天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ

文字の大きさ
10 / 139

四人組

しおりを挟む
「ふっふふふーん。ふふふーん。」

「今日は随分とご機嫌だね、エイリ。」

学校にも慣れて暫くした頃。今日のエイリはとてもご機嫌だった。
いつも明るくて楽しい彼だけど、もっと明るくなっている。
周りの生徒も通りすぎる度になんか楽しそうだなと言ってくる。

今日はクラスで話し合いだ。
今から一ヶ月後にある合同キャンプだ。
フィルニース王立学園の一年時には校外学習として外でのキャンプが行われる。
クラスでの親睦を深め、貴族の子達に自然と教育の為に協力して一泊だけ外に泊まる行事は、意外と貴族の子達にも人気の行事だ。

「もう今からキャンプ!楽しみです!」

「エイリは気が早いね。」

「僕嬉しいんです。アレン様と一泊も出来るなんて……えへ。なんていい行事があるんでしょう!」

「毎日会ってるよ?」

「だってアレン様!園芸クラブが始まってからアレン様と全然ゆっくり出来ないんですもーん!」

「活動は週三日なんだけどな……。」

少し呆れながらもそれ程に自分といたいと思う程友情に熱いエイリークに嬉しく思いながら、アレンシカは笑った。


ついついエイリークの話に気を取られながらも、教師の話も聞いていると、説明は一通り終わり、キャンプでの組分けに移行した。
基本的に四人組行動で、食事を作ったり拠点を作ったりするらしい。
特に積極的に動かないエイリークに反して、アレンシカは周囲をキョロキョロと見回す。
絶対に自分と組むんだと言われて実際に組むつもりのエイリークは一番として、他の人はどうしようか悩む。
こんな時、ウィンノルと同じクラスなら一緒に組む希望が少しでもあったかもしれない、と一瞬だけ考えてしまい心の中で頭を振る。
どうせ同じクラスでもそんなことは絶対にあり得るはずがないのに、微かな希望に縋ろうとしている自分は愚かだと思った。

「よかったら俺達も入れてくれない?」

しばらくして周りもある程度の塊が出来てきた時、クラスメイトが話しかけて来た。
そこにいたのは子爵令息の大人しいプリム・ミラーと男爵令息で背の高いルジェ・ハルク。

「キミ達のいつもの仲間は?」

キッとした目で尋ねるエイリークに対してプリムはビクッとするが、ルジェは平然と答える。

「俺達五人だからさ、俺があぶれたんだ。」

ルジェが指指した方向を見るといつもルジェと一緒にいる人達がアレンシカとエイリークに向かって手を振った。

「私もあぶれてしまったので、こちらに入れさせてくださいアレンシカ様。」

そちらも見るとプリムと同じような大人しそうな子がチラチラとこちらを見ている。プリムは普段三人で居るのをよく見るが二人組と組んでいたのであぶれてしまったらしい。

「はい、僕達もちょうどなので嬉しいです。一緒に頑張りましょうね。」

二人にそう言って笑うとエイリークはサッとアレンシカの前に立った。

「ぷんだ!まあアレン様の許可があるならボク達の仲間に入れてあげなくもないです!」

「お前なんでそんな敵対的なの?」

エイリークがバチバチとした目で睨むルジェを飄々とした態度でいなすルジェを見ながら、配られた組分け票にメンバーの名前を書き込んでいると、横
から穴が開くほどの視線を感じた。

「……どうしました?」

少しだけ居心地が悪くてついそう聞いたら、プリムはキョトンとした後ににこやかに笑った。

「何にもないですよ。アレンシカ様。」
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

恋人が出て行った

すずかけあおい
BL
同棲している恋人が書き置きを残して出て行った?話です。 ハッピーエンドです。 〔攻め〕素史(もとし)25歳 〔受け〕千温(ちはる)24歳

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

徒花伐採 ~巻き戻りΩ、二度目の人生は復讐から始めます~

めがねあざらし
BL
【🕊更新予定/毎日更新(夜21〜22時)】 ※投稿時間は多少前後する場合があります 火刑台の上で、すべてを失った。 愛も、家も、生まれてくるはずだった命さえも。 王太子の婚約者として生きたセラは、裏切りと冤罪の果てに炎へと沈んだΩ。 だが――目を覚ましたとき、時間は巻き戻っていた。 この世界はもう信じない。 この命は、復讐のために使う。 かつて愛した男を自らの手で裁き、滅んだ家を取り戻す。 裏切りの王太子、歪んだ愛、運命を覆す巻き戻りΩ。 “今度こそ、誰も信じない。  ただ、すべてを終わらせるために。”

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

腐男子ですが何か?

みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。 ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。 そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。 幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。 そしてついに高校入試の試験。 見事特待生と首席をもぎとったのだ。 「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ! って。え? 首席って…めっちゃ目立つくねぇ?! やっちまったぁ!!」 この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

処理中です...