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母子に戻った日(表)

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次の日からのラドルフ家は暗いの一言に尽きた。

長男は出来損ない、そんな中産まれた期待の跡取りも死んでしまった。

まぁ暗くもなるだろう。

《ククククッ..あぁ凄く楽しいな...まぁ八つ当たりを受けるメイドや使用人は悲惨だが》

《さぁ次の仕掛けに入るか》

僕はドアをノックする...

返事は無い..だが、そのまま無視して入った。

「スジャーナ様、失礼します」

「なにかしら...セロ..出て行きなさい..」

《フフフフ うまい具合に落ち込んでいるな》

「はい、すぐに出て行きます..ですが、この薬湯を飲んで頂けませんか?」

「毒でも飲ます気なの..それを持って出て行きなさい!」

「そうですか..ここに置いておきます..お願いします..」

「要らないって言ってるでしょう..こんな物..」

「いたっ..解りました..出て行きます..その代わりゆっくりと休んで下さい..」

顔にぶつけてやったわ..これで来ないでしょう...本当に忌々しい。

死ぬならヘンドリックでなく彼奴の方が死ねば良かったのよ。

結局、どこにもヘンドリックの死体はなかった。

だから、お墓に納めてやることもできない。

あれから、アベルとも口をきいていない...

もう、養子を貰う事しか方法はないかも知れないわね。


次の日もあの忌まわしいセロが来た。

「スジャーナ様 失礼します..今日はおかゆと薬湯を持ってきました、少しで良いんです食べて下さい」

「お腹はすいてないわ..要らないわ」

「そんな訳無いじゃないですか?もう2日間も何も食べていないんですよ?...せめて、せめて薬湯だけでも飲んで下さい..お願いします」

「要らないって言っているでしょう..しつこいわ」

おかゆを頭からかけてやったわ..どう熱いでしょう..さぁ文句でもいってみなさい。

「スジャーナ様...また来ますね」

忌々しい事に毎日のように彼奴がきた。

アベルはあれから一日も来てくれない...

メイド達は私が当たり散らすからもう来ない..私に用事がある時は忌々しい此奴が代理でくる。

本当に忌々しい、今日もあと2刻もすれば忌々しいセロがくる。

「スジャーナ様、今日も薬湯とおかゆを持ってきましたよ」

「そう、要らないわ...いつもと同じよ..」

「ですが、このままでは死んでしまいます」

「それもいいわ..死ねば..ヘンドリックに会えるわ...」

「ヘンドリックが羨ましい..」

「セロ..貴方今何と言いました!...死んでしまったヘンドリックが羨ましいって言ったのですか? 手だけ残して魔物に食われて死んだヘンドリックが...」

「羨ましいですよ..死んでまで貴方に愛されているヘンドリックが...同じ様に愛して貰えるなら..命何て..うぐっ...すいません言い過ぎました..罰は後で受けます..失礼します」

「待ちなさい..セロ」

頭の中が可笑しくなっているのかも知れない。

今なぜだか一瞬、そんな訳が無い..自分でも解らない感情が湧きあがってきた。

《そう言えば薬湯って言っていたわね...ポーションならともかくそんな物が家にあったかしら?》

私は薬湯を手に持ち「鑑定」呪文を唱えた。

幾つかの薬草をすり潰して作られたお茶...滋養強壮と体力を回復する効果がある。

《こんな物何処で手に入れたのかしら..ポーションよりも高そう..セロにはお金なんてあげてない、まさか盗んだの...明日来た時にでも聞いてみましょう》

次の日、セロは来なかった。

メイドに聞いたら、今日は一日帰らないそうだ。

やっぱり彼奴は忌々しい..会いたくない時ばかり来て、会いたい時には来ない。

次の日は...ちゃんとセロは来た。

「スジャーナ様 今日もおかゆと薬湯をお持ちしました...そして今日はスジャーナ様が好きなアプルもありますよ」

「セロ..貴方に聞きます..この薬湯はどうやって手に入れたのですか? 貴方が買える物ではない筈です」

「これはですね、僕が作ったんです」

「作ったの?どうやって」

「それはですね、森にあるライト草にムニエル草にジギ草を混ぜて煮沸するんです。そうするとこの薬湯になります。」

「それは何処で知ったのですか?」

「はい、スジャーナ様が顔色が悪いようなので書庫の本で調べて作ってみました」

「そう、なかなか良い出来ね」

「ありがとうございます」

「それで、貴方は昨日は何処に行っていたのですか、アベルから許可は貰ったのですか?」

「すいません、許可は貰っていません」

「勝手な事をして怒られても知りませんよ...それで、何処に行っていたのですか?」

「隣町までアプルを買いに行ってきました」

「そう...ですか?《確かにアプルは時期が少し外れていますね..この近くじゃありませんね》」

あれっ手に怪我をしている。

「セロ、その手は何ですか?怪我をしているようですが」

《ヤバイ、これはヘンドリックを殺した時に怪我した物だ》

「薬草を採取した時に怪我をしました」

《確かに余り聞いた事が無い薬草でしたね..もしかして棘があったのでしょうか?》

「少しは気をつけなさい...今日は少し食欲が湧いてきました..ちゃんと食べます」

「有難うございます」

「それでは出て行きなさい..あまりジロジロ見られては落ち着いて食べれませんから..」

「はい、では後で食器を下げに来ます」

セロが居なくなる。

何故か寂しく感じる...

私は薬湯に手を伸ばした...正直不味いなんて物じゃない、だけどこれはあの子が手に怪我をしてまで取ってきた物だ..体にも良い物だ..飲もう。

おかゆか...正直食べたくはないけど..食べないと心配するんだろうな..少しは手をつけますか。

アプルか..正直余り良い実じゃないわね...だけど、この時期には本来は無い物だわ..探すの苦労したんだろうな..

私はあの子を捨てたのに..虐めたし..ムチ迄打ったのに..何でここまでしてくれるのかしら?

そういえば、セロは言っていたわ...

「羨ましいですよ..死んでまで貴方に愛されているヘンドリックが...同じ様に愛して貰えるなら..命何て..」

ちゃんと言っていたじゃない..この続きは決まっているじゃない..「命何て要らない」そう言い掛けていたんじゃない。

涙が出て来た...捨てたはずの子なのに..未だに私を慕ってくれるの?

良いわ..出来るだけこれからは優しくしてあげよう...こんなにも優しく愛してくれるのだから...








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