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第9話「護衛騎士契約と、距離ゼロの共同生活」
しおりを挟む王国の決定は、思ったよりも早く降りてきた。
――ラグナリア王国は、地方神殿に在る聖女候補レアを、正式に「国の聖女候補」として保護する。
その文言が書かれた公文書を、神殿長が震える手で持っていた。
神殿の応接室。
窓から差し込む光が、羊皮紙の上の文字をきらりと照らす。
「……は?」
レアは、間抜けな声を出した。
「わ、わたし……?」
「他に誰がおると思うんじゃ」
神殿長は、頭を抱えながらもどこか誇らしげだ。
「王都の大神殿に移り、そこで本格的な聖女教育および管理を受けること。
同時に、王国はお前を“特別保護対象”として扱う」
「とくべつ、ほご……?」
意味は分かる。
でも、それが「自分」に向けられていることが、うまく飲み込めない。
神殿長は視線を横にずらした。
そこには、壁にもたれかかるようにして立っている男――アルヴァがいる。
姿勢は崩しているようで、実は重心が一本の線で通っている。
鎧は今日は簡略版だが、それでも存在感は薄まらない。
「そして、これがもうひとつの決定じゃ」
神殿長は咳払いをし、別の文書を持ち上げる。
「王国騎士団長アルヴァ・グレンフォードを、レアの専属護衛騎士として任命する」
「…………」
一瞬、時間が止まった。
レアは、神殿長とアルヴァを交互に見た。
「……はい?」
頭が追いつかない。
「えっと……いま、“せんぞくごえいきし”って聞こえたんですけど、気のせいですか?」
「気のせいじゃない」
アルヴァが即答する。
灰色の瞳が、いつものように冷静だ。
「王都は、お前の力を“国の資産”と判断した。
同時に、“狙われる可能性の高い存在”ともな」
淡々と続ける声は、現実を容赦なく突きつける。
「強い聖属性を持つ者は、時に国をも揺るがす。
ゆえに、王国直属の剣による常時護衛が必要だ、という結論になった」
「常時……」
その単語の意味に、レアはじわじわと顔色を変える。
「じょ、常時って、あの、その……ずっと一緒、ってことですか?」
「基本的にはな」
アルヴァは、少しだけ顎を引いた。
「移動のとき、大神殿での生活のとき、外出のとき。
お前の身に“戦闘の可能性”がある場所には、俺がいる」
(いやいやいやいや)
レアの頭の中で、何本ものツッコミの矢印が飛び交った。
騎士団長。
王国最強の剣。
王子より戦場率が高い男。
そんな人が、「自分ひとりの護衛」に張り付く――?
「む、むりむりむりむり……!」
「レア、言葉が漏れておるぞ」
「だって! 私なんかに、そんな立派な人……!」
思わず本音があふれ出す。
「もっと、王子さまとか、お姫さまとか、大事なひとを守るのが、騎士団長の仕事じゃないんですか!?
