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接触事故
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定時を少し過ぎて退勤をきっていると部長も仕事終わりだったらしく、玄関先で合流した。
「三橋さんは仕事が早いから助かる」
屈託なく笑うと目尻に笑いじわがよるのも、ダンディーな感じがして素敵。時間がたったことで、きっちりまとまっていた髪が自然とゆるんでいるのもオフな感じがする。眼鏡とスーツが似合って、上品で格好いい、林部長みたいな人はモテるだろうな。
「林部長の指示が的確で、仕事がしやすいからですよ」
「三橋は上手いな」
微笑みながらにこやかにエントランスをくぐると、ぐいと腕を引かれた。
「部長、こいつ借ります」
「あたしは物なんかじゃない」
つかまれた腕が痛い。なんでこんな、待ち伏せみたいに居るわけ?
「おう。ちゃんと仲良くしろよ」
「なっ……仲良くってなに? 部長、誤解……」
「そのつもりです。きちんと言い聞かせますから」
ぐいぐい引っ張られ、いやいやと抵抗する。
「ばかっ! いい雰囲気だったのに」
「部長、彼女いるから。お前じゃ無理だ」
「なんで知ってるのよ! 」
「聞いたからに決まってるだろ! お前は俺のだからって釘をさしておいた」
「なに言ってんの、ヤリチン」
引っ張る背中がぴたりと止まる。
「ヤってたのは否定はしない」
「へえー」
「………気が引きたかった」
「誰の」
「お前以外の誰がいるんだよ。下手だって思われたくないし、認めてもらいたいから仕事だって頑張ってきたのに、どうして……」
向き直る男は泣きそうで悔しそうに口を歪める。
「……どうして俺じゃ駄目なんだよ」
「ヤリチンだからじゃない? 」
「もうやめる。お前が抱けないなら虚しいだけだし。お前のかわりに抱くのとか最低だ……」
俯いてしまった男の腕は、すがるように巻きついている。
「ほんっと最低。あたしは浮気する男はキライ」
「浮気しない。お前がいればそんなのしない。信じて……」
向かいあって肩をつかまれる。熱っぽい瞳で見つめてくるので、目をそらせない。
「……いいよな」
顔を近づけられたので、首をひねってうつむく。
「ずっと待ってた。お前だけなんだよ俺は」
大きな手のひらが頬をおさえて、キスされる。肩から滑り落ちた手で腰を抱いて、触れるだけのキス。角度を変えてやわらかく何度も唇をあわせてから抱きしめて、耳元でささやいた。
「目閉じて」
「接触事故だから」
「ちゃんとしたキスしよう」
いったん離れた瞳が切なそうに揺れて、視界を手のひらで覆われた。優しくついばむキスは唇を開かせようとしている。背中をなぞる指がブラのホックを外したので、びくりと反応して口を開いてしまう。歯列をなぞり割に入ってきた舌が熱い。厚みのあるそれが口いっぱいに動きまわり何も考えられなくなる。絡められて吸われる舌は、キスだけで気持ちいいと震えている。
流されちゃダメだ。どん、と胸を叩く。嫌だの意志表示ははっきりしないといけない。何度か叩いてやっと唇が離れる。目があってあたしが泣いていたことで驚き、それから顔をしかめた。
「そんなに嫌なのか」
「イヤ。誰とでもキスするような人、イヤ」
ごしごしと手の甲でキスした唇を拭う。
「こんなのイヤ」
「好きなんだよ。俺を受け入れて」
「イヤだってば。バカ」
泣いたことで抜け出せた腕から離れる。口開けないからってブラ外すとかサイテー。ここでキスで気持ちよくなったら、ホテルに連れ込まれてた。本当、なにやってるんだろう。
「三橋さんは仕事が早いから助かる」
屈託なく笑うと目尻に笑いじわがよるのも、ダンディーな感じがして素敵。時間がたったことで、きっちりまとまっていた髪が自然とゆるんでいるのもオフな感じがする。眼鏡とスーツが似合って、上品で格好いい、林部長みたいな人はモテるだろうな。
「林部長の指示が的確で、仕事がしやすいからですよ」
「三橋は上手いな」
微笑みながらにこやかにエントランスをくぐると、ぐいと腕を引かれた。
「部長、こいつ借ります」
「あたしは物なんかじゃない」
つかまれた腕が痛い。なんでこんな、待ち伏せみたいに居るわけ?
「おう。ちゃんと仲良くしろよ」
「なっ……仲良くってなに? 部長、誤解……」
「そのつもりです。きちんと言い聞かせますから」
ぐいぐい引っ張られ、いやいやと抵抗する。
「ばかっ! いい雰囲気だったのに」
「部長、彼女いるから。お前じゃ無理だ」
「なんで知ってるのよ! 」
「聞いたからに決まってるだろ! お前は俺のだからって釘をさしておいた」
「なに言ってんの、ヤリチン」
引っ張る背中がぴたりと止まる。
「ヤってたのは否定はしない」
「へえー」
「………気が引きたかった」
「誰の」
「お前以外の誰がいるんだよ。下手だって思われたくないし、認めてもらいたいから仕事だって頑張ってきたのに、どうして……」
向き直る男は泣きそうで悔しそうに口を歪める。
「……どうして俺じゃ駄目なんだよ」
「ヤリチンだからじゃない? 」
「もうやめる。お前が抱けないなら虚しいだけだし。お前のかわりに抱くのとか最低だ……」
俯いてしまった男の腕は、すがるように巻きついている。
「ほんっと最低。あたしは浮気する男はキライ」
「浮気しない。お前がいればそんなのしない。信じて……」
向かいあって肩をつかまれる。熱っぽい瞳で見つめてくるので、目をそらせない。
「……いいよな」
顔を近づけられたので、首をひねってうつむく。
「ずっと待ってた。お前だけなんだよ俺は」
大きな手のひらが頬をおさえて、キスされる。肩から滑り落ちた手で腰を抱いて、触れるだけのキス。角度を変えてやわらかく何度も唇をあわせてから抱きしめて、耳元でささやいた。
「目閉じて」
「接触事故だから」
「ちゃんとしたキスしよう」
いったん離れた瞳が切なそうに揺れて、視界を手のひらで覆われた。優しくついばむキスは唇を開かせようとしている。背中をなぞる指がブラのホックを外したので、びくりと反応して口を開いてしまう。歯列をなぞり割に入ってきた舌が熱い。厚みのあるそれが口いっぱいに動きまわり何も考えられなくなる。絡められて吸われる舌は、キスだけで気持ちいいと震えている。
流されちゃダメだ。どん、と胸を叩く。嫌だの意志表示ははっきりしないといけない。何度か叩いてやっと唇が離れる。目があってあたしが泣いていたことで驚き、それから顔をしかめた。
「そんなに嫌なのか」
「イヤ。誰とでもキスするような人、イヤ」
ごしごしと手の甲でキスした唇を拭う。
「こんなのイヤ」
「好きなんだよ。俺を受け入れて」
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泣いたことで抜け出せた腕から離れる。口開けないからってブラ外すとかサイテー。ここでキスで気持ちよくなったら、ホテルに連れ込まれてた。本当、なにやってるんだろう。
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