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対峙
しおりを挟む走り去っていく高遠さんの背中と入れ違いに、マネージャーの蓮見さんが歩いて来る。
「ご迷惑かけてすみません」
アタシの言葉に眼鏡の奥の瞳を緩める。
「どうかお気になさらないで下さい。これが仕事ですから」
スーツのポケットから携帯を取り出すものの、そこで手が止まる。
アタシが慌てて携帯を取り出しても、ただじっとアタシを見つめていた。
「お分かりかと思いますが、確認させてください。あなたは裕也とどうなさるお積りですか」
「どう…とは?」
「裕也との関係です。肉体的なものか、精神的なものか」
「どちらも含むと思います」
恋人だとか彼女と言い切れるならいいのに、自分で口にするのはまだ早い気がした。
どこにも行かないという約束はしたものの、はっきりしない関係ではある。
「アタシの個人的な気持ちを言うなら、高遠さんを好きです」
「私共は高遠裕也という俳優を、育て守らねばなりません。もし、あなたが裕也にとってプラスになることなく害になるなら、こちらも手段を選ばず排除することになりますが、覚悟はよろしいですか」
マネージャーさんの目が絞られて鋭い光が見える。底冷えのするようなその目を見たら、嘘や冗談ではないとわかる。
緊張から、握りしめた携帯が重く、手が小刻みに震える。
それでも、アタシはここに来るために覚悟を決めて努力もしてきた。
「アタシは高遠さんのためならないことはしません」
これだけは、はっきり言える。アタシ達の関係はまだよくわからないけれど、アタシは高遠さんに害を及ぼすことはしたくない。
冷たく見えたマネージャーさんの、口元がわずかに上を向く。
「そう言って貰えるなら大丈夫でしょう。裕也があんなに嬉しそうな顔をするのを久しぶりに見ました。こんなに執着するのは初めてかもしれません。
一年前に一度終わった関係を、またやり直すなんてことは今までありませんでした。
だからこそ、あなたに裕也を任せようと思えるのです」
マネージャーさんの言葉には、高遠さんを思いやる心が感じられて胸があつくなる。
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