わたし、そんな、国の一番の人に見張られるほど、えらくないです!」
「見張ると言うな」
アルヴァが、わずかに眉をひそめた。
「それに――」
そこで、一瞬だけ視線を逸らし、すぐに戻す。
その短い間に、彼の瞳の硬さが少しだけ溶けた気がした。
「これは任務だ」
「……任務」
「王の命令でもあり、俺自身が判断して受けた任務だ。
お前が“希望になり得る”のなら、その芽を途中で折らせるわけにはいかん」
淡々としているのに、重い。
“仕事だから”と言い切ればもっと冷たく聞こえたはずなのに、
今の言い方には、少しだけ「自分の意思」が混じっていた。
レアは唇を噛む。
(わたしなんか、って言葉……また出しかけた)
でも、前に神殿長に言われたことを思い出す。
――必要以上に自分を貶めすぎてもいかん。
胸の奥で、小さく深呼吸する。
「……わかりました」
レアは、ぎゅっと拳を握った。
「お、お世話になります……。たくさん、まもってもらうのに恥ずかしくないように、ちゃんとがんばります」
最後の方は声がすこし震えたけれど、それでもちゃんと言えた。
自分で自分を「なんか」扱いしないで。
アルヴァの灰色の瞳が、じっとレアを見つめる。
その中に、一瞬だけ――本当に一瞬だけ、柔らかい光が宿った気がした。
「……ああ」
短い返事。
でも、その「ああ」は、昨日までのそれより、少しだけ温度が高い。
レアは、その微妙な変化を、なぜかちゃんと感じ取ってしまった。
(あ、なんか、すこしだけ……)
胸が、くすぐったくなる。
◇ ◇ ◇
王都への出立の日は、あっという間に来た。
神殿の前には、村人たちが集まっていた。
泣きそうな顔、誇らしそうな顔、寂しそうな顔――いろんな感情が、同じ場所で揺れている。
「レア様、本当に行っちゃうんですか」
エナが、半泣きでレアの手を握っていた。
「うん……行っちゃう」
「うう、素直……」
「だって、行かなきゃダメだし。でも……」
レアは、神殿を振り返る。
こじんまりとした石造りの建物。
何度も掃除した階段。
裏庭の、みんなで遊んだ土の匂い。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
「さみしいです」
素直な言葉が口から出た。
誰かに気を遣って、平気なふりをすることもできた。
でも、ここでだけは、そんな仮面はかぶりたくなかった。
エナが鼻をすすり、レアをぎゅっと抱きしめる。
「レア様、絶対に偉くなっても、私のこと忘れないでくださいね……!」
「えらくならなくていいけど、わすれない……」
「いや、偉くなってくださいそこは!」
エナが半分本気で言うから、レアもつい笑ってしまった。
「レア」
神殿長が、ゆっくりと歩み寄ってくる。
いつもより背筋が伸びている気がした。
「お前は、ここで生まれて、ここで育った。
だが、ここが全てではないことも知るべきじゃ」
「はい」
「王都は騒がしい。人も多い。思惑も、欲も、噂も渦巻く場所じゃ。
正直に言えば、わしはあまり好きではない」
「神殿長様、そ、それ言っていいんですか」
「本音じゃ」
エナのツッコミを軽くあしらってから、神殿長はレアの頭に手を置いた。
「じゃが、その分だけ“見えるもの”も多い。
お前の力が、どれほどのものなのか。
お前が“何をしたいのか”を、ここよりずっと遠くまで試せる場所じゃ」
レアは、ぎゅっと唇を結んだ。
怖い。
でも、ワクワクもある。
前世では「王都」は断罪の舞台だったけれど――この世界では、まだ何色にも塗られていない。
「レア」
神殿長の声が少し柔らかくなる。
「お前は、“恥ずかしくない”なんて小さな目標じゃなくていい」
「……え?」
「恥ずかしくないだけじゃ、もったいない。
お前は、“胸を張って誇れる聖女”になれ」
その言葉は、やけにまぶしく聞こえた。
照れくさくて、でも、嬉しい。
「……わたし」
レアは、胸の前でぎゅっと手を握った。
「絶対に、恥ずかしくない聖女になります。
そして、できるなら……神殿長様が胸を張って『あの子はうちの子だ』って言えるくらいの聖女になります」
言い終わった瞬間、自分でも少し笑いそうになった。
エナが後ろで「やば、泣く」と小声で呟く。
