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第41話 俺が貢のは君だけだから

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「他の女の臭いがする…」

「なんだか、ごめん…」

なんだか、凄く申し訳ないような気がする。

俺みたいな存在の傍に居ない方が良い。

そう思った。

俺にはバンパイアの「魅了」それにインキュバスの「魅了」

恐らく二つの「魅了」がある。

この世界でレベルを見る事は出来ないが、恐らくあの世界では化け物側もレベルが上がるのかも知れない。

今迄、出来なかった事。

それが、今は出来るようになった。

レベルがあがり、やたらと精が必要になった反面。

この魅了の調整が出来るようになった。

だから、天使翔子…翔子へは魅了を使わず接するようにしたんだ。

この状態なら翔子は離れていく。

そう思っていた。

だが、翔子は離れていかなかった。

恐らく、最初は 無理やり。

そして、恐らくは魅了から始まった筈の恋だ。

俺にとっては素行は兎も角…憧れのアイドルだった。

それが魅了の力のせいじゃなく…本気で俺に惚れて傍にいてくれる。

人間で無くなったしまった俺だけど…

それでも、傍にいてくれる。

それが、凄く嬉しい。

「謝る必要は無いわ。私が勧めた道なんだから…」

「そうだな! だが、約束する! 俺にとって他の女は食料に過ぎない…本気で好きなのは翔子だけだ」

「そう、凄く嬉しいわ」

翔子が俺に微笑んでくれる。

だが、その笑顔には少し寂しさが混ざっているような気がする。

「本当にごめん…」

「いや、理人は悪くないんだから謝らなくて良いよ」

俺が翔子になにかしてあげられる事はないかな。

俺なりに色々考えてみた。

そうだ…

「翔子、明日デート行かない?」

「デート?」

「そう、デート。俺達、いきなりこう言う関係になったから、普通のデートってした事無かったじゃない?いかない?」

「行く、絶対に行く!」

少しは機嫌がなおった。

やっぱり、翔子は元気な方が良い。

◆◆◆

「学校に行かなくて良いの?」

「翔子とデートだから、サボっちゃおうと思って」

「あっ、いけないんだぁ」

笑顔で答えてくれる。

そして、俺が金持ちになっても、バンパイアだと知ってもなにも変わらない。

こんな女、二人と居ないだろう。

「だったら、サボるのやめて学校に行こうかな?」

「嘘、冗談だよね! サボるの賛成…別に悪い事じゃ無いよ!偶には息抜きも必要よね」

「そうだね、それじゃ行こうか?」

「何処に連れていってくれるの?エスコートしてくれるんでしょう?」

「任せて」

「うん、楽しみ、だけど理人と一緒なら何処でも良いよ」

もう、俺は決めた事がある。

翔子と腕を組みながら街を歩いた。

元芸能人の翔子。

そして、バンパイアのせいか、美形になった俺。

どうしても目立つ。

『あれ、天使翔子じゃないの? 横の子もモデルかな?』

『どうせ翔子だから、爛れた関係じゃ無いのか?』

『芸能界追放された位だし、また薬か乱交でもしているんじゃないか』

翔子も気にしていないから、無視で良い。

「ついた、まずはここから…」

「えっ、デートなのになんで不動産屋?」

「良いから、良いから…入ろう」

「どういう事?」

俺は驚く翔子の手をとって不動産屋へ入った。

◆◆◆

「いらっしゃいませ、今日はどういったご用件でしょうか?」

「マンションを買おうと思って、1億~2億円の範囲でタワマンが買いたいんだが見せて貰えるかな」

「あの…2人とも若そうですが、もしかして未成年じゃないですか?」

そうか俺は未成年だった。

だが、問題はない。

翔子は童顔だがれっきとした成人だ。

「俺は未成年だけど、連れは成人だから彼女名義で買う」

「あの、本当に買えるんですか、揶揄っているんじゃ」

