5 / 6
中学2年生編
どっちも(1)
しおりを挟む
炎暑の黄昏。
家に帰ると、テレビで特番が流れていた。
そこに映っていたのは、レジェンド 鈴木 元 の特集だった。
数々の前人未到の記録を残した男。
記者「成功の秘訣は何ですか?」
鈴木は少し考えてから、笑った。
鈴木「例えば、誰もやらないから自分もやらない。
誰かに言われたからやらない。
そういうのに反抗してきたからですかね」
その言葉が、胸に刺さった。
俺の心の奥で、何かが揺れ動く。
その晩。
ベッドに横になり、天井を見つめていた。
ふと視界の端に、父のグローブが見えた。
左投げ用のグローブ。
嶋口(左……)
俺はゆっくり体を起こす。
嶋口(どっちもやるのは、どうだろう)
胸の奥の火が、少しだけ大きくなった。
俺は早速、父のグローブを持って投球練習に向かった。
外はまだ、昼の熱を残していた。
住宅街の奥にある小さな空き地。
いつも一人で壁当てをしている場所だ。
俺はボールを握る。
左手で。
嶋口(変な感じだな……)
グローブを右手に付け、ゆっくりと振りかぶる。
ぎこちないフォーム。
体のバランスもおかしい。
嶋口「……えいっ」
シュッ。
ボールは壁に届く前に、地面に叩きつけられた。
嶋口「……だよな」
苦笑いがこぼれる。
もう一球。
もう一球。
何度も、何度も投げる。
ボールは暴れ、腕は思うように動かない。
それでも、投げ続けた。
空はいつの間にか、暗くなっていた。
嶋口「はぁ……はぁ……」
汗でシャツが張り付く。
それでも俺は、もう一球だけ投げた。
振りかぶる。
踏み込む。
腕を振る。
シュッ。
ドンッ。
壁に、乾いた音が響いた。
嶋口「……!」
初めて、まっすぐ届いた。
胸の奥が熱くなる。
嶋口「……いけるかもな」
右でも投げる。
左でも投げる。
誰もやらないなら、俺がやる。
家に帰ると、テレビで特番が流れていた。
そこに映っていたのは、レジェンド 鈴木 元 の特集だった。
数々の前人未到の記録を残した男。
記者「成功の秘訣は何ですか?」
鈴木は少し考えてから、笑った。
鈴木「例えば、誰もやらないから自分もやらない。
誰かに言われたからやらない。
そういうのに反抗してきたからですかね」
その言葉が、胸に刺さった。
俺の心の奥で、何かが揺れ動く。
その晩。
ベッドに横になり、天井を見つめていた。
ふと視界の端に、父のグローブが見えた。
左投げ用のグローブ。
嶋口(左……)
俺はゆっくり体を起こす。
嶋口(どっちもやるのは、どうだろう)
胸の奥の火が、少しだけ大きくなった。
俺は早速、父のグローブを持って投球練習に向かった。
外はまだ、昼の熱を残していた。
住宅街の奥にある小さな空き地。
いつも一人で壁当てをしている場所だ。
俺はボールを握る。
左手で。
嶋口(変な感じだな……)
グローブを右手に付け、ゆっくりと振りかぶる。
ぎこちないフォーム。
体のバランスもおかしい。
嶋口「……えいっ」
シュッ。
ボールは壁に届く前に、地面に叩きつけられた。
嶋口「……だよな」
苦笑いがこぼれる。
もう一球。
もう一球。
何度も、何度も投げる。
ボールは暴れ、腕は思うように動かない。
それでも、投げ続けた。
空はいつの間にか、暗くなっていた。
嶋口「はぁ……はぁ……」
汗でシャツが張り付く。
それでも俺は、もう一球だけ投げた。
振りかぶる。
踏み込む。
腕を振る。
シュッ。
ドンッ。
壁に、乾いた音が響いた。
嶋口「……!」
初めて、まっすぐ届いた。
胸の奥が熱くなる。
嶋口「……いけるかもな」
右でも投げる。
左でも投げる。
誰もやらないなら、俺がやる。
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる