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冒険者の道

第16章 村へ帰る

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第16章

村へ帰る


リオは、シャデラン邸の暖炉がパチパチと音を立てる書斎で、アトラス・シャデランの話を聞いていた。部屋には古びた木の書棚が並び、壁には騎士団の紋章や古い地図が飾られている。窓から差し込む夕陽が、シャデランの青いマントを照らし、彼の落ち着いた声が部屋に響いた。

「リオ、君の父、マリクと母、リンダは、カカリーナの街を守るために命を賭けた。ガルド閣下とミリア導師も、君を心から愛していたんだ。」シャデランは静かに語り、過去の戦い――10年前のカカリーナでの壮絶なスタンピードを語った。マリクとリンダの最後の爆発、ストーン家の滅亡、ガルドの王都からの離脱。言葉一つ一つが、リオの胸に重く響いた。

リオは膝に手を置き、目を伏せていた。なぜか、目から涙が溢れた。自分が生まれたばかりの頃の記憶はほとんどないはずなのに、胸の奥で何か温かいものが疼いた。「父ちゃん……母ちゃん……じいちゃん、ばあちゃん……。」彼は小さな声で呟き、涙を拭った。転生者としての前世の記憶と、ほのかに残る幼い日の愛情の断片が混じり合い、複雑な感情が心を満たした。

シャデランはリオの肩に手を置き、優しく言った。「リオ君、明日、村へ帰る予定だが、ちょっと遠回りになる。カカリーナに寄ってみないか?」

「カカリーナ?」リオは顔を上げ、目を丸くした。

「今は10年経って、街は復興し、昔の賑わいを取り戻している。君の父と母の墓もあるんだ。温泉もあるよ。」シャデランは微笑み、軽くウィンクした。

リオは一瞬考え、頷いた。「行きたいです。」その声には、過去と向き合う決意が宿っていた。



旅立ちとカカリーナへの道

翌朝、シャデラン邸の門前で、リオは旅の準備を整えた。馬車には荷物が積まれ、護衛としてカイルとロランを含む数人の騎士団員が付き添った。シャデランの妻、キャリーと娘、エレナが門まで見送りに来た。

「リオ君、気をつけてね。また遊びに来てよ!」エレナが手を振ると、リオは照れながら笑顔で手を振り返した。キャリーは優しく微笑み、シャデランに言った。「あなたも、無事に帰ってきてね。」

使用人たちも門前に並び、リオの旅立ちを惜しんだ。老いた執事がハンカチで目を拭き、若いメイドが「リオ様、村でも元気で!」と声をかけると、リオは少し恥ずかしそうに頭を掻いた。「うん、ありがとう!」

馬車はカカリーナに向けて出発した。馬蹄の音が石畳に響き、騎士たちの鎧が朝日を反射する。リオは馬車の窓から外を眺め、シャデランと並んで座った。「シャデランさん、カカリーナってどんな街なんですか?」

「温泉で有名な中規模の街だよ。10年前は壊滅したが、今は新しい家や市場が建ち並び、昔の活気を取り戻してる。君の両親の記憶が残る場所だ。」シャデランは穏やかに答え、リオの頭を軽く撫でた。

数日後、馬車はカカリーナに到着した。石畳の道には色とりどりの屋根瓦の家々が並び、温泉宿から立ち上る湯煙が街を柔らかく包んでいた。市場では商人たちが野菜や工芸品を売り、冒険者たちがギルドの掲示板を眺めている。リオは馬車から降り、初めて見る景色に目を奪われた。なのに、なぜか胸の奥に懐かしさが広がった。「ここ、初めてなのに……なんか、知ってる気がする。」

シャデランは微笑み、リオの肩を叩いた。「さあ、まずは墓参りに行こう。」



父母の墓と再会

カカリーナの街外れ、緑豊かな丘に墓地があった。そこは静かで、風が草を揺らし、小さな花々が点在する穏やかな場所だった。マリクとリンダの墓は、シンプルだが丁寧に手入れされた石碑だった。苔一つなく、誰かが定期的に訪れていることが伺えた。

「これが、君の父と母の墓だ。」シャデランは静かに言った。

リオは墓の前に立ち、露店で買った白い花をそっと供えた。シャデランも青い花を添え、目を閉じて祈った。リオは石碑に刻まれた名前――「マリク・バレンシア」「リンダ・バレンシア」――を指でなぞり、胸の奥で温かい記憶が疼いた。「父ちゃん、母ちゃん……会いたかったよ。」涙が頬を伝い、地面に落ちた。

