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第39話 和也と美瑠子
しおりを挟む「なぁ美瑠子? これから俺たち大丈夫なのか?」
「そんなの解るはずないじゃない…」
私は和也とパーティを組みました。
和也は『聖騎士』私は『黒魔法使い』聖騎士は4職(勇者、聖女、剣聖、賢者)の次に有望な職…最初はクラスの女の子にチヤホヤされていた和也ですが…何故か思うように能力が発揮できず、未だに中級騎士にすら勝てません。
その結果…元のモテない和也に戻り、私と組むことになりました。
しかし…信じられない事に、黒魔法使いの私は絶好調でした。
何しろ、勇者の大樹や剣聖の大河を模擬戦では圧倒した位です。
ですが王様やライア姫の話では『黒魔法』は魔族が好んで使う魔法なので魔王には通じないそうです…まぁ、そんな気がしますね。
所詮は『黒魔法』ですから。
「俺はこれでも聖騎士…かなり強い筈だが、実際にはオークにすら苦戦している、可笑しいよな…」
本当に何かおかしい。
頭の中には『ナニカ』の事が一瞬思い出されたけど…
幾らなんでも一つの世界を管理するような女神には勝てない筈だよ。
そう信じたい…もしあの女神に勝てるなら、元の世界で言うならキリストや仏陀…オーディーン、主神ですら勝てない存在という事になる。
ここからは私の予想だけど、流石に『ナニカ』を倒すのにあの女神様でも手を焼いたのかも知れない。
その結果…神の力をかなり使って休んでいる…そんな所だと思うわね。
まぁ暫く休めば回復するでしょうね…だって女神なんだから。
「これは私の予想ね…多分暫くしたら、かなり強くなると思うよ」
「慰めの言葉は要らないぞ、俺は俺の力の中で頑張るだけだ」
恐らく女神が復活したら…うん元通りになる筈よ。
その事が解らないで皆、パニックになっていたけどさぁ…
勇者の能力が戻った大樹達たちが魔王ならどうにかするだろうから気にする必要はないわ。
私たちは自分の能力で面白可笑しく、魔王討伐の知らせが入る迄国からの支援を受けて出来る事だけの事をすれば良い。
それだけよ。
「そう? それなら良いけど! もし能力が開花したからって『俺の時代が来た~』とか馬鹿はしないでね」
「美瑠子…俺そんな奴に見えるか?」
「見えないわね」
「解ればいいんだぜ…それでどうする?」
「そうね…まずは心配だから、月子達にあってみようと思うの」
「良いね、俺も理人に久々に会いたいから良いぜ…行こう」
こうして私たちは月子達に会いに行く事にしました。
◆◆◆
私たちは王城から一番近い町『ゴレム』に来ています。
此処の冒険者ギルドで登録してから旅をしながら魔物の討伐をするのが定石だと思ったのですが…
冒険者ギルドにはクラスの仲間は誰も居ません。
「あれっ、混むかと思って少し遅れて来たのに…なんで誰も居ないのかな」
「美瑠子、俺に聞いて解ると思うか?」
「そうね、解るわけないわね」
「そうそう、だから聞くだけ無駄だ」
受付にいって登録をして貰いました。
私達は王家からの推薦状があるのでD級ランクから始まります。
「それでパーティ名はどうしますか?」
和也に聞いてみたら何でも良いと言ったので…私が考えたのは
「『深淵を見る者達』でお願いします」
「はい、深淵を見る者達ですね…はい登録は終わりました、なにか聞きたい事はありますか?」
事前に王城に冒険者ギルドのギルマスが来て講習を開いてくれたので聞くことは特にないわ。
「任せたけど、美瑠子、お前中二病なんじゃないのか?」
「煩いわね…これしか思い浮かばなかったのよ…」
「まぁ良いけどな」
「あの、質問ではないんですが、理人と月子でパーティ登録している人いますか?」
「ああっ『月の理解者』ですね、凄いですよね、採取専門の冒険者で凄く稼いでいますよ」
「そうなの?」
「はい、ゴブリンすら討伐していないのに、高額な薬草を採取してくる、幸運の女神に愛された男と噂される理人さんが率いるパーティです」
「そんなに凄いんだ」
「それはもう…はい!」
「おい、美瑠子行ってみようぜ」
こんな近くに住んでいるんだ。
幸せに暮らしているんだ…良かった。
「住んでいる場所を教えて貰えるかしら?」
「はい、銅貨1枚になります」
「お金…掛かるの?」
「はい、此処は冒険者ギルドですから」
私は銅貨1枚渡して二人の家の場所を聞いた。
◆◆◆
「此処があいつ等の家か、なかなか立派な家じゃないか? なぁ美瑠子」
嘘でしょう…此処はヤバい。
霊能力が弱まっている私でも解る…この家の怖さは、私の叔母でも対処できなかった…杉沢村、馬首村のレベルを遥かに超える。
足が震える…
体中に氷水を浴びされた以上に体が寒い。
そうか…解った。
私はこの世界に来て『黒魔法使い』になった。
そしてジョブに『死霊使い』がある。
元からあった霊能力はかなり弱まったけど、このスキルなら…きっと。
犬神憑きから解放された月子。
この世界に来て『ナニカ』から解放された理人。
霊能者一族の私が、助けてあげる。
もう私は目を瞑りたくない。
「どうしたんだ、美瑠子?」
「此処に悪霊の類がいるわ」
「また、心霊ゴッコか?」
「違う…本当に要るのよ…信じて」
「解った」
私の只ならない雰囲気に和也も信じてくれたようだ。
私は『死霊使い』…そのスキルに力を注いだ。
そうか…霊能力はこれに統合されていたのか…今の私の霊能力はかなり増した…今なら、きっと。
『ご主人様…に…なんのよう』
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁー――――っ」
「おい月子ぉぉー――っ」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いょー―――っ。
流石に『ナニカ』とは比べ物にならないけど…
あれはとんでもない化け物だ。
私が死霊使いレベル1だとしたら100は優に超えるわ。
八尺様すら可愛く見るほどの悍ましさ…
月子も理人も今度はあんな者に憑りつかれたの…
「ハァハァハァ」
「おい美瑠子大丈夫か?」
「ええっ、もう大丈夫…だけど、あれはどうする事も出来ないわ」
「ああっ俺には見えなかったけど、声だけは聞こえたよ…尋常じゃ無かった」
「仕方ないわ…街の宿屋に居る事をギルドで伝えて貰いましょう」
「そうだな…もう一度あの場所には行きたくないからな」
私は凍える体をさすりながら街に戻っていった。
◆◆◆
最近、ご主人様に綺麗だと言われて油断しました。
あれが本来の私を見た人間の反応…
美しさはもう何処にも無く恐怖しかない私…
それなのにご主人様は綺麗だと言う。
沢山の人を恨み殺し、悪霊になった私だけど…
ご主人様への気持ちだけは…地獄に行っても忘れないわ。
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