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序章
転生の選択ー光の章
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『今まで、何らかの事故や事件で死んで、ここに流れ着く者は何人か見たけど、自ら死を選んでここに流れ着くなんてね。それも同じ願いをする者が二人もいるなんて。』
暗闇の中、その声だけはよく響いていたのを覚えている。
『私は、死んだの?』
豪華な椅子に座って足を組んでいる一瞬見ると、男か女にも見えるような中性的顔をした人物に私は尋ねた。
『おや?気づいているのかい?意外だね。』
声を聴いても男性にも女性にも聞こえる中世的な声だったので、その人の性別を考えるのも諦めた。
『人は死んだら天使か女神に会えるとかどこかの本で見たことあるし、もうあの高さから落ちたら、死ぬのも目に見えてるからね。』
『そうかい、これは驚いたね。』
『私は地獄行き?それとも天国?でも、自ら死んだ者が楽に天国に行けるわけないか。本当にあの世もこの世も、理不尽だらけだね。』
『だから君は自ら命を絶ったのかい?』
『何度もどうしようか考えたよ。死ぬことは逃げだってことも、わかってたよ。強くなりたいとも思ってたよ、でも、もう限界だった。唯一信じていた人も、私の死を望んでいたのが、陰で裏切っていたのを見たからね。』
椅子に座っていた人物は足を組みなおすと、私を見た。今の私はとても諦めている顔をしているのだろう。
正直、全てに諦めていた。嫌なことは忘れて、前を向こうとかよく本やテレビで見ていたけど、自分はそこまで強くなれなかったのだ。本当は誰かに殺してほしかったこともあった。でも、そんな都合がいいことなんてなく、いつも誰かが死ぬのは、いい人達ばかりだった。そしてまるで八つ当たりのように来る暴言の数々も受けた。何であんたが死ねばよかったのにと耳がタコになるくらい言われ続けたことも。信じていた者は偽善者の仮面を被り、簡単に仮面を脱ぎ、自分を裏切ったのだから。そいつを殺したいと思うことも、もう諦めていた。身も心もズタズタな自分は、どう前を向いて行けるのだろう?
『『もう、人間にはなりたくない。』』
『現世の世界に何て未練何てないし、かと言ってそこら辺の虫けらみたいなモノになんてなりたくたくない。ここじゃない世界の者になりたいよ。強くなりたい。』
『そうかい。じゃあ、君は【死神】になる気はあるかい?』
『死神?』
死神ー死を司る神。そんな言葉を本で読んだことがある。
『私は天使でも女神でもない。私は堕天使。本当は君みたいな者を見つけるのは、天使か女神の役目なんだけど、私が先に君を見つけたんだ。そして君の心情を聞いた。』
『そうか。だから、天使でも女神みたいに差別とかしないんだね。』
『おや?天使や女神にあまりいい印象を持っていないみたいだね?』
『いろんな本や漫画とかゲーム見てたし、天使だからと言って清らかとは限らないと思うし。女神だからと言って、人の死や容姿などで笑ったり、侮辱しないとは限らないと思うしね。それに、偉い立場のある者こそタカをくくったり、偉そうにするのは現世ではよく見てたからね。』
私の言葉に堕天使はふーんと笑い、何かを決めたように私を指さした。
『ますます気に入ったよ!君に望むものを与えよう。選択するのは、君自身だ。』
堕天使はそう言うと私に選択を迫る。私の答えはもう決まっていた。
『なるよ、死神に。ただし、条件がある。』
『おや?意外だね。』
『死神になるんだから、それぐらいはいいでしょう?』
私の言葉に堕天使はにやりと笑うと、その条件はと尋ねる。
『私は現世では強くなれなかった。幸せになれなかった。それは自分が弱いからだ。だから、力が欲しい!!自分の望む、自分を変えられるほどの力が欲しい!!』
『いいだろう。では、君に【死神】になるために【創造魔力】の力と【全てを見透かす力】を与えよう。どう使うかは君次第だからね。』
私の頭に手を添えて光を発しながら堕天使はそう言うと、ウィンクする。頭や体だけじゃなく、何かの温かい力が私に注がれるような気がした。
『そう言えば思ったんだけど、私は何で死んだのに、体が縮んでるの?』
『人は死ぬ時様々だけど、死ぬ間際に自分の一番強い記憶に残る姿に変わることがあるんだよ。君の場合だと、10代くらいの少女だね?年は16歳くらいかな?』
『なるほど、あんまりいい記憶ないけど、この頃は少しはマトモだったからかな?』
堕天使に渡された鏡を見ながら、私は自分の姿を改めて確認する。たぶん、16歳か17歳くらいだろう。あんまりいい記憶は無いが、この頃は多少マトモだった気がする。
『死神になったはいいけど、後どうすればいいの?』
『その扉を開ければ、君の今度の世界に着くはずだよ。後は君の行動次第だからね。』
堕天使が指さす方向を見ると、そこには青く光る扉があった。なるほど、後は自分次第か。まあ、何とかなるかな。私は堕天使にお礼を言うと、扉を開ける。扉を開けると、光が差し、前が見えない。
『君がその地に足を踏み入れた時、君は知ることになるよ。君が現世の落とし前も見つけるってことがね。そして、君と同じような者と会うことになるかもね。』
