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第一章
悪魔モドキの因縁
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暗く湿った、無駄に広い部屋をレイはニコニコ顔で歩いていた。レイの姿は先程まで黒いワンピース姿のままであるが、左目に付けた仮面は変形して角のように伸び、背中にも角のような漆黒の羽が生えていた。おそらくこれが、レイの悪魔としての姿なのだろう。
「魂のストックはまだあるんだけど、どうやらあの【夢】を見るってことは、もう堕ちてきたんだね。」
レイはしばらく歩いた後、立ち止まる。そして目的のモノを見つけると、閉じていた片目をうっすらと開ける。
「姿形が変わっても、その気配と魂だけは変わらないね、あんたは。」
レイが見ている目の前の人物はうっすらと目を開け、レイの姿を見ると、焦点が合っていない目にわずかに光が入る。
「お前…誰だ?」
「僕のこと忘れちゃったんだ。まあ、無理もないよね。こんな姿じゃわからないか。」
レイは魔力を抑えながら、変身を解いていく。そして姿を変えていく。
「でも、僕は覚えているんだよ。」
レイの姿は悪魔の姿でも、先程の光と会った時のようなワンピース姿でもなかった。
『生きている価値なんかねえよ、お前なんか。』
今でも鮮明に覚えている…あの時の言葉。
「人に役割を教える立場であるはずの人間が、あんな言葉を言う権利なんてないよね?」
レイの姿は徐々に変わっていき、そこには一人の大人の女性の姿が現れる。
「でも、あんたはもう人間じゃない。人間から堕ち、天国から堕ち、転生することもできない、悪魔モドキになったあんたはこうなる運命だったんだよ。」
『いろんな所から堕ちたお前は、こうなる運命だったんだよ。』
レイの姿はスーツを着た若い女性だった。しかし、体中やせ細り、髪はボサボサで、左手にはリストカットのような無数の傷がある。
「お…お前は…レイ?」
「そうだよ、レイだよ。あんたに散々人間性を否定され、存在を否定され、生きていくことさえも否定され続けて無残にあんたに心を殺され続けた、哀れな女のレイだよ。覚えている?課長。」
レイは髪で隠れた左目をかきあげる。そこには無残な傷があり、瞳は傷によって閉じられている。
「あんたを思い出す度にこの傷が疼いてたまらないんだよ。」
「俺はあの後、お前の前から姿を消したはずだ!!パワハラで訴えられて、異動になっただろう?!俺は十分罰を受けたじゃないか!!」
「パワハラで訴えられたはずなのに、降格どころか昇進したあんたが何言ってんだよ?」
レイの言葉に課長と呼ばれた男性はぐっと息が詰まる。
「僕に一言も謝罪もなく、ただ消えて僕が満足するとでも思ってるの?見返りなんて求めていないけど、罰なんてあんたはこれっぽっちも受けてないじゃないか!?心の傷ってのはね、時が経つほど深くなるものなんだよ。」
「それはお前が大人になってないからだ!!お前が弱いからだ。」
「そうだよ、僕は弱かった。もしかしたら、大人にはなってないかもね。だから死んで転生した時は、少女だったのも納得がいったよ。」
レイは魔力を使い、大人の姿から光と会った時のような少女の姿に戻った。少女の姿に男性は驚いた。
「あんたは言ったよね?お前なんかは少女の時でさえも、醜いままだって。この姿を見ても、醜いんでしょ?」
男性は言葉を失った。いや、どう返せばいいのかわからなかったのだ。
「だから僕は【パニッシャー】を使って、あんたを【悪魔モドキ】にしたんだよ。体からあんたの魂だけ抜いて、体には無残に死んで嘆いている【亡者】の魂を入れて、天国から堕としてね。」
「そ…そんな…じゃあ、あれは…」
「あんたは絶対、転生なんてさせない。だからあんたの【魂】は僕がもらうよ。」
レイは腰に差している赤い剣を抜いた。赤い剣は暗闇だというのに、赤く光る。男性ーもとい悪魔モドキは悲鳴を上げる。そしてレイの傷によって閉じられていた瞳が開く。レイは堕天使からもらった「支配魔力」を使う。閉じられていた瞳の色はレイの右目の青い目とは違う、銀色の瞳で輝いていた。
「君は僕に逆らえない。僕の支配下にある限り。君の魂はどんな味がするんだろうね?」
レイは赤い剣を振り下ろした。
「あーあ、せっかくのワンピースが汚れちゃったよ。お気に入りだったのに。」
悪魔モドキの魂を食べたレイはブツブツ文句を言っていた。部屋には無残な血の跡が残っている。その部屋を綺麗にしようと下級の悪魔達がせっせと掃除をしている。
