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知らない場所
しおりを挟む幕があがると、そこには戦国時代で、歴史の暗記があやふやなアタシはドキドキした。
ああ、どうしよう。ぜんっぜんわからなかったりしたら…
そんなアタシの思惑とはうらはらに物語は進んでいく。きらびやかな衣装と照明で気がつかなかったけど、俳優さんはみな声を張っている。もしかしたら、マイクなんて使ってないんじゃないかな。声を張り、大袈裟なくらい身振りをつけて心情を表す。
その声で。
アタシは高遠さんがわかった。高遠さんは武将の一人として、登場した。登場するなり、温かな拍手がおきる。待ちかまえていたファンからの期待が込められているみたいで、嬉しさと緊張が混ざりあう。
初っ端から笑いを取りにいく高遠さんを皆は期待していたようで、あちこちで笑いがおきる。ひとそれぞれ、くすくすだったりあははっと大きく口を開けていたりみんな舞台を楽しんでいた。
まるで舞台から風が吹いたみたいだった。登場人物の動きに、声にアタシの感情は揺さぶられ、笑ったり泣いたりすっかり同調していた。
舞台ってこういう物なんだ…動画で見た舞台はテレビの延長でしかなくて、大きな身振りや大袈裟とも言える声音にちょっと引いていた所もあった。
その声音も身振りも、この会場を埋めつくすお客さんのためであり、どこで見ても伝わるような配慮なんだと気づく。
張り上げた声も、割れている。この会場に響き渡るだけの声を出すだけで、喉に負担がかかるのだろう。
これが舞台を創りあげるということなんだろう。
「かかれ!」
ばっと白刃が煌めき、高遠さんの軍勢が囲まれた。高遠さんも刀を抜き応戦に入る。鍔競り合いをしながら、お互いの位置を変えながらも台詞を口にする。
アタシは、ただはらはらと展開を見届けるだけで、これからどうなるのか実際の歴史すら把握してないので、どうなるのかわからない。
多人数の殺陣。迫力ある舞台にアタシの心拍数もあがる。
「この裏切り者がぁっ」
ばっと切り裂かれた高遠さんが、踏み止まり睨み返す。
「ワシは自分の信念のままに生きる!!そのためには手段を選ばんのよ」
「それが裏切りだと言うている」
「哀れよ。信念のない者に言うてもわかるまい」
がくりと膝をつき、最後の力を振り絞るかのように叫んだ。
「ワシは死ぬ。しかし信念は残り受け継がれるんじゃ」
ばっと舞台の照明が落ちる。気づかないうちに、アタシは涙を流していた。高遠さんの存在感、この場所を圧倒する迫力にアタシはただただ飲まれていた。
この広い会場を埋め尽くす人は、この舞台との一体感を感じるために来ているんだ…画面からは伝わらない、この空気を。
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