『会えるかどうかも私次第ってことね。わかったよ、恩に着る。』
『じゃあ、頑張ってね、光。』
堕天使は手を振った。
暗闇の中、その声だけはよく響いていたのを覚えている。
『私は、死んだの?』
豪華な椅子に座って足を組んでいる一瞬見ると、男か女にも見えるような中性的顔をした人物に私は尋ねた。
『おや?気づいているのかい?意外だね。』
声を聴いても男性にも女性にも聞こえる中世的な声だったので、その人の性別を考えるのも諦めた。
『人は死んだら天使か女神に会えるとかどこかの本で見たことあるし、もうあの高さから落ちたら、死ぬのも目に見えてるからね。』
『そうかい、これは驚いたね。』
『私は地獄行き?それとも天国?でも、自ら死んだ者が楽に天国に行けるわけないか。本当にあの世もこの世も、理不尽だらけだね。』
『だから君は自ら命を絶ったのかい?』
『何度もどうしようか考えたよ。死ぬことは逃げだってことも、わかってたよ。強くなりたいとも思ってたよ、でも、もう限界だった。唯一信じていた人も、私の死を望んでいたのが、陰で裏切っていたのを見たからね。』
椅子に座っていた人物は足を組みなおすと、私を見た。今の私はとても諦めている顔をしているのだろう。
正直、全てに諦めていた。嫌なことは忘れて、前を向こうとかよく本やテレビで見ていたけど、自分はそこまで強くなれなかったのだ。本当は誰かに殺してほしかったこともあった。でも、そんな都合がいいことなんてなく、いつも誰かが死ぬのは、いい人達ばかりだった。そしてまるで八つ当たりのように来る暴言の数々も受けた。何であんたが死ねばよかったのにと耳がタコになるくらい言われ続けたことも。信じていた者は偽善者の仮面を被り、簡単に仮面を脱ぎ、自分を裏切ったのだから。そいつを殺したいと思うことも、もう諦めていた。身も心もズタズタな自分は、どう前を向いて行けるのだろう?
『『もう、人間にはなりたくない。』』
『現世の世界に何て未練何てないし、かと言ってそこら辺の虫けらみたいなモノになんてなりたくたくない。ここじゃない世界の者になりたいよ。強くなりたい。』
『そうかい。じゃあ、君は【死神】になる気はあるかい?』
『死神?』
死神ー死を司る神。そんな言葉を本で読んだことがある。
『私は天使でも女神でもない。私は堕天使。本当は君みたいな者を見つけるのは、天使か女神の役目なんだけど、私が先に君を見つけたんだ。そして君の心情を聞いた。』
『そうか。だから、天使でも女神みたいに差別とかしないんだね。』
『おや?天使や女神にあまりいい印象を持っていないみたいだね?』
『いろんな本や漫画とかゲーム見てたし、天使だからと言って清らかとは限らないと思うし。女神だからと言って、人の死や容姿などで笑ったり、侮辱しないとは限らないと思うしね。それに、偉い立場のある者こそタカをくくったり、偉そうにするのは現世ではよく見てたからね。』
私の言葉に堕天使はふーんと笑い、何かを決めたように私を指さした。
『ますます気に入ったよ!君に望むものを与えよう。選択するのは、君自身だ。』
堕天使はそう言うと私に選択を迫る。私の答えはもう決まっていた。
『なるよ、死神に。ただし、条件がある。』
『おや?意外だね。』
『死神になるんだから、それぐらいはいいでしょう?』
私の言葉に堕天使はにやりと笑うと、その条件はと尋ねる。
『私は現世では強くなれなかった。幸せになれなかった。それは自分が弱いからだ。だから、力が欲しい!!自分の望む、自分を変えられるほどの力が欲しい!!』
『いいだろう。では、君に【死神】になるために【創造魔力】の力と【全てを見透かす力】を与えよう。どう使うかは君次第だからね。』
私の頭に手を添えて光を発しながら堕天使はそう言うと、ウィンクする。頭や体だけじゃなく、何かの温かい力が私に注がれるような気がした。
『そう言えば思ったんだけど、私は何で死んだのに、体が縮んでるの?』
『人は死ぬ時様々だけど、死ぬ間際に自分の一番強い記憶に残る姿に変わることがあるんだよ。君の場合だと、10代くらいの少女だね?年は16歳くらいかな?』
『なるほど、あんまりいい記憶ないけど、この頃は少しはマトモだったからかな?』
堕天使に渡された鏡を見ながら、私は自分の姿を改めて確認する。たぶん、16歳か17歳くらいだろう。あんまりいい記憶は無いが、この頃は多少マトモだった気がする。
『死神になったはいいけど、後どうすればいいの?』
『その扉を開ければ、君の今度の世界に着くはずだよ。後は君の行動次第だからね。』
堕天使が指さす方向を見ると、そこには青く光る扉があった。なるほど、後は自分次第か。まあ、何とかなるかな。私は堕天使にお礼を言うと、扉を開ける。扉を開けると、光が差し、前が見えない。
『君がその地に足を踏み入れた時、君は知ることになるよ。君が現世の落とし前も見つけるってことがね。そして、君と同じような者と会うことになるかもね。』
『会えるかどうかも私次第ってことね。わかったよ、恩に着る。』
『じゃあ、頑張ってね、光。』
堕天使は手を振った。
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