元SSSランク冒険者の大魔導師、冒険者を引退しお店を開く

新人冒険者

　店に少年少女達が来てから数日後、その間にもぼちぼちだがお客様が来てくれた。その中にはお金をきちんと払う者もいたがスラム街に住む者や貧しい者は後払いにしたりもした。
　そんな日々を過ごしていると、今度は此処に来るには珍しい客がきた。

　「こんちはー」
　「ちょっと！もう少しちゃんと挨拶しなさいよ」
　「私も挨拶はちゃんとした方がいいと思う」
　「僕もそう思います」
　「何だよ皆して、わかったよ今度からちゃんとするって」
　「いっつもそう言ってしないじゃないの」
　
　そう言いながら入って来たのは、冒険者に成り立てのルーキー達だった。

　「いらっしゃい、今度は珍しい客が来たね～。何が要るんだい？」
　「俺達冒険者になったばかりの新人なんだけど、お金が少し貯まったから武器か防具を買おうと思ってて見てまわってたんだ」
　「そうなのかい？どんなのが欲しいんだい」
　「俺は長剣だな」　
　「私は魔法使い用の杖が欲しいです」
　「短剣があれば」
　「僕は今の装備が気に入ってますので特にないです」
　
　そう答えたのは、茶髪の少しやんちゃそうな少年とその少年を注意していた礼儀正しそうな魔法使いの少女、後は口数が少ない少女と気の弱そうな少年の4人組パーティーだった。
　
　それぞれの要望を聞き席を立ち武器を取りに向かう。
そして、机の上に置き説明する。

　「そうだね～、まずこの長剣だね。これは何処にでも有るような普通の剣だよ。違いはただ頑丈なだけだね。これでもこの街の外に居るような低ランクの魔物なら問題なく戦えるよ。手入れもちゃんとすりゃあ長い間使い続けることも可能だよ」
　「えーもっと強そうな効果の剣はないのかよ」
　「あるにはあるがそういう剣は値段が馬鹿みたいに高いんだよ。それに、そういう剣を持ってると面倒な奴等に目を付けられるよ。それでも使いたいならもっと強く成ることだね」
　「そうよ、それに私達多少はお金も貯まってきたけどまだそこまで多くないんだから。まだ冒険者になったばかりで強くもないし、我慢しなさい」
　「うっ、わかったよ。確かに俺達そこまで強くないもんな。俺はこれでいいぜ」
　「じゃあ次は嬢ちゃんの杖だな。この杖は魔法の威力をほんの少し上げてくれる。それでも少しだから余り過信せんよう注意じゃ。魔物と闘う前に試し打ちすることをおすすめするよ。最後にこの杖自体かなり頑丈じゃから杖で殴ったりすることも出来る。こんなところかね～」
　「凄い。今の私にはピッタリよありがとうおばあちゃん」
　「喜んでくれたようで嬉しいよ。最後は短剣だね、この短剣は身に付けていれば多少足が速くなる効果がある。後は頑丈じゃから折れにくいの。それと、お主しはこの短剣も付けよう」

　そう言ってもう1本短剣を出す。

　「こっちのは投擲用の短剣じゃ。威力は余りないが投げた後に念じれば手元に戻ってくるぞ。これも後で試し打ちしといた方がええな」
　「わかった。ありがとう」
　
　口数は少ないがその表情はかなり嬉しそうにしていた。

　「あと、これはおまけじゃ。そこの何も要らんと言ったお主は回復系か支援系じゃろ？」
　「はい、僕は確かに回復と支援が得意です」
　「では、お主と魔法使いの嬢ちゃんにはこの指輪をやろう。それは装備しとくと魔力量が少し増える指輪じゃ。役に立つじゃろう」
　「でも、これってかなり高いんじゃ」
　「それは、この老いぼれからのプレゼントじゃ。素直に受けとればよいよ」
　「「あ、ありがとうございます」」
　「で、料金じゃがあんたら今いくらぐらい持っているんじゃ？」
　「俺達は今金貨1枚持ってます」
　　
　そう言って机の上に置くやんちゃそうな少年。

　「ほう、その年で良くそこまで貯めたもんだね。じゃあ、料金は銀貨5枚でいいよ」

　私は金貨を受け取りお釣りと餞別を渡した。
　
　「それは私からの餞別だよこれからも無理せず頑張りな」
　「「「「ありがとうございます」」」」

　そう言って冒険者の新人達は帰って行った。

　(いや～、あの子達を見てると昔を思い出すね～)

　そう思いながら私は見送った。