終わると、給仕が無音で皿を下げ、テーブルの上は花瓶と灯りだけになった。リオンはやっと椅子を引き、少し離れた場所に腰を下ろす。テーブルの角越しに、視線が交わる。夜の音が増え、屋敷の中の人の気配が遠のく。
「体は、どうだ」
「さっきより、楽です。……眠気も、少し」
「医師の薬が効いてる。今夜は早く休め」
「はい」
返事をしてから、わたしは自分の指を見た。銀の指輪は温度を持ち始め、皮膚に馴染んでいる。昼間よりも、脈と指輪の鼓動が合ってきた気がする。内側の古い文字は、灯りではやはり読めない。読めないのに、読むべきだと心の奥が急かす。
「……この文字、なんて書いてあるんですか」
問いかけは、水面に落ちる小石くらいの軽さで放たれた。リオンは一拍置いてから答える。
「古い誓いの言葉だ。読み上げるものじゃない」
「どうして」
「……言葉には、起きる力がある」
言いながら、彼はふと視線を落とした。記憶の底から掬い上げたような口ぶり。わたしは唇を閉じ、スプーンの柄に映る揺れた自分の顔を見る。知らない女。まばたきは同じ速度。眉の上の小さな傷。どこで作ったのか、誰と――。
扉の方で、音もなく影が動いた。給仕の青年が、夜の茶を運んで来たのだ。淡い香り。花のような、草のような。湯気が白い指を立て、すぐに薄くなる。
「温かいお茶を。……ご無理はなさらず」
また、その言葉。彼は気づいているだろうか。彼自身の口からは出ないのに、屋敷全体がそれを繰り返すのを。
「ありがとう」
わたしが礼を言うと、青年は胸に手を当てて下がった。扉が閉まる。リオンは茶器をこちらへ押し、湯飲みの位置を直す。細やかな手つき。手袋を外した手の甲に、薄い傷が幾つも走っている。古いもの、新しいもの。指先の皮膚は固く、でも持ち上げる角度は、壊れ物を扱う癖のまま。
「眠れそうか」
「……眠ったら、夢を見そうです」
口にしてから、胸の奥が冷える。夢の内容はまだ言葉になっていない。言葉にする前に、影が先に立つ。
「夢は、悪いか」
「分かりません。怖い気がする。……でも、少しだけ楽しみな気もする」
矛盾した感情が言葉になって空気に置かれる。リオンはしばらく黙ってから、低く返した。
「怖くなったら、呼べ。すぐ行く」
「夜中でも?」
「夜中でも」
会話の合間に、屋敷のどこかで時計が短く鳴った。九つか、十。数字を数える前に、鐘の余韻が混ざって消える。夜は完全に降りた。窓の外に星が増え、庭の影が深くなる。
「部屋まで、送る」
「……少しだけ、このまま」
湯飲みに口をつける。温度が舌にやさしい。香りは、どこか懐かしい。これは覚えているのか、それとも今覚えるのか。分からないまま、鼻の奥に溜めておく。
食堂の隅に火の入った暖炉があり、炎が静かに木を舐める。パチ、と小さな音がするたび、わたしの肩の緊張が少しずつ解ける。リオンは椅子の縁に座って背筋を伸ばし、膝の上で手を組んでいる。その姿勢は、脱ぐことのできない鎧のようだった。
「……怒ってますか」
自分でも驚く問いが落ちる。誰に、何に、という主語のない問い。リオンは眉をほんの少し動かし、首を横に振った。
「怒ってない」
「わたしが、何も思い出せないから」
「怒る理由がない。お前が悪いことは、何もない」
「じゃあ、誰に怒ってるの?」
今度は言ってから、息を飲む。彼は答えない。目を逸らすわけでもなく、こちらを見たまま沈黙だけを置く。沈黙は、怒りの一種なのだと知る。自分へか、世界へか、過去へか。彼の沈黙は、刃物の平らな面みたいに光を反射していた。
「……ごめんなさい」
「謝るな」
短い言葉。彼の声はいつも短い。短い言葉の背後に、長い何かが隠れているのが分かる。それは今はまだ、見ないでおくべきものの形をしている。
眠気は、静かに、でも確実に近づいてきた。目の奥が重くなり、視界の輪郭が柔らかい布でくるまれたみたいに丸くなっていく。湯飲みの温度が心地よい。空気は甘くないのに、やさしい。味のない一日が、最後だけ少し甘く感じられた。
「部屋へ」
「……はい」
立ち上がると、足元がふらりとした。リオンの手が、躊躇いを抱えた速さで伸びる。触れる、触れない、触れる――掌が肘に軽く添えられ、支える力は必要十分で、そこに余計な意味はなかった。わたしは支えられたこと自体に救われる。
廊下は長い。壁に沿って小さな燭台が続き、炎が一定の間隔で揺れている。絨毯は厚く、歩く音を飲み込む。扉がいくつも並び、それぞれの向こうに誰かの気配が薄くたまっている。時々、使用人とすれ違い、そのたびに同じ言葉が降る。
「どうぞご無理はなさらず」
「ご無理はなさらず、お嬢様」
言葉はやさしい雨のように降り続け、足元の絨毯に染み込んでいく。やさしさは、時に重い。重さは、眠気と似ている。わたしは、その重さに身を委ねることを許されているのだろうか。
