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第43話 勇者達①
しおりを挟む俺たちは城から一番近い『ゴレムの街』をスルーして三つ先の街『メルカラ』からスタートする事に決めた。
俺は勇者だ。
他のパーティもゴレムを素通りして、ジーモからスタートする…なら勇者である俺は更に一つ先からスタートする…当たり前だな。
「大樹、自信満々だけど本当に大丈夫なの?」
「塔子、何を言っているんだ、俺は勇者だぞ! 余裕だって言うの」
「そうそう、4職そろい踏み、これなら幾らなんでも余裕だ」
「まぁ、流石に序盤だから大丈夫でしょう」
「あんた達、本当にそう思っていますの?」
「「「勿論(だ)(だよ)」」」
こうして俺たちの冒険が始まった。
この街と他の街の違いはオーガが居る所だ。
オーガは初心者キラーと言われ冒険者が最初に躓く相手だと聞いた。
だが、俺たちは勇者パーティだ、そんな者は恐れない。
パーティ登録をさっさと済ました。
パーティ名は『ブラックウイング』伝説の勇者パーティの名前をそのまま使った。
そして俺たちは特例で最初からAランク…これは勇者特権だ。
こうして俺たちの冒険は始まった。
◆◆◆
「塔子…お前本当にこないつもりか?」
「ええっ行きませんわ」
「塔子ちゃん幾らなんでも来ないって言うのはないと思うよ」
「俺たちが守るから安心して来いよ!」
「聖人に大河、これがゴブリンやオークなら仕方ないから行きますわよ…それでも負けたら女の私は貴方達より地獄を味わって死ぬのですわ…それなのにいきなりオーガなんて馬鹿ですの?」
「塔子、俺たちは勇者パーティなんだぜ、他と同じには出来ない」
俺たちは勇者なんだ…流石に一般冒険者と同じスタートじゃカッコ悪いだろう。
「そう、それなら構いませんわ…確か前に勇者召喚された勇者は軽くオーガを狩ったらしいですわ…3日間でそうですわね、30体のオーガを皆が狩ってきたら参戦しますわ…あっ帰ってきたらしっかりヒールを使って治療をしますから、そこは安心して欲しいですわね」
「そうか…勝手にしろ」
「解ったよ、その代り30体倒したらお前も来いよ」
「塔子ちゃん…まぁ仕方ないか」
こうして俺たちは塔子抜きで最初の狩りに出かける事にした。
オーガなんて簡単に狩れる…そう思っていたんだ。
森の中を進むとオーガが馬車を襲っているのに遭遇した。
「大樹」
「ああっ! 行くぞ!大河、聖人!」
「「おおっ」」
馬車を襲っているオーガは3体。
その背後に更に大型のオーガが2体いる。
馬車は高級そうな馬車だ…裕福な商人か貴族と言った所か。
助ければ何かお礼が貰えるかもな。
「大丈夫かー――っ」
「逃げて下さい…オーガの上位種です。この馬車は強固なので簡単には壊れませんから援軍を呼んできてください」
見たところ護衛と馬は殺されていたが…馬車は傷ひとつ付いてない。
これで人質の心配はない。
「安心しろ、俺たちは勇者パーティだ、今すぐ助けてやる」
俺は、聖剣ホワイトウイングを抜いて斬りかかった。
この聖剣には女神の加護が宿っていて…魔物や魔族をバターの様に斬る。
「いくぞー――っ…なっ」
「ぐわぁぁぁぁー―――――っ」
可笑しい…刃が通らない。
聖剣は…嘘だろうオーガに握られて…パキッバキバキッ。
「聖剣が砕かれた! ぐふっ、がぁぁぁぁぁぁぁっ」
聖剣を砕いたオーガはそのまま俺をこん棒で殴ってきた…
多分5~6メートル飛ばされた、上手く立てない。
「大樹…貴様よくも大樹をー-っ」
大河が剣で斬りつけていた。
何でだ…俺より戦えている気がする。
「ファイヤーボール」
聖人が唱えたファイヤーボールがオーガに着弾した。
地味に効いている気がする…
何故だ…何故、俺だけが戦えない。
