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第1話 異世界召喚

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今日もいつものように教室で寝ていた。

暖かいせいかついウトウトしてしまう。

そして未だに、母さんの事を夢見てしまう。

父さんを幼い頃に亡くし俺は母さんと二人で暮らしていた。

母さんは家族を大切にする人で良く神仏に

『家族が幸せに暮らせますように』そう祈っていた。

そんな母さんだったが、最後は肝臓がんにかかり亡くなってしまった。

最後まで母さんは『悟が幸せに暮らせますように』そう祈っていた。

自分はもっと苦しい筈なのに、いつも俺の事ばかり気に掛け最後まで俺の事を心配して死んでしまった母さん。

そのせいで俺は神や仏が嫌いになった。

こんな小さな幸せすら叶えてくれない神や仏、居ないか碌な奴じゃないだろう。

昨日も叔父に家の手伝いを夜遅くまでさせられ、疲れているのに、今日も朝から掃除をさせられたせいか、何時も以上に眠かった。

尤もこれは虐待でもなんでも無く、将来叔父は俺に家業を継がせたいらしく修行だから文句も言えない。

そのせいでどうやら熟睡していたようだ。

だが、今日はいつもと違っていた。

「悟(さとる)、早く起きろ…」

「悟くんで最後だから早く女神様の所にいって」

どうもクラスが騒がしい。

女神様…?

なんだそれ…

「えっ女神様? 何?」

訳が解らない。

俺が寝ぼけているとクラスメイトの一人工藤が説明をし始めた。

「悟が寝ている間に異世界の召喚で俺達はこの場所に呼ばれたんだ、そして今は異世界に行く前に女神イシュタス様が異世界で生きる為のジョブとスキルを皆に授けてくれているんだよ! お前もノンキに寝て無いで早く並んだ方が良いぞ」

興奮気味に工藤は俺に話してくる。

「冗談だろう」

女神が本当にいたのか?

だけど、俺は神様が嫌いだ。

ささやかな願いすら叶えてくれなかった。

居ないならいざ知らず、居たのなら何故助けてくれなかったのか…

俺は周りを見渡した。 

白くて何もない空間のようだ。

本当に神の世界なのか?

多分、嘘ではないな。

俺をだますためにこんな大掛かりな事は誰もしないだろう。

「それじゃ、俺は先に行くぞ、お前もジョブとスキルを貰ったら来いよ」

そういうと工藤は走って行ってしまった。

どうやら、ジョブとスキルを貰った者から先に異世界へ転移していくみたいだ。

俺は、女神様らしい女性のいる列に並んだ。

女神と言うのも頷ける。

綺麗なウエーブの掛かった金髪に綺麗な青い瞳。

凄く神々しく、そして慈愛に満ちた顔をしている。

『美しく優しく気高い女性』

それが俺から見た、女神イシュタスのイメージだった。

少し俺の母さんに似ている。

良く考えたら、異世界の女神様に今の世界で助けてくれなかった。と言うのは筋違いだよな。

『女神イシュタス様』

どんな女神様なんだろうか?

だが、可笑しな事に心の中でこの存在は『神や仏とは違う』と何かが否定をする。

何が違うのか、俺には解らないが…俺の中のナニカがこの女神を否定している。

その理由は俺には解らない。

次々にクラスメイトがジョブとスキルを貰っていく中、いよいよ最後に並んだ俺の番がきた。

他のクラスメイト達はもう異世界に向かったようだ。

俺の顔を見た途端、あの気高く美しく見えた女神が顔を歪めた。

「貴方には何故かしらスキルやジョブをあげたくないわ…」

女神が何故、そんな事を言うのか俺には理解が出来なかった。

「何故、その様な事を言うのですか? 私は何か女神様を怒らせるような事をしましたか?」

「それはないんだけど、貴方には嫌悪感が沸くのよ…貴方、どこかの神様を強く信仰していたりしない?」

「心当たりはありません!」

「可笑しいわね、まぁ良いや。異世界で魔王が現れ困っている。そして一国の王族が勇者召喚をして君たちを呼ぼうとしたのよ...ここまでは理解できますか?」

そういう事もあるのか…

しかし、何故他の世界の人間を異世界に連れていく必要があるのだろう?

まるで『神』の話ではなく、小説の話みたいだ。

「何となく小説とかで読んだ話に似ている気がします」

「理解は早いわね…だけど困った事があるのよ…」

何故か、嫌な予感がする。

虫の知らせって奴だ。

「何でしょうか?」

「今解ったわ、貴方『他の神仏の臭いがするのよ』私は女神なのよ? 他の神仏の臭いがする貴方は、本当に気持ち悪く感じるのよ!」

そんな、俺は神や仏なんて信仰していない。

「あの、女神イシュタス様?私はなにか信仰した覚えはありません」


人間離れした美しい存在なのに、急に俺は女神イシュタスが不気味に感じはじめた。

「そう?!だけど貴方みたいに『気持ち悪い奴』にはなんの加護も与えたくないわ」

不味い事になった。

「解りました。もし、俺が気に要らないのであれば、何もしないで元の場所に戻して貰えませんか?」

「この魔法はあの場に居た全員に掛かっているから、貴方1人戻すなんて無理ですね」

不味いな、嫌な考えばかりしか浮かばない。

「そうですか、それでは俺をどうするつもりですか」

「よく考えたら、貴方がどうなろうと私には関係ないわね…他の神の臭いがするんですもの…そのまま何も与えずに異世界に送る事に決めたわ!神臭い貴方が悪いのよ!うふふっ、地獄の様な生活が目に映るわ、無様に惨めに、皆から馬鹿にされて死んでいきなさい」

此奴は、もう女神なんて敬う必要は無いな。

「どうせ、慈悲を乞うても無駄なんだよね」

「そうね、貴方には一切の慈悲を与える気は無いわ…神臭くてキモイ…貴方が悪いのよ」

「そうですか…ならば貴方は私にとっては神じゃないですよね…俺はどうせ死ぬのでしょう…死ぬまで貴方という女神を否定して生きてやる…女神イシュタス、俺もお前が大嫌いだ!せめて呪ってやる」

「そう? 勝手にすれば、私の世界でなんの加護も無しに死んでいくが良いわ…そうね『翻訳』それだけは慈悲であげる、惨めさを味わわせる為に…自分が如何に惨めな存在か解るようにね…」

こうして俺は何も貰えずに異世界に送られた。

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