「部屋をこんな状態にした本人が何を言いますか。たまに仕事をしたと思ったら、悪魔モドキを食べていらしたんですね?しかも、こいつはずいぶんとあなたに因縁があるようですが。」
クレハが呆れながらレイを見ると、レイはまあねと呟く。
「人間の魂を食らうのもいいけど、悪魔モドキにしてからもいいと思うでしょ?」
レイはニコリと笑った。
「魂のストックはまだあるんだけど、どうやらあの【夢】を見るってことは、もう堕ちてきたんだね。」
レイはしばらく歩いた後、立ち止まる。そして目的のモノを見つけると、閉じていた片目をうっすらと開ける。
「姿形が変わっても、その気配と魂だけは変わらないね、あんたは。」
レイが見ている目の前の人物はうっすらと目を開け、レイの姿を見ると、焦点が合っていない目にわずかに光が入る。
「お前…誰だ?」
「僕のこと忘れちゃったんだ。まあ、無理もないよね。こんな姿じゃわからないか。」
レイは魔力を抑えながら、変身を解いていく。そして姿を変えていく。
「でも、僕は覚えているんだよ。」
レイの姿は悪魔の姿でも、先程の光と会った時のようなワンピース姿でもなかった。
『生きている価値なんかねえよ、お前なんか。』
今でも鮮明に覚えている…あの時の言葉。
「人に役割を教える立場であるはずの人間が、あんな言葉を言う権利なんてないよね?」
レイの姿は徐々に変わっていき、そこには一人の大人の女性の姿が現れる。
「でも、あんたはもう人間じゃない。人間から堕ち、天国から堕ち、転生することもできない、悪魔モドキになったあんたはこうなる運命だったんだよ。」
『いろんな所から堕ちたお前は、こうなる運命だったんだよ。』
レイの姿はスーツを着た若い女性だった。しかし、体中やせ細り、髪はボサボサで、左手にはリストカットのような無数の傷がある。
「お…お前は…レイ?」
「そうだよ、レイだよ。あんたに散々人間性を否定され、存在を否定され、生きていくことさえも否定され続けて無残にあんたに心を殺され続けた、哀れな女のレイだよ。覚えている?課長。」
レイは髪で隠れた左目をかきあげる。そこには無残な傷があり、瞳は傷によって閉じられている。
「あんたを思い出す度にこの傷が疼いてたまらないんだよ。」
「俺はあの後、お前の前から姿を消したはずだ!!パワハラで訴えられて、異動になっただろう?!俺は十分罰を受けたじゃないか!!」
「パワハラで訴えられたはずなのに、降格どころか昇進したあんたが何言ってんだよ?」
レイの言葉に課長と呼ばれた男性はぐっと息が詰まる。
「僕に一言も謝罪もなく、ただ消えて僕が満足するとでも思ってるの?見返りなんて求めていないけど、罰なんてあんたはこれっぽっちも受けてないじゃないか!?心の傷ってのはね、時が経つほど深くなるものなんだよ。」
「それはお前が大人になってないからだ!!お前が弱いからだ。」
「そうだよ、僕は弱かった。もしかしたら、大人にはなってないかもね。だから死んで転生した時は、少女だったのも納得がいったよ。」
レイは魔力を使い、大人の姿から光と会った時のような少女の姿に戻った。少女の姿に男性は驚いた。
「あんたは言ったよね?お前なんかは少女の時でさえも、醜いままだって。この姿を見ても、醜いんでしょ?」
男性は言葉を失った。いや、どう返せばいいのかわからなかったのだ。
「だから僕は【パニッシャー】を使って、あんたを【悪魔モドキ】にしたんだよ。体からあんたの魂だけ抜いて、体には無残に死んで嘆いている【亡者】の魂を入れて、天国から堕としてね。」
「そ…そんな…じゃあ、あれは…」
「あんたは絶対、転生なんてさせない。だからあんたの【魂】は僕がもらうよ。」
レイは腰に差している赤い剣を抜いた。赤い剣は暗闇だというのに、赤く光る。男性ーもとい悪魔モドキは悲鳴を上げる。そしてレイの傷によって閉じられていた瞳が開く。レイは堕天使からもらった「支配魔力」を使う。閉じられていた瞳の色はレイの右目の青い目とは違う、銀色の瞳で輝いていた。
「君は僕に逆らえない。僕の支配下にある限り。君の魂はどんな味がするんだろうね?」
レイは赤い剣を振り下ろした。
「あーあ、せっかくのワンピースが汚れちゃったよ。お気に入りだったのに。」
悪魔モドキの魂を食べたレイはブツブツ文句を言っていた。部屋には無残な血の跡が残っている。その部屋を綺麗にしようと下級の悪魔達がせっせと掃除をしている。
「部屋をこんな状態にした本人が何を言いますか。たまに仕事をしたと思ったら、悪魔モドキを食べていらしたんですね?しかも、こいつはずいぶんとあなたに因縁があるようですが。」
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