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第2話 ひび割れた微笑み
しおりを挟む白崎家の朝は音量が決まっている。空調の吐息は一定、新聞の紙音は一定、食器同士が触れる音は一定。耳に入るすべてが「ブレない」ように調律されている。なのに、今日の私の内側だけがわずかにキーを外していた。体温は正常、肌のコンディションも上々、笑顔の角度も練習通り。なのに、胸の奥で絃が一本だけ緩んだ感触が消えない。
「夜会の動線は再確認しておけ」 父の声はコーヒーの表面みたいに揺れず、まっすぐ落ちる。 「フォトコールの後は朝霧側との懇談、夕刻に媒体。最後に真白の登壇が入る、会長の意向だ」 「了解」 受け答えは習慣で、習慣は筋肉で、筋肉は嘘をつかない。けれど心は、ときどき置いていかれる。
真白が蜂蜜のスプーンをくるりとまわして、光を引っかける。 「お姉ちゃん、今日のイヤリング新しい? すごい似合ってる」 「新しくはない。けど、それで十分」 「今日、がんばろね。私、ちょっと緊張する」 「緊張は姿勢で誤魔化せる。背中の真ん中を一本、糸で吊られてるつもりで」 「おっけー、糸イメージ」 笑いながら、私の胸の中の糸は少しだけきしんだ。誰にも聞こえない小さな軋み音である。
午前のレッスンは短縮版だった。プロトコルの石動先生がカードをひと束だけ出し、ドリンクの受け取り方と視線の配り方だけ確認すると、「完璧です」と手帳を閉じた。「完璧」。褒め言葉に見えるが、今の私には命令の響きのほうが濃い。今日も明日も、誤差ゼロでやれ、というやさしい圧力である。
昼過ぎ、ホテルのラウンジ。ガラスの天井から落ちる光の粒が、テーブルのシルバーを点々と叩いていた。遅れて来た悠真は、いつものネイビー。椅子を引く音も、ネクタイの結び目も、礼儀正しい。 「待たせた」 「今来たところ」 「緊張してる?」 「少し。あなたが隣にいるなら大丈夫」 「隣にいるよ」 約束は、予定表に打ち込まれたブロックみたいに四角くて安心できる。けれど角が立っているぶん、内側の皮膚を時々こすってくる。 「会長がね、最後に真白さんに若い人向けのメッセージをって。『光は若いほど拡がる』って言ってた」 「……そう」 氷を舌で押した。冷たさは現実の輪郭である。窓の外、車寄せで笑う影。悠真の視線が半歩そちらへ跳ねて、すぐ戻る。その軌道を、私は見ない。見ないことも礼儀のうちである。 「君は今日も綺麗だ」 「ありがとう」 「“いつも通り”でいて」 「それは、いちばん得意」 “いつも通り”。他人にとっての安心で、私にとっての摩耗。うなずきながら、笑顔の裏で歯をそっと合わせる。噛みしめの力で、ひびが広がらないように。
屋敷に戻ってドレスの最終調整。乳白の生地は光をほどいて、肌の上で静かに溶ける。スタイリストの佐久間がピンを足しながら言う。 「ウエスト、あと一ミリだけ。呼吸は浅めに整えて」 「了解」 鏡の中の自分は絵画の中の人物みたいで、額縁から出る気はないらしい。美しいけれど、額縁は枠で、枠は檻である。檻の鍵をずっと自分で握ってきた自覚が、喉の奥で冷たく光った。
廊下を曲がって、真白の部屋へ顔を出す。白いドレスと薄桃のドレス、二枚がベッドで並んでいた。 「どっちがいいかな」 「白。光と喧嘩しない」 「やっぱり! 悠真さんも白が好きって」 心の中で薄い紙が一枚、ぺりっと剝がれる。カレンダーの角を折るみたいな軽い音。私は笑いで包んで、飲み込む。 「彼は趣味がいい」 「だよね。……私、あの人の前だと安心するの」 「安心はいい。油断は悪い」 「分かってるよ、監督」 真白はふふっと笑って、私の肩にこてんともたれた。その重みは軽いのに、やけに“現実”だった。姉であることの味が、骨に染みている。
