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新年
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「わああーいっぱい出店並んでまーすー!」
「すごいね…いつもこの時期はこんなに賑やかなの?」
「はーいー。」
「うっわ……やっぱうちの村よりすご……!」
すっかり空も暗くなり、もう1、2時間もすれば新年になる。
昼間にはまだ準備の段階だった街の出店は軒並み連ねて街の人々で賑やかだ。
新年の瞬間には神の奇跡の花火が上がる。フィルニース神の心である水晶が未来を視せる天啓の他にもいくつかある奇跡のひとつだ。
その花火は「神花」と呼ばれ、新年の一大行事だ。人々はその花火を今か今かと待ちわびる。
「アレン様、大丈夫ですか?人酔いとかしてませんか?」
「ううん、大丈夫だよ。」
「さっそく、ポテトポタージュの店に行きますか?それともカップケーキの店に行きますか?」
「待ってよ、人が多いんだから離れないで。」
はしゃいでいるプリムの腕をしっかりと掴んでエイリークは諌めた。
「大丈夫ですよ、もう何百回も街に来てますからー。エイリーク君より街に慣れてます。」
「そりゃーね。でもアンタ、アレン様の従者でしょ。アレン様と離れちゃ駄目。ただでさえ夜だし危ないんだから。」
「はーい。」
「本当に、アンタじゃディオールさんのレベルに行くまで何年かかるだろうね。」
エイリークがチラリと後ろを見ると、いかにも真面目に空気のように歩いている執事のディオールがいた。
視線に気づいたディオールは軽く会釈をすると、恐縮ですとにこやかに笑った。
「プリム様はアレンシカ様の従者となる身ですが、今はただの友人。とんでもないことでもしなければアレンシカ様はお許しになるでしょう。」
「うん、今日はせっかくのお祭りなんだもん。いつも通りの友達でいてほしいな。せっかく遊びに来てるんだし。」
「えっへん。」
「今のどこに威張る要素が?」
「もちろん、お休みが明けたらまた師匠としてビシビシ教育するつもりです。」
「ひえー。」
「えっ、プリムに教育してるの?」
「もちろんです。リリーベル家のご子息に仕えるのですから。それに、ミラー家ご当主様からも厳しくするようにと仰せつかっておりますので。」
「あんのお兄様ー!もうー!」
プリムはプリプリと怒りながらアレンシカの裾を持って引っ張っていく。だが積もった雪が足にまとわりついて上手く歩けないおかげで足早になることはなかった。
「本当は旦那様もご友人同士で遊びに行かせたかったようですが……夜中の外出、他家の大切なご子息を預っている身であることを案じた故の決断です。ご容赦くださいませ。」
「あっ、いいえ、むしろこんな年末年始の忙しい時期に滞在してるこっちが迷惑者なんですから、ディオールさんや公爵様にご迷惑をかけているのは僕達の方ですよ。」
「…アレンシカ様はいいご友人をお持ちになられたようで。」
「もちろん自慢の最高の友達だよ。」
アレンシカはにこりと笑った。
当初の目当てのポタージュも買えて、他にもどっさりとお菓子も買い込み皆で広場に向かう。
ここは神花の特等席だ。大きく広く空が見えて、神花を見るには絶景のスポット。同じく神の花を目当てに集まった人々で賑わっている。
ディオールは三人が他の人にぶつからないようにスペースを作りながらも少し離れたところで三人を見守っていた。
「えいっ!」
「えっちょっと!」
空を見上げて待ちわびていたらプリムがアレンシカとエイリークの空いていた手をぎゅっと繋がせた。
「こんなに人がいるんですもん。ずっと空を見たまんまだとはぐれちゃいますー。」
「ちょ、だからって…、」
「ちゃーんとしっかーり離れないようにぎゅっぎゅってしないと、離れちゃいます。そしたら危ないし嫌ですもん。」
プリムはそう言うとアレンシカの反対側の腕にぎゅっとしがみついた。もちろんポタージュが溢れないように気をつけながら。
「そうだね、離れちゃわないように、しっかりしないと。僕は今二人を預かってるんだしね。」
「そうですそうです。だからぎゅぎゅってしないと。」
「えー、あ…、うん…。そうだけどさあ……。」
