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味方
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「知っている……⁉」
「ええ。」
「そんな、それでは迷惑をかけられてしまうことも考慮した上で僕をお招きいただいたのですか?!」
「もちろん、我が夫でありシルロライラ公爵であるレリックも知っているわ。」
リディス夫人は何でもないことのように口にした。
まさか他国の騒動を分かっていて引き受けてしまうなんて普通ならしない。まして王家と婚約している人間では非常にリスクがある。
まだ聞きたいこともあるがそれも察知され笑顔でやんわりと制された。それはまだ話さないということだろう。
「私はソーン・オルト男爵を通じてリリーベル公爵様とお話し、全てを知ってお引き受けしました。リリーベル公爵様も私が預かることをご存知ですわ。」
「そんな……。」
「オルト男爵は商団を営んでいるだけあり、他国へ行っても疑われません。本当は直接こちらへご案内して差し上げたかったのですが、まさかアレンシカ様へ渡航制限がかけられているとは思わずに、おいでいただけるのに時間がかかってしまいました。追っ手が迫る前にはこちらへお連れできて良かったですわ。」
「最大の顧客であるシルロライラ公爵夫人の頼みですからお断りする訳には参りません。……まあ弟がアレンシカ様にお世話になっているからというのもありますが。」
「まあ、お互いにリリーベル家に縁があるというのもまた運命ですわね。」
二人には共通点があるらしい。だがアレンシカにとってはよく分からないことだ。
ソーンはもちろんプリムの兄であるからリリーベル家に関係があるということは理解できた。しかし国の重要人物であるリディス夫人がリリーベル家を助ける程の縁だということが分からない。
もちろん父は王宮に仕えているから宰相であるシルロライラ公爵なら外交的な縁があるかもしれない。しかしそれでもいくらリリーベル公爵家の人間であろうとその息子を危険を承知で連れてくる程の縁があるとはどうにも思えなかった。
「そういえば、向こうでいいものを手に入れたんです。レイシーラで作られている細工物なんですが。」
「まあ、きちんとお仕事もしてらしたのね。」
「せっかく向こうに行きましたからついでに。」
連れて来るだけなら馬車だけを派遣し、アレンシカ達だけを連れて来ればいい。わざわざソーンを派遣させる理由がない。
「ああ、私があちらに向かった理由はもう一つ、もちろん仕事はしていましたがそちらはカモフラージュの意味合いが強いですね。」
アレンシカの疑問にソーンは答える。
「今回の一連の件にフィルニース王国側で関わっているのは、リリーベル公爵家、ミラー子爵家、シーラ侯爵家とその家門であるシークス伯爵家ですが他にもあとお二人いらっしゃいます。私はシルロライラ公爵家の外交役として表向きは商団の仕事としてその方と話をしに。」
「二人……。」
「本当ならリリーベル公爵家やシーラ侯爵家を通じたほうがよかったのだけど、すでにフィルニース王子殿下の手が迫り干渉されているのではと思って。」
「実際、監視だけでなくリリーベル家は手紙に関しても無断で検閲されていたようです。」
「そんな!」
「手紙が届く前に渡された相手を懐柔し手に入れてたんでしょうね。これではもう直接話をしに行くしかありません。」
「リリーベル家もそれは予想されていたのでしょう。極力手紙を出されることはなかったそうですが。」
まさか手紙まで手を出すとは思わずアレンシカはショックを受けるしかなった。
少なくとも婚姻前にそこまで干渉される謂れはない。
「あの……。」
「はい。」
「もうお二方というのは……。」
そう、先程確かにソーンはもう二人と言った。アレンシカにはなんとなく想像はつくがいまいち結びつかない。本来ならその二人はあちら側についていておかしくないからだ。
「……私も元はフィルニース王国民ですからね。私ではとてもとても。」
わざと濁していてもその言葉で全てが分かった。
王子が渡航制限を出していたのに隠れずに乗って国のから出ることが出来た。レイシーラから出発し乗り換える前の馬車の御者は王宮を訪れる度に必ず側にいた人物。姿を変えていても側近として養われた洗練さは消えない。つまりその二人は――。
