勇者パーティを追放されかけた魔法剣士は、昭和バブルの夢を見るか?

石のやっさん

文字の大きさ
32 / 38

第32話 三者三様

しおりを挟む

「勇者パーティは何故来ぬのだーーっ!」

「駄目です! グリル将軍持ちこたえられません!」

「此処の敗北は許されぬ! ここを破られたら、この街の民3千はどうなると言うのだ! 我々の役目は例え1分一秒でも此処を守り続ける事なのだ」

「ですが…」

「信じて待つのだ! 勇者は来る! 必ずやこの暗黒の世の中を救うために…この世界の光なのだから…」

必ず来る…勇者は…

◆◆◆

「このまま蹂躙するのだ!我が闇の眷属よ!」

我が名はスカル、冥界王と呼ばれる、四天王の一人である。

魔王ルシファード様の命を受け、此処迄攻め入ってきた。

冥界王の所以は死霊を自由に操る事が出来るによるものだ。

我単体では弱いが、我が呼び出し操れる死霊の数は実に1万を超える。

その『数の理』で勝利を納めてきた。

どの様な勇者や英雄とて精々が数百も居れば事足りる。

今迄戦った中に千を葬る様な強者は居なかった。

我が居る限り…魔王軍の勝利は間違いないのだ。
「スカル様…この街も制圧が終わりました…」

「うむ…」

この街に居た人間は3千を超えていた。

だが、我の軍団1万の前にはこんな物だ。

死を恐れぬ不死の軍団 1万。

倒せる者なら倒してみよ。

◆◆◆

通信水晶が光り出した。

嫌な予感がする。

そろそろ、ロマーニ教皇、もしくはローアン大司教辺りから連絡が来ても可笑しくない。

そして内容は解っている。

そろそろ『旅を進めろ』そう言う事だ。

『それで勇者様はどうなのだ? そろそろ旅を続ける気になられたか?』

いきなり要件からきたな。

この通信の相手はローアン大司教だ。

『それが…その、すみません…そのエルフとの色に狂っています』

『英雄色を好む、それは解りますが、勇者の旅は救世の旅でもあるのです。歩みを止めてはなりません』

出来たら、それは俺でなくガイアに言ってくれと言いたいが無理だ。

『そのお話なのですが、実はガイア様から提案を頂きまして、私が別動隊の隊長をしてはどうか? そういうお話を頂きました』

『別動隊?』

『はい、ガイア様からの提案で私が隊長をしましてマリア様にリタ様にエルザ様と別動隊を作ったらどうか? そういう話がありました。折角なので私達だけで旅を進め…後からガイア様について来て貰う。こんな話は如何でしょうか? 四職のうち三職が居るから大抵のことは対処できますし、無理な案件なら勇者様であるガイア様を待てばよいのです』

『それは名案ですね』

ローアン大司教も大変だな。

色に狂っているのを知っていても…それを咎められないんだからな。

『はい、それでは勇者であるガイア様に話を通しまして『別動隊』として活動させて頂きます』

『期待しておりますよ』

これで良い筈だ。

◆◆◆

「また何かようか?」

「いや、前に話した『別動隊』の話なんだが、教会に話をして正式に認めて貰えた」

「そうか、なら任せた」

「いや、これだけじゃなくてな、先を急ぐように教会から言われたんだ、確かに勇者の旅は救世の旅だからな」

「それで? 俺はもう暫くはこの街から動かないぞ」

この街を出たら1か月位は碌な街が無い。

それがきっと嫌なのだろう。

「それで、俺達の隊の方が先に進むから、暫くしたら追いかけてくれないか? 行く先は冒険者ギルドで解るようにして置くから…どうだ」

「ああっ面倒くさいから、それで良い」

「それで、その旅の途中で、魔族と戦い、マリアとエルザが負傷、そう報告するつもりだ…それで良いか?」

「ああっ、任せるよ」

まだ『エルフの秘薬』をやっているのか?

なにかヤバい成分が入っているのか、今日のガイアは気のせいか、目をトロんとさせて、思考が鈍いような気がする。

一番近いのは『無気力状態』だ。

まぁ良い。

これで色々とやり易くなった。





しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...