それでも離そうとしたエイリークをよそにアレンシカはプリムに言われるがままにぎゅっと手をしっかりと握り返した。
「それよりももう少しで花火が上がるよ。」
「え。」
気がつくといつの間にか人々がカウントダウンをあげていた。すでに十を切っている。本当にもうすぐ上がるらしい。
三人も周りに倣って一緒にカウントダウンする。
そわそわしながら待ちわびる。
「さん」
「に」
「いち」
ゼロになってより一層に喜びの声が大きくなると急にどこからともなく大きく色とりどりの花火が上がった。新年の幕明けだ。
大きな大きな花火に人々は喜び大歓声を上げる。先程よりさらに賑やかになった広場では、人々がハイタッチをしたり、乾杯をしたりさらに盛り上がる。
そんな中で三人は大きな大きな花火にただ圧倒されていた。
「わあ、すごい…。」
「綺麗ですねー。」
「村からも見えたけど、やっぱり城に近いと違う。村で見たよりずっと大きいし、綺麗。」
「ひゃー。」
「僕も毎年見てたけど、こんなに綺麗で楽しい花火は初めてだ。」
「……アレン様……。」
「僕、友達もいなかったし、街に行くこともあんまりなかったから、こうして誰かと一緒に遊びに行くこともしなかった。」
アレンシカは大きな花火を見上げて言った。
「だから今日、大切な友達と買い食いしたり遊んだり、こうして一緒に花火を見れてすごくすごく楽しい。」
「アレン様……。」
「ありがとう。」
アレンシカはエイリークに振り返った。
その目にはキラキラと花火の光が映り、楽しさで輝いている。
「アレン様。……アレンシカ様。僕もこんなに楽しくて幸せな日は初めてです。」
「エイリ……。」
「アレンシカ様。ありがとうございます。僕と出会ってくれて……。」
「わあー!すごいです!流れ星みたいです!」
プリムが喜んでアレンシカの腕にしがみついたままぴょんぴょん飛び跳ねて手に持っていた長ドーナツを天に向かって振り回している。つられて二人も揺れた。
「……ちょっと!騒ぎすぎなんだけど!」
「だってすごいですよ!」
「大丈夫だよ。ほら、みんなもあんなに賑やかなんだから、ちょっとくらい騒いじゃっても大丈夫。」
「……んもーアレン様ったらプリムに甘いですよ!」
「あははは。」
「すごいね…いつもこの時期はこんなに賑やかなの?」
「はーいー。」
「うっわ……やっぱうちの村よりすご……!」
すっかり空も暗くなり、もう1、2時間もすれば新年になる。
昼間にはまだ準備の段階だった街の出店は軒並み連ねて街の人々で賑やかだ。
新年の瞬間には神の奇跡の花火が上がる。フィルニース神の心である水晶が未来を視せる天啓の他にもいくつかある奇跡のひとつだ。
その花火は「神花」と呼ばれ、新年の一大行事だ。人々はその花火を今か今かと待ちわびる。
「アレン様、大丈夫ですか?人酔いとかしてませんか?」
「ううん、大丈夫だよ。」
「さっそく、ポテトポタージュの店に行きますか?それともカップケーキの店に行きますか?」
「待ってよ、人が多いんだから離れないで。」
はしゃいでいるプリムの腕をしっかりと掴んでエイリークは諌めた。
「大丈夫ですよ、もう何百回も街に来てますからー。エイリーク君より街に慣れてます。」
「そりゃーね。でもアンタ、アレン様の従者でしょ。アレン様と離れちゃ駄目。ただでさえ夜だし危ないんだから。」
「はーい。」
「本当に、アンタじゃディオールさんのレベルに行くまで何年かかるだろうね。」
エイリークがチラリと後ろを見ると、いかにも真面目に空気のように歩いている執事のディオールがいた。
視線に気づいたディオールは軽く会釈をすると、恐縮ですとにこやかに笑った。
「プリム様はアレンシカ様の従者となる身ですが、今はただの友人。とんでもないことでもしなければアレンシカ様はお許しになるでしょう。」
「うん、今日はせっかくのお祭りなんだもん。いつも通りの友達でいてほしいな。せっかく遊びに来てるんだし。」
「えっへん。」
「今のどこに威張る要素が?」
「もちろん、お休みが明けたらまた師匠としてビシビシ教育するつもりです。」
「ひえー。」
「えっ、プリムに教育してるの?」
「もちろんです。リリーベル家のご子息に仕えるのですから。それに、ミラー家ご当主様からも厳しくするようにと仰せつかっておりますので。」
