Death Gods＆Devil

前世の罪

武田義文 レイが悪魔モドキにした人

この世が平等なんて、笑わせる。
所詮、生きるか死ぬかのこと。
勝ち組と負け組との違いだけ。

生まれてすぐに、そういうのは決まってるんだ。
思えばこいつは、生まれてすぐに事故だか、虐待だかで片目らしい。世界を片目でしか見えないこいつは、何と滑稽だろうか。自分達の生まれた環境を呪うしかないのだ。
この、「レイ」という女は、そうだった…

福祉だか、生活保護のようなものを受けているくせに、こいつは融通が利かない。
社会人としての礼儀も無ければ、いつもこいつは俺達の足を引っ張る。そんなこいつにイライラした。
おかげで、片目のくせに、こっちの尻拭いをいつも俺達がさせられる。何で、こんな奴が生きているんだ。理不尽過ぎる。

『おいレイ！この書類、違うぞ！』
『申し訳ありません、他の仕事を終わらせたくて。』
『片目なんだから、さっさとその倍働けよな？！ホント、融通利かねえよな！』
こいつを見るとイライラした。生活保護なんて、甘い汁を啜ってるくせに、どいつもこいつも甘いんだよ！

こいつは、完全な負け組だ。
生活保護で救われているようなクズだ。学力も無ければ、財力も無い。俺とは違う。
俺は何でも人波にこなしてきた。時には挫折もしたが、俺は恵まれている方だ。
だから、学力もあるし、財力もある。そして何より、妻と子供にも恵まれている。こいつとは違う。あー、何て滑稽だろうか。

面倒ごとは全部、この使えない奴に廻した。何でかって？俺は勝ち組だからだ。
『生きてる価値なんかねえよ、お前なんか。』
俺はあいつについ、言ってしまった。お前のような奴は、さっさと会社から去ればいいんだ。
そのつもりで言ったつもりだった。だが、その後、この発言が原因となり、俺は異動になった。だが、神は俺を見捨ててなんていなかった。
降格を覚悟だったが、どうやら今までの努力が認められて、昇格になった。あいつの顔を見ないで済むばかりではなく、俺はやっぱり勝ち組だ。
何もかもがうまくいく。やはり、俺は恵まれている。



俺は幸せの絶頂にいた。だが…

これは一体、何だ？

目の前に広がる、妻と子供を刺し殺している、イカレた顔をしている男。俺は恐怖で動けない。でも、このままでは、終われない。

俺はそばにあった棒で応戦して、立ち向かった。
だが…

「あんたを幸せになんて、させないよ。」
それは、誰の声だ…？