28 / 89
御前試合 後篇
しおりを挟む
「この試合は引き分けです」
「セレス殿、何故じゃどう見てもお主の勝ちにしか見えんぞ」
「私からもその様に見えましたわ、正に瞬殺です」
「私にもそう見えましたよ、セレス」
「負けた俺が言うんだ..貴公の勝ちだ」
「そうですよ..魔法の詠唱も間に合わずに負けたのですから」
「使っている装備に差があり過ぎます」
「装備だと、それを言うなら俺は騎士団長だ、勇者を除いたらこの国で最高の装備を使っているはずだ」
「私くしだって同じだわ」
「ですが、私の剣を見て下さい」
僕はデュランを抜いて見せた。
「その剣がどうかしたのかの」
「偽の聖剣デュランです」
「知っていますわ..あの聖剣を模して造られた剣ですね」
「はい、この剣は正にそれです、しかも私が主になったのでその一端の力が目覚めた」
僕はこの剣を堂々と使えるようにする為に今回の試合を受けた。
「模造の聖剣にその力が宿ったと申すのか?」
「はい、この通り」
デュランを抜く、キラキラと光り輝く。
「それは正に聖なる光、ではセレス殿も魔王と戦えますね」
「それが、あくまで偽物...聖なる力と言っても本物の何百分の1...マイン様の言うには魔王と何て戦えないそうです」
「それは残念じゃな..なら、それを使っても卑怯ではないのではないか?」
「ええ、ですが、それでもミスリルの剣よりも上のような気がします」
「そうか、武器の差か..うむ、セレス殿がそう言うなら引き分けで良かろう...本来、その剣は聖剣を模した物だから使うのは好ましくないが、女神の聖騎士のセレス殿が使い、剣が主として認めた、 使う事を認めよう」
「ありがとうございます」
これで正式にこの剣を使う事が出来る。
だが、誰も...鎧については触れなかった。
セレスにとっては美しい女神の装備も他の人から見たら、醜い不細工な女の顔を模した装備にしか見えない。
触れないであげるのが優しさ...そう考え触れなかった。
「しかし、剣の差を考えても貴公の剣の腕は一流だ」
「そうですよ...詠唱より早く動けたのは事実です」
「ですが、紙一重でしたよ...思った程の差は無いです」
この人たちは努力でここまでなったんだ、僕みたいに力を与えられた訳じゃない。
何の加護も無い、この人たちはそれこそ何年も鍛え上げた筈だ。
簡単に倒してしまったけど、その重みは僕なんか比べ物にならない努力をしたはずだ。
たった数日、努力しただけで倒されたこの人達の絶望は僕以上の筈だ...
それなのに、笑って僕の実力を評価してくれる。
僕は、人間としてはこの人たちの足元にも及ばないだろう。
「そうか、そう言ってくれると面子が立つ」
「私くしも助かるわ」
勇者には成れない...ならこういう人間に僕はなりたい。
本気でそう思った。
「セレス殿、何故じゃどう見てもお主の勝ちにしか見えんぞ」
「私からもその様に見えましたわ、正に瞬殺です」
「私にもそう見えましたよ、セレス」
「負けた俺が言うんだ..貴公の勝ちだ」
「そうですよ..魔法の詠唱も間に合わずに負けたのですから」
「使っている装備に差があり過ぎます」
「装備だと、それを言うなら俺は騎士団長だ、勇者を除いたらこの国で最高の装備を使っているはずだ」
「私くしだって同じだわ」
「ですが、私の剣を見て下さい」
僕はデュランを抜いて見せた。
「その剣がどうかしたのかの」
「偽の聖剣デュランです」
「知っていますわ..あの聖剣を模して造られた剣ですね」
「はい、この剣は正にそれです、しかも私が主になったのでその一端の力が目覚めた」
僕はこの剣を堂々と使えるようにする為に今回の試合を受けた。
「模造の聖剣にその力が宿ったと申すのか?」
「はい、この通り」
デュランを抜く、キラキラと光り輝く。
「それは正に聖なる光、ではセレス殿も魔王と戦えますね」
「それが、あくまで偽物...聖なる力と言っても本物の何百分の1...マイン様の言うには魔王と何て戦えないそうです」
「それは残念じゃな..なら、それを使っても卑怯ではないのではないか?」
「ええ、ですが、それでもミスリルの剣よりも上のような気がします」
「そうか、武器の差か..うむ、セレス殿がそう言うなら引き分けで良かろう...本来、その剣は聖剣を模した物だから使うのは好ましくないが、女神の聖騎士のセレス殿が使い、剣が主として認めた、 使う事を認めよう」
「ありがとうございます」
これで正式にこの剣を使う事が出来る。
だが、誰も...鎧については触れなかった。
セレスにとっては美しい女神の装備も他の人から見たら、醜い不細工な女の顔を模した装備にしか見えない。
触れないであげるのが優しさ...そう考え触れなかった。
「しかし、剣の差を考えても貴公の剣の腕は一流だ」
「そうですよ...詠唱より早く動けたのは事実です」
「ですが、紙一重でしたよ...思った程の差は無いです」
この人たちは努力でここまでなったんだ、僕みたいに力を与えられた訳じゃない。
何の加護も無い、この人たちはそれこそ何年も鍛え上げた筈だ。
簡単に倒してしまったけど、その重みは僕なんか比べ物にならない努力をしたはずだ。
たった数日、努力しただけで倒されたこの人達の絶望は僕以上の筈だ...
それなのに、笑って僕の実力を評価してくれる。
僕は、人間としてはこの人たちの足元にも及ばないだろう。
「そうか、そう言ってくれると面子が立つ」
「私くしも助かるわ」
勇者には成れない...ならこういう人間に僕はなりたい。
本気でそう思った。
10
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる