君までの距離

高遠 加奈

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決意表明

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「あ~楽しみだな。この商売、好みの俳優と組むのだけが楽しみなのよ。もう妄想もエスカレートするわ~」


語尾にハートか星でも付きそうな勢いだ。

「ま、アタシらが出来るのはそこまでだからね」


そこで真面目な顔でアタシを見た。



アタシ達は、チームでドラマの脚本を担当している。ワンクール13本と言われていたのは昔のことで、今は10回とか9回のドラマだってある。

もちろん人気脚本家がワンクール全てを書くこともあるけれど、大概3~4人のチームが脚本を担当する。

そしてアタシはその一回を担当するための打ち合わせを重ねている。

プロデューサーの意図に沿った話、さらには視聴率の稼げる話というのを要求されている。



やがてプロデューサーを交えての会議が始まり、ダメ出しされた箇所を直すという作業を何回か繰り返してOKがでれば印刷して俳優さんに配られる。

アタシが高遠さんに近づきたくて選んだのは、そんな仕事だ。



ただ高遠さんが好きで付き合うのなら、こんなことしなくて良かったのかもしれない。

アタシは高遠さんが居る世界を知りたかったし、出来ることなら力にもなりたかった。

そして考えて考えてこの道を選んだ。自分の持っているもので少しでも役にたつものがあるなら、なんとか利用して少しでも高遠さんに近づきたかった。

自分の力で輝いている高遠さんのそばに居られるなら、どんな努力もするつもりだった。


アタシのアパートで遥香に向かい合って話を切り出した時、彼女は眉間にしわを寄せた。


「アタシ、脚本を書こうと思うんだ」

「……未也が……そんなことを考えていたなんてね……」

「才能なんてないかもしれない。でもやらなかったら、ダメなの。少しでも高遠さんに近づきたいし、高遠さんを知りたいの」

ふっと遥香の唇が笑いを刻む。


「……止めないわ……寂しいけれど……どこにいても未也が笑っているなら……そのほうがいいに決まっているわ……」

遥香の前に、パソコンからプリントアウトしておいた一枚の紙を滑らせる。


「この脚本賞に応募しようと思うの」

紙を手にした遥香は目で文字を追っている。一度下まで動いた視線は、また上に戻りじっくり吟味している。


「そこまで……考えていたなら相談ではないのね……」


「うん。決意表明、みたいな。遥香にはアタシが何をしようとしているのか、知っていてもらいたかったの」

恥ずかしいのをごまかすために、頭をかく。

「今回ダメでもいいの。初めてだし、きっとアタシなんかより上手い人は沢山いるはずだし。アタシは今書ける一番いいもので応募する」


アタシを見て頷く遥香に聞いてもらいたくて、口を閉じることができない。

「やらないで後悔したくないの。だから…」

涙が湧いてきて俯くと、遥香の綺麗な手がアタシの手を握る。

「アタシあんまり遥香と出掛けられなくなると思う。それでも友達でいてくれるかなぁ…」

ぎゅっと握る手に力がこもる。握りしめたアタシの手を遥香の手がおおって力が込められる。

ぶつかるように遥香の体がぶつかってきて、アタシ達は抱きあった。

「……なんで、そんなこと言うの……わたし達親友よ?未也とは……ずっと仲良くしていたいの」

「ありがと…遥香」

嬉しくて涙がこぼれる。遥香の体も震えていて、泣いているのがわかった。

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