Death Gods&Devil

last joker

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第一章

元・上司

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「あーあ。最近つまんないことばっかりだな。」
無数の霊魔の群れをケガ一つ負わずに帰ってきた光は、退屈そうに長い廊下を歩いていた。
堕天使に言われて死神になったはいいが、自分がこの霊長になるまで、死に物狂いで努力したはいいが、実際に高い地位になってみると、同じことの繰り返しで正直光は退屈していたのだ。
別にこの地位に不満はない。降りるつもりは無いし、ましてや誰かに譲るつもりはなかった。でも、退屈といえば退屈なのだ。今回もそれなりの相手かと思ったら、あっさり倒して拍子抜けだ。
「まあ、死神に暇な時はないけどね。現世で人が死ねば回収するのが仕事だし。でも、それは下級の死神がやることだし。俺達もこの間はあちこちで死人の回収に手間取って、大変だったからな。」
光はそんなことを呟きながら、廊下を歩く。しかし、

「でも、だからといって降りる気も無いからね。松坂部長。」
光は急に立ち止まった後、誰もいない方を振り向く。すると、しばらくして一人の女性の死神が現れた。長い黒髪をストレートに伸ばした少しキツイ目をした死神だった。
「気づいてないとでも思ったの?あんなに殺気出してたら誰でも気づくけど。」
光の言葉に松坂と呼ばれた死神は光を睨みつけたまま、口を開く。
「ずいぶんと調子に乗っているようね、光。あんた、そんなんでよく霊長が務まるわね?前に私の部下だった頃、あんた、サボってばっかりだったじゃない。」
「仕事は早めに終わらせて、提出期限も遅れたことはないよ。仕事を終わらせて休んでいただけなのに、いつも文句言ってただけでしょ?」
「だったら早くその時に報告しなさいよね!!」
「あんたの言葉なんか聞きたくないって言ってたのはそっちでしょ?だいたい俺だって、あの時は【代理長】だったのに、その追い打ちをかけるように仕事廻してきたくせに。」
「そういう屁理屈言う口、直ってないわね。だいたい上だって、よくあんたなんかを霊長にしたわね?頭おかしいんじゃないの?」
「俺が霊長になった途端に伊藤を取られたこと、まだ根に持ってんのか?だったら、上に戻してもらうように報告してみろよ。俺は止めないけど「できないこと、言うんじゃないわよ!!」
光の言葉を遮るように松坂が怒鳴る。光は大して表情も変えずに、またそうやって怒ると内心ため息を吐く。
伊藤は今は霊長である光の部下だが、かつてはこの目の前の松坂美穂の部下で、松坂とは親友だったのだ。ちなみに光もかつては【代理長】という立場だったが、一応松坂の部下ではある。だが光が霊長になった後、光の推薦で伊藤は引き抜かれ、光の部下になったのだ。勿論松坂は怒り、いろいろ他の者に抗議したが、霊長である光は松坂よりは上の立場であるため、聞き入れてはもらえなかった。このことを今も松坂は恨んでいるのだ。

松坂は怒鳴った後、しばらくして落ち着きを取り戻し、口を開く。
「まあ私は、あんたがいなくなって清々したわ。」
「それはよかったな。こっちはお前みたいのがいなくて寂しいし、お前みたいに暇じゃなくなったから、大変だ。」
そう吐き捨てる光に松坂は顔を上げる。
「そろそろ失礼するぞ。忙しいのでな。」
そう言って光は手をヒラヒラ振って、松坂の元を去っていく。

「マジむかつく、死ね。」
松坂は光が去った後も睨みつけていた。
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