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第36話 買い物デート
しおりを挟む「ハンスって凄く器用だね!」
「まぁね、昔から自分の髪は自分で切っていたから、だけど、本当に俺のお任せでいいの?」
「うん! だって私はハンスの奥さんだし、ハンスが一番可愛いと思う髪型で良いよ」
「そう、分かった。それじゃ思いっきり可愛くしてあげるよ」
此処暫く働きっぱなしだったから、思い切って2日間休みを取る事にした。
あらかじめ、しっかり根回しをし、シチューは無理だが昨日はオーク肉のステーキを欲しいという人間には余分に販売したから問題は無いだろう。
元々、俺は『アカネとイチャコラしながら楽に生活したい』それしか望んでいない。
一流の冒険者になりたい。
勇者として成功したい。
商人として成功をおさめたい。
そんな望みは無い……
爺ちゃんは気がつくと祭り上げられてしまったが、良く『仲間と一緒に仕事を始めた時が一番楽しかった』そう言っていた。
俺もそれには同感だ。
多分、今位の規模で頑張っているのが丁度良い。
俺はアカネの髪型をおかっぱ風ボブにして横髪に段を入れた。
あとはブラシで整えたら……うん、爺ちゃんの時代のアイドルっぽい髪型だ。
やや童顔で可愛らしいアカネに良く似合う。
「はい、完成と……」
「ああっ、やっぱり、ハンスって凄く器用だよね。料理も上手だし、髪だって切るの凄くうまいね」
「そんな事無いって、それより少し休んだら出掛けようか?」
「うん、ハンスとデートなんて、凄く楽しみだよ」
「俺も楽しみだよ」
仕事は順調だが、働きっぱなしも良くない。
休養も必要だ。
久々にとった2日間の休み。
この二日間はアカネと楽しく過ごす事に決めた。
◆◆◆
「ハンスって、一体何処に連れて行ってくれるの?」
「今日は服を買いに行こうと思うんだ。 お金も余裕が出来たしねちょっと良い服を買おうと思うんだ……あと下着も、他にも欲しい物があるなら、買える範囲で買ってあげるよ」
「ハンス!? 本当に? 本当に良いの?」
「勿論」
「ありがとう、ハンス!」
うん、この笑顔、これが俺にとって一番のご褒美だ。
最近、鉱山地区のスラムの住民を見て思った事がある。
それはスラムの人間にしては身なりが良いと言う事だ。
良く考えたら鉱山は結構な金額が稼げる。
前のスラムと違ってかなり裕福なのかも知れない。
だから、それに合わせて少しだけ身なりを整え贅沢をする事にしたんだ。
アカネと一緒に街を見ながら歩いて、途中で串焼きを買ってみたのだが、微妙な気がした。
「あははっ、これはこれで美味しいけど、ハンスの料理の方が美味しいね」
「そうかもね……」
本当に美味しくない気がする。
二人で一緒に歩いているとお目当ての洋服屋さんに着いた。
と言っても、前にも来た古着屋さんだ。
この世界、新しい服は高額で一般的な人間は余り買わない。
「いらっしゃい、今日はどういった物をお探しで?」
「この子の服と俺が着る服を買いにきたんだ。アカネ、好きな服を買ってあげるから色々見せて貰って」
「うん!」
アカネは楽しそうに服を見ている。
本当ならもう少し良い服をとも考えたが、この世界だと、この上はオーダーメイドと凄く高価になる。
あの辺りに住むならこの位が丁度良い。
「ハンス! これが欲しいんだけど? 良い?」
アカネが選んだのは黄色いブラウスに黄色い膝上のミニスカートのセットだった。
「うん、凄く似合っているよ! あと2着買う予定だから、他にも選んで」
「ハンス、本当に良いの?」
「勿論、俺も3着買う予定だから、気にしないで良いから好きなの選んで」
「うん、分かった」
アカネは本当に楽しそうに服を選ぶな。
俺は、まぁ見栄えがよければ何でも良いや。
アカネはその後にチェックのスカートに灰色のベスト。ピンクのTシャツに短パンみたいなズボンを選んだ。
胸やお尻が大きくグラマラスなアカネに良く似合っている。
「おばちゃん、これ全部買うから幾らか負けてくれるかな?」