部屋の扉は、廊下の突き当たり近くにあった。重厚な木に鉄の取っ手。リオンが先に扉を押し開ける。部屋は広すぎず、白と淡い灰が基調。ベッドの天蓋は薄い布で、窓辺には夜の街が額縁みたいに切り取られている。暖炉の火はここでも静かで、空気は少し甘い香りがした。花瓶に活けられた白い花――昼間と違う種類。今度は名が出た。ジャスミン。これは、わたしが言える。
「……良い匂い」
「お前が好きだった」
「そう、なんですね」
言ってから、布の皺を指でなぞる。手触りをひとつずつ覚え直す。クッションの柔らかさ、毛布の重さ、枕の高さ。小さな引き出しに入ったランプ。鏡台の上に並ぶ櫛。誰かの暮らしの跡。わたしの暮らしの跡、らしい跡。
「医師の薬、枕元に置いとく」
「ありがとうございます」
リオンは小瓶を取り出して、ランプの横にそっと置いた。寝台の脇に立つ彼は、部屋のどこにいても影を作る。けれどその影は、怖くない。むしろ、影があることで部屋の輪郭が安定する。
「眠る前に……一つだけ、いいですか」
「何だ」
「どうして、そんなに――丁寧なんですか」
空気が一瞬止まる。彼はわずかに目を伏せ、口元で小さく息を整えた。
「壊したくないからだ」
答えは、驚くほど真っ直ぐだった。飾りも、ごまかしもない。壊したくない。何を、と問う前に、胸の奥のどこかが理解してしまった。
「俺は、荒い。だから、丁寧にしてる。……それだけだ」
それだけだ、にたくさんの何かが詰まっている。わたしは頷き、布団の縁に腰を下ろす。眠気はもう、まぶたの裏に手を伸ばしている。
「おやすみ」
「おやすみなさい、リオン」
名前を短く呼ぶと、彼の肩がふっと軽く見えた。部屋を出る直前、彼は振り返らない。扉が閉まり、音は柔らかく消える。
ランプを落とす。半暗闇。暖炉の火だけが、小さな鼓動で部屋を照らす。枕に頭を預けると、体が沈み、布団の重さが心地いい。目を閉じる。暗闇はすぐに深くならず、まず灰色で、次に青で、最後に黒くなる。呼吸を整える。昼間教わった四つのリズム。四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。
眠りは、早く来た。けれど、優しくはなかった。
――夢の中で、廊下は長い。屋敷の廊下ではない。石造り、火が走り、旗が燃える。鉄の匂いが鼻を焼き、足元で赤い布が擦れる。扉がひとつ。重たい扉。開ければ、そこは礼拝堂。昼の白ではなく、夜の赤。白百合は煤で灰色に変わり、花弁はまだ形を保っているのに、生き物の温度を失っている。
祭壇の前に、黒衣の男が立っていた。リオン。剣が抜かれている。刃はわたしに向いている。光がないのに、刃だけが冷たく光る。彼の顔は今と同じ。けれど目の奥は、今より深い夜を抱いている。口が動く。言葉は、音にならない。剣先が少し、わたしの胸に近づく。冷気が肌に触れる。痛みはまだないのに、体がそれを先取りして震える。
その時、背中でふわりと空気が動いた。甘い香り。蜂蜜を溶かした紅茶に似た匂い。振り向かなくても分かる。別の男が近づく。足音は静かで、床に落ちる影は細く長い。耳元に、吐息が触れる。
「必ず迎えに行く、僕の花嫁」
声は低く、やわらかく、夜を溶かすほど甘い。背中に温かい手が添えられ、肩甲骨のあいだをなぞる。そこに太い血管が走っていることを、手が知っている触れ方。わたしの体が、その触れ方を覚えている、と錯覚する。
剣先が一瞬だけためらい、空気が重く止まる。リオンの眉がわずかに動き、口が小さく開く。何かを言う。そこへ、鐘が落ちた。夢の鐘は、喉の奥で鳴る。音で胸が跳ね、世界が水面のように歪む。
目が覚めた。天蓋の布が、闇に溶ける前の灰色をしていた。脈が速く、手のひらに汗。額も湿っている。暗闇は完全ではなく、暖炉の火がまだ生きている。部屋の輪郭は静かで、外の風は凪いでいる。
喉が乾いていた。枕元の水差しに手を伸ばし、口をつける。冷たい水が、夢の残り火に薄い膜を張って消す。呼吸を数える。四つ吸って、四つ止めて、四つ吐く。指輪が脈と一緒に小さく打つ。内側の文字は、暗闇ではなおさら読めない。
ドアの向こうで、気配がした。誰かが廊下を通ったのだろう。立ち止まる気配、去る気配。扉は開かない。呼べば来るのだと分かっている。呼ばない。今は、夢と現実の境目を自分で確かめたい。
目を閉じ直す。今度は、剣も、蜂蜜の匂いも来ないことを願いながら。願いは空気に溶け、天蓋の薄い布に吸い込まれる。布は揺れない。わたしは、もう一度、眠りに沈む。その前に、耳の奥で、昼の声が小さく灯る。
――「俺は、ここにいる」
その言葉の残響を抱いたまま、闇へ。屋敷は夜を深くし、世界は眠る準備を終えて、静かに目を閉じた。
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