街への帰り道、シャデランとリオは石畳の小道を歩いていた。すると、向かいから男女二人が歩いてきた。男は背が高く、短い茶髪に鋭い目つき。女は小柄で、黒髪をポニーテールにしていた。シャデランが足を止め、振り返った。「……ジュリアンか?」

男が驚いたように振り返り、目を丸くした。「シャデラン様!?」

リオも何かを感じ、振り返った。男女もリオを見て、涙を浮かべた。「リオ様……?」男の声は震えていた。

彼らはジュリアンとパオラだった。10年前の戦いの後、ジュリアンは騎士団を辞め、パオラと共にカカリーナの復興に尽力した。二人はいつしか愛を育み、結婚し、この街に根を下ろしていた。

「ジュリアンさん……パオラさん?」リオは二人の顔を見つめ、微かな記憶がよみがえった。生まれたばかりの頃、馬に乗せられ、必死に守ってくれた二人の姿が、霧のように心に浮かんだ。普通ならありえない記憶だが、転生者であるリオには、幼い日の断片が残っていた。「馬で助けてくれた人たち、だよね?」

シャデランは驚き、目を丸くした。「リオ君、記憶があるのかい?」

リオは慌てて誤魔化した。「いや、シャデランさんから話聞いてたから……なんとなく、って感じです!」彼は笑ってごまかし、胸の奥の不思議な感覚を押し隠した。

ジュリアンは膝をつき、パオラと共に頭を下げた。「リオ様、もしバレンシア家を再興する時が来たら、ぜひお声がけください。我々はいつでもお仕えします。」

パオラも涙を拭いながら頷いた。「あの戦いで、マリク様とリンダ様が……私たち、ずっとリオ様を守りたかったんです。」

リオは少し慌て、両手を振った。「そんな、大それたことじゃないよ! でも、ありがとう……また会おうね。」別れを惜しみつつ、二人は笑顔で手を振った。



カカリーナの温泉と村への旅

シャデランとリオは、カカリーナの温泉宿で一晩を過ごした。温泉は湯煙が立ち上り、木の浴槽に注がれる湯が身体を温めた。リオは熱い湯に浸かりながら、両親のことを思った。「父ちゃん、母ちゃん、こんなとこで一緒に浸かりたかったな……。」

シャデランは隣で湯に浸かり、穏やかに言った。「ガルド閣下は、正確にはまだ貴族だよ。領地を返還しただけで、無領貴族の地位は残ってる。いつか、君がその名を継ぐかもしれないな。」

リオは驚き、湯の中で身を乗り出した。「え、じいちゃん、まだ貴族なの?」

「そうだよ。」シャデランは笑い、湯をかけた。「まあ、今は村でのんびりしてるだろうけどな。」

翌朝、リオとシャデランはカカリーナを後にし、村へ向けて馬車で旅を続けた。護衛のカイルとロランが馬に乗り、道中を盛り上げた。カイルは陽気に冗談を飛ばし、「リオ、温泉でのぼせただろ?」と笑うと、ロランは静かに「カイル、集中しろ」と窘めた。リオは二人のやりとりに笑い、旅の疲れを忘れた。

10日後、馬車はリオの村に到着した。村は緑豊かな田園に囲まれ、木造の家々が点在する静かな場所だった。村の入り口で、ガルドとミリアが待っていた。ガルドは白髪が増え、顔には深い皺が刻まれていたが、目は依然として鋭い。ミリアは銀髪を緩く結び、穏やかな微笑みを浮かべていた。

「じいちゃん! ばあちゃん!」リオは馬車から飛び降り、二人に駆け寄った。

ガルドはリオを抱きしめ、声を震わせた。「リオ……無事でよかった。」

ミリアは涙を浮かべ、リオの頭を撫でた。「大きくなったね、リオ……。」

リオは二人を見上げ、笑顔で言った。「父ちゃんと母ちゃんの墓参りしてきたよ。カカリーナ、綺麗な街だった。」

ガルドとミリアは顔を見合わせ、涙をこぼした。「すまなかった、リオ……。」ガルドはシャデランに向き直り、頭を下げた。「シャデラン、すまなかった。本当なら、俺がリオに過去を話すべきだったのに……。」

シャデランは微笑み、首を振った。「ガルド閣下、リオ君は強い子ですよ。マリクとリンダの血をしっかり受け継いでます。」





リオはカカリーナで両親の墓と向き合い、過去の記憶に触れた。ジュリアンとパオラとの再会は、彼の心に微かな温もりを残した。村に戻ったリオは、ガルドとミリアに守られ、新たな一歩を踏み出す。
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