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そこは山です
しおりを挟む「尾上さんはどうするんですか?」
「移動手段がないから会社の車を借りて行くよ」
「あっ…アタシも一緒に行っていいですか」
どう考えても滝瀬川の上流に電車通っていない。自力で行ける所だとは思えないから、尾上さんに乗せてもらえるならこれ以上の選択はない。
じっとこちらを見る黒い瞳とぶつかる。
「いいの?わかってる?」
「滝瀬川には電車がないですし、最寄り駅からバスでどれだけかかるのか…バスだってないかもしれないし…」
バスがないなら、タクシーしかない。禁断のタクシー。実家が中途半端に田舎なため、まずタクシーを使うということがなかった。車の所有は一人一台で通勤手段でもある。電車で都内に出ても、駅まで車で送迎が当たり前な地域なのだ。
アタシはタクシーなんて乗ったことがないのだ。
乗ったことのないタクシーに乗り、知らない場所に向かえるだろうか。まして撮影現場は山の中で目印すらないのだから。
「お願いします、アタシ尾上さんがいなかったら撮影現場に辿りつけない気がします」
尾上さんは考えるように顔の半分を手の平で覆っていたが、ふうっと息をついた。
「いいよ。当日の朝、家まで迎えに行く」
ほっとしてアタシはアパートまでの目印を教える。
「そばにいったら連絡するから」と携帯の番号を交換する。
あれ、そういえば愛ちゃん何か言ってなかったっけ…
ほんの数時間の出来事なのに、体に流れるお酒はアタシの記憶をあいまいにして、警戒心も緩めていく。
転がるように進んでいく話のなかで、アタシの心にはほんのわずかな違和感が差し込まれる。
何だかわからないけれど、刺のようにちくりとする。
後で考えたら、その時はいっぱいいっぱいで、よくわかっていなかった。
きちんとわかるのは撮影日当日を迎えてからだった。
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