巨乳だけど清楚系(のつもり)です!

井上無印

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第1話:体育祭、揺れるとか言うなっ!

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 どうしてこうなったのか、説明したい。
 私はただ、普通に走りたかっただけなのに。
「星野~! そのTシャツ、小さくない?」
 更衣室でクラスメイトのあかねが眉をひそめる。
「えっ、そうかな? Mサイズだよ、みんなと同じ」
「いや、胸のとこ、完全にパンパンじゃん!」
 言われて鏡を見ると、確かにピッタピタ。
 学校指定のクラスTシャツは白地に水色のライン入り。伸縮性ゼロ。
 胸のあたりが妙に盛り上がって、布地が今にも破裂しそう。
「うわあ、ちょっと目立つかも……」
「目立つどころじゃないよ! 男子全員、今日ずっと目線そこだよ」
 あかねの言葉に思わず真っ赤になる。
 でも、もう替えはない。私は清楚系女子。走り切るしかない。

 ──そんな決意をしたのが、朝九時。
 そして今、昼のリレーで私はコース上を全力疾走していた。

「いけー! 星野ー!」
 クラスの声援。耳が熱くなる。
 風が顔を打つ。胸も……揺れる。いや、そんなこと考えちゃだめ!
 とにかく前を向いて──。

「……っ!」
 思ったよりも速く走れた。抜きつ抜かれつ、ラストでアンカーの颯(はやて)にバトンを渡す。
「ナイス!」って笑ってくれた瞬間、少しだけ胸がきゅんとした。
 ……いやいや、きゅんじゃない。これは疲労による心拍上昇だ、うん。

 結果、クラスは2位。みんな大はしゃぎで写真撮影が始まる。
 でも私は汗びっしょり。胸のあたりに張りついた布が気持ち悪くて、思わず裾を引っ張る。
 その瞬間、背後から声が。

「星野、動くな!」
「えっ!?」
 颯が慌てて私の前に立つ。
「Tシャツ、ちょっと……透けてる!」
「うそっ!?」
 見下ろすと、確かに。汗で生地が肌に密着して、下着のラインがうっすら浮いている。
 ぎゃあああ!

「ど、どうしよう!?」
「タオル貸す! これ、首にかけとけ!」
 颯が差し出したスポーツタオルを胸元に押し当てる。
 その手が一瞬、私の鎖骨に触れた。
 電気が走ったみたいに、身体がびくっと跳ねる。
「わ、ご、ごめん!」
「い、いやっ、だ、大丈夫……!」

 恥ずかしさで死にそうになりながら、タオルで必死に隠す。
 でも隠せば隠すほど、男子たちの視線が集まる気がして、余計に恥ずかしい。

 そのあと、颯がクラスメイトたちに
「星野、ちょっと体調悪いみたいだから!」
と気を利かせてくれて、私は保健室へ避難することになった。

 冷房の効いた室内でようやく息をつく。
 鏡を見ると、頬が真っ赤。髪も乱れて、まるで恋愛ゲームのイベントCGみたいな顔になってる。
 ……いや、違う。そんなこと考えちゃダメ。

 そこへドアが開いた。
「大丈夫か?」
 また颯だ。
「先生に頼まれて、飲み物持ってきた」
「ありがと……」
 ペットボトルの水を受け取る。
 そのとき、タオルがずれて、また胸元が少し見えてしまう。
 颯の視線が一瞬だけ止まって、すぐに逸れた。
 空気が、ちょっとだけ甘くなる。

 ……だめ。そういうの意識したら、余計恥ずかしい。

「ほんと、すごいよな。星野って……努力家だし、走る姿も綺麗だし」
「え、えっと……ありがと」
「でも次は、サイズちゃんと合ったTシャツにしろよ。心臓に悪いから」
「ちょ、ちょっと! それどういう意味!?」
「そのままの意味」
 にやっと笑って、彼は出ていった。
 残された私は、顔を覆って小さく叫ぶ。

「もぉぉぉ! 清楚系なのにぃぃぃ!!」

 こうして、私の体育祭は幕を閉じた。
 ──ちなみに翌日、クラスのSNSでは「星野、揺れすぎ事件」として話題になっていた。
 泣きたい。
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