Death Gods＆Devil

第一章

女王陛下

『何て気味の悪い目なの！？』

『生きている価値なんかねえよ、お前なんか。』

『俺がお前のために、どれほどのものを犠牲にしたと思っているんだ！！』

『あんたはさ、逃げることしかできないわよね。それがあんたなんだからさ。』

あー、これは確か、自分が『人間だった』頃に言われた言葉だ。人のことを考えろとか言う割に、自分が言った言葉に責任を持たずに、人を傷つける言葉の数々だ。思い出す度に仮面ごしの傷が痛むのをレイは感じていた。付けている仮面に覆われている瞳はもう見えることはない。いや、元々見えたことはない。この両目で光を感じることは今までに一度もない。生まれた時に潰されたからだ。なので、今までずっと片目だった。
「あーあ。散歩ついでにちょっと昼寝してたら、変な夢見ちゃったな。」
どうやら自分は木のそばで昼寝をしていたらしい。レイは立ち上がると軽く伸びをして、片目の仮面を触る。もう痛みはなかった。
「帰ろ。」


「レイチェル様！レイチェル様！！」
硬質的な音を立てながら、よく響く声が聞こえた。どうやら女性らしい。
「レイチェル・スピア・ブラッド・パール様！！」
「いきなりフルネームで呼ばないでくれる？」
レイは自分のフルネームで呼んだ相手の方を振り向く。そこには仮面を付けたレイとは違い、眼鏡をかけた悪魔がいた。妙齢の女性のような悪魔だった。どうやらずっとレイを探していたらしく、その顔は怒り顔だ。
あーあ、見つかっちゃったな。とレイはめんどくさそうな顔をする。
「どうかしたの？クレハ。」
ここはもう先に尋ねるしかないなとレイは思い、女性の悪魔ークレハに向かって尋ねてみた。クレハは口を開く。
「また城を抜け出してたんですか？！いい加減、自分の地位というのをわかってくださいよ、【女王陛下】という身分の貴女が！！」
「ごめんね。ちょっと散歩してただけだよ。次からは気を付けるからさ。」
そう言うと、レイはクレハにヒラヒラと手を軽く振って立ち去る。クレハはため息を吐いた後、また口を開く。

「気を付けてくださいよ。最近、厄介な【死神】もいますからね。」
クレハの言葉にレイは一瞬、立ち止まったが、また歩き出した。
「わかってるよ。」

「魔王様がお亡くなりになられてから、ずいぶん散歩が好きになりましたね。レイチェル様。」

「変なところ鋭いよな、クレハは。まあ長年、秘書やっていたから当たり前か。」
レイは長い廊下を歩いていた。すれ違う下級の悪魔達は次々とレイに頭を下げて、去っていく。そしてレイはある部屋にたどり着くと、ドアを開ける。そして右耳に付けているピアスを外した。するとレイの姿が変わっていき、耳は尖っていき、頭には黒い角が伸び、背中に黒い羽が生える。
レイが着いた場所は拷問部屋だった。レイの姿を見た者達は悲鳴を上げる。レイは拷問部屋にいる者達の顔に見覚えがあった。

「さあ、人を痛めつけて地に堕ちた【悪魔モドキ】達よ、これから絶望を始めよう。人を絶望に突き落とした罰として。」