レンズに溶ける横顔

kaoru

文字の大きさ
1 / 11

Phase 0

しおりを挟む
文化祭の喧騒は遠のき、薄暗い準備室の片隅だけが世界のすべてだった。
2023年10月12日、午後4時を少し回った頃。
窓の外ではまだ焼きそばの匂いと笑い声が渦巻いているのに、ここだけが別世界のように静まり返っていた。
机の上に散らばった文化祭のパンフレットと、床に脱ぎ散らかされた紺のブレザー。
佐藤澪、17歳、高校2年生。
初めての彼氏、翔太先輩と二人きりで、空き教室に忍び込んでいた。

最初はキスだけのはずだった。
唇を重ねるたびに胸が締めつけられるような甘い疼きが広がって、息が熱くなった。
でも翔太先輩の手はすぐにスカートの中へ滑り込み、震える指先が太腿の奥を這う。
澪は小さく震えながらも拒まなかった。
拒めなかった。
だって、ずっと憧れていた先輩に「好きだよ」と言われた瞬間から、もう自分の身体は自分のものじゃなくなっていたから。

「澪、いいよね……?」  
震える声で囁かれ、頷くことしかできなかった。
制服のブラウスがはだけ、スカートが捲れ、白いレースの下着が露わになる。
冷たい机の感触が背中に突き刺さる。
翔太先輩がベルトを外す音がやけに大きく響いた。
初めて見る男性のそれ。
熱くて、硬くて、少し怖い。
でも澪は目を逸らせなかった。
逸らしたくなかった。

先輩が覆い被さってきたとき、澪は必死に脚を開いた。
痛みが来るのはわかっていた。
でもそれ以上に、先輩と一つになりたいという想いが強かった。
ゆっくりと押し入ろうとする熱に、澪は唇を噛みしめた。
最初はただの圧迫感だった。
それが次第に鋭い痛みに変わっていく。

「んっ……」

小さく漏れた声が、自分でも驚くほど甘ったるかった。

でも、痛かった。
本当に痛かった。
想像していたよりも何倍も鋭くて、身体が拒絶しているのがはっきりとわかった。
澪は必死に耐えようとした。
爪を先輩の背中に食い込ませて、涙を堪えて。
でも限界だった。

「ごめん……なさい……痛い……」

掠れた声で訴えると、動きが止まった。
先輩の顔が歪む。
苛立ちと困惑と、それでも抑えきれない欲望が混じり合って。

「もう……無理だよな」  

吐き捨てるように言われて、澪の胸がぎゅっと締めつけられた。
失敗した。
初めての相手に、満足させてあげられなかった。
涙が零れて、頬を伝う。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

嗚咽が漏れる。自分が惨めで、汚くて、女として欠陥品みたいに思えた。

そのとき、先輩が言った。
  
「じゃあ……口で、してくれよ」 
 
震える声。
でも目は本気だった。
澪は一瞬、耳を疑った。
でも拒めなかった。
拒んだら、先輩に嫌われる。
もう二度と触ってもらえないかもしれない。
そう思うと、恐怖よりもっと強い衝動が湧き上がった。

……してあげたい。先輩を、気持ちよくしてあげたい。

床に膝をつく。
冷たい床が膝に食い込む。
先輩の前に跪いて、震える手でそれに触れた。
熱い。
脈打っている。
澪は目を閉じて、ゆっくりと口を開いた。
初めての感触。
塩辛くて、少し苦くて、でも先輩の匂いがして、頭がくらくらした。

最初は怯えていた。
どうしたらいいかわからなくて、ただ唇で包むだけで精一杯だった。
でも、先輩が腰を少し動かした瞬間、何かが弾けた。

……ここは学校だ。

文化祭の真っ最中。
すぐ外にはクラスメイトや教師がいる。
この淫らな行為を、誰かに見られたら……。
想像しただけで、身体の奥が熱くなった。

澪は舌を動かし始めた。
最初はぎこちなかった。
でも次第に、夢中で舌を這わせるようになった。
先輩の吐息が荒くなる。
それが嬉しくて、もっと激しく、もっと深く。
喉の奥まで咥え込んで、涙を流しながら舌を絡める。

……見られたい。

誰かに、この恥ずかしい姿を。
佐藤澪が、こんな場所で、こんなことしてるって知られたら。
清楚だと思われている自分が、こんなに淫らだって知られたら。

そのときだった。
  
カチッ、とドアのノブが鳴った。  
一瞬、時間が止まった。

澪の身体がびくりと震える。
先輩が慌てて腰を引いた。
でも遅かった。
ドアが少しだけ開いて、誰かの気配がした。

「あれ? まだ誰かいるのか?」

数学教師の声だ……。
間違いない。
澪の心臓が、破裂しそうに鳴った。

次の瞬間、先輩が澪の頭を強く押さえつけた。
反射的に喉の奥まで押し込まれて、澪はむせた。
でも動けない。
声も出せない。
ただ、恐怖と、そして、信じられないほどの快感が全身を駆け巡った。

……見つかる。絶対に見つかる。

今、この瞬間、佐藤澪は喉奥を犯されてる姿を教師に見つかる。
そして、清楚な優等生の仮面が、粉々に砕ける……。

でも、結局、教師は「誰もいないか」と呟いてドアを閉めた。
  
静寂が戻る。
先輩は震えながら澪の口から抜いた。
射精できなかった苛立ちと、恐怖で顔を真っ青にしている。

「……もういいよ!」

吐き捨てて、服を整え始めた。
澪は床に座り込んだまま、震えていた。
でも、それは恐怖だけじゃなかった。

身体の奥が、熱い。
信じられないほど熱い。
初めての感覚。
頭の中が真っ白になって、膝ががくがくと震える。

……今、絶頂した。
誰かに見られるかもしれないという恐怖の中で、佐藤澪は初めて、自分で自分をイカせた。

その後、翔太先輩とは自然と疎遠になった。
文化祭の事件が原因で、気まずくなって。
澪は謝りもしなかった。
だって、あのときの快感が忘れられなかったから。
あの恐怖と羞恥と、それでも抑えきれなかった悦びが、澪の奥底に深く根を張った。

それから澪は変わった。
  
スカートの中をノーパンにしたり、屋上で大胆な写真を撮ったり。
誰かに見られるかもしれないという状況に、いつも身体が疼くようになった。
あの文化祭の空き教室での出来事が、佐藤澪を「露出マニア」に変えた原点だった。

今でも、時々思い出す。
あのドアのノブが鳴った瞬間。
喉の奥まで押し込まれた熱と、教師に見つかるかもしれないという恐怖。

そして、自分でも信じられないほどの絶頂。
あれが、澪のすべてのはじまりだった。 
 
誰かに見られたい。
  
佐藤澪という仮面の下に隠している、本当の自分を。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...