夕方、父の応接室。ブラインドごしの光が将棋盤みたいに四角く机に落ちる。 「確認だ。お前は看板だ」 「心得ている」 「真白は光だ。光は脆い。守れ」 「守る」 「お前は盾だ。傷ついてよい。だが、光を欠けさせるな」 「了解」 言葉は軍令。私は返事を打刻して、胸の内側に紙の名札を一枚貼る。『役割:盾』。名札は軽いが、剝がれにくい。
会場はホテルの大ホール。天井から垂れる光は蜂の巣みたいに詰まって、床の鏡面が星を飼っている。フォトコールの列、開く笑顔、閉じる笑顔、カメラの海。私は“正解の角度”で立ち、“正解の言葉”で答える。隣で悠真が小声で言う。 「完璧だ」 「ありがとう」 完璧は合言葉。鍵も開くし、時々は爆弾のスイッチにもなる。今はまだ鍵のほうである。
控え室で水を一口。氷が唇に触れて、頭の輪郭が少しだけ鮮明になる。二回ノック。入ってきた男は黒の三つ揃え、皺は最小限、視線は節電モードの光量。名刺を差し出してくる。 「朝霧の久遠です。段取りの確認に参りました」 「お願いします」 「フォトコール後、懇談、媒体。終盤、サプライズで白崎真白様のご挨拶を。会長のご意向です」 「サプライズである必要は?」 「予定調和は拡散力を落とします。若年層には“偶然に立ち会った”体験が効くので」 説明の粒が細かい。声は静かだが、芯に鉄の細い線が通っている。 「配置はこちらで整えます。白崎様は立ってくだされば成立します」 「“配置”」 「人と光と視線の配置です」 彼は時計を一度だけ見る。短く正確な視線の移動。プロの人間は、時間の扱いがうまい。うまさには熱ではなく温度差が出る。
通路で真白の手を握る。汗の粒が指に移る。 「大丈夫」 「うん。言葉、短く。笑顔、半分」 「そう。深呼吸」 「すぅ……はぁ……」 胸元のビーズがかすかに触れ合って、目に見えない音を立てた。手を離す。光の輪へ一歩、真白は踏み出す。白は光と喧嘩しない。拍手は丸く、彼女の周りに落ちる。私は輪の外側で、笑って立つ。輪の外で美しく立つのが、今日の私の仕事だ。
挨拶は成功。拍手の余韻の中、会場の端でさざ波のような囁きが生まれる。 「長女は完璧すぎるのよ」 「今は軽やかさの時代でしょ」 「光って若いほうが拡がる」 炭酸の針を舌に受け、二、三本はそのまま飲み込む。針は内側で丸くなる。丸くする技術は、もう身についている。
背後の動線で、人が二、三人ぶつかって流れが乱れた。私は振り返らない。振り返らないことも礼儀の一部である。視界の端を、久遠が横切る。スタッフに短く指示を出し、すぐにこちらへ視線を寄越す。目が合う。プロの目に、一瞬だけ「見るべきものを見つけた」反射が走った。私の頬の裏側、笑顔の筋肉に走った細い疲労の線まで、見抜かれる気配。私は口角をひと目盛りだけ上げて、仮面を新しいテープで留め直す。久遠はわずかに顎を引いて、そのまま流れに戻った。
合間の控え室で、真白がスマホを握っている。画面の光が指の骨を透かして、彼女の顔色が少しだけ薄くなる。 「どうした」 「大丈夫。ただ……トレンド、すごくて。『#真白ちゃん推し』って」 「よかったじゃないか」 「嬉しいけど、怖い。変なアカウントもいる」 「風である。背中を押すときもあれば、裾をめくるときもある」 「風、ね」 「姿勢を低く。視線はまっすぐ」 「うん。ありがとう、監督」 小さく笑って、真白は画面を伏せる。その笑みの端に、薄い影が貼りついているのを、私は見逃さない。守る、と朝に父と交わした言葉が、胸の内側で硬くなる。