まぁ、普通はそう考えるよな。

だから、もう手は打ってある。

「貴方じゃ埒があかない、上司を呼んでくれ」

「子供が冗談を言うもんじゃ…」

もういいや。

俺は大きな声で言う。

「この店は、南条孝蔵の紹介でもマンションが買えないの! もう良い帰る」

「ええっ…」

「お前は何をやっているんだ馬鹿者! 今日は南条財閥のお客様が来る、そう伝えた筈だ…さぁ、私が担当させて頂きます…さぁ奥へどうぞ」

俺がそう言うなり、明らかに身なりの良いスーツ姿の男性があわててこちらに来た。

あらかじめ南条さんにお願いしておいて良かった。

「宜しくお願いします」

「はい」

そのまま翔子と二人奥へ通された。

◆◆◆

「あの、理人どういう事? え~となに?」

「サプライズでマンションを買ってあげようと思って」

「えーーっ」

サプライズはどうやら成功したようだ。

「予算は1億5千万が上限。本当はもっと出しても良いけど、広いとイチャつけないから、この位の予算の方が良いかなって」

「あの、理人、私はあのままでも良いよ…こんな」

「駄目、良いから買おう…好きなの選んで、そうだな駐車場つきが良いな…あります」

「勿論、あります、こちらの端末から色々見れますよ」

「そう、それじゃ見てみようか」

「うん…そうだね」

色々見た結果、一つの物件を翔子が気に入ったようだった。

「え~と7200万、もう少し高くても良いんだよ」

「これでも充分高級だよ! 40階建てのタワマンの26階。部屋は2LDKで少し狭いけど、傍に居たいからこれで良いよ…凄いじゃない? 区役所も遊園地も近いし、大型スーパーをはじめ、施設内に何でもあるから、ここから出ないで生活が出来るし、無料のジムからプールまであるよ」

確かにこれは掘りだし物かも。

「それじゃ、これに決めようか?」

「良いの?」

「良いんだって」

「それじゃ、この物件買います。手付を払っていきますので予約お願い致します」

「畏まりました、それじゃ契約に必要な物などのご説明をさせて頂きます」

「それじゃ…連れの翔子さん名義で買いますので、必要な書類とか教えて下さい」

「えっ、あの…本当に良いの?」

「勿論、他にもこれから買いに行くんだから、あまり驚かないで」

「あの…ご説明してもよろしいですか?」

「「すいません」」

説明を聞き、翔子さん名義で買う事を伝えて手付を払い、不動産やを後にした。

◆◆◆

「さて、間取り図も貰ったし、次は家具を…」

「理人ちょっと待って…」

何故だろう、翔子が泣きそうな顔をしている。

「どうした…」

「もしかして、これ手切れ金代わり…そうなんでしょう…急にデートだって楽しみにしていたのに…もうお別れ…だからこのマンション買ったんでしょう…これ契約したら私に此処にでていけって事なんでしょう…」

なんでそうなるかな。

「違うよ! これは俺なりの愛だよ!」

「どういう事なの?グスッ」

「俺はどうしてもこれからも女を抱かなくちゃいかない」

「それはわかっているわ…これはお詫びグスッそう言う事なの」

「ちょっと違うよ! 俺はホストだから女に貢いで貰う。だけど翔子には俺が貢から…」

「どういう事なの…グスっ解らないよ」

「だから、俺だけの特別な人…そう言う事だよ! 他の女は全部食料だ。そしてお金を貰って貢いで貰って抱く。だけど、翔子は本当に愛しているから、俺が貢いで抱く…翔子は特別だからね」

「そうか…私特別なんだ」

「こんな事しか出来ないけど、駄目かな」

「ううん、駄目じゃない…理人ありがとう」

「どう致しまして…それじゃ行こうか? 恥ずかしいから」

「あっ、そうだね」

流石に往来でこれは…恥ずかしい。

俺は翔子の手をとり歩き始めた。

これで少しでも翔子が喜んでくれるなら、安い物だ。


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