彼女が死ねば、俺は死ねない。

神部 大

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11話 境内の戦い

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「圭ちゃんがいるって事は……あれかね、もしや」

「あ、はは……そう、なるね、はは。ごめん友君」


 そう言いはにかむ桑野は、やはりどこにも嫌味の雰囲気を感じさせない。

 社会に出てから、金を持つものは往々にして態度も悪かったものだが、そいつらにこの桑野圭の姿を見習って貰いたいものだと場違いな事を思う友作であった。



「おぉぉい、マジかよぉ。悪ガキグループに先取られてんじゃんよぉー!」

「っち!」


 場違いなと言うのは、今ここにいるメンツが小学6年にとっては面倒な関係性の人間が集まっているからであり、それは本来30を越えたおっさんであれば何ら気にする事でもない話であるからだ。


「トッシーもか」
「友君達も来てたんだ」


 6年の中でも教師から悪ガキ認定された人間はそれなりにいるが、その中でも男子陣は二つの派閥に分かれている。


 その一つが友作率いる悪ガキ三人集であり、もう一つはクラス替えの度にその規模を増していく前沢一派である。

 兄が近隣の暴走族に所属しているとかで、小学生の悪ガキ風情にとってはこれ以上ない脅しの材料になるだろう。

 だが友作の正義感はそれを嫌った。

 その結果、友作陣営は昔から仲のいい三人だけ。
他にも仲のいいメンバーは当然いたが、それは必然的に前沢一派へと飲み込まれていった。


「あぁ、そうだ! いいこと考えたわぁ。友君さぁ、チーム分けして勝負しようぜ? こっちが勝ったら――」

「――ウマメン10個」


 友作は前沢の言いたい事を先に察して、被せるようにそう宣言した。

 前沢は以前から友作達も自陣に引き込んでしまおうとちょくちょく理由をつけてはこんなちょっかいを掛けてきたからである。




「っち……まぁいいや、んじゃあチーム分けな!」

「おい! 大地てめぇ、いつまでウマメン食ってんだこら! 前ちゃんがチーム分けするってんだろ」

「あち! あち、ちょ、待ってろよデブ。こっちはメン食ってんだ。腹減ってんならお前も圭ちゃんに頼めよ、食いしん坊が」

「そう言う事言ってんじゃねぇよ!!」



 いつもの如く言い争いが始まる規模の違う二つの派閥。
 そうは言っても友作と仲のいいメンツも多い前沢一派とそうそう本気の喧嘩になることは無い。

 所詮は子供の小競り合いである。


「まぁまぁ、ほら、皆で楽しくやろー」

「さゆりはこっちチームでしょー?」

「うーん、私はゆーくんかなぁ」

「えぇー! さゆりんがそっちなら私もぉ」

「りほりほー!」



 いつの間にか公園内、及び神社境内にはそれなりの規模のサバイバルゲームが出来るメンツが揃ってしまっていた。


 チーム分けはこの通りになっている。

友作派閥否、チーム

リーダー:花田友作
情報通:久保沢宏
暴れん坊:名須川大地
女子人気No1:三河さゆり(通称さゆりん)
前沢派女子陣:湯澤里穂(通称りほりほ)

前沢派閥否、チーム

リーダー:前沢健斗
高身長スポーツ万能:鈴木利久(通称トッシー)
喧嘩上等:富戸川寿美(通称デブ)
金持ち息子:桑野圭(通称圭ちゃん)
前沢派女子陣:赤野梨花


 一体何の対決かとも思いたくなるが、子供の遊びとは時に本気、時に面倒な事になっているのだと再認識させられる友作であった。



「さて、自陣攻撃班は大地、湯澤、さゆで行く。残りはペアになって囮だ」

「えぇ! 湯澤に攻撃やらせんのかょー、そりゃ無理だろ」

「やぁ! 怖いよさゆりんー」

「大丈夫りほりほー! って、ゆーくん私も!?」

「そうだ、女子陣が攻撃とは思わないだろうから、男子を囮に使って植え込み越しに打て。大地はまぁ、やりたい相手がいそうだから」


 友作はちらりと大地を見やる。


「っしゃあ! あのデブの顔面ぶち抜いてやるぜ」


 駄菓子屋で売られる水鉄砲とは言え、圭ちゃんが購入してくれたのはそんな子供の通う店内でも紙幣を支払うレベルの高級圧縮水鉄砲。

 本気で顔等を狙ってしまい、万が一目にでも当たってはそれこそ失明の可能性もあるのだが。
 子供とは時に後先を考えずに行動するから、なんとも言えない怖さがある。


 そうは言っても、大人になってしまうとそんな事ばかりに目が行き、純粋に今を楽しめなくなるのも事実。

 そんな大人と子供の思考の間で、友作達はそれぞれペアになって神社境内周りから公園周辺に散らばった。



「うぉらぁ!! 大地ぃぃ!!」
「ざけんなぁデブがぁ!」


 そうこうしている間に少し離れた所では既に雄叫びと水鉄砲を打ち合うカシャカシャと言う音が響きわたっていた。


「あいつら……作戦もクソもないな」
「はは、本当」


 友作は三河に水鉄砲を持たせたまま、境内の植え込みに隠れてそんな音を聞き呆れ返った。

 この水鉄砲サバイバルのルール的には先に一度打たれた方が負けな訳だが、あの二人にそんなものは関係ないのだろう。

 今頃互いにビショビショになりながら撃ち合い続けているに違いない。


「ゆーくん、後ろ!」

「さゆ!」


 いつの間にか背後に忍び寄っていた前沢チーム女子、赤野梨花によって狙われた友作はだが、三河さゆりの身を挺するカバにーよって救われた。


「ゆーくん!」

「きゃ、つめった!!」


 打たれた事を即座に悟った三河は、ルールに沿ってすぐ様水鉄砲をその場に投げ捨てる。
 それを拾った友作は攻撃班に転換し、赤野梨花を見事水浸しにした。


「もぉー最悪ぅ。何なのこの遊びぃ」

「あはは、まあまあ梨花。元気出して! お互い水浸しだね」

「すまん、さゆ」


 へへへと悪戯な笑みを浮かべる三河のシャツは、友作を庇ったが為に水で透けて下着のシルエットが僅かに浮かんでいた。

「だいじょーぶっ、うちらの勝ち」

「だな。しっかし小学生がまたおしゃれな下着着けてんなぁ、梨花」

「へっ!? は、はぁ? 友作ヘンタイ! エッチ!」


 赤野梨花も同じく友作の攻撃によって上半身ビショ濡れだ。
 そこには大人が着けててもおかしくないような赤いブラがしっかりと透けて見えていた。


「あぁ! ゆーくん、見ちゃだめだ!」

「ぉ、おぃ」


 見ちゃだめと言いながら友作に覆いかぶさる三河はだが、自分のを見ろと言っているかのようにどこか濡れた笑みを感じさせた。


 友作はいい歳にも関わらず、そんな三河の姿に内心ドキっとしたのも間違いない事実であった。
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