「そりゃ6セットも買ってくれるんならサービスしてあげるよ……そうだね、おまけして銀貨2枚でどうだい?」
6着で2万円位か……まぁそんな物だろう。
「よし決まりだ、買わせて貰うよ! あとこの辺りに女性物の下着専門店はありますか?」
「ああっ、1軒だけあるよ、その路地の所さぁ」
「ありがとう」
洋服の入った包みを受け取り古着屋を後にした。
◆◆◆
「前見て歩かないと転んじゃうぞ!」
「転んでも良い!」
荷物なら俺のアイテム収納に入れれば手ぶらで歩けるのにアカネは袋のまま嬉しそうに抱えて歩いている。
「それじゃ行こうか?」
「え~と下着屋さんに行くんだよね」
「まぁね」
アカネに口に出されるとちょっと恥ずかしく感じる。
「普通は、そういう高級なお店の下着とか買わないんだけど、良いの?」
そう、前に買ったのは、白い下着。
まるで、只の布切れみたいな奴だから、余りセクシーじゃない。
アカネはスタイルもルックスも良いから……ちゃんとした下着が欲しい。
そう……できたら凄くセクシーな感じの物が。
「勿論、俺がアカネに着て貰いたいんだ」
「ハンスって、意外とマニアックでエッチだよね? まぁ別にいいけどぉ~」
近くなので話していたらもう着いた。
◆◆◆
「いらっしゃい……おや、うちは結構高いけど大丈夫なのかい? 好事家の店だからね、銀貨が必要になるよ」
「ハンス、流石に勿体ないよ……やめ」
「いや、アカネの下着姿を見たいから、買おう!」
「ハンスがそう言うならいいけどさぁ……だけど、凄いね!」
アカネが言うのも分る。
好事家の店というだけ、セクシーな物ばかりだ。
「アカネが好きなデザインとかある?」
「ううん、私じゃ解らないからハンスが好きな物で良いよ」
「それじゃぁ……」
「ハンス、鼻の下が伸びているよ! 本当にエッチなんだから、もう」
「そう? アカネ限定なら本当にエッチだから仕方ないな」
青いビキニの水着に似た上下の下着。 黒いビキニの水着に似た上下の下着、赤いビキニの水着に似た上下の下着の三着を買う事にした。
スケスケの物も欲しかったけど、金貨が必要な位高価だった。
「あっ、それに決めたんだ……」
「アカネに似合いそうだから、おばさんこれ下さい」
「あいよ、銀貨3枚だ……その歳でこんな下着を買うなんて、あんたも結構な好き者だねぇ……まぁ良いや贔屓にしてくれ」
「また来ます」
これで下着も買った……あとは……
◆◆◆
「ハンス、どうしたの? こんな所で立ち止まって」
俺は、出来たらアカネとお揃いの指輪が欲しくなったのだが、宝石商の前を通った時、門構えからして入るのを躊躇するようなお店だった。
そこで前にアカネにプレゼントしたネックレスを売っていたような露店を探していたんだが……ようやく見つかった。
「うん、指輪を販売している店を探していたんだ」
「えっ、服だけじゃなく指輪も買ってくれるの? 嬉しいけど本当に良いの?」
「うん、俺の住んでいた場所には夫婦はお揃いの指輪をつける決まりがあるんだ……アカネはつけてくれる?」
「そうなんだ! だったら買わないとね……ハンス本当にありがとう!」
「どう致しまして……おっちゃんペアリングみたいな物あるかな?」
「あるよ……随分と珍しい風習を知っているんだな? 今あるのはこれだけだけど? どうだい?」
「アカネどうかな?」
「私はハンスとお揃いならなんでもいいよ!」
「それじゃ、それ下さい」
「あいよ、それじゃ寸法を合わせるから手を出しな、それでどの指に合わせれば良いんだ?」
「左手の薬指で……アカネもほらっ」
「うん」
「どうだい、寸法は合っているかい?」
「「はい」」
「それじゃ、銀貨2枚、宜しくな」
「はい、銀貨2枚」
「毎度」
これで、大体の買い物は済んだ。
「アカネ、これで大体欲しい物は全部買ったんだけど、他に欲しい物はある?」
「う~ん、特にないかなぁ」
この世界、前の世界の様に映画や娯楽が無い。
「それじゃ帰ろうか?」
「うん」
アカネと腕を組みながら俺達の家に向かった。
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