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過去編

第14章  死闘と犠牲

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第14章

死闘と犠牲

カカリーナの街

カカリーナの南門は、モンスターの大群との壮絶な戦闘で地獄と化していた。ゴブリン、オオカミ系の魔物、オーク系の巨体が押し寄せ、脆弱な城壁はすでに半壊状態だった。マリク・バレンシアは、第五騎士団の残存兵士と共に、必死に防衛線を維持していた。だが、騎士団の数は負傷や戦死で大幅に減り、1000人に満たなかった兵力はさらに削られていた。冒険者や街の兵士も疲弊し、ポーションも底をつきつつあった。

ようやく、街の住民の避難が完了した。北門と東門から脱出した住民たちは、荷物を抱えて街道を進んでいた。しかし、東門から逃げた最後尾の住民――その中に、リンダの家の従者パオラが抱くリオの姿がまだ見えた。マリクは剣を握りしめ、リンダに叫んだ。「リンダ! リオは大丈夫か!?」

リンダ・バレンシアは、剣を手に汗と血にまみれながら答えた。「パオラに預けた! 彼女は元冒険者だから、大丈夫よ!」だが、彼女の声には不安が滲んだ。リオを乗せた避難民の最後尾は、まだ安全な距離には程遠かった。

マリクは南門の状況を見回し、歯を食いしばった。「この南門はもう限界だ! 兵士も疲弊してる。負傷者と冒険者は撤退しろ! 少しでも時間を稼ぐぞ! このままじゃ全滅だ!」

リンダの顔が強張った。「マリク! ストーン家の人たちはどこ!?」

「カシムさんもエリザさんも、まだ戦ってるはずだ! とにかく、みんな逃げろ! リンダ、お前もだ! 体力も限界だろ!」マリクは叫びながら、ゴブリンの一撃を剣で弾き返した。

「私は戦うわ、マリク!」リンダは頑として動かなかった。

マリクは一瞬目を閉じ、決断を下した。「ジュリアン! いるか!?」

ジュリアンが血と汗にまみれながら駆け寄った。「はい、隊長!」

「ジュリアン、騎士として恥ずべき願いだ。リンダとリオを連れて逃げてくれ! 王都まで護衛しろ! 援軍も近くまで来てるはずだ! リオはまだ住民の最後尾にいる!」マリクの声は切実だった。

ジュリアンは一瞬躊躇したが、すぐに目を閉じた。「……しかし、隊長! 私も最後まで戦わせてください!」

「頼む、ジュリアン! ここはもう持たねえ! リンダ、ジュリアンとリオを連れて先に逃げろ!」マリクは叫び、リンダを強く抱きしめた。リンダの目には涙が浮かんだが、彼女は頷き、ジュリアンと共に戦列を離れた。

「よし、全軍、東門まで撤退! そこで新たな防衛ラインを敷く!」マリクの号令が響き、騎士団は一斉に動き出した。



壊滅する街とストーン家の最期

しかし、撤退の最中、南門を突破したモンスターの群れが市街に流れ込んだ。ゴブリンの甲高い叫び声、オオカミ系の咆哮、オークの重い足音が石畳を震わせた。マリクは剣を振り回し、部下を率いてモンスターを食い止めようとしたが、数が多すぎた。「間に合わねえか! とにかく、少しでも時間を稼ぐんだ!」

その時、ストーン家の当主カシムと妻エリザが、モンスターの群れと交戦している姿が見えた。二人は魔法と剣で果敢に戦っていたが、体力は限界だった。カシムの鎧はボロボロで、エリザはすでに膝をついていた。「カシムさん! エリザさん! 逃げてください!」マリクが叫んだ瞬間、モンスターの群れが二人を飲み込み、姿が見えなくなった。

