Death Gods＆Devil

前世の罪

伊藤麻美

『ねえ、光。○○君と同じ学校だったんでしょう？やっぱり、付き合ってるんでしょ？』
『もういい加減にしてよ。私はあいつなんて、大っ嫌いなんだから！！』
私、伊藤麻美はそんな光の反応をいつも見るのがすごく楽しかった。入学してから、何かと目立っていた彼女を見て、私はすぐに興味を示し、そして彼女がよく学校に早く来ては図書館で本を読んでいては、あの○○君と一緒にいるのを見て、つい妄想するのが楽しかった。一緒にいると言っても、彼女と彼は距離を置いており、一言もしゃべらない。でも、噂になるのは当たり前だ。だからつい、私は妄想を膨らましては、彼女がよく趣味で書いている本より面白い本が書きたくなったのだ。光は彼のことをいつも大っ嫌いと連発しているが、私にはより面白く見えた。

『何で、こんなこと書くの？！私はあいつとは何の縁も言っているでしょう？！』
『えーいいじゃない！！私の唯一の楽しみなんだもの！それに、あんたが書いている変な小説より、私の小説の方が面白いって評判なのよ！それにあんた、そんなことが言えるの？成績だって、私より下のくせに、就職だって出来てないじゃない！！』
光は何かと目立ってはいたが、成績も就職もダメな人間で、彼女の唯一の趣味の小説だって、一部のファンはいたけど、私にはさっぱりだった。そこまで言って、光は黙ってしまい、去って行ってしまう。変に目立っているから、その反応が面白くて私は毎日、彼女をいじるのが楽しかった。パソコンの授業の時、仲が良かった親友とよく彼女をいじって反応を見るのが面白かった。マウスパッドを裏返して、ちぎっては彼女に投げつけていたずらもした。私はそんな毎日がいつも楽しくて、学生時代は充実した毎日だった。
何もかもが順調。私は恵まれている、彼女より。


学校を卒業後、何年か経ち、しばらくして彼女が、ビルから飛び降り自殺をしたのはそんな時だった。
彼女の日記には、私の名前と私の親友や友人達の名前が記されていた。
そしてそこには、恨みつらみも書かれていたらしい。

『人殺し！！あんたのせいで、うちの娘は死んだのよ！！返してよ！！』
彼女の母親が私の家をつきとめて、怒鳴りこんできたのを覚えている。そこからが地獄だった。

勤めていた会社からは、毎日のように私宛の嫌がらせの手紙や電話が来て、どうやら彼女は死ぬ間際にネットでこれから死ぬ動画を載せていたらしい。そしてそこに、私の学生時代の顔まで載せられていた。
『君、ずいぶん学生時代にひどいことをしていたらしいね。そのせいで、うちはダメになったよ。』
勤めていた会社の上司にそんなことを言われて、私は会社をクビになった。
『何で、私がこんな目に合うのよ！！私は悪くないのに、光が勝手に死ぬのが悪いんじゃない！！』
家に帰宅して、そんなことをブツブツ言っていると、家には大量の嫌がらせの手紙が送られていた。毎日のようにかかってくる嫌がらせの電話と手紙に、私の母と父は精神的に参ってしまい、入院してしまった。
私もついに耐えられなくなり、引きこもってしまった。

外に出るのがこわかった。
どうして、私がこんな目に合うのか、わからない。

家に食べるものが無くなり、私は何日かして、外に出た。久々の空と風を感じた。私は変装して近くのコンビニに行った。もう充実した、恵まれていたあの頃とは違う。そんなことを懐かしく感じる。とりあえずコンビニで時間を少し潰して、必要な物を買おう。私は漫画や雑誌の本コーナーの所に行く。そして、読めそうな本を開いたが、頭に入ってこない。
どうしてこんなことになったのだろう？
そんなことを考えていると…

激しいブレーキ音と共に、自分の目の前に眩しい光が目に入った。

そこからのことは、何も覚えていない…

ねえ、光。貴女は、私を恨んでいたの？