俺は、俺は…何とか立ち上がったが…折れた聖剣では戦えない。
「大樹、危ないっ」
メキメキッ
「えっ ぐふっげほうぇぇぇぇー-っ」
駄目だ、もう立てない…
「よくも大樹をー-っ貴様殺す、殺すー-っ うがぁぁぁぁー-つゴフッ」
確かに大河の剣はオーガの腕に刺さった。
だが、斬り落とす事は出来ずに刺さったままだ。
唖然とする、大河を薙ぎ払うようにオーガが殴った。
その瞬間に大河は地面に叩きつけられ動けなくなった。
「よくも、よくも大樹を大河を許さないぞ、僕は許さないぞ」
「駄目だ…聖人に.げ.ろ」
「嫌だね、僕は何があっても逃げない…大樹を守るんだー-っ」
「駄目だ…逃げろ」
もう終わりだ…恐らく俺たちの戦ったオーガはあの五体の中で一番弱い。
もし勝てても、残りの4体に殺される。
大河…ごめんよ…俺が悪かった。
聖人、お前だけでも…馬鹿だよ。
「ウオータービジット」
それじゃ勝てないさ…
聖人…駄目だ…
なぁ…俺は勇者何だろう…
こんな者に負けたくねーよ…女神よなんでこんなに弱い勇者に俺をしたんだ。
『仲間を助けたい』
砕けたはずの聖剣ホワイトウイングが光輝き元に戻った。
そして俺の手に収まった。
知っている…どうすれば出せるのかを。
自分の持つ最強の技…勇者のみが使える最強剣技。
「これが最強剣技…光の翼だぁぁぁぁぁー―――――っ」
剣が光を纏い大きな鳥になった。
その鳥が羽ばたきながらオーガに襲い掛かった。
「ぎゃぁぁぁぁぁー――っ」
オーガは断末魔の声をあげて死んでいった。
「第二ランドスタートだ…えっおいっ」
ホワイトウイングは砕けるのでは無く、砂の様に崩れ去った。
「聖人、大河を担いで逃げろー-っ」
「嫌だ、僕は、僕は大樹を残して逃げないんだぁー――っ」
彼奴、足は震えて、今にも尻もちつきそうじゃないか。
「光よ俺の手に集まれ…なんで集まらないんだ『光拳』」
無数の高速のパンチを繰り出す勇者の技だ。
だが…
「うがぁぁぁぁー-痛ぇぇぇぇぇー-っ」
高速のパンチは打ち出せたが、光のガードが無い。
潰れていくのは…俺の手だけだ。
「うがぁぁぁぁー――っ」
もう本当に終わりだ…
手は潰れてしまった。
足にも力が入らない。
もう、俺は何も出来ない…
俺はそのまま意識を手放した。
聖人、大河…に.げ.ろ…
◆◆◆
此処は何処だ。
「目が覚められましたな」
白い服を着ている老人…神父に見える。
「此処は何処でしょうか?」
「此処はメルカラの教会です…良かったですな、傭兵団が通りかかってくれて、彼らが居なければ4体のオーガ等相手に出来ませんからな」
話を聞けば、200人から成る傭兵団が馬車の商人を助けるべく駆け付けたそうだ…そのついでに俺たちも?助けられたそうだ。
えっ…俺の両腕…嘘だろう…俺の両腕が無い。
「俺の両腕….」
「すみません、この教会にあそこ迄破壊された腕を治す術はありません…」
助けて貰ったんだ文句は言えないな。
そうだ、二人…二人はどうなった。
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「…」
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「そうですか…」
俺は馬鹿だった。
馬鹿だったから…仲間を犠牲にしてしまった。
「暫く一人にして貰ってもいいですか」
「はい」
そう言うと神父のような男性は部屋から出て行った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー――――っ」
俺は泣きながら叫んだ。
もう取り返しはつかない
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