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第22話 愛人冒険者

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『器用貧乏』は僕が思った以上に凄いジョブだった。

そしてジョブがあるか無いかで此処迄差があるのか…それが良く分かった。

「はぁぁぁーーーっ」

「凄い!」

マヤさんがそう言うのも解る。

『蝶のように舞い蜂のように刺す』

そんな動きが、特に訓練したわけじゃないのに出来る。

今の僕は『劣化勇者』をジョブにしたままダンジョンに居るんだけど。

終わりが来ない。

幾ら戦っても疲れが来ない。

自分でも信じられない位に体が軽い。

HPやMPは精々が1.5倍になったに過ぎないが、多分見えない数値がかなり高くなっている気がする。

「ふごぉぉぉぉぉーーーーーっ」

マヤさんが作ってくれた短剣の切れ味も合わさって簡単に切れる。

「ぶごぉぉぉぉぉーーーーーっ」

今まで戦ってきた倒せる一番の敵、オークが今や只の豚にすぎない。

動きがゆっくり見え、攻撃が簡単に見切れる。

すり抜けるようにし斬るだけでオークは簡単に切り刻める。

その瞬間、オークは霧散して魔石となった。

「終わった」

「ご主人様! 凄いです!これなら、もう1つ下の階層でも余裕で通用します!」

「マヤさんもそう思う?」

「はい、オーガもこの分なら余裕で狩れるでしょうから、一つどころか3階層下でも大丈夫です!」

僕はジムナ村でオーガ相手に戦い死に掛けている。

いよいよ、ジョブのおかげとはいえオーガと戦う力がついたんだな。

「それじゃ、今日はこれで切り上げて、明日からは2階層まで降りてみようか?」

「はい、ご主人様!」

器用貧乏のジョブの効果も解ったし、お金を余り稼いでも仕方ないからこんな物で良いだろう。

劣化であれば、何にでもなれるそうだけど、ほぼ劣化勇者だけで事足りる気がする。

他のジョブの力が必要になった時に考えれば良いか…


◆◆◆

「それじゃ、今日の僕の取り分は銀貨2枚…はい」

「あの、ご主人様、本当に宜しいんでしょうか? 私の方が何倍も貰っているのに、宿代も食事代もご主人様が払っています! 私のギルドの口座には金貨が10枚処じゃない位あります…流石に」

「良いから、良いから…それもこのお金もマヤさんの物で良いんだよ、前にも言った様に、綺麗なマヤさんを見れるのが凄く嬉しいんだから、その為に使って…」

「全くもう!ご主人様が私の事を好きなのは良く解かりました!ですが、その割に手を出して来ないですし…胸位揉んでも良いんですよ!」

「そう言うのは、まだ良いから」

「それに流石に、もうメンテナンスは当分必要ないです! ご主人様が私に望む事とか?して欲しい事とかあります?なにかして欲しい事があったら言って下さいね」

やって貰いたい事の多くは実はして貰っている。

添い寝に膝枕…もう充分だな。

「大体、して貰っているし、充分だよ」

「ですが…」

「ほら、気にしないで良いから、マヤさんの必要な事にジャンジャン使って」

「解りました…」

マヤさんがお金を貰う事に遠慮しだした気がする。

やはり『贅沢はしないけどお金が掛かる仲間』が必要なのかも知れないな。

「随分と羽振りが良さそうじゃ無いか? 流石は異世界人だ、どうだい、私のパーティに入らないかい?」

「ねぇねぇ、お金を貢ぐなら、そんな人形なんかに貢がないでさぁ、私達に貢なよ! お姉さんがしっかり楽しませてあげるよ!」

「ねぇねぇそうしよう? 私、ジョブが遊女だから、あっちはバッチリだよ、めくるめく快感の日常が君を待っているよ」

この人達はなんだ…しかも『遊女』そんなジョブもあるんだ。

「貴方達は一体?」

「私達はラバーガール。色々な種族が集まって出来た『愛人冒険者』のパーティさぁ、うちのパーティに入るも良し、好みの子が居たらパーティメンバーとして貸し出しもしているのさ…此処暫く、見ていたけど、そのガラクタ女に随分お金を使っているみたいじゃないか? うちなら金貨なんて要らない、パーティメンバーになるなら抱き放題の待遇で良いよ、その場合は利益の7割を納めて貰うけどね。メンバーの貸し出しなら銀貨5枚も掛からないよ…此処に居るのは一部で、好みの子が選び放題さぁ…どうだい?」

そう言えば、加護を貰って娼婦をしている同級生が居るって聞いたけど…それに近い神様の祝福を貰った人たちなのか…

「もしかして、美の女神様の祝福持ちですか…」

「うちは複合パーティだから、全員がそう言う訳じゃないんだ、だが仲間の中にイシュナス様の祝福持ちもいるよ…その子つけようか?」

「仲間に黒髪、黒目は居たりする?」

「う~ん、残念ながらいないなぁ~」

「そう、折角誘って貰ったけど、此処暫く調子が良いだけで安定してないんだ…安定したら考えるけど…無理だな」

「そうかい? 安定して稼げるようなら声かけてくれ…じゃぁね」

娼婦を兼ねたポーターのパーティ。

これなら、お金は使えるけど…流石にこれは無いな。

「マヤさん行こうか?」

「はい」

何かお金の使い道を考えないと不味いかもな。




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