終盤、予定にない動き。悠真が前に出て、司会からマイクを受け取った。空気が自然に静まる。久遠の眉が一ミリだけ動く。スタッフが走る。プロの合図は、鳥の囀りのように短い。 「本日はお越しくださり、ありがとうございます」 悠真の声は暖炉の火の手前の温度で、会場をやさしく包む。彼は会場を見渡し、私のほうを見て、最後に真白を見た。その順番を、私は正確に記録する。記録は感情の前にある。記録してから、胸の奥で薄い紙がまた一枚、剝がれる音を聞く。何枚重ねていたのか分からない。ただ、枚数が減っていることだけは確かだった。
散会。香水と笑いとハイヒールの足音が混線して、ドアが順に口を閉じる。曲がり角で久遠が立ち止まり、短く会釈した。 「予定外、失礼しました」 「問題ない」 「……顔を、お大事に」 変な言い方。問い返す前に彼は去った。鏡で左頬を指で押すと、笑顔の筋肉がじくりと返事をする。小さな疲れ。小さな、でも、積もる種類のやつ。
地下駐車場の風は昼より冷たく、ドアが閉まる音が丸く響いた。窓の外でネオンが水槽の魚みたいに尾を引く。指先でドレスの縫い目をなぞる。表に出ない針と糸が、裏側で全部を支えている。指にちくりと、遅れて痛み。日中にどこかで刺した針の記憶が、暗闇の中で自己主張する。
帰宅。玄関の香りが夜の配合に切り替わっていた。階段の途中、真白が顔を出す。 「おかえり」 「ただいま」 「今日、楽しかったね」 「そうだな」 嘘ではない。楽しかったのだ。いくつものカメラ、整った会釈、正しい言葉選び。私の得意分野。けれど、得意なことだけで埋めた夜は、ときどき呼吸が浅い。真白が満足そうに笑って、扉の向こうに消える。扉に残った薄い温度を胸にしまって、私は自室へ戻る。
化粧を落とす。水の音が室内の雨になる。タオルで頬を押さえると、手のひらの温度が顔の筋肉をやわらげる。効き目は中くらい。中くらいでも十分な夜はある。今日がそうだといい、と他人行儀に祈ってみる。
カーテンを少しだけ開ける。庭に白い月。白は光と喧嘩しない。私は長く白の側に立ってきた。けれど、白にも陰がある。陰がなければ、形は平面のままだ。私の陰は、いまどんな形をしているのか。見たいような、見たくないような。見てしまえば、もう戻れない気がする。戻れない予感は、私を静かに笑わせた。
ベッドに横たわる。天井の模様は昨日と同じに見えて、今日の目には微妙に違って見える。世界は変わっていない。変わったのは、私の中の“張り”だ。一本、どこかの弦が緩んで、別の弦が目を覚ました。その音色に、まだ名前はない。
「大丈夫」 声に出す。断定は、小さな呪文だ。呪文は骨の芯を一ミリだけ硬くする。硬くなった芯で、明日を受け止める。明日は続きで、そして予感の本番だ。薄い紙はまた一枚、剝がれるだろう。剝がれきったときに残るものの名前を、私はまだ知らない。知らないまま、目を閉じる。暗闇の温度は一定。呼吸はその一定に合わせて浅くなる。浅くても、続けば生きている。生きている限り、選ぶ番は来る。選ぶとき、微笑みの亀裂は必ず音を立てる。綺麗な音だろう。ガラスが割れるときの、冷たくて澄んだ音。私はその音を、きっと嫌いになれない。
瞼の裏に、三つの顔が並ぶ。父の彫刻みたいな横顔。悠真の、約束の温度を持つ笑み。そして――久遠の、説明を省く目。三つの温度差が、私の中の“間”を少しだけ動かした。動いた“間”は空気の流れを変え、部屋の匂いの配合まで変える。変化は音を立てない。けれど、確かな手触りで、ここにある。
大丈夫。そう言って、私は眠りへ滑る。明日の夜、世界の音量は今日より上がる。上がった音に、私の声が負けないように。負けそうになったら、笑いで包む。笑いが剝がれたら、剝がれた顔で立つ。立てば、道ができる。そう信じるだけの筋力は、まだ残っている。私の中の“盾”は眠らず、でも、たぶんもう“刃”の形を覚え始めている。知らないふりをして、目を閉じた。夜は、静かに、こちらを見ていた。
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