「あんのお兄様ー!もうー!」
プリムはプリプリと怒りながらアレンシカの裾を持って引っ張っていく。だが積もった雪が足にまとわりついて上手く歩けないおかげで足早になることはなかった。
「本当は旦那様もご友人同士で遊びに行かせたかったようですが……夜中の外出、他家の大切なご子息を預っている身であることを案じた故の決断です。ご容赦くださいませ。」
「あっ、いいえ、むしろこんな年末年始の忙しい時期に滞在してるこっちが迷惑者なんですから、ディオールさんや公爵様にご迷惑をかけているのは僕達の方ですよ。」
「…アレンシカ様はいいご友人をお持ちになられたようで。」
「もちろん自慢の最高の友達だよ。」
アレンシカはにこりと笑った。
当初の目当てのポタージュも買えて、他にもどっさりとお菓子も買い込み皆で広場に向かう。
ここは神花の特等席だ。大きく広く空が見えて、神花を見るには絶景のスポット。同じく神の花を目当てに集まった人々で賑わっている。
ディオールは三人が他の人にぶつからないようにスペースを作りながらも少し離れたところで三人を見守っていた。
「えいっ!」
「えっちょっと!」
空を見上げて待ちわびていたらプリムがアレンシカとエイリークの空いていた手をぎゅっと繋がせた。
「こんなに人がいるんですもん。ずっと空を見たまんまだとはぐれちゃいますー。」
「ちょ、だからって…、」
「ちゃーんとしっかーり離れないようにぎゅっぎゅってしないと、離れちゃいます。そしたら危ないし嫌ですもん。」
プリムはそう言うとアレンシカの反対側の腕にぎゅっとしがみついた。もちろんポタージュが溢れないように気をつけながら。
「そうだね、離れちゃわないように、しっかりしないと。僕は今二人を預かってるんだしね。」
「そうですそうです。だからぎゅぎゅってしないと。」
「えー、あ…、うん…。そうだけどさあ……。」
それでも離そうとしたエイリークをよそにアレンシカはプリムに言われるがままにぎゅっと手をしっかりと握り返した。
「それよりももう少しで花火が上がるよ。」
「え。」
気がつくといつの間にか人々がカウントダウンをあげていた。すでに十を切っている。本当にもうすぐ上がるらしい。
三人も周りに倣って一緒にカウントダウンする。
そわそわしながら待ちわびる。
「さん」
「に」
「いち」
ゼロになってより一層に喜びの声が大きくなると急にどこからともなく大きく色とりどりの花火が上がった。新年の幕明けだ。
大きな大きな花火に人々は喜び大歓声を上げる。先程よりさらに賑やかになった広場では、人々がハイタッチをしたり、乾杯をしたりさらに盛り上がる。
そんな中で三人は大きな大きな花火にただ圧倒されていた。
「わあ、すごい…。」
「綺麗ですねー。」
「村からも見えたけど、やっぱり城に近いと違う。村で見たよりずっと大きいし、綺麗。」
「ひゃー。」
「僕も毎年見てたけど、こんなに綺麗で楽しい花火は初めてだ。」
「……アレン様……。」
「僕、友達もいなかったし、街に行くこともあんまりなかったから、こうして誰かと一緒に遊びに行くこともしなかった。」
アレンシカは大きな花火を見上げて言った。
「だから今日、大切な友達と買い食いしたり遊んだり、こうして一緒に花火を見れてすごくすごく楽しい。」
「アレン様……。」
「ありがとう。」
アレンシカはエイリークに振り返った。
その目にはキラキラと花火の光が映り、楽しさで輝いている。
「アレン様。……アレンシカ様。僕もこんなに楽しくて幸せな日は初めてです。」
「エイリ……。」
「アレンシカ様。ありがとうございます。僕と出会ってくれて……。」
「わあー!すごいです!流れ星みたいです!」
プリムが喜んでアレンシカの腕にしがみついたままぴょんぴょん飛び跳ねて手に持っていた長ドーナツを天に向かって振り回している。つられて二人も揺れた。
「……ちょっと!騒ぎすぎなんだけど!」
「だってすごいですよ!」
「大丈夫だよ。ほら、みんなもあんなに賑やかなんだから、ちょっとくらい騒いじゃっても大丈夫。」
「……んもーアレン様ったらプリムに甘いですよ!」
「あははは。」
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