天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ

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一対ニ

学園は始まり、皆が勉強に勤しむ。気の早い者はすでに感謝祭へ向けた早めの準備をしようと言う者もいた。
勉強は嫌いではないし、学園もそれなり。だけで決定的な違いによりエイリークの心は浮かばなかった。
いつもは隣りにいる人がいない。おおらかな友人はそれでも平然とはしているがどこか元気がなくも見える。
アレンシカはここにいない。学園側には留学していると伝わっているらしく、学園が始まって早々教師から伝えられた。

「アレンシカ様元気ですかねー。」

「……今頃きっと伸び伸びと勉強してるよ。嫌味な人は一人もいないだろうしね。」

「そうですねえ。」

今は教師が所用があるとかで自習になっていた。小声で話していても咎められることがない。

「エイリーク君は楽しくないんですか?」

「ここで楽しいって言ったら嘘になる。」

「長期休みは楽しかったですか?エイリーク君ったらギリギリまで帰って来なかったですものー。」

故郷のレイシーラから王都に来るまで、移動荷馬車でやって来たが普段使う道のりが違うことは内部からでも感覚で分かった。周りに乗っている人は優しげで楽しく話してくれていたが自らは話さなかったが皆旅行者を偽装している領主の使用人だったとエイリークは察していた。本当に領主の言うとおり捉えられていた可能性や違う状況をしている恐怖心を乗り越え戻ってきた。

「……ちょっとね違ったから。」

「そうですかあ。私はお花にお水をやってるだけでしたー。ケーキもいっぱい食べましたけどー。」

「そう、それでアンタは楽しかったの?」

「うーん、つまんなくって面白くなかったので、二人で楽しいことたくさんしましょー。」

「じゃあその為にもっと成績良くなりなよね。」

「えー。」

休みの間は勉強はしていなかったのか、しっちゃかめっちゃかになっているノートを見てやる。
どこも分からないと言うので懇切隅から隅まで説明していたら自習時間は終わってしまった。

「早く昼食の時間にならないですかねー。」

「ボクはあんまり食欲ないのにね。」

「えー!今日はストロベリーパンなのにないんですか!?」

「ないものはない。」

「じゃあお昼になってもお腹空いてなかったらくださーい。」

「別にいいけど。」

机の上を片付けて次の授業の準備をする。次は実験の授業があるのでここでは出来ない。
プリムと共に立ち上がって教室から出ようとした時に。

「ちょっといいかな。」

今日は朝から来ていなかった王子のウィンノルがいつぞやのように二人を引き止めた。



ウィンノルに案内されたのは学園の応接室だった。
学園には要人も来る。もちろん通っている学生は貴族で身内も貴族なのできちんと話す場所が必要な為に正式に作られている部屋だ。
応接室に入ると先程までは朗らかな笑みを浮かべていたウィンノルに剣呑な雰囲気が纏われた。

「ここまで来てもらったのは他でもない、アレンシカのことについて話したいと思ってね。」

全員が席に座るとすぐにウィンノルはそう話しだした。

「……わざわざ授業を抜け出させておいて、何を話すって言うんです?アレンシカ様は来ていないのに。」

「その来ていない理由は君たちにあるだろう?」

「さあー私たちには何も覚えてがないんですー。」

「嘘をつくな!」

ウィンノルは急に激昂して二人を威圧する。それでもどこか恐怖はなかった。目に見えてここまで怒りに満ちていても。プリムも何も感じなかったのか平然としていた。
そんな二人を見て自分の動揺が恥ずかしくなったのかウィンノルはひとつ咳払いをして自分を落ち着かせた。

「君たちは王家を諮りアレンシカを逃した。これがどういうことか分かるかい?」

「アレンシカ様は留学したって聞きましたけどー?」

「そうではないことは従者である君は知っているだろうプリム・ミラー。」

それでも冷たい目はそのままにプリムを見た。

「君たちは王家に嘘をついたんだ。これは王家へ対する侮辱であり罪だ。その上王族の婚約者を逃がすことは確実に犯罪だ。」

「アレンシカ様は留学したんですよー?」

「療養に行ったと言ったり留学したと言ったり一貫性がないな。」

馬鹿にするかのようにプリムに向けて笑った。友人に向けてそう笑うことに怒りはあるがあくまで冷静に務める。ここで怒りを見せてしまえばきっと罪を重ねたとでも言って連行されてしまうのだろう。

「君たちに出来ることはふたつ。正しい情報を教えるか、アレンシカを連れ戻すことだ。」
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