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最終話 ただの人だから...
しおりを挟む「凄いね!リヒトくん」
「ああっ、本当に凄いな!」
凄いとしか思えない…
家の広さは18LDK、温泉が室内と露天風呂と2つ。
プールにテニスコート? サウナ? 野外バーベキュー?
しかも高台にあるから海が良く見える。
凄い絶景に…そしてプライベートビーチに船。
教皇ってこうして見ると俗物なんだな。
「だけど、この家、2人には広すぎるね…」
「確かにそうだね…うんちょっと交渉してくる」
新しい教皇のローアン様に交渉して、ローアン様の別荘と交換して貰った。
それでも6LDKで、前の施設に近い物があった。
◆◆◆
「それで、リヒトくん、これからどうするの?」
「何もしないよ? 今の所はお金に困らないし…もし困ったら稼ぎに出るかも知れないけど…俺も京姉も余り無駄使いしないじゃない?」
「確かにそうだね」
京姉は勿論、俺も前世を含め贅沢を余りしたと思わない。
服装は別にブランド物が欲しい訳じゃなく…清潔な物なら問題ない。
貴金属にも興味が無い。
簡単に言ってしまえば『美味しい物が食べられて遊んでいられれば』それ以上何か欲しいと思わない。
『盗賊村』とは言え全財産を奪ったから…一生分どころか二~三生分のお金は余裕である。
「俺は兎も角、京姉は物凄く働いていたんだから、此処から先はもう、やりたい事をして遊んで暮らせば良いんじゃない? 結構頑張って働いたから、多分お金には困らないから…」
「本当に良いの?」
「あはははっこう言っちゃなんだけど…俺の夢はもう叶っちゃったからね」
「夢って?」
「京姉と一緒に楽しく暮す事…それ以上の夢は元から無かったし…偶然こんな良い場所も見つかったから…もう充分…あとは面白可笑しく京姉と暮らす、それだけかな?」
「貴族とかに成らなくて良いの?」
「なりたいと思わないな…」
「英雄と呼ばれたいとか?」
「ないない…凄く面倒臭い…」
「本当に?」
「本当! もう今迄の人生充分頑張ったから、残りの人生は京姉とイチャつきながら面白可笑しく生きたい…それだけで充分」
魔王や魔族と戦うのは勇者や国の仕事…俺には関係ない。
確かに一般人より優秀だとは思うが…それは関係ない。
「奇遇だね…その私も同じだよ」
「それじゃ…今日はどうしようか?」
「う~んどうしよう? 折角だから海で泳がない? プライベートビーチだから勿体ないし…」
「それじゃ、少し泳いだら…散歩して海の家にでも行って…夜は花火でも見に行こうか?」
「花火ってなに?」
「空に打ち上げて…まぁ凄く綺麗だよ」
「う~ん今一解らないけど、楽しみ」
「それじゃ決まりだね」
「うん」
俺は京姉の手をとり走り出した。
俺の欲しかった物は『京姉』だけだ。
これ以上を俺は望まない…今の幸せがただ続けばそれだけで満足だ。
「京姉…今は幸せ」
「うん…凄く幸せ、リヒトくんは?」
「凄く幸せ、京姉がいるからね」
「私もリヒトくんが居るから幸せ」
幸せに笑っている京姉が横に居る。
それだけで充分だ。
◆◆◆
それから1年もしないでカイト達が魔族と戦い死んだ知らせが入った。
次の勇者が現れるまで王国はかなり大変な事になるに違いない。
だが、もしこの後王国が負け続けても、俺が生きている間に、聖教国まで被害が来ることはまずない。
世界なんてどうでもよい。
ただ京姉と俺が楽しく生きていられれば…後は知らない。
俺は勇者でも英雄でもない。
只の人なのだから…
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