「くそっ!」マリクは悔しさで拳を握りしめた。ストーン家は、この街を守るために戦い抜いたのだ。

副長のジーニアスが叫んだ。「隊長! しんがりを務めます! 早く東門へ!」

マリクは一瞬立ち止まり、唇を噛んだ。「これしかないよな……。」彼は魔力を極限まで高め、身体から青白い光が溢れ出した。空間が歪むほどの膨大な魔力だった。

そこに、リンダが息を切らせて戻ってきた。「マリク!?」

「リンダ!? 逃げたんじゃないのか? リオは!?」マリクは驚き、剣を握る手に力が入った。

「リオはジュリアンとパオラに任せた。あの二人なら逃げ切れるわ。」リンダは剣を構え、魔力を最大限まで高めた。彼女の赤髪が風に揺れ、目には決意が宿っていた。「私は最後まであなたと共にする!」

マリクは一瞬言葉を失ったが、すぐに苦笑した。「お前ってやつは……。」

その時、モンスターの群れの中心に、巨大な影が現れた。ブラックベヒーモス――S級モンスターだ。漆黒の毛皮に覆われた巨体から、濃厚な瘴気が溢れ出し、周囲のモンスターをさらに狂暴化させていた。「あいつが瘴気の元だ!」マリクが叫んだ。

リンダとマリクは、互いに目を合わせ、頷いた。二人の魔力は空間を歪ませ、まるで嵐の前の静けさのように空気が震えた。

ジーニアスが叫んだ。「隊長! リンダ様! ダメです!」

マリクは一瞬、ジーニアスに向かって笑顔を見せた。「副長、ここを離れろ! しんがりを頼む!」

次の瞬間、凄まじい爆発がカカリーナの街を揺らした。マリクとリンダが放った魔力の奔流が、ブラックベヒーモスとその周囲のモンスターを飲み込んだ。街の半分が壊滅し、炎と煙が立ち上った。爆発の衝撃で、モンスターの群れの半数以上が消滅した。

一瞬、戦場に静寂が訪れた。

ジーニアスは涙を流しながら走った。「隊長……リンダ様……。」残った騎士団は100名ほど。モンスターの数は4000程度に減っていた。「これなら……逃げ切れる! 援軍が来てくれる!」



ガルド軍接近

同じ頃、ガルド・バレンシア(50歳、第五騎士団長)率いる5000人の救援部隊は、カカリーナまであとわずかの距離に迫っていた。早馬で王都を出発してから1日半、馬蹄の音が響き、旗が朝霧の中で揺れていた。街道には、カカリーナから逃げてきた住民の最後尾が見えた。

その中に、馬に乗ったジュリアンとパオラがいた。パオラはリオを胸に抱き、必死の形相で馬を走らせていた。ジュリアンがガルドの軍勢を見つけ、叫んだ。「ガルド軍か!? ガルド閣下にお会いしたい!」

ガルドが戦列から馬を進め、ジュリアンの前に現れた。「ジュリアンか?状況はどうだ!」

ジュリアンは馬から降り、パオラと共にリオを差し出した。「ガルド閣下、リオ様です! マリク様とリンダ様からお預かりしました!」

ガルドはリオを抱きしめ、震える声で呟いた。「リオ……無事だったか……。」彼の目には涙が滲み、孫の小さな温もりを確かめるように抱き締めた。「マリクは、リンダはどこだ?」

ジュリアンは目を伏せ、言葉を詰まらせた。「隊長とリンダ様は……街を守るために……。」

ガルドの顔が強張ったが、すぐに気を取り直した。「ジュリアン、パオラといったか?リオを頼む。補給隊の馬車で休め。」彼はリオをパオラに預け、戦列に戻った。「全軍、カカリーナへ急げ!」



カカリーナへの到着

ガルド軍は、ついにカカリーナに到着した。街は半壊し、煙と炎が立ち上っていた。南門は崩れ落ち、モンスターの残党がまだうろついている。ガルドは馬から降り、剣を握りしめた。「マリク! リンダ! どこだ!」

だが、街の中心に広がる焼け野原と、静寂が彼を迎えた。ジーニアスが血と埃にまみれ、よろめきながら現れた。「ガルド閣下……隊長とリンダ様は……。」

ガルドの胸に、冷たい予感が走った。





カカリーナの街は、マリクとリンダの犠牲により、モンスターの大群を半数以上壊滅させた。リオはジュリアンとパオラによって守られ、ガルドの元に届けられた。ガルド率いる5000人の救援部隊は、ついにカカリーナに到着したが、街は壊滅状態だった。
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