(国王陛下と王配陛下……。)
「ええ。」
「そんな、それでは迷惑をかけられてしまうことも考慮した上で僕をお招きいただいたのですか?!」
「もちろん、我が夫でありシルロライラ公爵であるレリックも知っているわ。」
リディス夫人は何でもないことのように口にした。
まさか他国の騒動を分かっていて引き受けてしまうなんて普通ならしない。まして王家と婚約している人間では非常にリスクがある。
まだ聞きたいこともあるがそれも察知され笑顔でやんわりと制された。それはまだ話さないということだろう。
「私はソーン・オルト男爵を通じてリリーベル公爵様とお話し、全てを知ってお引き受けしました。リリーベル公爵様も私が預かることをご存知ですわ。」
「そんな……。」
「オルト男爵は商団を営んでいるだけあり、他国へ行っても疑われません。本当は直接こちらへご案内して差し上げたかったのですが、まさかアレンシカ様へ渡航制限がかけられているとは思わずに、おいでいただけるのに時間がかかってしまいました。追っ手が迫る前にはこちらへお連れできて良かったですわ。」
「最大の顧客であるシルロライラ公爵夫人の頼みですからお断りする訳には参りません。……まあ弟がアレンシカ様にお世話になっているからというのもありますが。」
「まあ、お互いにリリーベル家に縁があるというのもまた運命ですわね。」
二人には共通点があるらしい。だがアレンシカにとってはよく分からないことだ。
ソーンはもちろんプリムの兄であるからリリーベル家に関係があるということは理解できた。しかし国の重要人物であるリディス夫人がリリーベル家を助ける程の縁だということが分からない。
もちろん父は王宮に仕えているから宰相であるシルロライラ公爵なら外交的な縁があるかもしれない。しかしそれでもいくらリリーベル公爵家の人間であろうとその息子を危険を承知で連れてくる程の縁があるとはどうにも思えなかった。
「そういえば、向こうでいいものを手に入れたんです。レイシーラで作られている細工物なんですが。」
「まあ、きちんとお仕事もしてらしたのね。」
「せっかく向こうに行きましたからついでに。」
連れて来るだけなら馬車だけを派遣し、アレンシカ達だけを連れて来ればいい。わざわざソーンを派遣させる理由がない。
「ああ、私があちらに向かった理由はもう一つ、もちろん仕事はしていましたがそちらはカモフラージュの意味合いが強いですね。」
アレンシカの疑問にソーンは答える。
「今回の一連の件にフィルニース王国側で関わっているのは、リリーベル公爵家、ミラー子爵家、シーラ侯爵家とその家門であるシークス伯爵家ですが他にもあとお二人いらっしゃいます。私はシルロライラ公爵家の外交役として表向きは商団の仕事としてその方と話をしに。」
「二人……。」
「本当ならリリーベル公爵家やシーラ侯爵家を通じたほうがよかったのだけど、すでにフィルニース王子殿下の手が迫り干渉されているのではと思って。」
「実際、監視だけでなくリリーベル家は手紙に関しても無断で検閲されていたようです。」
「そんな!」
「手紙が届く前に渡された相手を懐柔し手に入れてたんでしょうね。これではもう直接話をしに行くしかありません。」
「リリーベル家もそれは予想されていたのでしょう。極力手紙を出されることはなかったそうですが。」
まさか手紙まで手を出すとは思わずアレンシカはショックを受けるしかなった。
少なくとも婚姻前にそこまで干渉される謂れはない。
「あの……。」
「はい。」
「もうお二方というのは……。」
そう、先程確かにソーンはもう二人と言った。アレンシカにはなんとなく想像はつくがいまいち結びつかない。本来ならその二人はあちら側についていておかしくないからだ。
「……私も元はフィルニース王国民ですからね。私ではとてもとても。」
わざと濁していてもその言葉で全てが分かった。
王子が渡航制限を出していたのに隠れずに乗って国のから出ることが出来た。レイシーラから出発し乗り換える前の馬車の御者は王宮を訪れる度に必ず側にいた人物。姿を変えていても側近として養われた洗練さは消えない。つまりその二人は――。
(国王陛下と王配陛下……。)
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