神殿長は、ほんの少しだけ目を潤ませたように見えた。
「最初から、十分自慢の子じゃよ」
その一言で、レアの目からも、涙が一粒こぼれた。
◇ ◇ ◇
王都へ向かう馬車の中。
クッションのきいた座席。
窓から見える景色は、いつも見ていた村の周辺より、ずっと広くて多様だった。
畑が遠ざかり、林が続き、丘を越える。
小さな村が点々と現れ、そのたびにレアは窓に顔をくっつける勢いで外を眺めた。
「わぁ……あの川、すごくひろい」
「おい。あまり身を乗り出すな。落ちる」
向かいの席に座るアルヴァが、低い声で注意する。
彼は鎧の上に黒いマントを羽織り、腰には剣を帯びたまま。
どこからどう見ても、完全に護衛モードだ。
表情は、いつも通り無愛想。
でも、時々ほんのわずかに視線が外の警戒に流れるあたり、ちゃんと仕事をしているのが分かる。
「だって、こんなに外に出るの、はじめてなんです」
「巡礼のときも、ここまで遠くは行っておらんからのう」
同乗している若い神官が補足する。
レアは素直に頷いた。
「王都って、もっと先ですよね?」
「ああ」
「どのくらい先ですか?」
「このペースなら、今日中には着く」
「えっ、思ったより近い……」
もっと遠いはずだと思っていた。
こうやって、街道が整備されていて、馬車で走れるようにしてあるからだろう。
文明ってすごい、と心の中でぼそっと呟く。
馬車が少し大きく揺れた。
石でも踏んだのか、車輪ががたんと跳ねる。
「きゃっ――」
レアの身体が浮き、バランスを失った。
咄嗟に窓枠を掴もうとするが、手が空を切る。
視界がぐらりと傾いた瞬間――強い腕が彼女の腰を支えた。
「っ……」
勢いのまま、レアの身体は、がっちりとした胸板にぶつかる。
鎧の硬さの上からでも分かる、筋肉の厚み。
アルヴァの腕が、反射的にレアの背を押さえていた。
「……怪我は?」
すぐ耳元で、低い声がする。
距離が、近い。
いつも以上に近い。
「だ、だいじょぶです! すみません!」
反射的に叫びながら、レアの心臓はとんでもない速度で暴走していた。
(ちかいちかいちかい、え、なにこれ、こわい、いやこわくない、え、どっち!?)
頭の中がパニックだ。
アルヴァの鎧の匂い――金属の冷たい匂いと、かすかな革の匂い。
それに混じる、彼特有の体温の気配。
全部が一気に襲いかかってきて、レアの五感を刺激する。
アルヴァは、何事もなかったかのようにレアを元の座席に戻した。
「前のめりになりすぎるなと言ったはずだ」
「う……ごめんなさい」
怒られているのに、なぜか顔が赤くなる。
それを隠そうとして、余計に視線があちこち泳いだ。
自分の胸に手を当てると、鼓動がまだ早い。
(なにこれ。すごく、うるさい……)
自分の心臓のくせに、うるさいと文句を言いたくなるレベルだ。
(これが……うわさに聞く、“恋”ってやつ……?)
頭の片隅で、妙なワードが浮かんだ。
神殿の子どもたちがこそこそ話していた、「好きな人ができると胸がドキドキするんだって」みたいな話。
今の状況は、その説明と妙に一致する。
(いやいや、まって。落ちそうになったからびっくりしただけでしょ)
自分で自分にツッコミを入れる。
(落ちそうになって支えられたら、誰でもこうなるよね? ね?)
説得しながらも、頬の熱はなかなか引かない。
アルヴァは、そんなレアの内心を知ってか知らずか、いつもの無表情で窓の外に視線を戻していた。
でも――ほんの一瞬だけ、彼の耳が微かに赤くなっていたことに、
このときのレアは気づいていない。
◇ ◇ ◇
王都は、思っていたよりも、ずっと大きかった。
高い城壁。
石畳の広い通り。
行き交う人の多さ。馬車の数。屋台の喧騒。
レアは、窓からその光景を見るだけで、わぁ、と小さく声を漏らした。
「すごい……人が、いっぱい」
「初めてなら、目が回るかもしれませんね」
同乗していた神官が苦笑する。
馬車は人混みを抜け、やがて王都の中心部へと向かう。
そこに建っていたものを見た瞬間、レアは息を呑んだ。
「……あれが、大神殿」
丘の上にそびえる巨大な建物。
白い石でできた壁。
天を突くような尖塔。
広い階段と、その先に広がる重厚な扉。
地方神殿とは、規模も空気も桁違いだ。
