Death Gods＆Devil

第一章

霊魔

『悪霊となった魂は【霊魔】という存在になり、その存在になった魂は堕ちるところまで堕ち、いずれ自我や理性を失う、ただの化け物となります。』
まだ死神になりたての頃、こんな話を聞いたことがあった。
『人間達のいる現世では、こういう存在が落ちてきますが、どんなに霊感の高い者でも、この姿になったモノを見ることは滅多にありません。』
刀を構えながら、光はかつての教師の話を思い出していた。

『我々死神は、人間達では恐れられていますが、これは闇の中で生きる者達としての存在理由だということを忘れないようにしてください。』
目の前に広がるその霊魔という無数の存在に光はただ表情を変えずに見ていた。

「人間だった頃に、よくゾンビゲームとかしてたから見慣れてるけど、やっぱりこの臭いは慣れないな。」
無数に広がる存在を象徴するような、腐ったような焼けたような、毒々しい臭いと瘴気に光は気分が悪くなる。
『霊魔には独特の臭いがします。それは【死の臭い】です。これは死を呼び寄せる臭いといいます。霊魔は苦しみと渇きと生者に対する欲望を求めて、この臭いを発生します。』
「元人間だったのにね、まあ現世もどこもかしこも理不尽だらけな所はあるよね。元人間だった俺が言うセリフじゃないか。」
光は刀を持っていない方の手で、懐からお札を取り出す。

「『どんな敵でも決して油断をしてはならない。彼らは浄化することを望んでいる。』」
光はお札で何かを念じると、霊魔の群れに向かってお札を飛ばし、動きを止める。
そして高くジャンプする。

「せめて、来世ではいい笑顔で。」