近づくにつれて、空気がひんやりと澄んでいく。
でも、それは森の冷たさではなく、「浄化された空気」とでもいうべきものだった。
馬車が止まり、扉が開かれる。
外に出た瞬間、レアは足がすこしすくんだ。
(おっきい……)
見上げても、全部が視界に入らない。
天井はどこまで続いているのか、よく分からない。
自分が、すごくちっぽけに思える。
「歓迎するよ、レア・ラグナリア神殿所属聖女候補」
大神殿の神官長が出迎えに出てきた。
威厳はあるが、どこか柔らかい笑みを浮かべた初老の男だ。
「遠いところ、ご苦労だったね」
「あ、ありがとうございます……」
ぎこちなく頭を下げる。
地方神殿の神殿長とはまた違う種類の圧に、ちょっとだけ押されそうになる。
「今日からここが、君の修行の場だ。
部屋もすでに用意してある。案内しよう」
レアはこくりと頷いた。
◇ ◇ ◇
レアの部屋は、大神殿の中庭に面した場所にあった。
廊下の窓からは、きれいに整えられた庭が見える。
中央には噴水。その周りにベンチと木々。
花壇には季節の花が並び、鳥が枝で休んでいた。
「わ……」
通された部屋は、地方神殿のものより一回り広かった。
大きなベッド。
しっかりした机と椅子。
本棚には、すでに何冊かの祈りの書や神話の本が収められている。
窓を開けると、中庭から柔らかな風が吹き込んだ。
「ここが、私の部屋……」
実感がじわじわくる。
「護衛の都合上、君の部屋の隣に、騎士団長殿の詰所を設けてある」
神官長が、廊下の向こうを顎で示した。
レアは、その方向を見て、固まる。
隣の扉。
そこには、すでに“近衛騎士詰所”と書かれた札がかかっていた。
「……ちかい」
「護衛とはそういうものだ」
いつの間にか廊下に立っていたアルヴァが、淡々と言う。
「何かあれば、すぐに駆けつけられる距離でないと意味がない」
「まあ、それはそうですけど……」
(距離ゼロに近すぎない……?)
心の中でだけ抗議する。
でも、安全面だけ考えれば、これ以上ない配置だ。
むしろ、「自分の安全がここまで重視されている」という事実に、圧倒されそうになった。
「何か不都合があるか?」
アルヴァが問う。
レアは慌てて首を振る。
「い、いえっ! 全然! ぜんっぜん!」
「そうか」
アルヴァはそれ以上何も言わず、自分の詰所に視線を向けた。
扉を開けると、中には簡素なベッドと机、武器を掛けるスタンドがある。
最低限の生活と、即座の戦闘準備だけを考えた部屋だ。
(本当に……すぐ隣)
レアの部屋の壁の向こうには、常にアルヴァがいることになる。
心強いような、緊張するような、不思議な感覚。
◇ ◇ ◇
その夜。
新しいベッドで横になってみたものの、レアはなかなか眠れなかった。
シーツは柔らかいし、枕も心地いい。
部屋の温度も快適だ。
それでも、「いつもと違う」というだけで、身体が落ち着かない。
(なんか、そわそわする……)
天井を見上げて、何度目か分からないため息をついた。
地方神殿でなら、この時間にはとっくに眠っていた。
夢の中の金髪の少女に会って、また胸を痛めている頃かもしれない。
今夜は――まだ、その夢も来ていない。
ベッドから起き上がる。
足音を立てないように気をつけながら、窓辺へと歩いた。
カーテンを少しだけ開けて、外を見る。
中庭は、月の光に照らされていた。
昼間見た噴水が、淡く輝いている。
木々の影が、地面に揺れる模様を描いていた。
空は地方の村よりも少し明るい。
街の灯りが遠くに見えているからだ。
(きれい……)
静かに息を吐き出したそのとき――。
視線の先に、人影が動いた。
黒いマント。
鎧のきらめき。
歩き方で、すぐ分かる。
(アルヴァさん……)
中庭を斜めに横切るように、巡回している。
剣を帯び、周囲に警戒を向けながら。
レアは、思わず身を引こうとした。
が、その前に――アルヴァがふと顔を上げた。
視線が、ぴたりと合う。
「……あ」
レアは固まった。
逃げるにも、もう遅い。
アルヴァは、足を止める。
月明かりの下で、灰色の瞳が少しだけ細くなった。
彼は中庭の端にある扉から建物の中に入り、ほどなくレアの部屋の前に現れた。
ノックの音。
「レア。起きているか」
「お、おきてます」
慌てて返事をすると、扉が少しだけ開いた。
アルヴァが廊下側から顔を覗かせる。
完全には入ってこないあたり、微妙な距離感を保とうとしているのが分かる。
「部屋に何か問題でも?」
「あ、いえ、その……」
レアは、少しだけ視線を逸らした。
「ねむれなくて……中庭を、みてました」
正直に言うと、アルヴァは一瞬だけ黙った。
「そうか」
短い返事。
でも、非難も呆れも含まれていない。
「知らない場所では、眠りづらいものだ」
「アルヴァさんも、ですか?」
「俺はどこでも寝られる」
「つよい……」
思わず素で感想を漏らす。
アルヴァは、少しだけ口元を引きつらせた。
「鍛えられただけだ」
「……こわくないんですか? ここ」
「怖い場所か?」
「いえ、その、わたしには……すこし、ひろすぎて」
レアは、窓の外をちらりと見た。
「神殿もおおきいし、人も多いし……
みんな、わたしのこと、“聖女候補”って目でみてくるし」
地方神殿とは違う、視線の重み。
期待と、好奇心と、計算。
その全部が、自分一人に向けられるのは、正直少し怖い。
「ここで、うまくやっていけるのかなって……」
口にしてから、「また“わたしなんか”モードだ」と内心で苦笑する。
アルヴァはしばらく黙っていた。
廊下には、遠くの足音と、夜風の音しかない。
「……お前は」
やがて、彼は静かに口を開いた。
「地方神殿で、うまくやれていたか?」
「え?」
「うまくやれていたか、と聞いている」
レアは少し考え、ゆっくりと頷いた。
「はい。みんな、やさしくしてくれて……
わたしも、できることをすこしずつやって……
あそこは、だいすきな場所です」
「そうか」
アルヴァは、ごく僅かに表情を緩めた。
「なら、ここでも大丈夫だ」
「……そんな、かんたんに言いますけど」
「うまくやれた場所が一つあるなら、二つ目もうまくやれる可能性は高い」
理詰めすぎる理屈に、思わず笑ってしまう。
「アルヴァさんって、たまに、すごく適当な励まし方しますよね」
「事実を言っただけだ」
そう言いながらも、その声は少しだけ柔らかくなっている。
レアの胸の中のざわざわが、少しだけ静かになった。
(ああ……)
知らない場所。
知らない人たち。
その中で、「知っている人」がそばにいるというだけで、こんなにも心が軽くなる。
前世の断罪の夜、誰も自分の隣に立ってくれなかった記憶が、
遠くでかすかに軋む。
今は――少なくとも、廊下一本挟んだ先に、剣を持った誰かがいてくれる。
それだけで、世界の色が少し違って見えた。
「……ありがとうございます」
レアは、小さな声で言った。
「少し、安心しました」
「そうか」
アルヴァは短く頷き、
「何かあれば、すぐ扉を叩け」
とだけ言って、廊下の巡回へ戻っていった。
扉が閉まる。
レアは、しばらくその扉を見つめていた。
胸の中の孤独感は、まだ完全には消えていない。
でも、その隣に、小さな灯りがともった気がする。
(ここでも、ちゃんとやってみよう)
自分にそう言い聞かせる。
ベッドに戻り、もう一度横になる。
さっきよりも、布団の重みが心地よく感じた。
目を閉じる直前――
レアは、なぜかふと、こんなことを思った。
(もし、あの夢の中の女の子が、この世界のどこかで一人きりだったとしたら)
(今度は、わたしがだれかの“そばにいる人”になれたらいいな)
その願いは、まだ形にならない。
ただの、ぼんやりとした未来への祈り。
それでも、確かに胸の奥で灯っていた。
外の中庭では、黒髪の騎士が夜空を見上げ、
静かに、同じ月を見ていた。
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それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
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私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
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